前書き20000文字以内って、誰か書く人が居るってこと!?
駄文ですがこれからよろしくお願いします。
1.はじめまして/コユキの追放
「はぁ・・・・・よりによってあんな悪夢を見てしまうなんて・・・・」
生塩ノアは最高に気分が悪かった。
原因は今朝見た悪夢にある。
悪夢というのは基本的に誰でも見るものであり、そして基本的に誰も見たくないものだ。
不快なシチュエーションだったり、単純に自分が恐怖するものであったりと、とにかく自分が嫌なものをある日突然強制的に見せられることになる。
しかし運良くもそれらの記憶は風化していく。短ければ起きて数時間で忘れてしまう、忘れることができるものが悪夢である。記憶とは都合がいいもので時間とは無敵なのだ。
しかしそれはノアのような類まれな記憶能力を持った者には当てはまらない話だ。
目に映るものを完璧に記憶できるだけではない、いつか誰かに言われた悪口も、友人だった人のささいな裏切りも、あの日の怪我の痛みも、心の痛みも、すべてノアは憶えている。もちろん今日の悪夢もそうだ。
ノアが見た悪夢は意味不明な類のものだった。
自分の大切な友人達が化け物に変わってしまう夢。ノアは人でなくなっていく彼女達を、
なんでそんな夢を見ることになったのか、昨日の夜ちらっと見たゾンビ映画のCMか、それとも寝る前に読んでみた漫画のせいだろうか。
楽しいこともたくさん覚えていられるが、意味での人生で見た不快なもの達もすぐに思い出せてしまうのだ。悪魔の原因の記憶などいくらでもあった。
自身の心の機微を隠すのは人より上手なノアだったが、あんな夢を一晩中見せられた彼女はさすがにキャパオーバーだった。
彼女は自身の所属するミレニアム学園の生徒会、「セミナー」の書記を担当しているが、その仕事の速度もいつもより明らかに落ちていた。
────────────────────
「ノア、大丈夫?今朝から顔色悪いわよ?」
心配そうにユウカちゃんが声をかけてくる。
「・・・・・・ええ、なんともないですよユウカちゃん、体調は万全です。ちょっと考え事をしていただけなので。」
疑わしそうにこちらを見るユウカちゃん、今日もかわいいなと思っていたら今朝の夢が脳裏によぎって・・・とっさに顔を背けてしまった。
「─────うん、ノア、やっぱり今日体調悪いでしょ?しばらく仮眠室ででも休憩してきて、熱があるなら保健室でもいいし、業務はしばらく私がやっておくから。」
「えっ、でも私は────」
「つべこべ言わない!大丈夫よ、今はいつもほど忙しくないし。ほらほら立って立って!」
そのままユウカちゃんに半分無理やり椅子から立たされてセミナーの部屋の外に送られてしまった。
こういうときは本当にユウカちゃんは本当に優しい。
が、眠れるとは思えなかった。
とりあえず仮眠室の方へ歩く。
途中で試しにおそるおそる一瞬だけ、その場で目を瞑ってみる。
その瞬間あの夢の光景が暗闇に現れた。
(うっ・・・・・・!)
夢だと言うのにリアルな叫び声と匂いまでフラッシュバックし、吐き気をこらえきれず、ふらついて廊下の床に手をついてしまう。
(まったく、こういうのには慣れていると思っていたのに・・・しばらく悪夢なんて見ていなかったからでしょうか・・・)
しばらくそのあたりで時間を潰してからセミナーに戻ろうと立ち上がろうとすると、
「あの、大丈夫?・・・・・・じゃないよね、気分とか悪い?」
記憶にない声が聞こえた。
ミレニアムの制服を着た生徒が、ノアが掴まれるように中腰の状態でこちらを覗き込むように手を伸ばしていた。
白い手袋をしている。
灰色の獣耳がよく目立つ、その生徒はノアより若干背が高かった。
「─────はい。大丈夫です、ちょっとふらついただけなので、ありがとうございます。」
はて、こんな生徒ミレニアムにいただろうか、私が記憶していない生徒がいたなんて、と少し驚きながらノアは手を取った。
(あれ、この手の感触・・・・・)
その白色で薄手の手袋越しの手は想像よりもゴツゴツして硬かった。
ノアは違和感を覚えながら感謝を伝え、そのままその場から立ち去ろうとする。
ユウカちゃんの言う通り無理矢理にでも休んだ方がいいのかもしれない。
気は乗らないが睡眠薬でも使って────
「・・・・・・あの、もしかして・・・昨日の夜、悪夢とか見ませんでした?」
その衝撃的な言葉は
ノアの足を止めた。
内心かなり驚きながらゆっくり振り向く。
獣耳の生徒は呼び止めたくせにあわあわ焦っているように見えた。
“悪夢を見ましたか?”とは私のこの様子を見てのことだろうか、体調が悪いのは認めるがそれを「悪夢」のせいにするのは違和感があった。心配からなにか声をかけようとして変なことを口走ってしまったのかもしれない。
当たり障りのない返事をして去ることもできる、それが一番穏便に会話が終わる。
しかしノアは、なぜかこの怪しい生徒を警戒しきれないでいた。
理由はわからないが警戒心が薄れていく、ノア自身もその安心感の不可解さを自覚していた。
そして何より──────────ノアは疲れていた。
「─────ええ、実は今朝悪夢を見てしまいまして。」
(まあ、ユウカちゃんからお休みの命令が下っていますし、時間を潰すためにもこのくらいの会話ならいいでしょう。)
「!!・・・ああ、やっぱり」
獣耳の生徒は確認するかのように頷く、そしてその場で顎に手を当ててウンウンと唸り始める。
まるでなにかに猛烈に葛藤しているようだった。
「──────いやそれは流石に・・・でもあの夢だもんなぁ、それに見た本人が───────」
とうとうブツブツと小声でひとりごとを言い始めた。
ノアが会話を続けたことを若干後悔していると、その後すぐにその生徒は覚悟を決めたように──────羞恥で赤く染まった顔でノアの方をまっすぐ見た。
「あの、頭を、触らせていただけない、かな?」
突然の爆弾発言
ノアはドン引きした。
ノアでなくともドン引きしただろう。
ストレートに言おう、キモい。
やばいやつとエンカウントしてしまった、さっさと逃げればよかった、そう思った。
ノアの記憶の中にこいつがいないのは単に生徒じゃなくてただの不審者だからなんじゃないかとも思い始める。
「別に嫌だったらいいから!何なら通報してもらっても銃で撃ってもらっても全然構わない!やばいこと言ってる自覚は一応あるから!ね!」
当の生徒も顔を真っ赤にして必死になっている。変態の自覚はあるようだ。
「指先で触れるだけだよ!一瞬だけだし!・・・・・・あっ、それはそれで気持ち悪いか・・・・・・・・・・・・・・・・・・すみません、やっぱり変なこと言ったね、ごめんなさい、すぐ消えるから、ははは・・・・・・」
そう言って奴は申し訳無さそうに、恥ずかしさを隠すように早足で廊下を引き返していった。
──────────ノアがなぜあのように返事したのか、ノア自身もわからなかった。
そのままセミナーの業務に戻ればよかった。
変なやつがいるからユウカちゃんも気をつけてね、それで終わりのはずだった。
ただ、その生徒の自分より少し大きくて、寂しそうな背中を見ていると・・・
────────なぜか胸が締め付けられるような、懐かしさを覚えるその背中を見ていると、言葉が口から勝手に飛び出してしまったのだ。
「・・・・・・・・・構いませんよ。」
「──────えっ?」
獣耳の生徒────彼は驚いたように振り向いた。
その生徒は男だった。
ノアが触れてきた手より大きくて少しゴツゴツした手のひら、全体的に硬い印象のあるシルエット、低めの声色、ノアは獣耳の生徒が男子生徒であると確信していた。
彼はしばらく信じられないという顔をしていたが、照れながら、そしてとても嬉しそうに、こちらに小走りで戻ってきた。
「・・・・・・ありがとう、一瞬で終わるから。」
彼が左手を伸ばしてくる、それは本当に一瞬で終わった。
ノアの右の側頭部に彼の人差し指と中指が触れたのは1秒もないくらいだった。
・・・これだけ?
「・・・・・・あのー、これはどういう?」
「悪夢の内容を思い出せる?」
男子生徒の言う通りにノアは嫌な記憶を思い出そうとするが・・・
「──────────あれっ?」
あの忌々しい記憶が、まるで元からなかったかのように、きれいさっぱり消えていた。
それはノアにとっては初めての経験でもあった。
「────思い出せません・・・・・・!」
「そうか!それなら良かった。」
急にごめんね、じゃあ、と彼はまた廊下を引き返そうとする。
「────────────あっ、あの!」
ノアは今度ははっきりと、強い意志で引き止めた。
「私、あなたの名前をご存じなくて・・・!」
ミレニアムの制服に袖を通している、灰色の獣耳を携えた、どこか遠くを見ているような目をしている、その男子生徒は一泊開けて答える。
「はじめまして、俺は海馬シオン、三年生だがミレニアムに昨日転校してきた。これからよろしくね。」
これがミレニアムでのノアのシオンとの出会いだった。
────────────────────
「あのねぇ、コユキさん、ギャンブルのやり過ぎはだめだって俺前に言ったよね?」
「???」
「その顔やめて腹立つから、言ったから、俺、確かに」
「シオン先輩もしかして・・・記憶障害でも起こしてるんじゃないですか?」
「それは君の方だよコユキ」
シオンの前にはピンク髪のツインテール少女。
筋金入りの倫理観ゆるキャラ、ギャンブラーコユキが座っている。
ネットの世界で一攫千金を狙っていた所、シオンに反省部屋に呼び出され無理やり椅子に座らされたのだ。
「ギャンブルで身を滅ぼすおじさんっていうのは世の中にたくさんいるだろ?あれになりたいのか?俺も子供だから詳しくは知らないけどさ、そうなったら誰も助けてくれないし、怖いし情けないよ?きっと。」
「にははは!だって私まだ3年は子供ですし、今を楽しまなきゃ〜って!」
満面の笑顔を向けてくるピンクバカ、この顔も今ではイライラしかしない。
愛嬌?ねぇよ(キレ気味)。
質問を続ける。
「じゃあ、いつ他人の金でギャンブルとかいう所業をやめるんですかコユキさん?」
「えーっ、3年生の冬とか?」
「浪人予備軍みたいな思考してるね流石だよ」
「勉強は積み重ねが必要だけど、ギャンブルはやめるだけでいいですからね〜、にはははは!」
これがコユキクオリティー。
今まで何度もこの本人さえ破滅させる癖をなんとかしようとした。
ええ、最初はコユキ本人のためを思ってましたとも、我慢してました。
しかしこのコユキクオリティー。
心配より怒りが勝っちゃうのもしょうがないね。
「・・・・・・コユキさ、前渡した漫画よんだ?」
「はい!読みましたよ、『カイジ』!絵柄は独特でしたけどすごく面白かったです!」
「そうか!あれを読んでギャンブル狂いの末路についてどう思った!?」
「最後の最後で勝つのがかっこよかったですね!」
「違う、そうじゃない」
地下で働かされているコユキが想像出来すぎたから貸したけど、これは間違えたかもしれない
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っじゃあさ!、100歩譲ってギャンブルはいいとして、他人の金に手を出すのはやめなよ!ね?」
「そもそもお金は社会を回るものですからね、何もおかしくないですよね」
おかしいだろどう考えても、社会の一部を名乗れる身分じゃねーだろ
「信用は金で買えないんだぞコユキ」
「え〜信用ってそんなに大事ですか?みんなもっと自分勝手に儲けたらいいんですよ」
──────こいつぁひでぇや
どうしようか、このままじゃコユキが・・・
いや、こんなやつに情なんかかけないほうがいい気がしてきた・・・いやでもなぁ・・・
「そもそも大人になったらなんて考えなくてもいいんですよ、未来なんて何が起こるかわからないんですし、私はどうでもいいですね、いざとなったら先輩から集りますし!にはは!」
(・・・・・・)
「・・・シオン先輩?」
「─────────ああ、そうだな。・・・だけどさ、未来は約束されてるように見えて、実はそうじゃないんだ。未来は善いか悪いかわからないもの、とかじゃなくて、最初から・・・・・・存在してないときもあるんだよ。」
俺が何やったって、なにも残せないように。
「もったいないと思う。コユキは今を生きてるだけって言うが、せっかくのいい未来を先延ばしにしてダラダラしてるだけだと思うよ。俺は。」
「・・・・・・たまにスンッてなったシオン先輩は、つまらなくて苦手ですよ、私は。」
コユキは横を向いてしまった。
「──────────まあ!私はギャンブルをやめるつもりはありませんし?セミナーの権力で悠々自適に生きるんですよ!素晴らしいですね!力っていうのは!大きな力には責任が伴う?なにそれ?って感じですね!」
「・・・はぁ。」
これは、無理そうだな。
「だそうだよ、ノア」
「えっ」
コユキがすごい速度で振り向く。
反省部屋の前には、コユキがこの世で最も恐れる人間の一人、セミナー書記、生塩ノアが立っていた。
俺のときの舐め腐った態度とは裏腹に滝のように汗を流し始めるコユキ()
「・・・・・あのっノア先輩、ちがくて、これは」
「これは決定的ですね、シオンさん。」
「そうだね、俺が間違ってたよ。」
やれやれ残念と頭をふる。まぁ、こうなる気はしてたけど。
「ありがとう、雑務の俺のわがままを聞いてくれてさ」
「先輩の頼み事ならセミナーの誰だって受け入れますよ♡」
それは嘘だろ、さすがに、ノアはお世辞が上手だから困るなぁ。
ふへへへへ(喜び)
「あのぉ、先輩方何を言って?」
コユキが冷や汗をかいて困惑している、ただ、ちょっとまずい感じの空気なのはわかってるようだ。
「実はコユキちゃんをセミナーから追放、つまりクビにしようという意見がありまして」
コユキは口を開けて目をパチクリとさせている、呆然としてなにも理解できないという感じだ。
────いやなに驚いてるんだよ当然だよ?
他人の金を勝手に使うなんて日常
横領常習犯
コユキのせいでミレニアムの機密情報が漏れたときは本当に大変だった。
セミナー、ヴェリタスフル稼働でC&Cもブラックマーケットをかけずり回った。
「
“コユキは倫理観がないだけで根はいい奴な・・・はず、俺に何回か叱られて反省している・・・はず。だから、どうか一回だけ、コユキにチャンスをくれないか”
とみんなの前で頭を下げ始めたので、いまから確かめに行って反省している素振りが少しでも見えたら、追放はナシとする、という話でまとまったんです。」
「えっ、もしかして・・・その“確かめる”っていうのが・・・!」
「ええ、さっきのシオンさんとコユキちゃんの会話の中の質疑応答、あれが最後のチャンスだったんですよ?」
ノアは最初から最後まで笑顔だった。
しかしノアの怒りの笑顔はもうはちゃめちゃに怖いのだ。実は本気で怒らせたことがあるがそれはもう・・・思い出したくもない。
「コユキちゃんに反省の色は見えませんでしたねシオンさん」
「うん、まったく。」
「あっあっあっ」
「というわけで、コユキちゃんは今日をもってセミナーから出ていってもらいます♡」
ノアから放たれる死刑宣告、セミナーの権利を失ったコユキは今やただのギャンブル廃人の犯罪者だ!
──────────元からそうか!
「先輩!しおんせんぱい!だすけて!」
涙目で服の端を掴んでくるコユキ、伸びちゃうだろうが
「じゃあな、コユキ、達者でな、君のことは忘れるまで忘れないよ。」
「それわすれてるじゃないですかぁ〜〜!!!」
床にへたり込んだコユキをひとりおいてノアと俺は無慈悲にも反省部屋のドアを外から閉めた。
「うあぁあああーなんでーー!」
奴の断末魔はミレニアム中に響いた
始まりました。
プロローグは先生が来るまでのミレニアムです。
文字数が少ないなと思いコユキを追放しました。仕方ないね。
これからよろしくお願いします。