学マスからアイドルマスターに参入し、にちかに心をズタボロにされた橘です。
ブルアカ二次創作の前書きで書くべきことじゃないですね。へへ。
Let's go!!
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いつになく泣いているようだ
陽炎
遥か遠くからジリジリと頭髪を焼いてくる赤い太陽。実際の昼間の日光は薄い黄色らしいが、頭がくらくらしてくるこの暑さでは赤色という表現がしっくりくる。
歩いても歩いても砂ばかり、陽炎のせいで風景の遠近がはっきりしない。
そこはいつも通りのアビドス砂漠だった。
「遠すぎるな・・・」
俺は砂の中の廃墟で立ち止まって、そのまま重力に身を任せてしゃがんだ。
・・・背負ったリュックサックが肩によくないダメージを与えてきてる。
息を整えると、周りの音がよく聞こえてくる。風の音、それに運ばれてくる砂、砂がコンクリートの壁に当たる音
────そして誰かの足音
「・・・」
俺は音を立てないように立ち上がると、すり足で近くの柱の裏に回った。どうやら可愛らしい曲者が潜んでいるようだ。
さてどうしてやろうか・・・へへへへ
「・・・・・・わっ!!!」
「ひゃあっ!!」
「バレバレだったよ、ノノミ」
隠れていたのはアビドス高校二年生の十六夜ノノミ。彼女のミニガンが石柱からはみ出していたのでわかった、ノノミのだと気づくまではこれから蜂の巣にされるのかとビクビクしていたのは内緒。
「ふふっ・・・"ひゃあ"って、ノノミも叫び声とか上げるんだね。」
「私だってビックリしたら声も出ます!・・・もう、私が驚かそうとしてたのに」
「・・・俺を追いかけてきたの?」
「はい。一人でどこに行くのかと・・・廃駅に向かってたんですね」
そう、俺は砂漠の果てまで伸びる線路に沿ってずっと歩いて来たのだ。
砂漠化が進んだ十数年前、ネフティス社が事業を回復させる逆転の一手として始めた鉄道は大失敗に終わった。砂にまみれた線路を見ながら歩く、そうするとネフティスへの怒りと行き場のないの哀愁を感じずには居られなかった。
そして目的地が一日で着くような距離に無いこともわかった。
「あちゃ〜見つかってたかぁ・・・それにしてもよく付いてこれたね、疲れたでしょ?」
「いえ?元気いっぱいですよ☆」
アビドスの生徒はどいつもこいつもキヴォトスでも上澄みの体力してやがる、悔しい。
「・・・そうかい。俺はクタクタだよ、横になりたいくらい。」
「それなら・・・」
駅のベンチに腰掛けるノノミ、自分の太ももをポンポンと叩く。
「ここならゆっくり休憩できますよ♡」
キヴォトス中の母性があそこに集まっているのだろう。
この流れは知っている、大変喜ばしいことにこのままじゃ強制膝枕をされるやつだ。まずいなぁどうしようか
悪魔「へへへへ・・・何をためらってやがる、欲望に忠実になれよ。それに後輩に恥をかかすんじゃねぇ」
天使「下心に支配されてはいけません、未来の自分に誇れる生き方をしましょう。なんて建前はクソです。それいけ!」
どっちも悪魔じゃねぇか
「・・・ノノミの服が砂埃で汚れちゃうからね、やめとくよ。」
「むぅ、強がりはよくありませんよ〜」
結局俺は自尊心を優先してノノミの隣に座った。
強がりでもしないと取り込まれてしまいそうだ。俺じゃ勝てないよ。
「・・・それで、シオンさんはこんなところに何の用事が?」
「いや、目的地はもっと先だよ。」
「ここより先ですか!?」
この先は前時代の建造物が転がっているだけだとノノミは言う。その通り、それが目的だ。
「昔、雷帝がアビドスと結託して何か作ってたらしいってのを・・・あー、ミレニアムの同級生に教えてもらってね。それを発見できたら砂漠化に関係あるかなって思ったんだ。」
「"何か"って、随分と抽象的ですね?」
「オーバーテクノロジーだとか、とにかくデカイだとか・・・あと、恐ろしい兵器だとか・・・」
トリニティの古書館には、雷帝の残虐さが誇張を疑うくらいに記されていたが、実際に発明したものについては情報が穴だらけで当てにならないのも多かった。日の目を見てない兵器もあるだろうが、たった二年前のことでここまで謎が多いということは当時のゲヘナ情報部が相当優秀だったのだろう。
「確か、砂漠が押し寄せてきたのもあちらの方角だったらしいですよ。」
「本当に!?・・・それなら、砂漠化の謎への手がかりがあるかもしれないね。心底気になるところなんだけどな・・・」
シオンは隣の席に置いたリュックサックからペットボトルを取り出した。
「歩けば2日くらいで行けると思ってたんだけどね、思ったより遠くて無理だね!想定より物資が足りなかった。」
「・・・なら、今日は引き返すってことですよね?」
「うん。」
「・・・はぁ、砂漠を一人で行くのは危険ですからやめてください。私すっごく心配したんですよ?」
「はいはい気をつけます。・・・あれ、ノノミは喉乾いてないの」
ノノミはミニガンを入れるバッグだけ持ってきている。水筒も
ここの自動販売機なんか電気が通ってるわけないし、ここは───
「私は───」
「もし良かったら俺の飲む?」
「・・・ふぇ?」
ノノミがフリーズした。動きが止まり、こちらに首だけ向けるときの勢いで髪だけが揺れた。
けど目線が合わない、俺の両目より少しだけ下を見られている気がした。
よく見ると汗もかいているし、暑さのせいか顔も紅潮している。このまま熱中症の恐れがあるな、やっぱり水分を補給したほうがいい。
「でも、それは・・・シオンさんもそれでいいんでよね・・?」
「全然構わないよ、ノノミが暑さで倒れたら嫌だもん」
「シオンさんのを、シオンさんから・・・」
「えっ嫌だった!?」
「いえ、いやではないのですが・・・ほんとに、本当に飲んじゃいますよ?」
「うん、飲んじゃえばいいよ」
放心状態から戻ってきたらしいノノミは、いつもの笑顔に戻った。
いや、いつものじゃない、これはテンションが上りまくっているときの顔だ。モモフレンズとかアイドルとかの話をしているときの止まらないノノミだ。
「では、ありがたくいただきますね♡」
「はいどうぞ、新品だから安心してね」
ノノミが伸ばしてきた手に、リュックの中から出てきた
「・・・・・・」
「すごいんだよこのペットボトルカバー!なんでかはわからないけど全然ぬるくならないんだよ!科学の力ってすごいね!デザインもシンプルで機能性もいいからアビドスの皆も使ったらい───」
「シオンさん」
「・・・?はい。」
「私今怒ってますよ?」
「なんで!?」
手に持ったペットボトル(カバーつき)を返してくるノノミ、結局飲まないらしい。そんなに俺の説明に不快になる要素あったか・・・?
「・・・・・・そんなにカバー嫌い・・・?」
「嫌いです☆」
「そっかぁ」
もしかしたら、ペットボトルごときにカバーを付けるなんてクソダサいのかもしれない、結構ショック・・・割と本気で気にいってたのに・・・次からはもう持ってこないようにしよう。嫌な学びだ。
そんなことを思っていたらノノミは自分のバッグの外ポケットから同じ形のペットボトルを取り出していた。もちろんカバーはついていない。
「あーなんだ自分の持ってたのね!気づかなくてごめん。」
「いえいえ、私もさっきまで
ノノミの言い方にはなんだか圧があったと思う。
──────────
「先生ってどんな人ですか?」
「・・・あの人のこと気になるの?」
ノノミの提案でアビドス高校に寄って帰ることになった。話し方からしてノノミは俺が校舎に入ると思っているようだが、まあ適当に校門あたりで帰ろう。
二人並んでザリザリと砂の中を歩きながらいろんなことを話したが、この質問には俺は大いに戸惑った。
俺は苦悩していたのだ。
シャーレに所属することになって6日ほど、連邦生徒会長失踪時に比べればセミナーの仕事も落ち着いてきたのもあって、シャーレとセミナーの仕事に押しつぶされるようなことはなかった。
ただ、問題は先生である。
俺の神秘は、あの大人の記憶を引き出せなかった。こんなこと初めてだった。
意思を持って動いてるものであるのなら生徒だろうが獣人だろうがロボットだろうが記憶を読めてきたのに。あの大人はそれらのどれとも違う生き物だとでも言うのだろうか。
化け物とは言わないが、人間の中でも只者ではないには違いない。
それか噂の「シッテムの箱」とやらの力か。あのオーパーツも先生専用らしいし、どちらにせよあの大人が恐ろしく、得体のしれないことに変わりはない。
だが・・・
『シオンが居てくれてよかった・・・見てよ、このジェンガくらいある書類タワー』
『ユウカがクラブ・ふわりんってアプリを夜のお店と勘違いしてさ───』
『盗聴器、三個目!』
『君たちが不良でも、私の生徒には変わりないからね。助けが必要ならいつでも頼ってね』
『ずっと座ってると疲れるね、外回りに行こうか』
『メールの通知はいつも99+だよ、へへ』
『ここがミレニアムかぁ・・・シャーレよりずっと立派だね、事実として・・・』
『足には2つの役割がある、歩行することと、舐められることだよ』
『うおおおおおカイテンジャーぁぁぁぁ!!!!』
『銃は確かに怖いけど、私には守ってくれる生徒が付いてくれてるから平気だよ』
『隈がひどいよシオン、仮眠してきなさい』
『私のハザードレベルがマックスになる前に逃げろぉ!!』
『私じゃなくて、それはシオンの努力の成果だよ』
『いつもありがとう、シオン』
「たぶんすごくいい人なんだよね・・・。」
「それはよかったです♡」
「うーんそうかなぁ・・・」
わかりやすい悪者で居てくれたら・・・いやその方がキヴォトスの未来にとっては困るんだが。
どこまで行っても俺の問題なのだ。あの善良な大人が化け物に見えるのは俺だけなのだから。
「何か問題があるんですか?」
「いや気にしないで、どうして先生のことを知りたいの」
あっ、質問を質問で返してしまった。
「・・・最近、またヘルメット団の襲撃が繰り返し起こっているんです。備蓄してある弾薬も心細くなってきましたし、シャーレに救援を求めたほうがいいのではと。」
「まだ残党がいたのか・・・呼んでくれたら、俺も手伝ったのに。」
「ヘルメット団のことを、シオンさんに頼りすぎるのも良くないと思ったんです。それに研究の邪魔もしたくありませんでした。」
そう言ってノノミは眉の端を下げた。なんだか騙してるような気分だった、俺の研究なんて半分言い訳みたいなものなのに。
そしてヘルメット団。あいつらまだいるのか・・・アジトは壊滅したのにしつこい奴等だ。
でも確かに俺に資金力は皆無だ。アビドスが物資不足で外部の人間に頼るのならば、あの大人で大正解なのだ。
「それで先生に相談をか、いい案だと思うよ。あの人の力があれば銃弾に困ることはまず無い。」
存分に頼ればいい、先生本人も喜んでくれるだろうと言って俺が頷くと、ノノミも安心したように笑った。
「シオンさんがそこまで言うなら、きっとホシノ先輩も納得してくれますね」
「やっぱりホシノさんはシャーレに頼るのは反対なの?」
「・・・そうだと思います。はっきりとは口に出さないんですが、先輩は先生に期待していないみたいです。」
「ホシノさんらしいや」
カイザーや連邦生徒会のしたことは、ホシノに深い諦観を植え付けた。きっと今の彼女に頼れる人間などいない、もちろん俺も含めてだ。
そしてホシノはその孤独を完全に推し殺せるほど器用じゃない。ノノミは優しいから、日常の中で自分の先輩の苦しみを見つけてしまうのだ。
でもなんで俺なんかが先生を推薦したらホシノが納得するのだろうか。お世辞かな。
「シオンさん今『なんで俺なんかが先生を推薦したらホシノが納得するの?』って思いました?」
「なんでわかるの怖いよ!!」
ノノミは、なんだか子どもに語りかけるような優しい目をしていた。そしてその目線の先には俺しかいない。
こういうとき、なぜか俺は親に窘められているような気分になる。
そして彼女の端整な顔で、彼女を年下だと再認識してハートがグッチャグチャになるのだ。
「ホシノ先輩はシオンさんを信頼してますよ」
「またまた、俺はホシノさんにとってただの部外者だよ。」
「・・・いえ、先輩にとってシオンさんは気を許せる貴重な人なはずです。」
ノノミはゆっくりとその温かい眼差しを下に向けた。
「そして私達・・・私にとっても大切な人なんですよ?」
だからもっと自分の行動、言葉をを信じてあげてください、とノノミは話した。
正直、そんな心に優しく降り積もるような言葉をかけてもらえるなんて思っていなかった。気まずくて砂を少々蹴って歩いてしまう。照れで顔が赤くなるのがわかってしまって余計にくすぐったい気分だ。
なぜかノノミの肩に目が行った。斜め上から眺めるそれは、鏡で見る俺のゴツゴツしたそれと比べるとあまりにも華奢だった。
「それにシオンさんとホシノ先輩が二人で夜中にコソコソとなにかしていること、私知ってるんですからね☆」
「言い方が非常によろしくない」
流れ変わったな
「パトロールだから!夜のアビドスに居たら必ず徘徊おじさん(JK)に遭遇するんだって!それに同行してるだけだから!」
「二人きりでデートってことですね☆」
「ちゃう!会話しながら歩くのは30分くらい、その後は早く帰ってぬくぬくベッドで睡眠しろってホシノさんを校舎まで送ってるから。」
「でも、先輩は朝方にならないと帰ってきませんよ?」
「あの野郎、俺が去った後で2回目のパトロールしてやがるな」
そんな話をしていると、足元の砂の量が比較的少なくなってきた。このまま歩き続ければアビドス高等学校の校舎まであと1分くらいだろう。
「・・・それはずるくないですか」
すでに夕方の空気を薄く感じさせるくらいには西に傾いた太陽が、廃ビルの隙間からチラチラと俺の顔に陽光を差してくる。
ノノミが少しでも暑くないようにと光が当たる方を歩いていたが、隣を見るといつの間にか誰も居ない。
彼女は後方で立ち止まって、ひび割れた街路に咲いている午後の陽だまりの中に立っていた。
「どうしたのノノミ?」
「シオンさん、ここから右に行けば駅への近道です。ここでお別れにしませんか」
「でもヘルメット団が出るんでしょ?危ないから校舎まで送っていくよ」
「大丈夫です☆ 私、結構強いんですよ?」
「もちろんそれは知っているけど・・・」
ノノミの顔は半分ほど逆光でよく見えなかったが。
だけど俺は隠し事をする人間の声を知っている。
ホシノも、俺も、そしてノノミも、心の奥に何かをしまって今日も生きながらえているのだ。
「わかった、じゃあ俺はここで帰るよ。ノノミも気を付けてね」
「シオンさんも体調に気をつけてくださいね!」
そう言って、数歩離れた場所で笑う彼女に背を向け、俺は駅へと歩き始めた。
「あと!」
何度目かのノノミの呼び声に振り返ってさっき彼女のいた場所に目線を向けると、そこにミニガンを抱えた少女はいなかった。
見えたのはブロンドの綺麗な髪。
ノノミは今度は顔がはっきり見える距離までに近づいてきていた。
「シオンさん次から砂漠に来るときは、私達の誰かに連絡してください!」
「えっもしかして申告しないと不法侵入とか!?」
「
「ラジャー、ノノミさん。次からは─────」
「シオンさん」
声色が、不穏なものに変わったのを感じた。振り返って顔を見ると案の定ノノミは真剣な顔をしている。その表情から、俺は怒りと心配を読み取った。
そしてだ、目を合わせると読み取れてしまうものがもう一つある。彼女の記憶が脳に入ってきた。
■■■
「せ、先輩!?どこですか!?」
悲鳴。
「ユメ先輩!ここです!先輩!!」
あまりに悲痛なそれは
「ユメ先輩!!!」
いつか自分の先輩になって欲しい人の口から出ているものだった。
眠っている彼女の顔は泣き出しそうに歪んで、悪夢にうなされているみたいだった。
「ほ、ホシノ先輩・・・・・・」
「・・・何だ、また君か。」
でも、きっと悪夢ではなく、ただの現実だろうとノノミは思った。
■■■
「シオンさん・・・?」
「・・・わかった。もうしないよ、ノノミ。」
「‥約束ですよ?」
「うん、約束する。」
俺はそのままノノミに見送られながら帰路についた。
ずっと砂場の上で足踏みしていたような足の裏が、硬いものを踏み始めた。道路に出たようだ。
靴の中に侵入した砂が、ひどく嫌な懐かしさを感じさせてくれる。
「・・・・・・ノノミ。実は俺、砂漠には結構慣れてるんだ。知らなかったでしょ。」
聞こえるわけないのに。
──────────────
今日、アビドスで彼に会ったのは私だけなんだ。
皆が持っていない今日の、私だけの思い出。
「今日くらい、私のひとりじめってことにしてもいいですよね、シオンさん」
「あっノノミ先輩おかえり!どこに行ってたの?買い物とか?」
「ふふっ実はですね────」
話しちゃいましょうか、それとも秘密にしてしまいましょうか☆
これは迷いますね♡
───────────────
数日後
俺はシャーレを訪れていた。理由は簡単、今日が俺の当番の日だからだ。
シャーレに所属した生徒が交代制で先生をサポートする「当番」。業務の効率upと同時に生徒との親睦を深める機会にもなっている。
「先生は、やっぱり居ないか。」
だが今日は先生は居ない。三日前に届いたメールのお陰で困惑はしなかった。
『出張に行ってきます。私の不在時に、当番の生徒の皆さんに頼みたいことを下にまとめておきました。よろしくお願いします。』
大体こんな感じの内容で、当番の業務も先生がいないと禄に書類も通らないからか特に難しいことはなかった。
誰でもできる日課に、届いた連絡・相談の整理、掃除くらいか。
さっさと終わらせてゲーム開発部とセミナー、あとカシオに差し入れを持っていこう。
PLLLLL
そんなこんなで何も考えないで仕事が終わったあたりで、唐突に電話が鳴った。
「はい、連邦捜査部シャーレです。申し訳ございません、ただいま先生が不在でして───」
『シオン先輩!?』
「その声は・・・ユウカ!?」
なんと、通話相手はユウカだった。彼女もシャーレの一員なのだから先生の出張のことを知っているはずなんだけど。なんの用だろう。
『先輩、先生はそこに居ますか!?』
「いや、出張中だよ?」
『はぁやっぱり・・・それは困りましたね・・・!』
「シャーレの事務所でできることなら、俺がやっとくけど」
『いえ、実は───』
ユウカは明らかに不安と苛立ちを抱えていた。なんだかこっちまで嫌な予感がしてくる。
『2日前から先生と連絡が取れないんです!』
「・・・はぁ!?」
『先生のスマホに直接繋ごうとしてるんですけど、モモトークの既読すら付かなくて・・・!』
ユウカさては毎日のように先生とモモトークしてるな・・・いや大事なのはそこじゃない!
先生が音信不通!?主張中に不良に襲われたとか、クソみたいな大人に連れ去られたか。とにかくあの人が生徒の連絡を無視するなんてありえない。
『だから念の為シャーレにも電話をかけてみたんです。シオンさんは先生のこと何か知りませんか!?』
───出張?どこに?いやわかる、どこに行ったか!
『シオン先輩?』
先生の机の上の書類の下をチェックするが、関係のない付箋ばかりだった。
共用のスケジュールアプリには「出張」としか書かれてなかった。ならどこか、シッテムの箱以外で先生の仕事の日程が記録されてる何かを・・・!
『バタバタしてますけど先輩大丈夫ですか!?返事してください!!』
「待ってユウカ、もう少し!」
やっとそれを見つけた。この部屋にある最も古い、つまり出張に行く直前の相談所。そして先生が作ったであろうほぼ完成の報告書!
知ってたけれども、あの大人片付けが下手だな!?手を付けた書類を他のと同じ場所に置いておくなよ紛らわしい!
相談書には先生のチェックの付箋が貼られていて、送られてきたのは・・・アビドスから!!
ノノミと先生の印象について話したのって何日前だっけ。
「ユウカ、多分先生はアビドスに向かったみたい!ごめんちょっと切るね!」
『えっちょっとま────』
ユウカとの通話をブツ切りした後、そのままの流れでノノミの連絡先へ指を動かした。
PLLLLLLLLL
ガチャ
『もしもしシオンさん、どうかされましたか?』
「ノノミ!先生はそこにいる!?」
『先生ですか?いえ、まだアビドスには到着していませんけど・・・』
「・・・っ!!」
最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ
先生は2日前から音信不通・・・!
「先生が砂漠で遭難してるかもしれない!探してほしい!!」
『えっあっ・・・はい!わかりました!!』
ノノミとの通話が終了したころには、スマホ片手に俺はシャーレのあるビルの階段を駆け下りていた。持ってきていたショットガンと必需品の入ったバッグを脇に抱えたまま外に出る。
「クソッ・・!」
喉を伝う嫌な予感が、シオンを駅に向かって走り出させた。
アビドスは広すぎる。万が一ノノミ達でも見つけられなかったらと思うと、居ても立っても居られなかったのだ。
身を持ってシオンは知っている、砂漠は簡単に人を殺すと。
ノノミが砂漠に持参したペットボトルの水の残りは三分の一くらいになっていた。残しておくのも違う、ここで飲み干してしまうことにした。
(あっ)
ノノミはペットボトルに何かを上に被せていたような、擦れた後があることに気づいた。
シオンと自分が同じ形のを持ってきていた記憶が、脳内でチカチカ点滅する。
(・・・)
気づくのがもう少し早くても、きっと自分はこの水を飲んだだろうとノノミは思った。
そして想像してしまった、彼が喉を潤す様子を。
「ん、ノノミの顔が真っ赤。暑いの?」
「・・・ええ、暑いですね」
───────────
お借りした楽曲
サカナクション:陽炎