キヴォトスの記憶操作系男子   作:橘ちば

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コユキのバニー姿好き





8.大人が来たらしい

 

 

 

 

 

 

 

「あー暇、ひまひまひま。なにかぁ、娯楽を私に・・・」

 

 反省部屋の中、コユキはクッションに顔を埋めて呻いていた。

 ノア先輩やシオン先輩に裏切られこの部屋に閉じ込められて早くも3週間か、セミナーの情報を保持しているからと矯正所送りにならなかっただけなので実質投獄である。

 

 最初の方はよかった。ユウカ先輩が持ってきたゲーム開発部の試作は面白かったし、魔王ユウカをボコしたときにはテンションが最高潮だった。

 しかしあまりにも長く部屋から出ないとだんだん全てのものに飽きてくる。

 ゲームや漫画のきまぐれな差し入れを待つ以外は本当に寝ることしかできないのだ。

 

 抜け出してもC&Cの怖い先輩たちに捕まってこっぴどく絞られるのが今までの結末だった。

 

「・・・だあああ! 考えても何も始まらないし、逃げ出しちゃおう、こんなところ!」

 

 三日前も同じことをしてノア先輩にまじで怖い説教をくらったばかりだったが、今度はうまくいくかもしれない。

 そう、信じるべきは奇跡と幸運である。

 運ゲーほど当たった時の脳汁はすごいのだ。

 そうときまれば────

 

 

「・・・コユキ、抜け出そうとか考えてないよな?」

 

「うわぁっびっくりした! ・・・って裏切りのシオン先輩じゃないですか、毎日暇してるんですね」

 

「暇なのはどっちだよ囚人め」

 

 

 反省部屋の扉を開けて入ってきたのはシオン先輩だった。手にはビニール袋を持っていて、なにかの差し入れのようだった。

 なんだかんだ先輩は私がここに入れられてから毎日のように会いに来てくれていた。

 

 

「で? 今日の差し入れはなんですか?」

 

「図々しいやつだな、ここは『反省部屋』だぞ、反省の色を見せろよ」

 

「にははは、反省してるに決まってるじゃないですかぁ! もう金輪際悪さなんてしません! 元々してないですし!」

 

 

 そう、別に悪いことは何もしてないのだ。ちょっっとだけお金を借りてたくさん増やそうとしただけなのに・・・

 

 なんですかシオン先輩その憐れむような目は

 

 

「ほらよ、今日はピザまんだ。食え」

 

「わーい」

 

 

 ビニール袋から取り出された紙で包まれたそれを両手で受け取る。開くと顔に湯気があたるのを感じた。

 大きく口を開けて噛みつき、チーズを思いっきり伸ばす。トマトソースの酸味が心地良い。さすがの美味しさにお腹も心も温まる気がした。

 

「美味しい?」

「にはっ最高です!!」

「ふふ、そうか」

 

 しばらく私と、笑顔のシオン先輩はピザまんを無言で食べ続けた。

 

 

「ところで、そろそろゲームには飽きてきたか?」

 

「よくわかりましたね、そうなんですよ先輩。もうやり尽くしちゃったって感じなんですよ! 

 ・・・ここは先輩が新しいゲーム機を差し入れしてくれればな〜と思うんですよね」

 

「コユキが真っ当にバイトして買えばな〜と俺も思うよ」

 

「何言ってるんですか、捕まってるんですよ私」

 

「真っ当に稼ごうとしなかったから捕まったんだろうがよ!」

 

 

 シオン先輩はそう怒りながらビニール袋の奥から何やら大きな箱を取り出しました。

 

 

「人生ゲームですか!?」

 

「そう、ヒマリさんにもらったものが部屋にあったから持ってきた。そんなに使ってないから綺麗だと思うぞ」

 

「先輩のくせにいいじゃないですか〜こういうの私好きですよ! さっそくプレイしましょう!」

 

「乗り気じゃんコユキ。良かったよ、レトロゲームは嫌いだって言われたらどうしようかと思ってた」

 

 

 マップを広げ、建物を立て、自分たちのコマを用意する。この世界では銀行役をやれるのも嬉しい、通貨を支配している気分になれる。

 そしてこのルーレットを回す瞬間! にははははっ! ワクワクハラハラして楽しい! 

 

 

「4マスかぁ・・・なになに『フリーターになる』」

 

「コユキが働いてる!? どんな世界線だよ・・・でもフリーターなのは想像しやすいな、ほれほれ職業カードW」

 

「うるさいですよ先輩」

 

「俺は10マスね・・・『不良に集られる、5000円失う』・・・あれ、職業選択エリア通り越した?」

 

「先輩ニートじゃないですかwwww」

 

「ま、まあゲームだし、職業選択マスは中間にもあるし・・・」

 

「ほれほれ職業カードwwwあっ“無職”ってのは無いですね〜にはっははは!」

 

「にはには笑いやがって! ここから成り上がって見下ろしてやるからな黒崎!」

 

 

 先輩はちょっと強めに自分のコマをスリにあうマスに置いた。

 にはっwww・・・カツアゲにあってる先輩を想像しただけで面白くてダメですねコレ

 

 

「・・・なんか最近治安が少しずつ悪くなってるのは知ってるか?」

 

「えっ全然知りませんけど?」

 

「でしょうね」

 

 

 カツアゲにあったお陰で先輩はなにか話題を思いついたらしい。

 

 

「ミレニアムだけじゃなくて、キヴォトス全体の犯罪率が上昇中らしい。こんなことは初めてだよ」

 

「キヴォトス全体・・・じゃあ連邦生徒会が皆でサボってるんじゃないですか、にははは!」

 

「そうだよな、やっぱり何かあったんじゃないかなってユウカも言ってた」

 

 

 えっ・・・私冗談のつもりだったんですけど・・・

 私の知らない間に外で面白いことが起きているようだ。

 まあ、 私はここから出れないんですけどね! にはははははは! 

 

 

「まあ、なんとかなるでしょう! 

 最悪なんとかならなくても違法カジノとか増えていいかもしれませんし!」

 

「・・・まじで自分の身のために犯罪はやめとけよ・・・」

 

「さーて次の目は…7! 

 ・・・・・・『FXを始める』ですね。投資で勝ち組の人生がスタートですよ!」

 

「こんなマス作った開発陣キショすぎだろ」

 

「ふむふむ、投資のマスでルーレットの10以上を当てればお金がもらえる、9以下なら支払い・・・」

 

 

 

 

 

 この日の人生ゲームは結局シオン先輩が勝ちました。私は2兆円の借金を抱えてゴールしました。泣いていいですか。

 

 なんだかんだシオン先輩とだらだらして、美味しいものを食べて。私にとっては外の世界なんかどうでもよくなっちゃうような、そんな日でした。

 

 だけど私達にとってただの日常だった今日は、キヴォトスの未来への舵が大きく切られた日だったのです。

 ただの生徒には今日この日に「連邦生徒会長」が失踪しただなんて知ることなどできませんから。ただ、いつものように少しの異変が起きて、偉い人がなんとかしてくれる。私達の青春が消えることは無い。皆きっとそう思っていたんです。

 

 ・・・実際なんとかなってしまったのですが、そのあまりにも眩しい「大人」がやってくるまでの、あの意味のわからない不安は忘れられないような気がしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「今日も来たよーコユキ! 差し入れは絶対零度アイスだ、食え」

 

「にはは、いただきたくない名前が聞こえた気がしますが食べますね! あっ」

 

「・・・コユキ?」

 

「あっ痛い、痛い痛い頭がキーンとかいう次元じゃないですコレああああっ!!!!」

 

「エイミは普通に美味しそうに食べてたぞ、また欲しいってねだられたし」

 

「死ぬっいや死にます、そもそも“絶対零度”って言葉がアホっぽい上にただの殺人アイスですよ!!!」

 

「そんなに? じゃあ俺もあっあっあっあっ」

 

「助けて、先輩っ助けて下さい!」

 

「コユキっ、医務室に電話っ早く!」

 

「バカァ! このバカ先輩!」

 

 

 

 

 ノア先輩の前に2人で正座して説教されている時、私は死にたいってこういうことかと理解しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「にははははっは〜〜〜!!!! 先輩に勝ったあああ!!」

 

「コユキが公務員で所帯持ちで借金もなしにゴール・・・こんなに嬉しいことはないよ・・・」

 

「なんで人生ゲームで泣いてるんですか」

 

「俺は芸人として大成せずに終わりそうだ。悲しい」

 

「・・・うーん、勝ったのは嬉しいですけど、面白みのない人生だったので先輩の方が少しうらやましいですよ?」

 

「・・・コユキ・・・!」

 

「もっと、ぱーっといろんなイベントを経験したかったです」

 

「そうか・・・

 

 でも今回のゲームのコユキは毎日働いて立派だったから面白みがないとか言わないで」

 

「そういうところがつまんないんですよシオン先輩」

 

 

 

 

 

 

 

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「今日の差し入れはシュークリームだ!」

 

「にははっありがとうございます! 今日は何で遊びま───」

 

「ごめん、最近忙しくてな、治安も悪いと副次的な問題も多いから、また明日な!」

 

「えっ・・・あっそうですか、・・・どうか、せいぜい私の分も頑張ってくださいね・・・!」

 

「腹立つわぁ」

 

 

 

 

 

 

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「コユキ、元気にしてる?」

 

「先輩、今日はなにもないんですか?」

 

「ああ、買い出しに行けなくてな、じゃあまた来るよ」

 

「あっ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

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「コユキ、体調はどうだい?」

 

「先輩遅い・・・って! 隈がすごいことになってますよ!!」

 

「大丈夫大丈夫、みんなこうだから」

 

「本当ですか!? ガチで心配なので一回休みましょ、ね?」

 

「・・・それは無理だなぁ、みんな頑張ってるし、役立たずの俺が頑張らなかったら余計に悲惨だろ?」

 

「役立たずって・・・じゃあなんで毎日私の部屋に来るんですか!?」

 

 

 先輩は驚いたような顔の後、さも当たり前のように言いました。

 

 

「・・・・・・だって、一人は寂しいだろ?」

 

「・・・なにカッコつけてるんですか、急に変なこと言わないでくださいよ」

 

「こんな狭いところに一人でいたら辛くないか? じゃあ、また明日な」

 

 

 

 シオン先輩の、時々見せるあの寂しそうな、冷たいのに優しさで溢れてるような表情。あれが私は苦手だった。

 あの顔をされると、いつもみたいにふざけれなくなってしまうから。

 ・・・それに少しだけ、横顔をかっこいいと思ってしまうのもなんだかムカつくから。

 

 

 

 

 

 

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「明日も来るって言ったくせに」

 

「・・・バカ、来ないじゃないですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・はいはいそうです、寂しいですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ここ最近のセミナーはまさに不夜城だった。

 なぜか交通やインフラなどの想定外の問題がオンパレードなのだ。最初の頃はまだ事故が増えたりするだけでセミナーでも対処できた。しかし浄水場や発電所がとなるとそれは連邦生徒会の管轄である。セミナーはマニュアルもないものを手探りで解決しようとしているため仕事の効率も普段と比べ格段に悪かった。

 

 

「海馬シオン戻りました〜〜」

 

「おかえりなさい先輩」

「遅かったですね」

「シオンさんサボって寝てたんじゃないですか?」

「・・・電車が全然動かなかったんだよ、いよいよこれまずいんじゃない?」

 

 最近、雑務のシオンは自治区内を移動する必要のある仕事をしていた。元々外回りはしていたとはいえ、いつもは校舎内の教室や部室を回るだけで良かったので普通に異常事態である。

 現在時刻は午後8時、すでに日は落ちきっていた。

 

「あとこれ、睡魔と戦闘中のお前らへ大量のエナドリだ、飲んで働け!」

 

「やったぁ、はは、またベッドが遠のきましたよ、ははははは!!!」

 

「私本当は眠くなかったのかもしれません!」

 

「カフェイン脳にキマる」

 

「寿命と引き換えに絶大な持続力を引き出してるこの感覚、かなり好きですよ」

 

「俺が配っていくから座ってなさい君たち」

 

 彼らは皆限界だった。

 

「あの〜雑務先輩、私の分がないんですけどぉ、もしかして人数分用意もできないんですかぁ〜?」

 

「うるせーぞ雑務後輩。後輩は炭酸がダメだったろ、コーヒーも買ってきたからな、ほれ」

 

「あっ・・・あの、アリガトウゴザイマス。・・・これって私のためn────」

 

「ユウカとノアもコーヒーでいい?」

 

「・・・」

 

「ありがとうございます、シオンさん」

 

「・・・あー今はエナジードリンクが欲しいです」

 

「わかった、ユウカはエナドリね」

 

 

 2人にカゴから飲み物を渡す。ユウカは一気飲みしてまた机に向かいだした。

 なんか雑務後輩が睨んでくる気がするが、気のせいだろう。あいつ夜9時には眠くなっちゃうらしいから徹夜続きで限界なんだろうさ。

 

 

「・・・シオンさん、その肩の傷はどうしたのですか?」

 

「これ? ヘルメット団の抗争に巻き込まれたんだよ、いやー暗いし書類守らないとだしで大変だった」

 

「こんなに治安が悪いミレニアムは初めてですね・・・」

 

 

 インフラもやばいがもっとやばいのは犯罪件数の増加だった。連邦生徒会と同時にヴァルキューレもおかしくなったのか知らないがとにかくスケバンが多い多い。

 C&Cも日夜大忙しで、捕まえたスケバンの生徒を見せしめにしたりと策を講じてくれているらしいが、効果はあまりないらしい。

 アスナも任務が疲れると珍しくぼやいていた。

 

 

 さて、まだまだ仕事は終わらない。机には書類が積もっているし、問題報告と苦情の通知は鳴り止まない。

 

「・・・ノア、今日は3時までには終わらせたいね」

 

「ここにいる皆で休まずに頑張ったらそれくらいには寝れるかもしれませんね♪」

 

 ふふっと笑うノアだったが、明らかに語尾の音符のキレが悪かった。ユウカや雑務後輩もそうだが、同僚の隈は見てられない辛さがある。

 頑張ろう、今日も。

 すぐにメールの返信をした後にAの書類の────

 

 

 

 

 

「先輩方まずいです!!! 風力発電所が────」

 

 

 

 

ガタン

 

 

 

 

 

「うわっ」

「眩しっ」

 

 

 その瞬間、シオンのタブレットの明かりが目に焼き付く。眩しさに思わず目をつむり、明るさ設定がバグったのかと錯覚した。

 しかし目を開けるとそこは暗闇だった。タブレットが明るくなったのではなく、その周囲が暗くなっただけだった。

 

 つまりただの停電である。

 

「予備電源作動 予備電源作動」

 

 5秒後には明るさが戻る室内。停電時の姿勢のまま、セミナーの皆の動きが完全に止まっていた。

 

「───発電所が止まりそうですって言おうとしてました」

 

 外から帰ってきた一年生はそれをなんとか言い足した。彼女は間に合わなかった絶望と連絡すら届かない回線の状況への悲しみを湛えて立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ねぇ見てよ、外」

 

「わぁぁ・・・ミレニアムがこんなに真っ暗なの初めて見た」

 

「本物の暗闇ってああいうのを指すんだね」

 

「雑務先輩、停電って私生まれて初めてです! なんだかワクワクしますね!」

 

「雑務後輩、お前はなんでそんなピュアピュアなんだ、さっきまでメスガキチックだったろ」

 

「ユウカちゃん見て下さい、いつもより星がよく見えますよ」

 

「わぁ、本当に綺麗・・・それどころじゃないでしょ!?

 

 ユウカは咆哮した。

 

「どうするのよこれ!! 予備電源がどの建物にもあるわけないし! これからどうしろって・・・」

 

 もう皆疲れていた。寝たかった。なのにこれから停電の復旧作業まで増えると思うと全員が咆哮したかったのだ。

 被害規模を測定して、直接発電所と変電所まで赴いて原因を解明して、住民たちに現状を報告して、・・・それのすべてをセミナーが指揮しなければならない。セミナーはミレニアムの生徒会だ、連邦生徒会が動かない今、自分達ですべてのトラブルをなんとかするしかなかった。

 

 しかし部屋の中を見てみると寝落ちしてしまった者もいる。人の体には限界があるのだ、これ以上やっても疲労を溜めるばかり、人手が足りなすぎる。

 

(いよいよコユキを連れてきたほうがいいかもしれない)

 

 シオンはとうとうそう思い始めた。

 

 

 

「ここにいる全員、今すぐ帰りなさい」

 

 しかしそこに一人の声が響いた。全員が声の主の方向、扉の方へ顔を向ける。

 

 人手という概念を覆せる個人、〝全知〟のヒマリと対を成すミレニアムの超人。

 生徒会長、調月リオがそこに立っていた。

 

「会長、帰りなさいってどういうことですか・・・!?」

 

「言葉通りの意味よ、ユウカ。あとは私が処理するから全員帰宅しなさいと言っているの」

 

「一人で、ですか?」

 

「そうよ、何度も言わせないで」

 

 全員が絶句していたが、「彼女が調月リオであること」が、一人でこの状況を打開できる根拠になっていた。

 

「今の疲労困憊のあなた達より、私だけで動いたほうが効率的でしょう」

 

「・・・」

 

「今夜は私がなんとかするから、明日に備えて十分な睡眠を取りなさい。これは会長命令よ」

 

 その後、具体的な案を出してくれいないと納得できないと講義したのち、集団前提の計画を説明されたユウカ含め、全員が会長に従うことになった。

 自分たちがしようとしていたことを一人でしてしまおうとする彼女への畏敬と信頼の念と、単純に強すぎる睡魔に全員心を委ねたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「連邦生徒会に直接事情を聞きに行くわよ!」

 

「ユウカちゃんが単身でですか?」

 

「そうよ! もうこんな状況うんざり・・・いい加減連邦生徒会長本人にに何が起こったのか説明してもらうんだから!」

 

 

 遠くからそれを聞いていたが、案外それはいい案なのかもしれないとシオンは思った。他の生徒ならともかく「セミナーの会計」ならさすがに門前払いはされないだろう。

 

 シオンは自分の能力の無さが悔しかった。高い計算能力、完全記憶能力、それらのような組織の役にたてる力が自分にはない。本当になぜ会長は自分をセミナーに入れたのか、未だに理解できない。

 ・・・事務能力を鍛えよう、それくらいしかできないんだから。

 

 

 

(あっコユキ大丈夫かな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・コユキー停電大丈夫だったk」

 

「シオンぜんぱ〜い!! 遅すぎますよ〜なんで来てくれなかったんですかぁ〜!!!」

 

「くっつくな! 鼻水とかいろいろヤバい!!」

 

 

 反省部屋の扉を開けると、コユキが一直線に飛び出してきた。涙と鼻水のせいでセリフの濁点が増えていた。

 

 

「…そんなに停電が怖かったか?」

 

「そうですよぉ! 先輩約束守らないし急に真っ暗になるし、何が起きてるんですか、ねぇ!」

 

「俺も知らないよ、ほんとになんでこんなことになってるのやら・・・」

 

 

 部屋の中を見ると、ボードゲーム、テレビゲームが準備されていた。コユキは今日ずっと俺を待っていたのかもしれない。

 一人のほうが生きやすい奴なんだろうとは思っていたが、以外にも寂しがりやなのか? とシオンは思った。

 

 

「・・・もしかして一人でボードゲームしてたの?」

 

「は、はぁ!? そんなわけ私はずっt・・・そうですよ、一人でずっと暇をつぶしてたんですよにはははははは!!」

 

 

 悲しき者たち。

「俺を待っててくれたのか」「先輩が来るのを楽しみに待ってた」それを言うのはちょっと恥ずかしいと思ってしまった彼らだった。

 

 

「それは・・・なかなかに虚しいな。元気出せよ、本気で反省してるならいつでもノア達に釈放を交渉してやんよ」

 

「うう、反省してますよもちろん、もう迷惑かけたくないです、なので次はもっとうまくやります」

 

「なんで釈放後の再犯の予告をしてくんだよ!」

 

 

 シオンは余ったエナドリをコユキに渡す。自身も缶コーヒーのプルタブに指をかけ、部屋の中の座椅子に座った。

 

 

「これ飲んでいいですか? にはは、いただきます!」

 

「・・・ああ、どうぞ」

 

「・・・プハッ、おいしい」

 

「・・・そっか、よかった」

 

 シオンは座椅子の上で段々背中を丸めていた。声量と反応速度も段々遅くなって・・・

 

 

「─────シオン先輩もしかして眠くなってませんか?」

 

「・・・うん、すぐ帰るよ」

 

「首がコックリコックリってなってますよ」

 

「・・・ん」

 

「せんぱ〜い、お〜〜い!!!」

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

 ZZZ

 

 

 

「・・・ホントに寝たんですか!?」

 

 シオンはとうとう寝てしまったらしい。無防備に座った姿勢で静かに寝息を立てている。

 

 コユキは先輩の寝顔が見れることに、謎の愉悦を感じていた。もっとよくみたいと顔を覗き込むと、見慣れない隈が目の下に浮き出ている。もったいないな、と思いながらも、謎の色気を感じるのも事実だった。

 もっと近くで、この人を見たい。

 胸元を触ろうとするも、やっぱりやめて彼の右手を持ち上げてみる。先輩の右手と自分の左手を、手を繋ぐように指を絡ませる。なんだか悪いことをしているようでドキドキしていた。

 そのまま隣りに座ってみる。自分のほうが体温が高いのか、外に出ていたせいか、先輩は少しひんやりとしていた。頭を、肩に乗せてみようか。

 

 

 

 

 

 

 

(何やってるんだ私は!!!!)

 

 コユキは飛び退く、飛び退きその勢いのままマッキーペンをペン立てから持って来た。

 ムカつく、とにかく今はムカつくからいたずら書きをしてやろう。

 そう、まずは瞼の上に目を描いて・・・

 

 

「・・・コユキィ」

 

「はいいいいい何もしてませんよまだァ!!」

 

「・・・・・・消費者金融はやめとけ」

 

「さすがにひどくないですか!!!(泣)」

 

 

 バレたと思って手を跳ね上げるコユキ、だがシオンは全然起きていなかった。

 それにしても涙が出そうだった。寝言らしいが、なんて寝言だ。

 

 

「・・・コユキ」

 

「なんですか、今先輩の目を描き足すので忙しいんですよ!」

 

「・・・・・・コユキには死んでほしくないなぁ」

 

 

 

「・・・は?」

 

「・・・自分を大切にしてくれよ」

 

 

 

 

「・・・急に意味がわからないこと言わないでくださいよ、どんな夢見てるんですか」

 

 

 

 

 

 この人はこういうところがズルいのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ムギュッ

 

 

「ひゃんっ」

 

 シオンの犬耳を鷲掴みにするコユキ、17歳とは思えぬ情けない声を出して彼は目を覚ました。

 

「俺寝てた!? 寝てたよね!? ごめん、すぐ帰るつもりだったのに、何分くらい落ちてた?」

 

「たぶん一分も無かったですよ」

 

「危ない危ない、起こしてくれてありがと、じゃあバイバイ、あまり夜ふかしするなよ」

 

「・・・あのー先輩」

 

「ん? 何?」

 

「顔、洗ってくださいね。半分ぐらい描いちゃったんで、にはははは!!」

 

「・・・何を?」

 

 

 シオンは何がなんだかわからないまま、反省部屋を後にした。

 彼が顔の落書きに気づくのは翌朝のことである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…・・・私のミスでした。

 

 私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況。

 

 結局、この結果にたどり着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて・・・

 

 ・・・・・・今更図々しいですが、お願いします。

 

 先生。

 

 きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません。

 

 何も思い出せなくても、おそらくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから……。

 

 ですから……大事なのは経験ではなく、選択。

 

 あなたにしかできない選択の数々。

 

 責任を負う者について、話したことがありましたね。

 

 あの時の私には分かりませんでしたが……。今なら理解できます。

 

 大人としての、責任と義務。そして、その延長線上にあった、あなたの選択。

 

 それが意味する心延えも。

 

 ……。

 

 ですから、先生。

 

 私が信じられる大人である、あなたになら、

 この捻じれて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を……。

 

 そこへ繋がる選択肢は……きっと見つかるはずです。

 

 だから先生、どうか……。

 

 この、絆を――

 私たちとの思い出……過ごしてきたそのすべての日々を……どうか……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・い」

 

「・・・・・・先生、起きてください」

 

「先生!!」

 

 

 

「"・・・・・・?"」

 

 

 

 

 

 ミレニアムの風力発電所がシャットダウンした数日後。

 

 キヴォトスにて「先生」が目を覚ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





やっと先生が来ました。
たぶん女先生になります。生徒をよろしくお願いします。
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