認めない子   作:アイらゔU

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第10話 ようこそ

 

 

 

「……………」

 

 

ぺちぺちぺち。

ぺちぺちぺちぺち。

 

 

鏡を見ては何度も顔を叩き、いろんな角度から自分の顔をじっくりと見つめる。

続いてスマホで自撮りして更にじっくり見つめる。

 

自撮りと鏡とで映る自身の姿の印象が全く。

鏡に映る自分は左右反転してるので厳密にいえば自分の姿じゃないし、何度も何度も接触を重ねる事で好感度が高まるとされるザイオンス効果もあって、写真の自分と全く違うと違和感をかなり覚える。

 

―――と、割とどうでも良い雑学を頭の中で考えてみたが、今は全くと言って良い程関係ない。

多少違和感がある程度なんて、どうでも良い事だから。

 

 

 

「もー、ぺちぺちぺちぺち、いつまでそれやってんの? いい加減何してるか教えてよー」

 

 

そんな時だ。

ルビーが話しかけてきたのは。

 

因みにいつまで~~も、鏡やら写真やらを確認しているのは勿論レイである。

 

 

「もしかしてナルシスト~~に目覚めちゃったとか? 流石に止めてよ。シスコンお兄ちゃん、の方がまだ良いから」

 

 

中々に毒舌な事を言ってくるルビーだが、本心ではレイの事を心配していたりもする。

何故なら、ルビーは知らされていないし、知らないから。何故、レイがこういう行動をとっているのか。

そもそも、誰も教えていないし、アクアもまだ打ち上げから帰ってきてないので、知りようが無い。

 

 

「……ねぇ、ルビー」

「ん? なーに?」

 

 

鏡と写真を交互に見ながら……レイはルビーに聞く。

 

 

「僕なんかが出ちゃ役者不足、だよね? このまま出ても笑われちゃうだけだよね?」

「……うん?? なんのこと??」

 

 

レイの問に対してルビーは答えられない。答えられる訳がない。そもそも言っている意味がよく解らないから。

 

 

「はぁ~……、ここで結構間違われてる【役不足】を使わずに、【役者不足】って言えるくらい地頭良いのに、なんでここまで自己評価が低いのかしら? ……やっぱり教育が悪かったのかしらね」

「ちょっとー! 私の方見て言わないでよ!! そんな事ありません! レイは謙虚なだけですーー!」

 

 

ここで、ミヤコとアイが部屋へと入ってきた。

それでも変わらず鏡の前から動こうとしないレイに対して、取り合えず中断させて対面する様に促す。

 

 

「え? え?? つまりどゆこと? レイお兄ちゃんに何があったの??」

 

 

ルビーだけ置いてけぼり~感が否めないので、ちゃんとついていける様に手を上げて質問をする。

ミヤコはあきれ顔で、アイは頬を膨らませていて……どっちに真実を聞けば良いのかわかりかねるが、そこで更に壱護も入ってきた。

 

 

「ったく~、何べん言やわかってくれんだよ。つーか鏑木Pに言われたんだろ? あの人はメンクイで有名だ。あの人から声が掛かった事自体が答えだ馬鹿」

「いたっ!!」

 

 

ぽかっ! と強引に入ってきてレイの頭を叩く。

頭をすりすり……と撫でながらも、レイはモジモジし始めた。

 

 

「で、でも。だってだって……」

「でももだってもねー。鈍感系極まれりだなオイ。今時そんなキャラ流行らねぇぞ。流行ったとしても二次元(漫画)二次元(アニメ)だけだ」

「! ど、鈍感って訳じゃないつもりだよ! ……でもやっぱり、僕の周りにいる人達が凄すぎて仕方ないから……。どうしてもそっち方面じゃ自信が持てないだけで……。事務所の看板にドロ塗るのも嫌だし………」

 

 

それは主に星野ファミリーの影響だ。

星野ファミリーはまさに芸能界での頂点に位置すると言ったって良い。つまりはルッキズムの極致=星野ファミリー。

強烈な光の傍に居たせいか、この手の出演については中々に自信が持てず、持て余してしまう。

 

つまり、ミヤコの教育が悪い、と言うのはある意味正解なのだ。

………これ以上言うとアイが次元や世界を超えて睨んできそうなのでこの辺りにしておくが。

 

 

 

「も~~、ほんっとレイは仕方ないんだからぁ」

「……アイが仕方ない(それ)を言うのものすっごい違和感がある」

「だまらっしゃい! 今はそれどころじゃないでしょ!! そりゃ、選ぶ権利はレイにあるけど、もう出演決定していて穴を開けるのはポリシーに反するじゃない! 苺プロの!! ドロ塗る〜なんて事ないし、そんなのより重要でしょ!」

「何故アイ(お前さん)苺プロ(ウチ)のポリシーを語るんだよ……」

 

 

アイやミヤコ、そして壱護に加えてレイ。

やっぱり疎外感を覚える。蚊帳の外。そろそろルビーも悲しくなってきたので憤慨。

 

 

 

 

「もーーー!! いい加減説明してよーーー!! 仲間外れは嫌―――!!」

 

 

 

 

ぎゃーーす! と抗議の声を上げた所で、ルビーに今回の件を説明してあげるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

苺プロへと帰る道中の車の中。

アクアからレイへの連絡から今回の全てが始まったのである。

 

鏑木P が手掛ける番組の1つ。

 

 

『今からガチ恋♡始めます』

 

 

恋愛リアリティショー番組。

 

簡単に説明すると、芸能活動をしている高校生たちを集めて、週末色んなイベントを通じて交流。番組的にはその深めた交流で最終的には……ゴールインするだかしないだかを決める番組。

演じる~と言う部分もある程度はあるかもしれないが、基本的題名通りの『ガチ』を売りにしている所もある。なので、求められるのはリアルさ。学園恋愛系の展開も勿論必須になってくるし、ある程度狙う者も居るだろう。……だけど、そこに演技臭さをどれだけ消して、どれだけ本気度を画面の外に伝えるか……、その辺りのバランスが非常に難しい。

 

 

と、言うのがレイの総評。

役者、演者に重きを置く者としての総評。

生憎、恋愛事は超がつく程の初心者。遥か昔から初心者。そういう事を考えてられなかったから。演じる事なら何とかなるかもしれないが……なかなかどうして、状態なのである。

 

更にハードルを上げてきたのが、この番組に呼ばれる層の高さ。

鏑木Pが呼ぶ面々はもれなく顔面偏差値がT大レベルの猛者だらけ。そんな中に入れられて満足に演じられるか? と言う部分が物凄く心配で心配で……件の行動に走っているのである。

 

 

 

 

「な~~る〜〜。……昔っからお兄ちゃん、なんでか自分の容姿には自信無いからねー。納得」

「……可愛い兄妹が居るから仕方ないじゃんか」

「なんで仕方ない、になるのかわかんないけど。はい! ここでハッキリさせておきます!!」

 

 

可愛い言われて多少なりとも照れるルビーだったが、そんなのお構いなしに会話に入ってぱんぱんぱん、とミヤコが手を叩いて大きな声を上げる。

 

 

「良い? レイ! あんたは可愛い男子系! 鈍感系じゃなくて童顔系! 中性的な見た目! アイやルビーたちはどっちかと言えば綺麗系! んで、アクアはイケメン系! 系統が多少違うだけで持ってるモノを数値化して並べたら遜色ないレベル! 何処に出しても恥ずかしくない自慢の息子です!」

「ああああ!! それ私が言いたかったのに! フライング狡い!! それに私のレイでもあるんだからね!! 私が考えた属性だし!!」

「むぎゅっっ!!?」

 

 

指をばばん! とさして宣言するミヤコと、自分こそが先に~と意気込んでいた所にルビーへの説明やら何やらが合って出足挫かれたアイ。

レイを抱き寄せて思いっきり撫でる。

 

 

「あ~~、確かにレイお兄ちゃんに関してはミヤコさんのそれが一番しっくりくるかも? 言葉にして説明するのって難しいって思ってたんだよね~~」

 

 

ルビーも今更ながら気づきました! と言わんばかりに、掌に拳をぽんっ! と叩いて納得した、と言った所作を見せた。

 

 

「……まぁ、男としてはあんまり嬉しく無ぇ評価だと思うが、つまるところボーダーラインは余裕で突破してる、って所だけは解っとけよレイ。ちらっと出演者見せてもらったが、キャラ的にも属性的にも被ってねぇから丁度良い」

 

 

レイだって思春期真っ最中な高校1年生。カワイイ? と呼ばれて喜ぶような感性……でもない筈だ。

だが、ある程度割り切ると言う切り替えは出来る男である事も解っている。

 

色々今回のでズレているとはいえ、悩んでいるのも失敗したくない、と言う心配から来るもの。つまるところ責任感は物凄く高い。15の子供とは思えない程にだ。

 

これまではナーナーで済ませていたが、ここらである程度の自信をつけさせるのも悪くない、と言うのが壱護の判断。

 

 

「それにまぁ。今んトコ、レイが出た影響で妙な邪魔(・・・・)が入ってきてる様子も無ぇし、物差しで測る~じゃ無ぇが素を出す事に注視されるこの番組は丁度良いってなもんだ」

 

 

ちらりと壱護はミヤコを見た。

壱護を見て、ミヤコも小さく頷いてみせる。

 

 

妙な邪魔、と言うのは1つしかない。

 

 

このレイを10年も前に捨てたあの女の件。今思い出してもムカムカさせられる生物学上の母親の話だ。

 

ある程度危惧していて、事務所では尽力して対応をしてきた。それなりに見た目も変えて……頑張ってきた結果、あの天才ピアニスト=斎藤ひかりと言う話は無い。ネット上でさえ立っていない。

 

だから段階的に露出を増やし………ここらがある種の試験石と言うモノだと勝手に想っている。これを超えて大丈夫なら、もう姿を現さない、と思っても良いのではないか? と。だからと言ってセキュリティを甘くさせるつもりは毛頭ないが、それでも安心できると言う意味では心配事が減ると言うものだ。

 

 

「わ、わかりました」

 

 

レイは壱護に言われた様にカワイイと言われて嬉しい……と言う訳ではないが、取り合えず長年芸能界に携わってきたミヤコと壱護の2人がここまで言ってくれている以上……自惚れる訳ではないが少なくとも安心して全力でやっていいんだ、と思えた。

 

 

「ちょっとレイくん? 私は私!」

「……アイ母さん。心読まないでください」

「読んでません~。君は顔に出るんです! わかりやすいんですー!」

 

 

ミヤコと壱護で安心できる~。と言う評価はアイにとっては心外も良い所だ。この手の話題は殆ど出なかったが、やっぱり自信を持って送り出している~と言う意味ではアイだって負けてはいない。タレントをしつつも皆の事を気にかけてるつもりだから。

 

 

「いや、その。だってアイ母さんの場合は親バカ感が凄いので正当性が……」

「なにーー!」

「たまには真剣な所見せとかなきゃいけない、って事よ。アイ。反省しておくことね」

「あーー、ミヤコさん! 何そのドヤ顔!!」

 

 

時たまに、ミヤコとアイは親としての有能性を張り合ってる時がある。稀も稀だが、特にレイからどちらが良い~的なアンサーを貰った時は満更じゃないくらい嬉しく思い、この顔が出るのだ。

 

 

 

「あっはっはっは! カワイイカワイイ、レイおにーちゃん! これからもよろしくね~~♪ 女の子になってみたら、女装してみたらよりウケるかもしれないよっ!」

「ルビー……揶揄ってない? あと女装なんて絶対にしないからね!」

「えー、そんな事ないよーー! でも、残念だなー。入学した時に皆にもコレ聞いてみよっ♪」

「止めて!! 流石に恥ずかしいから止めて!!」

 

 

そんなこんなで、アクアが戻ってくるまでの間散々弄り回されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしてもルビーはもっと渋る顔すると思ったけど、案外そうでもないのね」

「しぶる??」

「アクアとレイの2人。2人の兄が恋愛系番組に出るのよ? 何とも思わない?」

「……………別に何とも思わないーーって、私が思ってるとおもう? 本気で??」

「あ、ゴメン。色々勢いで誤魔化してただけなのね」

 

 

 

 

 

ミヤコとルビーのこんな会話があったとか無かったとか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてアクアはと言うと。

 

帰ってきて早々消えたレイに対して思う所連発! 憤怒の炎! 状態だったのだが、状況を説明したら0.1秒で納得して逆にレイに感謝する事になった。

 

 

「……いや、なんかマジですまん。そんな事になってたとは思いもしなかった」

「良いよ。僕だってアイ母さんが現場に1人で来る、なんて思いもしなかったし。……昔の僕が命がけで守った人がまた無防備に~なんて血の気が退いたよほんと」

 

 

憑依に憑依を重ねていて、過去の自分を投影して、そんな過去の自分がアイの行動を見て知ったとすれば?

 

どうなるか、アクアも当然解るし、何よりアクアもレイと同じ様な行動を間違いなくとる。

いや、アクアの場合は悠長に演技を見ていないかもしれない……が、アイが頑なに動かない可能性を鑑みたら、やっぱりレイと同じ様なタイミングで現場を後にするだろう。

 

撮影に集中していていて、その集中が散漫になる前に離脱。一択だ。

 

 

「それはそれとして、何でアクアが鏑木さんの番組に出るって事になったの? 僕としてはそこが気になるんだけど」

 

 

憑依を重ねているレイだが、この一瞬だけは意図的にそれを解除した。

この番組については、実はレイ自身かなり注目している。これまでしてきた事のツケ(・・・・・・・・・・・・)がこの番組で払わされてしまう可能性が高い、と睨んでいるから。そう考えている以上、アクアがこの番組に出る可能性は低い。いや、寧ろ不自然とまで思えてしまうのだ。

 

 

「いや、鏑木さんと色々あって……な」

 

 

アクアは少しだけ答えを考えた。

レイには嘘をつきたくない、と思う自分もいるが……それ以上に思う事があるからこの番組には出なければならなかった。

 

 

『アイ君の秘密(ネタ)? 本人には……まぁ、聞けないだろうね。でも、何故君がそれを知りたいんだい? 他の誰でもない、母親の恥部も同然。それを視たい、と?』

 

 

そういった性癖は持ち合わせていないつもりだ……が、正直微妙な所ではある。

生物学的には母親かもしれないが、彼女の絶対的な奴隷(ファン)でもある精神を持ち合わせてしまっている精神だから。

……でも、今回のそれは関係ない。

 

本当の理由を話す訳にはいかない。

 

だからそれとなく色々と理由を取って繕って……鏑木を納得させた。

その条件が、今ガチへの参加表明なのだ。……何故だかレイも道連れに。それが条件だった。

鏑木自身が何を考えているかは読めない面はある……が、この時のアクアはレイが途中でバックレた事にそれとなく苛立っていた、と言う点も拍車をかけてしまい、了承してしまった。かなからもそれなりに詰められてしまって猶更だ。仕方がない正当防衛みたいなものなのだ。ごめんなさい。

 

 

 

それはそれとして、レイならば行ける。

家族からの心からの願いであれば、レイは無碍にしないし参加表明もしてくれるだろう、と鏑木に言ったのである。

 

 

 

「(鏑木さんなら……まぁ、アクアに狙いをつけると思うけど、問題はアクアが何で頷いたのか? だ。……ひょっとして)」

 

 

 

レイは1つの答えにたどり着く。

真剣な面持ちをする。

そんな顔を見たアクアは、ひょっとして悟られたのでは? と思ってしまう。何も手がかりの無い事件の真相を、詳細さえ明かされていない未解決な事件も同様なのに、当てられる筈がない、超能力者でもない限り不可能だ、と思っているのにも関わらず、レイの顔を視たら……何だか不安になってしまう。

 

 

「ごめんね、アクア」

「ッ……」

 

 

心が抉られる。

そんな感覚に見舞われてしまう。

何故解った? どうして?? 表面上は隠してきた筈。曲りなりにも役者を経験してきた筈。……でも、そんなのは本物(レイ)の前では焼け石に水だった、と言う事なのだろうか。

 

もしも、レイがそれを知ったとしたなら……、全力で止めようとしてくるに違いない。危険な事に自ら足を踏み入れようとしているも同然なのだから。

でも、アクア自身も止まる訳にはいかない、と思っている。

 

でも、でも、でも――――

 

 

色々と自問自答を繰り返していたその時だった。

 

 

「僕のせい、だよね。……鏑木さんから、僕の名を出されたんだよね? 何か条件みたいなの、出されたんでしょ? あの人、強制はしないけど、やっぱり強引な所……あるから」

「………え?」

 

 

深く考えていた。深く深く考え過ぎていて……深読みし過ぎてしまった事に今更ながら気づく。

 

 

「たまに毒舌だけど、アクアは優しいし、凄く気にかけてくれてるのは解ってる。勿論、ルビーやアイ母さん、ミヤコ母さん、壱護父さんの皆もね。でも解ってる。大丈夫だから―――――で、片付けたいけど、アクアも出演決定しちゃってるらしいから今更言っても遅い……か。……うん。一緒にがんばろーね」

「………………おう」

 

 

 

 

安堵したけど、余計な心労かけさせやがって、と軽くレイの頭にチョップを入れるアクアだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時間は流れ――――入学式。

 

 

「こらーーー‼ ひかり!!」

「うわっっ!!」

 

 

陽東高校の入学式も終わり。

学校長のながーーいありがたーーーい挨拶も終わってさぁ、教室へ。と言った場面で背中に軽い衝撃が走る。

 

 

振り返った先にいるのは勿論、あの先輩の姿。

 

 

「なんでアンタ、今日あまの打ち上げボイコットすんのよ!」

 

 

有馬かな、その人である。

 

 

「あ、おはようございます、先輩」

「はい、おはよう。……じゃなくて、どー言う訳よ! って聞いてんの! 今日あまの打ち上げ、あんたも呼ばれてたんでしょ?」

「え、でも僕はその……無関係? とまでは言いませんがあまりにも薄い関係性ですし。作り上げた皆さんだけで打ち上げはするものだ、とも思ってましたし」

 

 

色々と理由を取ってつけているが、これには勿論正当な理由がある。

レイ……ひかりにはYouTuberとしての顔も持ち合わせている。

レイでありひかりであり、とある人気VTuberなのだ。その仕事が重なってしまって、申し訳ないが辞退した、と言うのが真相。

顔出ししてなくて、身内以外は極々一部(・・・・)しか知らない事なので、妄りに説明は出来ない、と言うのが本音である。

 

 

「……私はそんな風に思ってないわよ。アクアだってあの最後の場面だけの出演だったし、何よりアンタの指導がかなり堂に入ってた。あんなの、見た事無い、って思った。問題児を速攻で矯正させた調教師みたいで凄かった。ひかりとも一緒に作り上げる事が出来た、とも思ってたのに………」

「ぅ……、そ、それは光栄で……その、ごめんなさい……」

「……ふんっ。まぁ、いいわ。原作の先生にはしっかり言ってるから。あの作品を間違いなく変えた人は、影響をさせた人はもう1人いる、って。……私だけの手柄みたいに言われたけど、それは違うって。この場にはいないけどって。だからいつか会う機会が合ったらしっかり自分だって言いなさいよ」

 

 

そんな無茶な……とレイは思った。

今日あま、最後の最後で良くしてあげたのは僕です! なんて言葉誰が信じるんだ、って話だし、自意識過剰自信満々にもほどがある、と言うモノだ。

 

ただ、かなであれば詳細まで言ってそうだし、何より原作者の彼女も興味を持たれたとしたら……可能性は無くはない、か。

 

 

「あ、ロリ先輩。早速ひかりを苛めてるーー! イビってる〜!」

「苛めてなんかいないし、イビってもないわよ! 人聞きの悪い!!」

「おはよう有馬。この間はお疲れ」

「ええ。お疲れ様。アクア。それにルビーもしっかり聞きなさい。茶々入れ禁止! ……勿論、ひかりもしっかり聞いて」

 

 

途中合流した2人を見て、改めて かなは3人を見て頷く。

 

 

 

「ーーーさて、改めて入学おめでとう3人とも」

 

 

 

先輩として、此処を知る者として後輩に伝えるべき事がある、と思ったから。

 

 

「陽東高校は授業日程の融通が利く位のもので、普通の高校と大した違いはない。ふつーに赤点とったり出席日数足りなかったら留年するし、カリキュラムもそんな違いはない。……ただ、唯一にして決定的に違う大きな点があるわ」

 

 

そう言って、かなは周囲を見渡す。

1人、また1人視界に入れては指差しながら説明を開始。

 

 

「あそこを歩いているのは俳優。それと向こうで話している2人は最大手アイドルグループの子、あそこのベンチで座ってる胸のデカい子はグラビアモデル」

 

 

更に続いて声優や役者、ファッションモデル、歌舞伎役者、女優、配信者、歌手。

目につき、且つ かな自身も名前が解る面々を説明する。

 

 

「つまる所、今言った全員が芸能人。決定的に違う所。即ちここには日本で一番観られる側の人間が多い、って所。―――さぁ、歓迎するわよ後輩たち」

 

 

 

両手を広げて、有馬かなは高らかと言った。

 

 

 

 

「芸能界へようこそ」

 

 

 

 

 

そう―――今日から始まる。

 

 

方や大きな夢に向かっての第一歩。

方や人生をかけた目的を達するの為に。

方や……己が生み出したかもしれない弊害。その責任を果たす為に。

 

 

 

今日から始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして―――早速驚きを隠せられない事態に見舞われるのもまた、芸能界なのか……。

 

 

 

 

 

 

「ええええええ!!! れ……ひかり、知り合いなの!? どういう関係なの―――――!!?」

 

 

 

 

超ド級の連続。そして最大級の衝撃。

そんな感じで始まる高校生活の幕開けである。

 

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