キヴォトスの記憶操作系男子   作:橘ちば

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ずいぶん久しぶりです。

一応本編スタートですがどうなることやら。


──────


曇りガラス越しのあなたには
もう何も届いちゃいない










9.得体のしれない奴等

 

 

 

 

 

連邦生徒会のあるビルに入るのは初めてだった。まさか自分のような者が立ち入ることになるとは。いや、これから俺と同じような一般生徒達がこの扉をくぐることになるのだろう。今まで以上に何人も。

 

今日ここに来たのは連邦生徒会のやつらに会うためではない。

目的地の事務所が何階にあるか調べ、エレベーターに乗り込んだ。

 

呼吸を整える。

緊張することなんて無い、相手は所詮〝大人〟だ。

 

 

チーンという簡素な音と共にエレベーターの扉が開く。

 

 

 

 

 

「シャーレ」の扉はすぐそこの突き当りにあった。

 

 

 

 

 

その大人と目があった時に違和感を感じたのは、今になって思えば至極当然のことだったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はじめまして。ミレニアム3年、セミナーの海馬シオンです!」

 

「"こちらこそはじめまして。私のことは先生って呼んでね。シャーレにようこそ。"」

 

「つまらないものですが・・・」

 

「"これは・・・ありがとう、美味しく食べさせてもらうよ!!"」

 

「ミレニアムとレッドウィンター共同開発の絶対零度アイスです。美味しいですよ」

 

「"冷凍庫でも溶けるじゃん!!"」

 

 

先生を名乗るその大人はお茶を出してくれた。

俺は椅子に座らせてもらっている、偉い人が接待に使う感じの黒くて革のふかふかの椅子だ。

 

 

「"セミナーってことは、もしかしてユウカの先輩?"」

 

「そうですね。でも俺は下っ端なのでユウカにとっての年上の部下ですね。」

 

「"なるほど、なんかごめんね"」

 

「ユウカやノアが優秀すぎるんです。でも俺も事務作業も人並みには得意ですし、戦闘もできますよ!

シャーレの役に立てないことは無いと思います!」

 

特別な能力無し、高い地位や称号も無し。できるアピールが我ながら少なすぎる、強いて言うならセミナーってことくらいだよホントに。

 

「"それは心強いな。でも気負わなくても大丈夫だよ、これは面接ではなくてただの見学だからね。"」

 

先生は紅茶をゆっくりとすすった。隈が浮き出た顔なのに、品を感じる飲み方だった。

 

「"シャーレは生徒を働かせるためにあるんじゃない、助けるためにあるんだ。シオンが所属してくれるのなら心強いし、嫌なら無理に誘うこともしないよ。"」

 

「・・・そうですか、でも───」

 

 

未開封のダンボールが転がっている先生の仕事場を見ると、デスクトップの上に書類が見たこともない高さまで積み重なっていた。

なんだあれ、小学生の身長くらいはある。倒れそうで怖い、せめて4つくらいの山に分けてほしい。

 

シャーレはできることが多すぎるが故に仕事量も多すぎるんじゃないか。

少なくともあれは人一人が抱えて良い紙の量ではないと思う。

 

「あの書類は・・・」

 

 

いやいやいや、先生にもプライドはあるだろうし、子どもに気を遣われてばかりじゃ不快かもしれない。

それに俺はまだ見学者だ。差し出がましい真似はよそう。

 

 

「・・・なんでもないです!それにしてもすごいですねあの荷物と書類の量」

 

「"いやー外回りとかもすると書類が進まなくてね"」

 

「でもほぼ一人でこなしているんでしょう?やっぱり超人じゃないですか!」

 

「"ふふふ、まぁね・・・と言いたいところだけど、当番に来てくれる生徒の力がなければ間に合ってないのも多いんだぁ・・・"」

 

 

あら、この大人謙虚だ。

くたびれた感じで不甲斐なさを体中から出している。

 

なんだか自分が知っている大人とは違い、弱々しくて、等身大のものを感じてしまった。

 

・・・俺だけ、持ち上げるとか恩を売るとか考えてて恥ずかしくなってきたな・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「───あの、俺も手伝ったほうがいい感じですか?」

「"うーん、見学者にそれは悪い気がする・・・でもお願いしたいな・・・"」

「わかりました!ちなみに何人でする予定だったんですか?」

 

「"一人だよ"」

 

「はい?当番とかは?一人じゃ無理とか言って・・・?」

「"シャーレはまだ10人くらいだからね、皆の都合が合わない日は一人さ!"」

 

えっ・・・本気出せば超法規的機関ぐらいワンマンで動かせるってこと・・・!?

 

「それで提出とか間に合ってるんですか!大人ってすごい・・・!」

「"いや、あの、だから今日の分は普通に遅れてるんだよね"」

 

「茶ァ飲んでる場合じゃねぇ!!!」

「"そうだね!!!!"」

 

 

俺と先生は勢いよく立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キヴォトスに「先生」がやって来たらしい。

 

「先生」なので、何かしらの教員かと思っていたのだが、基本的に生徒に対し授業をしたりはしないようだ。

連邦捜査部「シャーレ」の顧問としてあらゆる学園の生徒の相談に応じる・・・らしい。

 

 

 

 

「・・・それだけカ?」

 

「うん。わかるのは大体これで全部。」

 

 

昨夜の夜7時ごろ、ミレニアムの寮部屋。

設置されたテレビから流れてくる報道を流し聞きしながら、俺とカシオは今話題のある組織と大人について話していた。

 

 

「情報が少なすぎるだろウ、そもそも一体何だ『シャーレ』とは」

 

「失踪した連邦生徒会長が作った超法規的機関だって。

 規約とか法律とかに縛られないし、罰則も受けることのないんだとか。」

 

「そんなの存在してていいノか!?」

「まあ、生徒の相談に乗るための組織らしいし・・・いいんじゃない?」

「そんな馬鹿みたいな権力を子どものためだけに使うバカはいないダろ」

「それはそう」

 

 

夜食のカレーを口の端につけながら驚いて見せるカシオ。元オートマタ、現在進行形でロボのくせにやけに食欲があるやつだ。

 

 

「・・・相談に乗るってのはなんだ、連邦生徒会所属の便利屋みたいなものカ」

「さぁ、たぶんそんな感じじゃない?ただ・・・」

「たダ?」

「そのデカデカ権力で各校の生徒達に協力を仰げるらしいから、下手したら連邦生徒会の活動より規模が大きなことができると思う。」

 

 

 

そう、そもそもおかしいのは先生よりむしろ“シャーレ”だ。

なんだよ超法規的機関って、なにを仕出かすつもりなんだよと言いたい。

・・・たしかに「学園」という枠に囚われずに生徒の力になれる組織があれば、外部からの救援が欲しい生徒、特に小さな学園の生徒ならそれは大きな助けになるだろう。

ましてマンモス校を取り込んだらキヴォトスを支配できたりして・・・

 

まあ、どう考えてもゲヘナやトリニティあたりがシャーレの言いなりになるとは思えないが。

 

シャーレは突然放り込まれた爆弾なのである。起こるであろう混乱と牽制への不安がいっぱいだ。

 

 

「シオンはシャーレについては自力で調べタのか?すごいじゃん」

「いや、ノアに教えてもらったんだよ。」

 

「全部受け売りカよ!!」

 

「・・・ノアもユウカから聞いた話が大半らしいから、受け売りの受け売りかな」

 

 

行政が停止していよいよ世紀末になっていたあの日に、ユウカはミレニアムの代表として連邦生徒会の状況を直接見に行ったのだ。

連邦生徒会は当方の責任を放棄したのか、いい加減何があったか説明しろ、生徒会長をだせ!

・・・と息巻いていると、そのキヴォトスのトップが失踪したことを知らされたらしい。

 

 

「うん、そこまでは知っていル。続きを教えてくレ。」

 

そこに連邦生徒会長が外から呼び寄せた「先生」なる大人が登場した。

 

「おお出たナ」

 

そしてユウカと、彼女と同じように抗議に来ていた他学園の生徒3人を指揮してサンクトゥムタワーを不良共から奪還すると宣言。

 

「無茶言うじゃないか、さすがに無理だろウ。」

 

そこからセミナー、ゲヘナの風紀委員会の救護担当、トリニティの正実のNo.2と自警団の代表を率いて不良共と戦車をぶっとばし、ボスの七囚人もなんか一対一で撃退した。

 

「へぇ、一対一。えっコワ。

 

噂によれば七囚人は逃走時に顔を真っ赤にしていたらしい。よほどひどい辱めを受けたのだろう。

やべぇ大人に違いない

 

そしてサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に譲渡してすべて解決。

これすべてがキヴォトス現着から一時間もしないで行われたことだった。

 

 

 

「・・・先生の実力はよくわかった。人柄は聞いてないのカ?」

「ユウカは優しくて、ちょっとだらしない人だと言ってた。」

 

 

俺は甘口カレーに追加スパイスを振りかける。どうにもカシオは辛いのが無理らしい。自分はカレーにはほどよく辛くあってほしいのでこうするしか無いのだ。

 

─────戦績の猛烈さに比べ、先生の人柄に関しては良い評判ばかりだ。

その差がなんだかどうしようもなく不気味だった。

わからない。

話を聞くたびに先生がどんな大人かわからなくなる。

 

 

「明日、ユウカからの紹介でシャーレに行くんだっタな。」

「・・・うん。」

「武装していけヨ」

 

「なんでよ戦闘なんてしないって!!」

 

カシオは急に物騒な単語を吐いた、戦うか、バカ。

 

「でモ今の嘘みたいな話を聞いちゃったらネぇ、ちょっと怖いヨ。」

 

「ユウカも何回かシャーレに通ってるらしいし不安はないよ。

 それに先生だろうが結局は大人だろ?」

 

 

相手は大人なのだ。悪人だと決めつけなどしないが、利己的には違いない。どんなつもりでこんな銃社会に来たのか知らないが、相手も俺みたいな一生徒に対する熱量は低いだろうし、こちらも先生に期待しすぎることもない。

それに・・・

 

 

「一回、その大人の記憶を見ておきたいから。」

 

「・・・」

 

 

カシオは察したようにため息をつき、無言でカレーに集中しだした。俺も「いただきます」とスプーンを右手に握る。

少し辛くしすぎたルーをすすりながら、明日の夕飯もカレーでいいかと考えていた。

 

 

 

目を合わせて、俺の神秘で先生とかいう大人の記憶を読む。それでだいたい分かる、マシな大人か消えたほうがいい大人か。

 

後者なら、いつもみたいにそいつの記憶自体を・・・・・・

 

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・昨日、そんな感じでスカしていたことを恥ずかしいと思う。

 

 

「毎日この量をほぼ一人でやってたんですか!?!?」

「"うう・・・ごめんね、見学なのにこんなことさせちゃって・・・"」

「おかしいでしょう連邦生徒会・・・!過労で倒れるの狙ってるんじゃないですか冗談抜きで!!」

「"そんな、リンちゃん・・・嘘だよね・・・?"」

 

「リンちゃん?」

 

 

リンちゃん

リン(連邦生徒会)

七神リン(首席行政官)

 

BINGO

 

 

「生徒会長(代行)にちゃん付けしてるんですか!?」

「"うん"」

「・・・仲良しでいいですね」

「"毎回『誰がリンちゃんですか』ってあしらわれるけどね"」

「仲良しこよしじゃないですか」

「"・・・まあ過労は大丈夫だよ。皆優しいし、人はシオンが思っているより頑丈だから。"」

「う〜ん信用していいか迷う"大丈夫"ですね」

 

 

先生はとにかくいい人だった。そう、ユウカの言う通り、優しくていい人に俺は見えた。

 

「先生」は不思議な魅力を放っていた。

性別はわからない。声からして女性っぽいが男性と言われても納得してしまうと思う。

で綺麗な黒色をしている、顔もかなり整っている方だろう。しかしそれより重要なのは佇まいだった。

 

不潔に見えない程度にはセットをしている、オシャレに気を使っていない感じ。

しかし挙動から溢れ出している人生経験、学生には決して出せない謎の色気。

 

そんな人が年下相手に見下した様子も見せず、丁寧に対応してくれる。

 

・・・なによりほっといたら死にそうなこの儚さ。そばに居てあげないとという気持ちになってしまう。

 

魔性ってやつだな、うん。

 

 

そんなことを思いながら書類を捌いているが、ハンコのズレや誤字が目立つ。この見た目で仕事が得意というわけでもないらしい。

俺以上ユウカ以下ってところか。

 

「・・・多いですね、活動報告書。」

 

見ると不良が起こした事件の後始末から商店街の掃除まで、あまりにも幅広い仕事だ。

 

「・・・シャーレに在籍しているのは・・・」

 

確か・・・

ユウカ

ハスミ

スズミさん

ゲヘナのチナツさん

 

俺の知らない一般生徒の5人

 

あれ?九人しかいないぞ

 

 

「先生、たしかシャーレの生徒はまだ10人って言ってましたよね。」

 

「"そうだよー"」

 

「調べても9人しか出てこないんですよ、まだデータ追加してないなら俺がやっときますよ?」

 

「"・・・あー・・・あ、それは私がやっておくよ、うん!"」

 

「そうですか?わかりました・・・ちなみにどんな人なんですか?」

 

先生は・・・なんか、すごいモニョモニョした顔になった。

 

「──────狐耳がある、元気な、ホントに元気な子だよ。」

 

「へぇ!」

 

ケモミミなかまとしていつか会ってみたいものだ、俺のは犬の耳だけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先生の声色は、聞いていてなんだか安心してしまう暖かさがあった。

俺は、大人にこんなに気を遣われると言うか、丁寧に接されたのは多分初めてのことだったので割と動揺した。

書類を片付ける作業というのは基本的に心身ともに苦痛なもののはずだったのだが。なぜかここではそうでもなかった。

 

「先生、こんな感じでいいですかね?」

 

「"あー・・・それでもいいけど便利なテンプレートがあってね───"」

 

あと教師だから説明がすごく分かりやすかった。仕事は遅いほうだと謙遜するが、その量に忙殺されているだけだろう。近くにいると容量が良いのがわかる。

 

だけどなんだろう、この嫌な感じは。

違和感だ、俺が今まで感じたことのない違和感。

 

話し方じゃない。

容姿や行動でもない。

 

先生と目があったときに何か・・・

 

 

 

 

「・・・先生、このお弁当大量注文はなんですか?」

「"退学になって、どこの学園にも庇護されない子達への差し入れだよ。私が食べたんじゃないよ!?”」

「いや先生を大食いだとは思ってませんでしたが・・・」

 

わざわざ配りに言ったんだろうか、報告書を見る限りだと、スケバン達が望むなら他の学園への編入とかも手引しているらしいし・・・すごいな・・・

 

 

「この大量の学術本は?」

「"時間ができたときに作る教材用BDのための資料だよ"」

「そんなことまで・・・」

 

 

この人が自分のことを考えている時間はあるのだろうか。

知れば知るほど、見知らぬ子どもたちのためになぜそこまで真剣になれるのか。

 

 

「じゃあ、このロボの模型も生徒へのプレゼントとかなんですね」

 

「"それは私の趣味だよ"」

 

「何やってんですか!!」

 

「"趣味って言い方が悪かったかな・・・戦隊ヒーローものは人生の義務だよ。仕事と言っても全然過言じゃない。"」

「全然過言ですよ」

 

 

未熟者を見るような流し目をする先生、ムカつくわぁ。

親指と人差指で輪っかを作る──つまり銭のハンドサインをこちらに見せてくる。ニッコニコで。

 

「"それに、私のポケットマネーで購入したものだから大丈夫!これからも好きに正直に生きるよ!"」

 

「流石に横領だなんて思ってませんよ!!」

 

 

この大人も自分のために生きてる部分があるみたいで俺は安堵した。

 

「確かに、"好き"っていいものですよね。先生にも息抜きになるものがあってよかった。」

「"シオンは趣味とかないの?”」

「趣味ですか?モモフレンズって知ってます?」

 

「"ペ、ペロロは、可愛いと思わないこともないと思うよ"」

 

「俺の推しはウェーブキャットですよ!見てくださいこのキュートな腹筋」

 

 

俺はアスナからもらったウェーブキャットをバッグから取り出して説明し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「"ちょっと休憩しようか"」

 

立ち上がった先生は大きく伸びをして椅子から腰を上げた。

 

ブカブカの白い連邦生徒会の上着とピチピチのシャツ。先生のした伸びは、説明ができない魅力を放っていて

・・・なんか邪な気持ちで見てしまう前に俺は目を逸らした。

 

 

「"・・・シオンは甘いもの好きだよね?"」

 

先生は部屋の奥の冷蔵庫から何かを取り出そうとしていた。

 

「ケーキですか!!」

 

「"勘がよすぎる"」

 

先生が手に持ってきたのはケーキの箱、あの高級感は絶対にトリニティだ。

 

「鼻が効くんですよ、小学生の頃は〝警察犬〟って呼ばれてました。」

「"そこは“炭◯郎”とかにしときなよ・・・"」

「ははっ嘘ですよ、先生さっきスズミから貰ったって話をしてたでしょう?」

「"あーそれそれ!そのケーキだよ。"」

 

先生そのケーキを俺に半分くれるらしい。

「"頑張ったのは私とシオンだから"」と言ってニコニコ笑っている。

 

しかしさっきも同じようなことがあった。俺が持ってきた手土産の絶対零度アイスも2人で食べたのだ。前にコユキと食べたときもそうだが死ぬかと思った。

 

もしかしなくても先生は俺を餌付けしようとしているのかもしれない。

ここはスマートに断っておくべきだな。

 

「"ミラクル5000って言うんだけど・・・"」

 

「餌付けでもいいっ・・・!!」

 

「"なんて?"」

 

 

懐かしいその響きに舌と喉と胃が強烈に引っ張られる。

あのミラクル5000を!?俺が食べていいのか!?少なくとも今日出会った子どもにポンと出すものではない・・・!

 

 

「ありがとうございます!!!!!!!持ち帰りでいただきます!!!!!!!」

 

「"そんなに好きだったの!?"」

 

「キヴォトスに売ってるところがトリニティの一店舗しか無い限定品ですよ!行列に並んでも買えないなんてことは当たり前で・・・!

   もしかしてご存じなかったですか・・・?」

 

「"・・・ふーん"」

 

「ちょっともったいないことしたなって思いましたよね?」

「"ははは、まさかぁ"」

 

 

白々しい顔で返事をする先生、申し訳ないから今度からもうちょっとお高いお菓子を持ってこよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生は、ずっとここにいるんですか?」

「"ずっとオフィスに座ってるのかってこと?"」

 

俺は唇についたミラクル5000のクリームをそっと舌で舐め取った。

 

「今だから言えるんですが、俺はてっきり各学園に出向いて生徒を引き抜いたりしてるのかと・・・」

「"ははは、そんなことしないよぉ"」

 

 

俺の偏見をカラカラと笑う先生。しかしそこから後のセリフは、どこか信念を持って言葉を発していたようだった。

 

 

「"私は生徒に自分から干渉しに行ったりは、極力するつもりはないよ"」

「それは・・・なんでですか?」

 

「子ども・・・生徒を信じているからね!彼らには彼らの青春がある。大人がそれの邪魔をしてはいけないよ。」

 

 

 

「"ただ、心の痛みや同仕様もない理不尽、あと大人からの悪意に晒されたとき。 

  私を先生として頼ってほしいってだけだよ。"」

 

だから外回りもするけど、ここで生徒を待っていることのほうが多いのさ、と先生は穏やかに締めくくった。

ケーキの甘い匂いと、机の上のフォークとお皿。

俺も先生もしばらく口を開かない時間が続いた。

 

 

「"・・・若い子ってどんな悩みがあるの?"」

 

「どうしたんです急に!」

 

急に不安になったらしい、いざというときに悩みを理解して助けになれるのか。そんな優しさの疑心暗鬼してる時点で大丈夫だと思うぞ。

 

「"私はまだキヴォトスに来て日が浅い、だから今のうちに学生の悩みを知っておきたいんだ!"」

「悩み・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

「忘れたいくらい嫌な記憶も、全部ふとした瞬間に思い出してしまうんです。ふふ、どうすればいいんでしょうね」

 

「この砂漠でさ、ずっとこのまま逃げれないのかな。私。」

 

「見る影もなく崩壊した街と、誰一人として報われなかったであろう知人たちの絶望の声を、確定したものだと!必ずたどり着く結末だと!毎晩頭に流し込まれる私の気にもなってみろ!!夢では君だって・・・」

 

「思い出せないの、私どうやって歩いてたんだっけ?」

 

 

 

 

 

 

 

「───悩みは人それぞれでしょう。それに俺は男なので・・・女子高生たちの苦悩なんて知らないし教えられないですよ。すみません。」

 

ノアの記憶の整理をしている時、下着がキツくなった記憶を見つけたりしたがそれはたぶん黙っておかなきゃいけないやつだ。

 

「"それもそうかぁ。"」

 

「・・・」

 

「"シオンも、もし悩みがあったら、どんな些細なことでも言ってくれていいからね。"」

 

悩みか、無いこともないけど・・・

そういえばシャーレは生徒の相談に応える組織だった、気軽に話せる大人がいるのはいいことかもしれない。

 

 

 

 

「個人的な悩みなら・・・」

「"うん、なにかな?"」

 

「・・・セミナーの皆が優秀すぎるんです。」

 

「"ここに来たときも言ってたね。"」

「はい。ユウカもノアも素で優秀な上に唯一無二の能力も持っていて、それに比べて俺は、なにもないっていうか。」

 

年上の人に悩みを打ち明けるなんて随分久しぶりだった。

 

「ただ自分は無能だって不貞腐れてるのは嫌なんです。だから、基礎的な事務能力から鍛えたいと思ってて。」

「"そこまで自分で考えられてるのは偉いね"」

「・・・ありがとうございます」

 

この人褒め言葉すぐ出てくるな・・・えーっとだから、何を言おうとしたんだっけ

 

「なので、事務作業が上達するアドバイスが欲しい、です。」

 

「"すぐ思いつくのはパソコン系の資格を取るとかだけど・・・後は"」

 

 

先生は腕を組み、目を瞑って考える素振りをした。

それはアイデアをひねり出そうとするものではなく、どう伝えるかを悩んでいるように見えた。

そして、その綺麗な黒い目で俺を見据えて・・・その言葉を言い放った。

 

 

「"じゃあ、シャーレに所属してくれるってのはどうかな・・・"」

 

「へ?」

 

ノイズが走る・・・これか、違和感の正体。

 

「"仕事の上達は、やっぱり数と経験が物を言うと思うんだ。お恥ずかしいけど、シャーレには書類が有り余ってるからね、それを手伝ってくれるなんてのもいいかなと思うよ?"」

 

「いや、でも・・・先生はいいんですか?俺なんかが居て・・・」

 

ちょっと呆れたように、そして恥ずかしそうに先生は笑った。

 

「"今日、シオンが居てくれて私の仕事は半分になったんだよ?

 ・・・それにシオンと話してると楽しいんだ。私はここに居てほしいなって思ってるよ。"」

 

 

・・・・驚いた。

どうしてそんなに言われて嬉しいことをサッと、なんでもないように言えてしまうんだろう。

この人は、本当に・・・

 

 

 

 

 

「・・・ふふっ。先生、勧誘はしないって最初に言ってたじゃないですか!あはははは!」

 

「”あっしまった!!”」

 

「いえ、冗談ですよ。───本当にありがとうございます。」

 

本当に、「居てほしい」って言葉が、俺が一生でずっと欲しかった言葉だなんてこの人は知る由もないはずなのに。

 

「それに俺もここで役に立ちたいなって思ってましたから。

 

・・・俺からもお願いです。海馬シオンを、シャーレに入部させて下さいませんか」

 

 

「"・・・本当に?"」

 

「───はい、これからよろしくお願いします。」

 

先生は驚きと喜びを顔に浮かべて、俺に向き直った。

先生から見た俺もきっと笑顔なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はシャーレに入部した。書類をさばく修行という名目だがほぼ先生の人柄に押し切られたようなものだった。

あの人のためなら多少は無理をしてもいいと思えた。役に立ちたいと思わせるなにかがあった。

 

噂に聞いていた先生の人格をこの目で確かめられてよかった。

 

 

 

 

 

 

そしてわかったことの2つ目だ。

 

さっきので気づいた。違和感の正体は目だ。

 

俺の神秘は他人の記憶を引きずり出してくる、目を合わせるとその人の過去がうっすら見えるのだ。

 

けど、この人とチラッと目が合ったときには・・・ノイズのようなものが走るだけだ。

それが今日ずっと感じていた違和感だ。

 

そういえば今日来た目的も、最初は先生の記憶を引きずり出して値踏みすることだったか。今思うとやばいやつだな俺。

 

だけどノイズの正体も気になる。

 

 

「・・・先生、俺の目をしっかりと見てくれませんか。」

 

「"・・・いいけど、どうしたの?"」

 

 

不思議そうにこちらに向き直る先生。

 

先生の真っ黒な瞳をまっすぐに見つめて、俺は記憶に侵入を試みた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■    ■■■ ■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・?

 

 

 

あれ?

 

真っ白だ

 

 

         ■■■    電車の音?

 

 

なんで

 ■■

今見てるのは、先生の記憶のはずだ。これが?この人の記憶?

 

 

 

 

■■■■■ ■■ ■

 

 

                「私の   した。

 

       っと私の話 忘れ  まうでしょうが、 れでも

       

の時      りませんでしたが

 

    

    だから

  

 

 

 

 

誰の声だ

 

違う

見えないんだ

何かに阻■されてこの■の記憶が読め■■■だ。

 

 

 

 

 

 

    捻れて歪  先の終着 とは、また別の結果を

 

 

 

 

こ■■こと

今まで一度■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こrは

 

 

 

 

何■

何■

 

何■

 

 

何■

 

 

 

 

 

こ■以上は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先生!誰かが覗き見て■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

 

■■■■■■  ■■■ ■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・シオン、どうしたの?」

 

「・・・」

 

 

シオンのフリーズしていた脳が動き出す。大人は、心底心配そうな表情を顔に貼り付けてこちらを見ていた。

 

 

「・・・ぁ・・・先生?」

 

「急にどうしたの?体調悪いなら言ってよ?」

 

「・・・」

 

 

なにか話さないと、大丈夫ですとか、ちょっと目眩がとか。黙っていてはダメだ。

 

 

「・・・シオン!?本当に大丈夫なの!?」

 

 

大人が肩に手をおいてきたその瞬間、自分の顔の産毛が逆立つのがわかった。離れたくてとっさに後ろに下がろうとして躓きかけたが、なんとか足の筋肉を使って踏ん張る。

先生は慌てた姿勢を崩さない、心配そうな眼差しでこちらの目を見つめていた。

 

 

「シオン・・・・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・■いつ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまずくところでしたよ!危なかったー!」

 

「"・・・ねぇ、さっき何があったの。教えてほしい。"」

 

「さっきのって・・・ただの立ち眩みですよ!」

 

「"立ち眩み・・・?少し違ったような────"」

 

「とにかく!!ちょっとクラっとしただけで大丈夫ですから!」

 

 

先生は・・・なにか言おうとしたが、とっさに口をつぐんだように見えた。

口の中に、今さっき放とうとした言葉を待機させているような、そしてそれを言おうか言うまいかをまだ悩んでいる。

 

 

「"・・・何か異常を感じたらすぐに言うんだよ、無理はしないで。"」

 

結局その大人は、生徒の隠し事は追及しないことにしたらしい。

・・・異常を感じても、こんなの言えるわけ無いのに。

 

「・・・はい、気をつけます。」

 

シオンは実に薄っぺらい笑顔でそれに答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢から醒めたみたいだ。

 

 

 

 

先生はいい人だ。

あんな大人が本当に居たなんて信じられない。

 

活動報告書には、生徒や住人のために動いたことしか載ってなかった。もちろん、わざと上に報告しないこともあるとは思う。けどやっぱり、俺への対応や外回りの様子を見ると先生は随分できた人間のようだ。

 

だからこそ怖い。

 

俺の神秘が効かなかった。

 

どんな強い生徒にも

ロボットやオートマタにも

獣人にも

そしておそらく黒服のような人外にも

 

相手の記憶に干渉できるはずだった。

 

優しい人にも、傲慢な人にも、それぞれ納得できるバックボーンがあった。それを見ると俺は安心できた。ああ、そうだったのかって。ちゃんとした人生の道筋があってこの人はこの人になったんだなって。

 

 

じゃああの大人は何だ

 

俺が今まで出会ってきた生き物とは別物みたいだった。

 

記憶がないのか

なにかに俺の神秘が阻害されたのか

 

こんなに何もわからないことは初めてだ。

 

 

 

なんであの大人はあんなにも聖人でいられるんだろう。

 

 

 

 

本当に夢から醒めたみたいだ。

 

今は、あの人に惹かれていたのがただ不気味に思える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

普通は他人の記憶なんて確認できないことくらい知ってる。

けど俺は小さい頃からずっとこの力と育ってきたのだ。

 

一つの感覚器官があの大人の前では無意味になるのと同じ。

 

どうしようもないほど不気味に感じるのは・・・仕方ないことだとも思うのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一度立ち眩み(?)を起こしてから、シオンは唐突によそよそしくなってしまった。

あれから淡々と仕事をこなし、声色だけは元気だったが話も盛り上がらず・・・

 

駅まで先生はシオンを送ったが、最後までシオンは先生の同行を拒否しようとしていた

「"今日はありがとうシオン、本当に助かったよ。"」

「いえいえ、また仕事が溜まったら連絡して下さい!シャーレの一員として駆けつけますよ!」

では、とシオンは振り向かずに電車で行ってしまったが。

 

少しは打ち解けれたと思ったのに。

先生は何が彼を不安にさせたのかわからなかった。

 

 

『────先生』

 

「"なんだいアロナ?"」

 

シャーレの事務所に戻り、生徒には頼めない書類を進めながら各学園について情報を集めている。

そんなとき、シッテムの箱からアロナが話しかけてきた。

 

『・・・実は、シオンさんが先生と目を合わせた時、少し違和感があって・・・』

 

「"違和感?"」

 

()()()()を感知したんです、ちょっとだけですが・・・』

 

「"・・・は?・・・えっ私が!?"」

 

『"先生にはアロナがついてますから大丈夫ですよ!?ブロックを掛けましたし、そこは心配いりません!"』

 

アロナは自信満々に笑顔で胸を張った。かわいい。

だがその後すぐに表情を曇らせる、話はまだ終わっていないのだ。

 

 

『・・・ただ・・・その後、海馬シオンさんのことを、念の為くわしく調べてみたんです。生徒情報が少し変だなって思って、そしたら・・・』

 

シッテムの箱の画面に映し出される、海馬シオンの戸籍や生徒情報。

ミレニアムのセミナーで今年3年生。春にDUの高校から転校してきたばかりである。

もちろんそれより過去の記録もずらりと並べられた。

 

───しかし、

 

 

『シオンさんの3年生以前の記録はすべて捏造だということがわかりました!』

 

「"・・・本当に?”」

 

先生は驚きと困惑で目を見開いた。

 

アロナが手を振ると、彼の生きた徴を表す記録達が赤く光り、それらが紛い物とでも示すように消えていく。実際誰かが作った偽物の人生の記録なのだが、先生はグロテスクさを感じずにはいられなかった。

立て看板で作ったハリボテの街を横から覗いてしまったような罪悪感とでも言おうか。

 

『シオンさんはDUの高校からミレニアムへ、今年の一学期に転校してきたことになっています。しかし彼がそこに在籍していた記録はありませんし、もちろん中学生、小学生の時のデータも一切・・・』

 

「"じゃあ、シオンはどこで生活していたの?"」

 

アロナは〝わからない〟と、頭を横に振った。

シオンの名前を使った売買や契約、部活からの給料の支払いの記録もない。ミレニアム含むキヴォトス全学園のPMSに裏からちょっとアクセスしたがもちろん手がかりなし。

 

『戸籍も存在していませんし、ブラックマーケットにも痕跡すらありませんでした。』

 

じゃあ私が先程まで話していた生徒は一体何者だったのだ。

会話からわかる、ちゃんと教育は受けていた。

敬語も子どもなりに使えるようだった。

特に不健康にも見えなかったのに。

シオンは・・・どこで何をして育ってきたのだろう。

 

『・・・データを信じるなら・・・シオンさんはつい数ヶ月前に、突然ミレニアムに現れたことになります・・・それまでは──』

 

本当に突然に、前触れなく現れたのだとしか思えなかった。

各地の監視カメラの記録を洗いざらい調べ上げたが彼は映っておらず、確認できる最期の映像は一年前のトリニティに彼のような人影が一瞬映り込んだだけだったのだ。

 

情報が全くと言っていいほどなく、おそらく先生の精神に介入しようとしていた・・・

───はっきり言って、アロナには海馬シオンという生徒が不気味だった。

 

 

「・・・シオン」

 

先生はさっきまで彼が座っていた椅子を見つめた。

彼の力になれるのか、そもそも彼は何者なのか。先生にはわからないことが多すぎた。

 

シオンは、つい数時間前までここでうたた寝をしていたのに。

帰り間際の彼の目には警戒心が色濃く映っていたのを覚えている。

 

自分の何がシオンにあんな目をさせたのか、先生はしばらく悩み続けることになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

処理できないものを“読み込んだ”として、エラーを起こすのは当然で、

 

また、超人が自身の異常性を凡人からの目線で認識ができるわけもなかった。

 

 

これからシオンと先生は、互いに底知れなさを感じながら関わっていくことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







キヴォトスの化身
「キーヴォキヴォキヴォヴォwwww、ちょっと変な神秘持ってるだけの一般生徒がwwwww聖人のテクストを読めるわけねーだろうがwwwwwwww」


アロナ
「はーいフィルターかけますからね〜!」




お借りした楽曲
King Gnu:傘
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