こんにちは、今回は一万字超えです。
タッ
タッ
タッ
タッ
タッ
ガチャ
「ウタハ〜〜〜〜〜!カシオ借りていい〜〜〜〜!!!!????」
「私はここだよ、シオン」
「ひょあっ、後ろて・・・びっくりさせないでよ
・・・もしかしてパーマかけた?」
「ふふふ、たまにはアフロもいいかと思ってね!」
「いつもの爆発のせいだろウ、その髪型ハ。」
「まったく冷たいなぁカシオは〜少しは乗ってくれてもいいじゃないか」
「カシオもいるじゃん、よかった〜」
「なんのようダ、今日の飯の当番はシオンだゾ」
「違う、ちょっと他の自治区へ行くから誘っただけだよ。」
「どこの自治区ダ?」
「トリニティ。救護騎士団の応援だよ。」
「・・・少し待ってくれシオン。ウタハ、すまないが今日は部活を抜けていいだろウか?」
「そんなに急ぎの用事があったのか、シオンの手伝いかい?」
「いや、シオンは好意で私を誘ってくれているだけダろう。私もただ行きたいだけだ。」
「そうか・・・まあ部員でないものを止める資格はないか・・・
行ってきたらいい。楽しむんだぞ!」
「・・・・・・しょうがなイ、帰ってきたら一箇所だけ体を改造してもいいゾ。」
「いいのか!?本当にいいのかいカシオ!?!?」
「頭以外で頼むゾ」
「あんたら仲いいな、じゃあ俺は先に校門で待ってるからな。」
─────────────
こんにちは!救護騎士団の鷲見セリナです!
今日は夕方にミレニアムから使者の方がいらっしゃるそうです。
ミネ団長によればその方とは「救護協定」・・・?というようなものを結んでいるらしく一ヶ月に一度は会合をしているのだとか。
どうにもその方はトラウマなど精神疾患を患った患者さんに有用な特別な神秘を持っているらしいです。
団長が私達の前に現れるのはずいぶん久しぶりだったので驚きました、居なくなった理由も話してくれませんでしたが・・・。
とにかく、団長は彼を迎えに行き、それを私は遠くから見ていました。
団長と仲が良い人ですから、私は壁を簡単に破壊してしまうような怪力の持ち主だと予想していました。
「トリニティ総合学園へようこそ、海馬シオンさん」
「ありがとうございます、ミネさん。今日はよろしくお願いします。」
しかしやってきた彼はおとなしい性格で、彼と団長が何も破壊する気配がないので少し拍子抜けでした。
ミレニアムの制服に特徴的な犬耳、そして男性。キヴォトスではめったに見ない男の人を前に皆緊張していたようです。
「ではさっそくですが、救護を・・・」
「はい、病棟はどっちに・・・」
そして彼・・・海馬シオンさんはミネ団長と一緒に足早に精神病棟へ入っていきました。
「・・・あれ?あっという間だったね?」
「うん、必要最低限の会話?って感じ・・・」
「団長もやけにそっけないというか、お客さんなんだからもう少し挨拶すればいいのに・・・」
「ミネ団長、最近居ないことが多いし、どうしたんだろうね?」
そうやってみんながひそひそと囁きます。
しかし私にはもうひとり気になる人がいました。
その人はシオンさんについてきたかと思えば、病棟には向かわずにトリニティの住宅街をぼーっと見ていました。シオンさんの付き添い人でしょうか?
「すみません、なにかお困りごとですか?」
「・・・アッすまない、ぼーっとしていたようダ
・・・君ハ・・・。」
「救護騎士団の鷲見セリナです。」
「セリナか、私はカシオ。海馬カシオだ。」
彼の自己紹介は簡素なものでしたが、私は何故かその声に心地いい懐かしさを感じました。
・
・
・
・
・
「セリナ、甘いものは好きカ?」
「ええ、嫌いではないですが・・・」
「そうカ、今私はショートケーキが食べたい気分なんだ、付き合ってくれないカ」
「・・・今午後の4時ですよ、晩御飯が食べられなくなるんじゃないですか」
カシオさんはなんというか・・・すごく距離感が近いです、出会ってすぐなのになぜか私はスイーツを勧められています。
「考えてもみてくレ、あの正面のケーキ屋は5時で閉まってしまう。なにを躊躇することがあル。」
「私は今甘いものを控えるようにしているんです」
「私が奢るゾ?」
「いりません!」
「遅めの3時のおやつってことデ・・・」
「・・・くっ・・・・・・ダメです!!」
「そうカ、誰かと一緒に食べたかったんだがナ・・・」
「・・・」
カシオさんはあまりにも残念そうにしょんぼりと、店の方へ歩いて行きました。
実は私は三時のおやつに・・・マカロンを少し・・・3個ほど食べてしまっています。これ以上は砂糖の取りすぎです。
しかしケーキはいい匂いがしますね、誘惑に負けてしまいそうです・・・
しかし私は救護騎士団です!自分の栄養管理管理くらいしてみせます!
いくら、カシオさんが寂しそうにこっちを振り向いたって、
私は絶対に食べません!
いくら奢りでも
絶対に
「「いただきます」ス」
カチャ
スッ
フワっ
パクっ
「絶品だナ」
「本当にそうですね」
「負けたナ、セリナ」
「はい、負けました・・・」
完全に負けました。私の健康はいったいどうなってしまうのでしょう・・・
・・カシオさんは本当に嬉しそうです。こちらも笑顔になるくらいニコニコしています。
この笑顔のためなら、少しの贅沢もいいかもしれません。
────体重のことは考えないようにします・・・。
「ありがとウ、私のわがままに付き合ってもらって。」
「いえ、私もたまにはこういうのもいいかもしれません。
あと、お金は自分で払います!」
カシオさんは骨格がしっかりしているような、ミレニアムの制服の上からでもわかるガッチリとした体つきをしていました。
見た目はシオンさんにとても似ていますが、銀髪のシオンさんと違って青い髪色のショートヘア、そして犬耳がありません。
あとは声が響くような感じで独特です。
見た目の特徴を羅列してみましたが、あとなにか・・・違和感があるのですが、釈然としません。
「本当に、食生活に気をつけてくださいね。甘いものばかり食べていると肌や体調に影響が出ますからね?」
「・・・そのとおりダな。」
「自制できないのなら私が見張っていてあげましょうか?」
「・・・普通に怖いので遠慮しテおくよ。」
話しているといちごのショートケーキが半分くらいになったので、私は気になっていたことを質問してみることにしました。
「海馬カシオさんは、シオンさんとは兄弟なんですか?」
「兄弟?なぜそう思っタ?」
「名字が一緒だな、と」
「うーン・・・・・・兄弟、まあ兄弟
〝兄弟みたいなもの〟とはどういうことでしょうか?兄弟くらい仲が良い大親友ってことなのでしょうか?
カシオさんはなにやら隠しているように感じます。
「付き合ってもらってなんだが、救護騎士団の仕事とかは大丈夫なのか?」
「はい、そこは大丈夫です。チームでのパトロールは3時までですし、その他の時間はけが人を見つけ次第それぞれ治療するという感じです。」
「ほウ、忙しいなそれは・・・」
「ミネ団長は夜も一人で動くことがあるらしいです。」
「それはさすが団長というカ、シオンに聞いた話だと破壊を司っているような人だと聞いていたんだガ」
「・・・・・・」
「すまなイ、人の先輩を破壊神呼ばわりは酷かっタ。」
「いえ、逆です。夜中に美食研究会が現れたときは・・・ミネ団長の壁を壊す音で目を覚ましたのを思い出してしまって・・・」
「ええ・・・マジカヨ」
そりゃ災難だナ、と返事をして彼はフォークをお皿の上にそっと置きました。
カシオさんはケーキを食べ終わりましたが、私の方はまだ少し残っています。そんな私をカシオさんはじっと見つめてきます。
「・・・あの・・・恥ずかしいのであまりじっとは見ないで欲しいです・・・」
「すまない、人が美味しそうに食べるのを見るのが好きで・・・シオンにもよく気持ち悪いと言わレる。」
そう言って、カシオさんはしょんぼりした顔をします、しかし見るのは止めてくれません。
「カシオさんが楽しいのはいいんです。ただ私はマナーに自信がないですから・・・」
「ふふ、何言ってル。私からすると完璧なマナーだ、それにセリナの丁寧さが伝わってきてとても美人な食べ方だ、憧れルよ。」
「び、美人だなんて──」
「うん、美人ダ。」
急、急です!なんでそんなにスラスラとそういうことが言えるのでしょうか・・・!
顔が赤くなって、うう・・・もっと見られたくない・・・
しかし私が顔を上げた時には、カシオさんは通りの方に目を向けていました。数人の生徒が歩く特になんの変哲もない道です。なのに彼の雰囲気はどこか緊迫したものに変わっていました。
「・・・最近トリニティの犯罪率が増加傾向にあると聞いタ。理由は知らない、調べても出てこなカった。ただ自警団と名乗る者たちが現れ始めているト。」
「確かにそうですが、なにか見つけたんですか?」
「近くで銃声が聞こえるような気がしていたんダ。誰かが争っているのかもしれなイ。」
「それは本当ですか!?それなら今すぐ──」
「実はさっき確信に変ワった。」
カシオさんは先程から見ている街路と飲食店のその先を指さしました。
「・・・なんか壁を何枚もぶち抜く音ガ聞こえるんだヨ。」
「確定ですね!団長です!」
「行くんだナ?」
「はい、救護が必要な方がいるかもしれません。」
店員さんにごちそうさまを伝え、私は駆け出しました。
───────────
銃声が聞こえたときからシオンは察していた。
これからミネが何をするか、すべて察していたのだ。
「シオンさん、今日はありがとうございます。」
「いえ、ミネさんこそ付き添いありがとうございます。」
本人を潰しかねない、癒えないトラウマを抱えた患者、の記憶を部分的に曖昧にする治療、いや、治療ではなく処置と言うべきなそれを終わらせたシオンはミネに午後のティーブレイクに誘われていた。
「知識も経験も俺よりずっと上なミネさんが居てくれるから、安心してその・・・記憶の処置ができます。」
「確かに私のほうが救護の分野に優れている自身はありますが、シオンさんにしかできないことだから頼りにしているのです。」
「俺にしかできない・・・」
「はい。〝心の救護〟というものは、悲しいことにただ寄り添うだけでは達成できないことも多いです。なので初めは懐疑的でしたが、今では、私はあなたのその方法も患者を救う立派な“救護”だと思っています。」
「本人が少しでも救われていたらいいのですが・・・」
罹患者からの申請があってのこととはいえ、人の記憶の積み木を手に取り、自身の神秘で包んで奥の方へ隠してしまう行為はシオンにはとても苦痛だった。
しかしあのミネにここまで言われてしまっては、そんな自分の嫌悪感、あとは神秘を使った副作用の頭痛は無視してしまうのが一番だとも思っていた。
そしてミネも、シオンのそういった自分より他人を優先するところに気づいていた。
「・・・シオンさん、前々から思っていました、あなたには救護の才能があると。
どうでしょう、私の下でさらに深く医療を学んでみませんか!」
「うーんミレニアムとトリニティですからね、距離的にそれは無理があるんじゃ───」
その瞬間、外から銃声が鳴り響く、その1秒後辺りから生徒の声が波のように大きく広がるのもわかった。
シオンの知る、良くも悪くも静かなトリニティとはかけ離れたその音に一瞬からだが止まる。
だが、正面ですっくと立ち上がったミネを見たシオンはこれから何が起こるかすぐに察した。
シオンとミネがティータイムをしていたのはミネが所属しているヨハネ分派の建物、ミネの周りにも同じ分派の生徒たちが友人とおしゃべりしていた。
大事なのはそこが屋内だということである。
「これは・・・銃声ですか!?」
そう、すべてを察したシオンは窓に向かって走った。すでに盾を構えているミネの横を走り抜け、丁寧な装飾が施されたそれを外開きに開け放つ。
「ミネさん!!!窓です!!!窓が空いてますよ!!ここから飛んで───」
「はぁっ!!!」
ドゴォォ
「壁ぇぇぇぇ!」
シオンの行動も虚しく、ミネのシールドバッシュが壁に炸裂し、人が容易に通れる大きさの穴がそこに開いた。
「きゃあっ!」
「なになに!?爆発!?」
「壁に穴が・・・なんだ団長か。」
「平常運転ですわね」
シオンは彼女らの会話からかなりおかしな日常を感じて恐ろしくなった。
「すみませんシオンさん、最優先事項ができました。失礼します。」
「待ってください、俺も行きます!」
さっそうと穴から飛び降りたミネに続いて、シオンは銃撃の方へ向かった。ミネは盾を持っているというのにシオンの身体能力だけでは追いつけそうになかった。
ただ壁を破壊する時の減速でやっと追いついている
・・・・・・なんでこんなことになっているのだろうか。
「は!!」
ドガァァ
「うわあああああああ誰ですかあなた達!?」
「申し訳ございません、このお詫びは必ず!」
「俺からもごめんなさい!!」
「え、あ、ちょっとまっ・・・」
「ふんっ!!」
ガシャア
「いやあああああ前から団長が!」
「失礼します!」
「ごめんなさい!」
「はあっ!!」
ドゴォ
ガラガラガラガラ
「ミネさん!?ホントなんでそんなに壁壊したがるんですか!?積み上げたものぶっ壊すのが好きなんですか!?!?」
「私の到着が遅れた時間だけ、助けが必要な方が苦しむ時間が増えます。それなら一直線に最短で進むのは当然でしょう!!!!」
「クソっもっともらしいこといいやがって!ちょっとかっこいいじゃないですか!!
でも回り道しましょう!ねぇ!」
「いえ、しません!」
「人の話をきいt─────」
・
・
・
・
・
「ちくしょおおおお!!なんで邪魔すんだよ!ちょっと生活のために稼ごうとしただけじゃんかよぉ!!」
午後4時頃、トリニティの繁華街でスケバンと自警団が交戦していた。
付近の飲食店の割れたガラス窓の前に5人で集まっているスケバン達は、一般生徒を一人捕まえていた、盾兼人質である。
「明らかにそのお店で強盗してたじゃないですか!こんな少し暗い時間にやってきて!」
「だあああ!そうこいつ!こいつが全部計画したんだよ!な、ボス!」
「ひぃぃぃぃぃカス共のボスなんて嫌ぁぁぁぁ」
「こいつひどくね?」
「その子は人質でしょうが!」
「誰かぁ・・・助け・・・」
人質を盾に銃を乱射するスケバン、5人グループの中で普通に彼女がリーダーだった。
自警団の方の人数は3人、標的のグループを囲おうとしているが如何せん2人の人数差があった。盗んだ金と人質を持って逃げる、運が良ければ身代金で大儲け。そんな安直な作戦を立てていた彼らだったが、数的有利により「なんかいけんじゃね?」という空気になっていた。
「あははははは!リーダー!このままずらかって・・・」
バゴォォォ
しかし突然の爆音の連続。だんだん近づくそれは明らかにこちらに近づいていた。
「ミネさんジャンプ!ジャンプして飛び越えるのはどうですか!」
「なるほど、たしかにこの距離なら一息で行けますね」
そして空中から蒼いなにかが落下し、道に大きなヒビを入れて眼の前に着地した。
大きな翼と物々しい盾を見た瞬間、スケバン達はなんか、もういろいろと悟った。
「・・・救護が必要なのはあなた達ですね?」
「あっリーダーこれは無理です」
「なんだよ逃げるだけじゃねぇか、正実も来ない間をねらってここまで・・・あっ」
不運にも彼女たちはミレニアムのセミナーとたまたま近くでお茶をしていた救護騎士団団長に遭遇してしまったのだ。
「リーダー!蒼森ミネです!!やばいですってどうすんですかこれぇ!」
「あんなの相手にどう逃げればいいんだよ・・・」
見るとすでに突撃の構えを取っているミネ、このままでは1秒後にはスケバンsは粉微塵になっているだろう。
とっさにリーダーは後ろ手を掴んでいる人質をミネの方に向ける。無害な一般生徒にまで手を出さないことに賭けたのだ。
「っ・・・卑劣な真似を・・・」
「ぎゃははははは卑劣で結構!お前らぁ!動いたらこいつがどうなるかわかってんだろうな?」
「仕方ありません、人質の方含め!全員救護します!」
「は?(リーダー)」
「は?(人質)」
「いえ、ミネさん。その必要はないです!」
いつのまにかスケバンリーダーの後方に居たシオンがそう叫ぶ。右手にショットガンを、左手を後ろに回した彼に、巻き込まれないようにとミネは叫ぶ。
「シオンさんは下がっていて下さい!」
「いいから目をつぶって!」
その瞬間、後ろでに持っていた何かをシオンは投擲した。スケバン達の方に飛んでいくそれを見たミネはとっさに盾で目を隠す。
夕日の逆光でそれを視認し遅れた不良達は何も反応できず、リーダーの足元に落ちたそれを目で追ってしまった。
カラン、と金属の音
「閃光弾!?」
その瞬間、閃光弾特有の爆音がリーダーの耳と脳を貫く。人質の生徒が手から離れた。
「まずいっ!」
「させません!」
自警団の一人が人質の手を取り、安全な位置まで下がる。
閃光弾は彼女を捕らえていたリーダーの後ろで爆発したので、比較的軽症のようだった。
「・・・シオンさん、助かりました。」
「やっちゃってくださいミネさん!!」
「えっちょっとま」
肉の盾を失った不良たちは自分たちを救護(意味深)しようと迫りくる団長の姿を見た。そして戦車、象、・・・とにかく質量のあるものを幻視していた。
「救護っ!!!」
「だからそれのどこが救護なんだy」
ミネは心の底から生徒達の身を案じ、助けになれることに喜びを感じられる、救護騎士団のトップに立つに相応しい人格者である。
だから彼女が救護といえばそれは本当に救護なのだろう。
シオンも彼女を心から尊敬しており、そんな彼女に医療を学ばないかと誘われたのはシオンにとって誇りだった。
だが、ストライクで吹き飛ぶボーリングのピンのよう現場を見て、やはり自分には救護の才能は無いんだろうなとシオンは思い直した。
───────────
「やっぱり!ミネ団長!」
「セリナ、よく来てくれました。自警団の方々の手当をお願いします。」
「はい、わかりました!」
「やア、シオン。ミネ団長といっしょに居たのか。」
「カシオ!なんでここに!?」
騒動を聞いてやってきたカシオとセリナ。しかし到着した頃には嵐が過ぎ去った後のようだった。
不良たちがぐるぐるに縛られ、道の脇に放置されている。
その光景を見てカシオも何があったのか察した。
「・・・何がアッたか察したよ」
「ミネさんが強すぎて被害は殆どでなかったんだよ。」
「いえ、シオンさんの援護があってです。自警団の皆様も人質の方の保護をありがとうございました。」
ミネはそう言って頭を下げる。自警団とシオンはいえいえと頭を下げる。人質の生徒は閃光弾が無かった未来を想像して震える。
平和な世界がそこには在った。
「シオン・・・さん?もあの閃光弾、タイミングも完璧で・・・スズミ先輩みたいでかっこよかったです!」
「ふふ、あの『走る閃光弾』みたいって言われると嬉しいなぁ」
遠くに居たスズミはなんとなく強烈な羞恥に襲われた。
「さて、私は彼らを正義実現委員会に差し出してきます。」
「壁の修理代も弁償させましょうね、よくもやってくれたな君たち」
「壁は壊してねぇよあたしらの罪状増やそうとすんな!」
「ああ、こってり絞られるんだろうなぁ」
「諦めようぜ、私達は終わりだ。」
「クソっこんなところで・・・」
そこでリーダーはシオンと呼ばれた男が自分の目を覗き込んでいることに気づいた。
底しれない目だった。パッと見光って見えるがよく見たら何も映っていないようにも見えてくる。まるで、心を値踏みされているような、すべてを見透かしてくる目だった。
「・・・カシオ、人質になっていた人の服に手榴弾が引っかかってる。外す時気を付けて。」
「っ!?なんで知って・・・」
それは事故だった。とっさに投げようとした手榴弾のピンがどこかの繊維に引っかかったのだ。リーダー以外、ましては人質の近くに居ないシオンが知っているはずのない情報だった。
本当に目の前の男が心を読んできたように感じ、リーダーは戦慄した。
「これですか?」
セリナはシオンの言った手榴弾を引っ張る。もちろんピンは引っかかったままだった。
ピンッ
「あっ」
「あっごめんもっと早く言うべきだったごめん」
「セリナ!人が居ないところへ投げなさい!」
「は、はいっ!」
ミネの指示通りに人が居ないエリアに手榴弾を投げるセリナ、しかしレバーを離してからそれなりに時間が経ってしまっていた。
爆発音がした瞬間、セリナはまだ破片のダメージを受ける半径15メートル以内に居た。
「っ・・・!」
しかし爆風も、飛び散った破片による衝撃も感じない。セリナが目を開くと、そこにはカシオが腕を広げて立っていた。
自分は守られたのだとセリナは理解した。
「っ・・・カシオさん!大丈夫ですか!?お怪我は・・・!」
「無い、大丈夫ダ。破片が少し当たったが。」
「大丈夫じゃないじゃないですか!傷があるか見せて下さい。」
「あっちょっと・・・」
いくらキヴォトス人でもこの距離ならかすり傷くらいは負っているはず。
カシオの腕を強めに引っ張るセリナ、彼の傷口を確かめようと破れた服の中の肌を確認しようとした、が。
「・・・・・・えっ?」
服の中にあったのは人肌ではなく、金属だった。随分丈夫らしい、表面が汚れただけで傷もついていないように見えた。
「だから言ったろウ。怪我は無いって。」
予想していなかったことにセリナは驚き、カシオの顔を見上げる。彼は優しげな目で見下ろしていた。
思えば、彼の手を今も握っているが体温を感じない、脈も無いようだった。
そして初めに会ったときから感じていた違和感の正体に気づいた。
ヘイローが無いのだ、頭の上に。
それは何を意味するのか、答えは一つだった。
「──カシオさんは、生徒ではなかったんですね。」
「そうだガ」
「・・・なぜ話してくれなかったんですか、ずっと他校の先輩だと思っていたんですよ?」
「気づかなかったのか!?このメカメカしい語尾デ!?」
まじか、とか、驚かないでくれよとかカシオは言い、手首の裏のスイッチを弄り始めた、1秒後には彼の腕が人のものからオートマタのものに変化した。
「・・・ええ!?!?これは、つまり・・・!?」
「ああ、私は生徒じゃなイ。ただのオートマタだヨ。顔以外は見た目も全部ホログラムだ。ヘイローも出そうと思えば出せる。」
「でも、ケーキを食べて・・・」
「そこは特殊でネ、食べ物をエネルギーに変換できるんダ。・・・ミレニアムの技術だと思ってくレ。いやー味覚ってのは素晴らしいものダ。」
セリナはここで彼に関するなぞの一つが解けた。
「シオンとは兄弟〝のようなもの”」という発言だ。シオンは人間でカシオは機械、ただそれだけ。同じ母親から生まれていないという意味だったのだ。
「あと他校の先輩ではない。私は13〜103歳(推定)だから。」
「範囲が広すぎませんか!?」
「うン、だからもう歳とか関係ないのダ。」
振れ幅のデカすぎる年齢カミングアウトに、セリナは身近に感じていた彼が急に遠くに行ってしまったような気分になった。
「私、食習慣のことをカシオさんに注意しましたが・・・随分的外れだったんですね」
カシオとセリナはついさっき会ったばかりだが、彼がいい人なのはなんとなく理解していた。実際にはいい人ではなくいい機械だったが。
しかしミレニアムの技術力の下で初めて彼は安心して生活できるのだ、とも思う。
セリナが身につけた健康に関する知識はこの男には何一つ通用しないのだ。
このときにすでに、セリナは「自分の能力では彼が怪我をしたときに助けられない」ということに気づいていた、セリナがロボットにこんな感情を抱くのは初めてのことでもあった。
「いや、食生活は大事なんだ。糖分だけじゃ足りないからナ。炭水化物が一番必要だ、注意しておくよ。」
「・・・はい、そうしてください」
「・・・元気がないガ大丈夫か?私がいくら食べても太らないのがそんなに羨まシい?」
「それは本当にずるいと思います、不平等です!」
なかなか複雑な感情になったセリナだったが、体重を気にしなくて良いこのカシオとか言うロボットにお茶に誘われても、二度とそれには乗らないと決心した。
────────────
「ミネさん、最近トリニティで何があったんですか?」
手榴弾の爆発した後に石畳に残った黒い跡を見ながら、シオンは横に立っているミネにそう質問した。
「何があった、とは?」
「どうにも俺の知っているトリニティと違うように思えて。自警団が必要なほど治安が悪化しているのもありますし、ミレニアムから来た俺を見る生徒の目が、いつにもまして保守的なものを感じると言うか・・・」
トリニティは元々そういう場所なのは解っていた。清楚、上品に見せかけて実際は陰湿、そんな学園なのだトリニティは。ゲヘナへの対抗意識だけならまだしも、派閥別に揚げ足を取り合ったり、個人に対するいじめがそこそこあったり。
しかし昔は治安もここまで悪くなかったと思うし、華々しい空気も消えてしまったようだった。
なにより一分派のトップ、そして救護騎士団の長がわざわざミレニアムの個人を迎えに来るのは不自然だった。俺は政治的にもなんの価値もないし、ミレニアムの代表としてここに来ているわけでもない。
「・・・やっぱりエデン条約に対する反感ですかね?」
「・・・・・・いえ、それも確かに要因の一つですが、一週間ほど前の事件の存在が大きいでしょう。」
「事件?」
「・・・実はティーパーティの百合園セイアさんが事故に遭い、現在入院中なのです。」
・・・は?
「セイアが?」
「その反応を見るにご存じでなかったようですね、その事件があってからトリニティは少し不安定に─────」
「ミネさん、俺の目を見て下さい。」
とっさにシオンの方を向くミネと視線を合わせ、彼女の記憶にシオンは侵入した。
■■■■■■■■■■■■■■
部屋に突入した時、そこはひどい有様でした。
散らかされた家具に、破壊された室内の装飾。その奥に倒れているセイア様のヘイローは消えかけていました。
「・・・セイア様!セイア様!!」
「・・・」
容態は深刻、今すぐにでも治療を始めたい、救護騎士団、ティーパーティーに連絡を・・・
・・・ティーパーティーのホストを誰にも気づかれずに襲撃・・・そんなことが果たして可能なのでしょうか?
外部の者が?
いえ、これは・・・
──────────
「セイアちゃんの・・・
遺体・・・?
なに、なにいってるの?・・・ねぇ?そんなわけ・・・!」
「ミカさん!落ち着いて下さい!お願いですから・・・」
──────
「公には『入院』という形で公表します。」
「・・・ナギサ様、本当にそれでいいのですか?」
「この時期にホストの訃報を流して余計な混乱を起こしたくはありません。」
「・・・そこまでするのですか、あなたは・・・」
────
セイア様の体は順調に回復に向かっていますが、なぜか起きる気配がありません。
長い明晰夢を見ているのかもしれません、彼女がこのまま動かないのであれば、私がそばで警護をしているのが一番安全でしょう。
セリナやハナエ、救護騎士団の仲間たちには申し訳ないですが、今の状況に合わせて次第に姿をくらませることになりそうです。
仲間たちの、救護の精神を信じましょう。
■■■■■■■■■■■■■
「・・・ンさん!シオンさん!返事をして下さい!!」
「・・・は?なんで・・・こんなことに」
「意識が・・・!かくなる上は!」
ブンッ
バッチィィィィィィィン
「いっだあああああああああああああああ!!!!!!」
「シオンさん!私の指は何本に見えますか?!」
「2本でしょ!?なんでビンタしてピースしてくるんですか!?!?」
「あなたが急に意思疎通不可になったからでしょう!」
「それは、その、・・・ううううううううあああ・・・!」
シオンは自分の右頬を抑えて蹲る。痛みもあったが、今の気持ちをとにかく処理しきれていなかったのだ。
「体調が悪いなら私が担ぎます、正直に言って下さい。」
「・・・大丈夫、大丈夫ですから・・・」
遺体という単語への恐怖と、生きていてくれたことへの安堵、起きないことへの不安。自分の不甲斐なさ。もうむちゃくちゃだった。
「・・・しばらく、このままでいさせてください・・・」
自分の心がわからなくなっていたが、とにかくシオンは溢れそうな涙を見られないように下を向いていたかった。
─────────────
「今日はあなたと共に救護ができてよかったです。」
「こちらこそ、少しでも役に立ててたら嬉しいです。また今度ウェーブキャットの話をしましょう。」
「カシオさんも、お体に気をつけて下さいね」
「セリナも、無理して体壊すなヨ。」
二人に見送られ、シオンとカシオはミレニアムに向かって帰り始めた。後ろを向くとセリナがまだ手を振っている。それを見たカシオも大きく手を振り返した。
これから自治区の中の駅に向かい、寮の部屋に帰るまで二時間ほどかかるだろう。
「・・・カシオ。久しぶりのトリニティはどうだった?」
「楽しかっタよ。名前を覚えていたスイーツ屋に行けたシ、新しい友だちもできた。」
「そっか・・・」
「シオン、なにがあったかそろそろ教えてくれないカ」
「・・・セイアが、殺されかけたらしい。」
「!?」
シオンはカシオにミネ団長の記憶を細かく話した。
「・・・そんなことが起こっていたなんテ、怖いな。生きててよかった。」
「本当に、でも結局予知夢通りになっちゃったなぁ」
「・・・」
「ティーパーティに会いたいよ、直接。」
「それハ無理だろう。ただでさえヒリついているこの時期に、自治区の最高権力者に、なんの大義名分もなしに会いに行けるわけなイ。」
「・・・知ってるよ、それでも・・・」
「それに向こうハ誰一人、『海馬シオン』を覚えてないだろうシな。」
「・・・そうだな。」
沈みゆく夕日に照らされて、血のつながっていない兄弟が2人、無力感を背に負って歩いていた。
ミネ「それはモモフレンズのウェーブキャットではありませんか!?」
シオン「ふははいいでしょうコレ!友達がプレゼントしてくれたんですよ!」
ミネ「か、かわいい・・・」
シオン「ミネさんもグッズを集めているんですか?」
ミネ「・・・集めたいと思うこともあります、しかし、私には似合わないんじゃないかと、思ってしまうというか・・・」
シオン「ミネさんがかわいいものなんか集めた日には「美人✕かわいい」で皆の目が幸せになっちゃうんじゃないですかね」
ミネ「!?」