キヴォトスの記憶操作系男子   作:橘ちば

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遅くなりました、またふらりと書きました。
今回は12000字です。
かなり無理やり進めた感じです。

アイドルミネの脇を永遠につんつんしていたいですよね。


4.シオンとアスナ(Ⅱ)

 

 

 

「ねえねえ、見てよこの動画!めっちゃ可愛くない!?」

 

「なになに、子猫が瓶に入って・・・3体!?かわ・・・!」

 

「でしょ〜!じゃあ情報料としてそのアイスちょうだい!」

 

「ピノは残り3個か・・・ふふ、一個だけどうぞ」

 

「じゃあ2個もらっちゃお〜!」

 

「外道め」

 

「そういえば昨日私シオンにジュース奢ったよね」

 

「・・・・・・どうぞ」

 

「やった♪」

 

「───あのさぁ、てめぇらさ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すげぇ仲良くなってんじゃねぇか!!!!」

 

「部長〜〜待ってたよ!」

「ネルさんこんにちは」

 

 

アスナと行動するようになってから一週間が経とうとしていた。

未だに()()()()()()()()()()()()は現れていない。

まあこればかりは頻度も症状がどこまで表面に現れるかも不明瞭なので仕方がない。これからもアスナと俺のスケジュールが合う間同じことをするしか無い。

もし俺が居ないときにアスナに異変があったときはアスナもしくはネルさんが連絡をくれる手筈になっていた。

 

そしてここはミレニアム校内、セミナーが管理している立入禁止の部屋の一つ。

主にちょっとした会議やC&Cに作戦についての説明をするときに使う部屋だ。

思い返せば初めてアスナを見たのもこの部屋だった。

 

「仲がいいのはいいことだと思うぜ?だがよ、距離詰めるの早すぎないかおまえら?」

 

「だって一緒にいると安心するんだもん!」

「一緒にいると楽しいんですよね。」

 

目を合わせれば記憶が少し覗けてしまうシオン、勘で大体の他人の性格がわかるアスナ。

 

二人共はじめて出会うタイプの人間、それ故最初は距離感や接し方に悩んだ。

しかしどちらも善人気質、正直、ただのいいヤツだとわかればあとは早かった。

互いの腹の中をうっすら察せる二人に気遣いなど意味のないもの。もはや心の壁など無かった。

 

「・・・あとアスナ、モモトークのこの写真はなんなんだよ!」

「シオンがミレニアムトランプ大会でババ抜き1位になったときのやつだよ〜」

 

「・・・これは?」

「私がゴールドマグロ釣り上げたときの写真だよ!」

 

「・・・これ」

「シオンと遊園地に行ったらご来場者100万人目だって───」

「毎日楽しそうだな!!なんなんだこのツキの良さは!!!」

「なんでだろうね?」

「さてなんででしょうね・・・?」

 

口笛を吹こうとしたが見事に空気が唇の間を通り抜けただけだった。呼吸。

アスナが急に獣耳をもふもふしてくる。

 

「シオンの耳動いてる!」

「とっさに力入れたら動いちゃうんだよね。」

「わぁふさふさだぁ」

「ちょっ、そこ、奥の方はあの、ダメ、あっ、

「・・・無視して話進めるからな、次のアスナの任務についてだ。犬耳、資料くれ。」

「あっ、はい、これですね、あとピノ一個どうぞ。あっ」

「お前はなんでアイス持ち込んだんだよ・・・美味いな」

 

ネルさんに渡した資料は今回のC&Cの任務についてだ。

簡単に言えばある企業の土地を巡った犯罪の証拠を入手、ついでにそのまま逮捕しちゃってって感じだ。

 

「・・・この子達、少し前の任務で捕まえなかったけ。」

「ああ、あのときの不良共か・・・まあ察しはつく。」

 

ネルさんは資料の字面を見て舌打ちをする。机に広げられたミレニアムの南寄りのエリアの地図。ある箇所が赤く塗られて示されていた。

 

「どうせ不良共を使って何かやったんだろ」

「はい、他企業への土地の仮装譲渡です。どうせ強制執行から逃れたかったとかでしょう。まあ、不良が奪った感じにしてますが。」

 

そして実際うまくやったのだろう、捕まったのは不良たちだけだった。

 

「ん〜じゃあこのビルから潜入したら簡単そうだね」

「そうだな。カリンも居たらまず失敗はしねぇだろ」

 

だけどその大人たちも今日で終わりだ。うちの優秀なメイドたちに潰されてしまえば良い。

 

「作戦の概要は決まりましたか?」

「ああ、今回のは楽勝だな!」

 

頼もしい返事を頂いた、きっと失敗することは無いだろう。

・・・ただ

 

「わかってますよね?破壊活動はなるべく避けるんですよ?」

「ああ?お前あの会計みたいなこと言うんだな」

「そりゃあ毎回あんな被害出されたらたまりませんからね!」

「はっ、あたしらはそんな小せぇこと気にしねぇんだよ」

「そんなちいせーこと?」

 

 

─────────

 

 

アスナの記憶が飛ぶ瞬間に立ち会わなければならないとはいえ、俺達が会ってるのは基本放課後、スケジュールが合えば日中行動を共にするくらいだ。なので問題は彼女の私生活や任務中に例の記憶の症状が現れたときどうしようもないということだ。

もしそんな事になったらモモトークで連絡をくれるらしいが多分俺がいそいで向かっても間に合わない。日中に会っているだけでも時間をかければ必ずアスナに異変が現れるときは来るだろうが、アスナとしても何ヶ月もそんな生活が続くのはしんどくなるに決まっている。

 

そんな状況だからこそ今日の任務はちょっとラッキーだと思えるものだった。

 

 

 

 

「いやぁー派手にやってんねぇ!!まーたビル爆破してるよはははは!!!あいつら覚えとけよ!!!!!!」

 

爆発するビルを下から眺めながら俺は優雅に紅茶を嗜んでいた。

 

ここは例の犯罪企業から道を2つほど挟んだスイーツ店、トリニティじゃあるまいし、午後三時過ぎにティータイムをしている高校生なんてミレニアムでは俺だけだろう。屋外席だが日差しはパラソルで遮られ、昼なのに涼しいくらいだ。

俺はメイドたちの指揮(監視)の名目でここに来ていた、今日の任務がラッキーというのはこの指揮役が俺のシフトだったというのが理由だ。

任務中の彼女らの近くに居られるのは単純に貴重な体験でもあり、アスナの件でもちょっとした確率上げであり、なんか嬉しいことだった。

 

ま、指示とは名ばかりな役割で、彼女らは事前に情報さえ渡しとけばなんか勝手に爆破して満足気に帰ってくるので俺の出番など無いのだ。(誰でもできるのでシフトがローテーション制なのだ、ユウカが5割もやってくれているが)

 

あと、

「あの犬耳だああああああ!メイドが破壊しに来るぞおおおおおお!!」

みたいにメイド襲来の合図になっては嫌なので一応変装している。今日はマスクをつけてキャップをかぶっている。

「シオンにはこっちも似合うと思うなー!」

そうアスナは伊達メガネやらサングラスやらつけてこようとしてきた、なんなら化粧を取り出してきたので逃げた。そこまでガチじゃない。

 

「それにしてもメイドさん達よ・・・壊すなって言ったじゃん・・・ユウカがお労しいな」

 

熱気がここまで襲ってくるような爆炎がビルの上階から吹き出す。通行人からも大注目、皆上を見て振ってくる残骸をよけようと必死だ。

これがエージェントのすることか?

優秀なのだ彼らは・・・・・優秀なのだがなぁ・・・(遠い目)

 

戦闘マニア

第六感アドリブ

褐色対物ライフル

爆弾魔

 

並べるとまたおもしれー奴らだな

 

・・・・・・あの4人が無事ならもうそれで良いのかも知れない。

爆破されてんの悪人だし。

 

2次被害なんて知らん、ここはキヴォトスです!

被害総額とかはまた後で、今はマカロンを楽しもう。

 

「いただきま──」

 

 

     カチャ

 

 

・・・頭の後ろに何か

 

「カチャ?」

「動くなガキ、大人しく従えば撃たない」

「チャカ!?」

 

その瞬間、後頭部に鉛の塊がめり込んだ。目の裏にしびれが走る。

 

「・・・・・・っ」

「やかましいから撃った」

「・・・キヴォトスでサイレンサーなんて珍しいですね」

「この銃社会でも音を消さないといけないときくらいある」

 

声からして市民ロボだろう、この程度なら俺でも勝てる。銃を鞄から出すまで何発か受けるだろうがそのくらい──

 

「俺がポケットの中の指を動かせばあのビルは完全に崩れるぞ、いいのか?」

「・・・・・・!・・・今なんて言いました?」

「今クソガキどもが爆破しているビルを崩落させるスイッチを俺が持ってるって話だ」

「・・・信じる根拠が無いんですが」

「根拠なんているか?最悪な可能性だけ考えてろよ・・・・・・まぁこれでいいだろ、根拠は」

体の後ろから名刺のようなものとビルの内部・・・おそらく地下に設置された大量の爆発物の様子が映されたスマホの画面が差し出される。

名刺には今C&Cが潜入()している企業の名前が書かれていた。

「・・・」

「お前が数時間人質になるだけで被害は起こらないからな。わかったなら黙って付いてこい、目立つなよ」

 

 

抹茶マカロンを置き去りにして俺は大人しく路地裏に入っていった。

 

 

 

 

────

 

 

 

「あなたは、やっぱり今爆発してるとこの社員なんですか?」

「・・・さあな、お前が気にすることじゃない。」

 

路地裏をかなり進み、俺とそのロボ市民は車道の明かりが差し込まないちょうど建物に四方を囲まれたエリアに来ていた。

薄暗い中、冷え切った地べたに座りながら換気扇に背中を預けていた。

後ろ手で縛られた俺はどうすることもできないままロボ市民に話しかける。スマホの不在着信が鳴り、舌打ちをする。それをその男は繰り返していた、イラ立った様子がわかりやすい。

ちなみに俺のスマホは途中で捨てられた。

 

「クソっ・・・どいつもこいつも出ねぇ」

「・・・結局俺で何がしたかったんですか」

「ああ?いざという時の盾だよ、逃げ切れるかわからないからな」

 

「・・・爆弾といい人質といい、なんでそこまでして逃げ延びたいのかわかりませんね」

「一度もヘマをしなかった、失敗を覆い隠してきた、だから高い地位に俺は居られたんだ。一回落ちたら同じ場所には戻れない。」

 

彼はまるで誇っているような口ぶりだった。

 

この大人は誤魔化していたが、十中八九今回の任務のターゲットの企業の社員だろう。

子どもを利用して、バレて、子どもを盾にして逃げようとしているのだ。

まっとうに働くだけで十分生活できるくせに

こいつは自分から手を汚して、得た地位に依存してこんなことをしているのだ。

 

「不良共利用して楽しそうですね、よっぽどプライドが浅いのか、それともあれですか?バカを利用する俺賢いなーって感じ───」

 

俺の額に銃口が当てられる。そのままゼロ距離で弾が発射された。

 

「・・・・・痛っ」

「あまり調子に乗るなよ獣耳、いま俺はお前が思うよりずっと余裕がないんだよ。」

 

残りの4発がさっきと同じ場所に撃ち込まれる、俺にヘイローがあって、相手の銃弾に神秘が込められていない、それでも同じ場所にこうも連続でくらうと脳が揺れる。額から血がたれて鼻の横を流れていったのを感じた。

 

「あのビルに残った金と情報が俺は惜しいんだ、だがよ大人が起こす〝やけ〟ほど恐ろしいものは無いと思わないかガキ?今すぐあれを崩壊させてやっても良いんだぞ?市民もクソメイドもどうなっちまうかな、最悪何人か死ぬだろうとか考えないのか!?

自分のせいで余計な被害出したくなかったらその口を閉じろじゃなけりゃ今度は眼球に銃弾ぶち込むぞ、あ゙あ゙?!!!!!」

 

ポケットの中でスイッチを握った手をゴソゴソと動かしながらロボ市民は声を荒げる、もはや隠す気のない焦燥が機械音の声色から滲み出していた。

ずいぶんと口が悪い、俺が知っているあの大人とは大違いだ。あっちはあっちで胡散臭さがカンストしているけども。

 

「・・・わかりました、もう喋りませんよ。」

 

「«シオン先輩、動かないで»」

 

まあ、そろそろこの茶番じみたやり取りも終わりなようだ

 

「でも最後にもう一ついいですか?」

「しつこいぞガキ、何度言ったら──」

「あなたうちのメイドを舐めすぎですよ」

 

 

 

 

  メリ

 

 

 

 

その瞬間、対物ライフルから放たれた弾丸がロボ市民に直撃した。

マッハ2を超えるスピードの飛来物が脇腹に突き刺さった彼は声すら上げれず路地裏を転がってった。

俺が銃声を聞くのとロボ市民に命中するのと彼が遠くの壁に叩きつけられるのはほぼ同時と言っていいものだった、クズロボ完全K.Oである。

しかし正直眼の前で機械がひしゃげる音を聞くのは怖かった。

スナイパーの腕は信頼している、しているけども怖いのやっぱり。

 

「«シオン先輩、怪我はないか?»」

 

「うん、大丈夫だよ。迷惑かけてごめんねカリン。」

 

「«いや、気にしなくて良い。今回のは事故だった。それに非があるとしたら逃亡した社員に気づけなかった私達だ。»」

 

「ちなみに今どこにいるの?」

 

「«先輩から見て2時の方角の建物の上から撃った、もう移動してるけど。»」

 

彼女──角楯カリンは約300メートル離れたビルの屋上から対象を狙撃したらしい。

距離は短いほうだと思うが、この入り組んだ路地裏の壁に銃弾を当てないようにするなんて流石C&Cというべきか、ロボ市民を相手にするときは目一杯神秘を込められないのが少しスッキリしないらしい。(当たりどころによっては殺しちゃうから)

 

「シオン大丈夫?って血が出てるじゃん?!」

「ああ、アスナ。これくらいすぐ治るよ。ごめんね余計な仕事増やしちゃって、それより任務はどうなった?」

「むー・・・私としては自分の心配をしてほしいかな・・・」

 

アスナの眉の端が少し下がる、そんな悲しそうな顔をされたらなかなか心に来る

一応任務に同行させてもらってるのだから緊張感を持つべきだった、これは反省しか無い。

 

「ま、まあ、このおでこの傷は危機感が足りない戒めってことでね・・・」

「・・・えいっ」

「ちょっまた耳・・・引っ張らないで・・・あっ、ふにゃぁあっあっあっあっ・・・水見式という方法が、あっあっあっ

 

「よぉ獣耳、またピンポイントで不運に見舞われたな!あいつ最後までお前がセミナーだって気づいてなかったぞ!はは!」

「シオン先輩、ご無事で何よりです。」

「あっネルさんとボマーさんじゃないですか、あっ

 

俺は耳につけた通信機で彼女たちと連絡を取っていた。指示役(仮)以外でも校内で離れた位置の相手と同時作業するときとかに使う便利アイテムである。

ミレニアムの高い技術のおかげで耳の穴に入っちゃうくらいには小型であり、色も外からは見えにくいというもの。

このロボ市民は運悪く、いざというときの盾用に変装したセミナー(C&Cと通話中)を選んでしまったのだった。

 

「アカネ、聞こえてたと思うけど爆弾が───」

「あれなら突入時にすべて解除しておきました。あんな雑な仕掛け方、趣味が悪いとしか言いようがありません。そう思いませんか?」

「ごめんな、俺にはその辺りのセンスがないんだよ、

  ・・・解除したうえで、持参の爆弾で破壊したのね?」

 

「はい」

 

「まあ、うん、

 

 

俺は吉良吉影とか

  ゲンスルーとか

  てっしーとか

    結構好きだから、うん。」

 

 

「今度先輩の自宅にお邪魔しましょうか?」

「ごめんなさい」

 

させねーよ?絶対に。

 

「ねー部長こいつ縛ったよー!」

「了解、とりあえずカリンの待機場所まで行くかぁ。」

 

ロボ市民は起きる気配はない。

近づいてみるとほんとにどこにでもいるような奴だった。

キヴォトスでは毎日目にする見慣れたディスプレイ顔の大人。

自分の醜さを必要な狡猾さだと正当化するやつが、生徒を発展途上のバカが集まった都合の良い搾取の対象だと思ってる奴。

そう、こういう奴がどこにでもいるからクソなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ねぇ、シオン今なにかした?」

「ん?いや、何もしてないけど・・・」

「そっか」

 

「おい、アスナと犬耳、早く行くぞ!」

 

白い手袋をつけ直しながら俺は小走りでアスナたちを追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

■■

 

 

あなたは生徒を自分たちの犯罪に利用した、または見逃した。そうですね?

 

 

ああ、そうだ。

 

 

逃げたあとはどうするつもりだったんですか、えーと、ああ、ブラックマーケットに潜ってB社に回収して貰う予定だったと。

強制執行の回避とかで共犯関係だったんですね。

 

上司とかどうなったんですか?

 

 

先にB社に隠れている、俺が囮だった。

 

 

その上司はあなたを騙していたとか、都合の良い方便でいいように動かされたとか、そんなふうに思ったことは?

 

 

あいつとは互いに弱みを握り合っていた。俺が簡単に嵌められるわけがない。

 

大体わかりました。

 

あなたは子供を利用して罪悪感を感じましたか?

 

 

いや、全く感じなかった。

 

 

 

■■

 

 

 

あなたは子供を利用して罪悪感を感じましたか?

 

──ああ、そうだ。

 

 

子供を利用することは悪いことだと思いますか?

 

 

ここで上手く生きていくためには仕方ないことだ、あいつらにとっても良い教訓になるだろ。

 

■■

 

 

あなたはかつてそう思っていたが、今では子どものことをきちんと尊重する大人になったんです。

 

 

■■

 

 

自分の言動が数年で大人になる子どもたちがどのように成長するかに影響すると感じるようになった。

 

 

■■

 

 

大人としての見本の一つとなれるように、真摯に自身の仕事に向き合う大人にあなたは変わったんですよ。

ね?

 

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────ああ?いや、それは

確か・・まてよ

 

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ああ、そのとおりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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手袋をはめ直した手は震えていた。

なんて情けないんだ、あれが何年前だと思ってんだ、いい加減にしてくれよ。

 

これは「仕方ないこと」。

あの市民ロボが言うのと同じことを俺は自分に言い聞かせている。

あいつと同じで自分のために。

 

 

 

B社のことは会長に伝えなければいけないな、あとは、ああそうだ、

 

帰る前に頭痛薬を買おう。

 

 

 

 

 

─────────────

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ見てシオン!今日の夕日なんだかすごくキレイ!」

「本当だ、きれいなオレンジ色」

 

今日の任務が終わったので俺とC&Cは普段なら帰宅するはずだった。

しかし青春を生きる高校生たち、4時で帰宅するのはなにかつまらなさを感じずには居られなかったのである。

 

C&Cの皆が買い物とカラオケに行くと言うので俺はこっそり抜けようとした。

 

ネルさんに首根っこを掴まれた。

 

身長が小学生のネルさんに首根っこを掴まれた。

 

尻をガリガリ地面にこすりつけながら俺はひきずられて行きましたとさ。

 

 

 

「ねぇアスナ、俺邪魔じゃない?」

「なんで?人数多いほうが楽しいじゃん!」

 

「もしかして先輩、歌が音痴なの気にしているのですか?」

 

「・・・そうか、それは申し訳ないことをした、そんな事情があったからこっそり居なくなろうとしたのだな。

大丈夫だ、私もそれほど上手いわけではない。無理にとは言わないが、ドリンクバーを一緒に飲むだけでも楽しいと思う。

それでもと言うなら残念だが───」

 

「勝手に音痴にして勝手に優しさを見せるな

俺のカラオケ最高得点は83点だ。」

 

「はっ、勝ったな。あたしは84だ。」

 

 

 

 

なんというか、とても楽しかった。

 

女性モノの服屋に引きずり込まれたときは少し気まずかったが、ノアの買い出し付き合いでさんざんからかわれたので、海馬シオンはこういうのは堂々としているのが一番だと理解していた。

なんでファッションショーを始めるんだ。

羞恥心はないのか。

どいつもこいつも全部似合うのはなんなんだ。

 

 

 

夕方に皆でカウンター席で食べるハンバーガーはとても美味しかった。

皆同じ方向に進む車、ライトが赤い残像を街の夜闇に残していくのを窓越しに見ながら、イジられ、イジり返してやった。

「あたしのほうが速いな」

「車と張り合って勝っちゃってるよこの人」

 

 

 

カラオケは・・・皆が上手すぎただけだ、きっと。

「先輩、申し訳ない、私があんな言い方したから引くに引けなくなって───」

「違うんだって、これは、実力、実力だから、わきまえたうえで、こうなったんだよ。だからいっそ下手だと煽ってくれ・・・」

「シオンデュエットしようよ!!」

「残酷ですねアスナ先輩」

 

 

 

 

 

 

うん、すごく楽しかったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

 

 

ゲーセンでマリオカートをしたあと、そろそろ帰宅するか、という雰囲気になった。

 

「じゃあ、そろそろ解散するか。ははっ、まあまあ遊んじまったな!」

「皆ミレニアムの方角だから徒歩で帰れるね、道は・・・ええと」

 

帰る方向が4人と俺では同じだったはず。

ここゲーセンの入口から右、それがミレニアム校舎あたりへの方角だ。

 

「シオン先輩は確かミレニアムの()()()()でしたよね、それなら───」

 

アカネが逆方向、俺が指したミレニアムとは反対の方角を指差す。

 

「私とカリンとネル先輩は電車で帰りますね。」

「え?それ家まで距離遠くない?」

「ミレニアムの敷地って広大じゃないですか、なので電車で帰ったほうが歩いて迂回するより早いんです。」

「あ?あたしらの足じゃそんなに関係なむぐ!?」

「なのでシオン先輩はアスナ先輩を送ってあげてください♡」

「へぇーそうなんだ、わかった。じゃあまた明日ね。」

 

アカネに言われるまま、3人と俺は別れた。

アカネはなんかニヤニヤしていた。よっぽど楽しかったんだろうな。

なんかしらんがネルさんは暴れていた、あれが子ども体力かな・・・

 

 

「あーーーー楽しかった!」

「ホントに楽しかったなぁ、一瞬だった。」

 

実際、こんな複数人で遊ぶのなんて俺にとっては、なんとも久しぶりに感じる。数カ月ぶりか?

 

「ねーなんで、服選んでくれなかったの?ちょっと傷ついちゃったなアスナちゃんは!」

「・・・だって全部似合ってるなんて言ったら、無責任かなって・・・」

「・・・・・・・・・・・・ふーん」

 

・・・なんだ、この気まずい空気は・・・怖い・・・

 

「・・・本当に?」

「えっ?」

「本当に似合ってた・・・?」

「うん。だってアスナって美人だし、スタイルもいいからどんなシチュエーションでも納得できちゃうんだよ。

色を統一したシンプルな“夏!”って感じのでも笑顔がよく映える。白いワンピースとかすごく綺麗で、立ってるだけでさ。

柄物やパンツでも白い髪とよく馴染んで目が釘付けになるというか、そうそう、髪留めとかしてみても絶対に似合うから────」

 

「も、もういいから、ありがとう!」

「ごめん、今度は言葉選びと美のセンスを磨いてくるよ・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・変な気分になっちゃうから・・・」

隣を歩くアスナは夜景に見とれているのか顔は見えなかった。が、耳が街灯に照らされてか赤く染まっていた。やっぱり髪がサラサラしすぎだ、触りたくなってしまうが、そこまで俺は自惚れてはいないのだ。それをやって許されるほど信頼を得てない。

 

「・・・そっそうだ、カラオケのデュエット、シオンと歌えて嬉しかったんだ!私あの歌すごく好きでね!シオン自分で言うよりずっと上手だったよ!」

「やだなぁアスナの上手さに隠れてただけだよ。」

「シオンの声私大好きだよ!?」

「カラオケ98点がよく言うぜ・・・」

 

 

 

 

 

 

それからしばらくは他愛もない話をして、

夜はひんやりと肌に張り付いて、

誰かのバイクの音は夜の街に響いて、

アスナはずっと美人で、

さりげなく道路側を歩かれていることに気づいたりして、

一番星を見つけて本気ではしゃいだりしているのを見て、

夜のくせに、隣を歩く彼女の光で焼かれるような気分だった。

 

道は標高が高めなところにあって、ミレニアムの校舎の光っている窓を見て、あれはエンジニア部だなとか話した。

 

 

 

なんだか俺にはもったいない幸せだなとか思っていたら、その言葉はアスナの口から唐突に飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「シオンさ、今日の任務のとき嘘吐いたよね」

 

「・・・・・・いつ?」

 

「最後の、犯人捕まえるときに“なにもしてない”って。」

 

「・・・」

 

「なにかしてたよね?」

 

「縄の確認をしててさ、報告するほどのことでもなかったからなんでもないって言ったんだよ。」

 

「私には言えないことなの?」

 

「・・・それは、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんでそう思ったのさ。」

 

「んーなんとなく。

言えないことなら良いんだよ?問い詰めたいわけじゃなくてね!なんていうかな・・・うーん。

 

 

 

 

 

 

シオンが苦しそうだなって思って、私に話して楽になるなら、話していいよ。

 

だって私、シオンが優しくて良い人だって知ってるから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は目を覗くだけで人の記憶を無断で犯せるような奴で

 

 

 

 

 

 

 

ロボ市民の記憶をいじって

 

 

 

 

 

 

都合の良いように積み木を積み直してきただなんて

 

 

 

 

 

 

君の隣にいるやつが

 

 

 

 

 

 

そんな

 

 

 

 

 

他人の記憶を壊してきたやつだなんて

 

 

 

 

 

 

いないほうがいい人間だなんて

 

 

 

 

 

 

消えたいと毎日思ってる人間だなんて

 

 

 

 

 

 

 

笑顔が素敵な素敵な君に

 

 

 

 

 

 

 

そんなこと

 

 

 

 

 

 

言えるわけ無いじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん、言えない。」

 

「そっか、ごめんね。」

 

アスナはなにも悪くないのに謝った。

俺はまるで自分が彼女の笑顔を奪った気になって、身勝手にも心を痛めた。

 

 

ネガティブな思考になりかける

このままではダメだ。

不幸面はやめたはずだ。

俺が今アスナに言うべきなのはなんだ、そうだ、それは

 

 

 

「アスナ、俺はアスナに会えて毎日本当に楽しくてさ。俺のこと優しいっていったけど、本当に優しいのは────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隣を見ると、白い髪は見当たらなくて、アスナは居なかった。

下りの階段、降りていたのは俺だけ。

 

 

アスナは階段の一番上で立ち止まっていた。

 

「アスナ?」

 

アスナは虚ろな目をしていて、柔らかい表情は消え去って、目に見えているものすべてが見覚えのないような顔をしてこちらを見ていた。

階段を急いで駆け上がる。

 

「アスナ!大丈夫!?どこか痛かったりして───」

「ねぇ、シオン。」

 

彼女とは思えないほど薄く開いた口からは、

 

 

 

 

 

 

 

「階段ってどう降りるんだっけ」

 

一瞬理解できないような言葉が流れ出してきた。

 

いや、本当に理解できていないのは彼女の方なのだ。

 

俺は一週間この瞬間のためにアスナと一緒に居たのだ。

彼女がもう苦しまないように、苦しんだことすら気づけないこの症状を何とかするためだけにずっと。

 

「とりあえず階段から離れよう。」

「・・・うん」

 

アスナの手を引いて近くの道脇の段差に座らせる。ベンチを見つけられずこんなところに座らせてしまって本当に申し訳ないが、今の彼女を立たせておくのは不安だった。

 

「頭に触れるよ」

「・・・ん。」

 

そして俺は記憶を一時的に失った彼女の頭に、一週間かかって触れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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記憶の積み木は下から順番に積み上がっていくものだ。

下に行くほど昔の記憶になる、だんだん忘れられていくので全体の積み木の高さは一定に保たれているのだが、その分長い間底の方に君臨する積み木は大事な思い出となる。

 

意識したこと無かったが、重力に従うような動きをするのだ。

この空間はなんなのかもよくわかっていないのに。

 

だがアスナの記憶の積み木は宙に浮いていた。

 

そう、いくつかの積み木がぷわんと宙を舞っていたのだ。

しかも色からして、かなり古い記憶も含まれている。

 

「こんなことになってたのか、予想できるか。」

 

だが、これなら俺の神秘でなんとかできる。なんとかなるという根拠のない、ただ確かな自信があった。

アスナが言うには「なんとなく」というところか。

 

 

「つまり、積み木が離れなければ良いわけだ。」

 

ベタついた神秘を手の中でこねて、伸ばして、そして────

 

 

 

 

 

 

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「──アスナ!アスナ!!」

 

「───────んぅ・・・?」

 

アスナが目を開けると、シオンが自分の顔を覗き込んでいた。

その距離に、アスナの心臓が跳ねる。

 

「えっ!?シオン!?!?!?!なんで!?」

「っ!・・・よかったぁ・・・!!」

 

シオンは安心したのか、目をつぶって体をのけぞらせた、アスナはその隙に少し移動する、今はいつもみたいにくっつくのはなんだか気恥ずかしかった。

 

「アスナが急に何も言わなくなって、あの、依頼の件かと思ったら本当にそうでさ、びっくりしたよ本当に。」

 

シオンの犬耳は力無くぺたりとうなだれていた。

 

「・・・じゃあ、リーダーが言ってたわたしが、その、急に変になるのは・・・?」

「ふふ、それは解決したよ!!

「ええっ!?」

 

 

 

 

 

シオンがしたことは簡単だ、浮いていた積み木を元の場所に戻したあと二度と積み木同士が離れないようにしたのだ。

 

つまり彼の神秘の紐でぐるぐるまきにしたのだ、積み木全体を。

 

もちろん新しくできた積み木が入るスペースはしっかり確保している。

 

まぁ、それをアスナに説明する気はシオンにはない。

 

 

 

 

 

「じゃあ・・・」

「うん!依頼は完了!アスナがその症状で困ることは無くなったんだよ!!!」

 

よくわかっていないアスナとは対照的にシオンはまるで自分のように喜んでいる。

アスナはやっぱりシオンは優しすぎると思った、アスナのために彼を一週間拘束してしまったのに、彼は力が抜けたように地面に寝転んでいる。

 

アスナが理解できたことは、

問題が解決したこと。

シオンが自分のことのように喜んでいること。

 

そして、この時間が終わってしまったことだ。

 

「よかったねアスナ、ホントに任務中にあれが起きたりしなくて良かった・・・。あっ服汚れてるのごめん!」

「・・・うん。」

 

 

 

 

 

 

(明日も会いたいって、言わないと多分、もう会えないかもしれないんだよね)

 

シオンの役目は終わった。()()()()()()()()()()

 

 

(なんでだろう、「また明日ね!」って言えばいいのに)

(シオンが喜んでくれて嬉しいはずなのに)

 

 

 

 

 

 

シオンが喜んでいるのはもしかしたら・・・

 

(私から・・・私のあれを治すっていう仕事から・・・開放されるからなのかも・・しれない)

 

 

 

 

 

 

 

いつものアスナならこんなこと気にしない、元気に飛びついて明日からも会いたいと言うだろう。

しかし、アスナの心臓が、なぜか邪魔をしていた。

シオンが仕事が終わったことを喜んでいると思うと、

さっきまで熱く脈打っていた心臓がきゅっと締まるのだった。

 

嫌われることをこんなに嫌がっていたか自分は?、いや、いつもの自分なら・・・

 

 

「・・・・・・じゃあ帰ろうか、アスナ。もう日が完全に暮れちゃった。」

「・・・うん、そうだね!帰ろうシオン!」

 

(明日も・・・って、言えないよ・・・なんで・・・?)

 

 

いつもの自分ではできることをアスナはできなくなっていた。

シオンはそれをまだ混乱しているのだと思い気づかない。

 

すれ違った二人は何にも気づかないまま帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ俺はここで、バイバイ。」

 

「・・・うん、バイバイ、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一件落着・・・とはいかなかったことをシオンはすぐ知ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 




シオン「指示役はローテーションって言ったけど、今日はアスナになにか起こる予感がしたので会長とユウカに頭下げて交代してもらっているぜ!」



シオンはアスナの記憶自体には一切手を付けていません。
良くも悪くもそんな勇気はあいつにはありません。
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