認めない子 作:アイらゔU
「とうとう入学……だね。何だか緊張してきたーーー!」
「ほらほら落ち着いてルビー。あ、そーゆーのは手の平に《人》って言う字を書くのが良くて……」
「うわー、随分とまぁ古臭い方法言ってるわね。今時そんなのしてる子見た事ないわー。カントク? とかが話してたっけ?」
「「!!」」
今日から高校生。それも芸能科。アイドルになる為に本当に一歩踏み出した事を実感していたルビーだったが、やっぱり緊張してしまうのは無理もない話で。
アイドルになって大成でもすればもっともっと緊張する様な舞台に立つ訳だ。この位笑って乗り越えなきゃいけないだろう、と言う訳ではなく昔ながらの緊張の解し方をレイはルビーに教えたのだが、かなに思いっきり笑われてしまった。
古臭い
それを受けてかなり傷ついてしまうのはレイ。そして———別に直接言われた訳でもないのにアクアもだったりする。
「そもそも緊張する必要すらないの。何せここは養成所でも撮影所でもなくて普通の学校なんだから。だから、普通にしてればいいのよ」
レイやアクアの葛藤、衝撃を知る由もない かなは、そのまま我先にと自身の学年教室へと戻っていった。
「じゃあ、アクアも」
「ああ。ルビーのこと任せた」
「うん。任されました! ……でも、ルビーならどこでも大丈夫とは思ってるけどね」
アクアも一般科の方へと分かれる際に、改めてルビーを託されたのだが、当の彼女は緊張緊張言いつつも、待ちきれない勢いでもう既に向かっているのだ。
そんな彼女の背中を追いかけて、レイも駆け足。
1年F組
それがこれからの学び舎。
新しい学校生活に期待と不安を同居させ、それでも勇気を出して扉を開ける。
「…………わぁっ」
まず、ルビーは圧倒された。
あまりにもレベルの高い。兎に角レベルの高い教室の光景に、驚きを隠せれない。
まるでドラマやアニメの世界に入ってきたかの様な感覚なのだから。
「右見たら美人、左見たらイケメン!」
「思ってても心に留めるだけにしようね? ルビー。ほらほら、入った入った。入口がつっかえてる」
「わーー、押さないでーー」
レイは苦笑いをしながら、ルビーを押す。そしてそんな凄い世界に足を踏み入れる。
ただ、レイにとっては免疫がルビーとはけた外れについているので、怖気づく事なんて一切ない。何せ、ルッキズムの極致たる存在、最強で無敵な存在と四六時中一緒にいたし、その遺伝子を色濃く受け継ぐ子供たちと共に成長をしてきたのだ。加えてとある動画配信……YouTubeで少々コラボした時にもその手の凄い人とは出会ってる。
優劣をつける様な真似はする訳がないが、それでも圧倒される訳は無かった。
「(………慣れてるケド、ほんとに信じて良いんだよね? 皆………)」
精神的な免疫があっても自身の容姿についての一抹の不安は中々拭えないが……。
足りない、足りてないと思っていた
そう思って正式に表明したのだ。
「むむむ……!!」
ルビーはレイの横顔を見る。
昨日までは容姿に対してウジウジぴちぴちしていた筈なのに、いつの間にか吹っ切れているのがその横顔に現れている。それくらい顔を見れば解ると言うモノ。
今の今まで、結構似たような事を言って言い続けて、ルビーにとってレイは自慢の兄。アクアにもきっと負けてない。優劣なんてつけたくない位。甲乙つけがたいとはまさにこの事な兄だ。
でも、でもでも……。
「(私たちが何言ってもぜーんぜん自信持たなかった癖に、コロッといっちゃって~~~。なんかすごーーーく複雑なんですけど!!)」
確かに母親のアイに加えて、義両親であるミヤコ、壱護の3人責めは最強にして最大の攻撃? だ。アレに堕ちない者なんてそれは最早ニンゲンじゃないとも思える。
それでも散々フォローしてきた身としては複雑なルビーだった………が。
「(あーーもう今はそれどころじゃないんだった!!)」
そそくさとルビーは座席表に記されている自分の席へと向かう。
取り合えず、最初は女子男子で分けられているので、ある程度は安心する~~~なんて初心な事は言わないが、やっぱり圧倒される。
正直、舐めてる部分があった。レイの容姿で弄れるくらいには舐めてる要素があった。
でも、蓋を開けてみれば、一度扉を超えた先に入ってみれば、そこに広がってるのは……凄まじい光景。
「(……地元の中学とは明らかに別物!! 比べる事自体が失礼!!)」
結構、嘗ての同級生たちに対しても酷い事を言っているのだが、ルビーはそれには気付かない様子。
「よーー! 席隣だな! オレ、大地! 浅倉大地! 李前プロ所属の歌手志望だ! よろしくな!」
「うんっ。よろしくね! 僕は苺プロ所属の斎藤ひかりです。志望は……色々? マルチタレントとしてなんでも経験したくて、今も幅広く英才教育を受けてて―――」
大変な目に合ってると言うのに、大切な妹が色々と大変な目に合っていると言うのに、守ると言っていたアレはなんだったんだ!? とルビーは思う。
何せ、物凄く楽しそうに友達? が一瞬で出来ていたから。コミュ力の鬼かよ、と内心で毒づく。ここがアクアとは圧倒的に違う部分ではある……と思うが、当の本人もアクアの事を卑下にする事は出来ない。
「〈ま、負けるな私! レイお兄ちゃんを見習って……。そもそも、私はあの伝説のアイドル、アイの血を受け継ぐ存在なんだし……、顔じゃきっと負けてない、って思うし……。絶対負けるか! 呑まれてなるものか!〉」
気合を入れて、兎に角レイと同じ様に隣の席の人から先ずは声をかけてみよう! と視線を向けてみると……、とんでもない光景が見えてきた。
ちらっ、と見えた視界は、一点に集中される。
とんでもない我儘ぼでぃ……、主に胸部がとんでもない。
「わっ、凄い子おる!!」
「へぁ!?」
「あ、こ、声出ちゃってた!!」
ついさっきまで、レイに言われたばっかりだと言うのに……、思いっきり口に出してしまった。このままじゃ不審者扱いされてしまっても仕方がない。
「ご、ごめんね。突然大きな声を……」
「いやいや。ウチの方こそ、ジロジロ見てもうてたし……おあいこ? みたな感じでかまわへん?」
突然の大きな声。怪訝な顔をする事もなく、ただただ笑っていた。
それだけで良い子だ、と思う。良い子だ、と言う事が解ると言うモノ。そして何より同性であるルビーをも目を奪われる豊満な巨峰。何個武器を持つのだろうか? と思ってしまう。
「めっちゃ美人やねぇ。やっぱり芸能科ってすごいわぁ」
「いやいや、貴女の方も十分過ぎる程凄いです……。えっと、モデルさん?」
「あ、せやねん。一応、やけど。うち寿みなみいいます。よろしゅー」
早速、芸能人の友達一号。寿みなみ。
ルビーはしっかりとパブサ。どういう人物かは今時簡単に知る事が出来る。インターネットはスゴイ。スマホも当然凄い。
「寿みなみ……。あっ! グラドルやってるんだ!!」
「目の前でググるのは非人道的やない??」
「こらっ!」
「いたっ!」
せっせと寿みなみと言う人物を丸裸にせん勢いで、色々と調べ回っていたルビーにチョップを入れるのはレイである。
「目の前に本人が居るのにスマホ越し~なんて、今時の若いもんわ~! って言われる最たる例じゃん! って言うのは置いといて、普通に失礼だよルビー」
「あ、キミは……」
急に現れたレイに少し驚きつつ、ルビーから視線を外してレイを見るみなみ。
「ごめんね。僕は斎藤ひかり。こっちのルビーとは同じ事務所で、所謂妹分? みたいな感じなんだ」
「良いじゃん良いじゃん! みなみちゃんに止められた訳じゃないんだし? それに見てよひかり! GだよG! えちえちだよーー!」
「ぶっっ」
「や、やめてーーー! 流石に男の子ぉの前でいわんといてぇ……」
男受けを狙ってるのがグラビアであるからして……、と言う方面のツッコミは止めておこう。
「わ、ごめん。思わず……! こほんっ! ひかり、今の情報は全部忘れなさい!」
「―――はい、了解であります!」
無茶いうな、と言いたい所ではあるが、ここはルビーに従う方向へと舵を切った。
スリーサイズなんてグラビアモデルだったら普通に公にしている者だが、それでも顔を赤くさせている所を見ても、中々に恥ずかしいのは解るから、それをお笑い方面に変えようと思ったのである。
「ひかりー。やっぱ可愛いじゃん。こっちの子。えっとルビー? よろしくな! オレ大地!」
「ルビーにはおさわり禁止だよ。下手な事したら、事務所総出で狙われるから。
命、惜しいでしょ?」
「怖いな!!? 軽い挨拶じゃん! いきなり無茶な真似しないって!!」
まだまだ小規模な苺プロだが、アイと言う特大ブランドを抱えている事務所として存在感は凄まじい。色々と分け合って風呂敷を更に広げてないから最大手には劣るかもしれないが、敵に回す~なんて考えたくもない。
レイと大地のやり取りを見ていたみなみは、そっとルビーに耳打ちをする。
「ん~~。ひょっとして、ひかりさんって、彼氏さん、やったりする?」
「んや。ひかりは兄貴分? みたいな感じ。
「そうなんや。……ん~~確かにそやなぁ。言われてみればそんな感じはせえへんね」
「そういえば、軽くスルーしちゃったけど、リアル関西弁初めて聞いたよ! 大阪の人? 芸能活動の為に上京してきたとか!?」
地方には殆ど言った事が無い。
前世も含めて、ルビーは生で方言を聞いたことが無かった。
だから、ちょっぴり感激していたのだが……。
「いや生まれも育ちも神奈川。喋り方はなんていうか……ノリ?」
「ええ! エセ関西弁だったの!?」
こういう感じで色々と仲良くなって……
「ほらお兄ちゃん! 友達になったみなみちゃんだよ!」
「なんで俺に報告する必要があるんだ?」
「因みに、こっちは大地君」
「いや、ひかりも。報告する意味ないだろ」
色々と終えたので一般科にいるアクアと合流をした。
ただ、アクアは渋い顔をしている。
「だって、アクアの事だからルビーの事心配してるかな? って思って」
「……心配してる事と、友達紹介に繋がりがあるとは思えないんだが」
レイの一声に更に表情が曇るアクア。
でも、レイは気にせずに続ける。
「ええ、そうかな? クラスで孤立してないよー。って結構良い報告じゃない? 登校初日幸先良いって感じで」
「……百歩譲ってそーだったとして、ひかりまで報告するのは何でだ?」
「それは勿論……ノリ? みたいな」
ニッ、と笑って見せるレイを見て更に更に表情が陰るアクア。
「わーーっ、ひかり、みなみちゃんのネタ堂々とパクった」
「や、別にネタって訳やないよ?」
「でもま、家族に友達紹介したいって気持ちは解るな~。家族愛みたいなのテーマにしてる歌うたってる事も結構あるし、感情移入も出来るし、家族仲もいい方だし。……つまりだ。アクア
「義兄さんいうな」
「聞き捨てならないよ。……敵に回してみる??」
早速、5人で仲良くやっていけそうな空気になった所で、ルビーは本題を切り出した。
「それでお兄ちゃんの
「―――――――――」
アクアが渋い顔をずっとしていたのは……こういう事なのだ。
「いや別に。友達作りにこの学校入った訳じゃないし……」
「ぁ……、聞いちゃ不味かった。これ、出来なかったヤツだ……」
「うん? 小学中学の時は普通に、と言うか無難に友達出来てた筈なのに、なんでここではダメだったの?」
「……友達作りに無難とか使いたくねぇワードだな」
「無難には作ってほしく無いね」
アクアのコミュ力は確かに良いとは言えない。
でも、物怖じしない性格だし、友達100人! って性格じゃないけど……レイは少し疑問に思っていた。
もう少し―――
「そもそもだ。一般科はそっちと違って中高一貫。それなりに交友関係は完成されてて、交友を深めるのには時間がかかるんだよ。大体話し相手くらいは居るし。別に入学ぼっちって訳じゃねぇし。解るか? 2人とも」
「……ここ最近で一番アクアが饒舌な気がする」
「ファイトだよ、アクア!」
「だからちげーーっての」
アクア弄りで楽しんでた矢先、大地が声をかけた。
「なーなーそろそろ、ひかりも説明してほしいって思っちゃってるのオレだけじゃ無いよな??」
「………っ」
このまま、アクアネタで皆納得して、楽しんで終わってくれたら―――と思っていたのに、大地が斬りこんでくれたおかげで、蒸し返されてしまいそうだ。
「そうだそうだ! 一大事件がこっちじゃ起きてたんだ!!」
大地の言葉を皮切りに、アクア弄りを止めたルビーは、レイの手を取って引っ張った。
「私たちにまでとんでもない
「……何?」
秘密―――と言うワードを聞いてアクアは眉をピクリと上げる。
自分たちにさえ秘密にしておかなければならない、とんでもない秘密……。友達とかぼっちだとかと言った話題から反らせたい……と言うよりも、そっちの方がかなり気になったから、アクアはレイの方を見た。
「秘密? 情報共有もオレ達の仕事の内じゃなかったか」
「いや、そんな鋭く刺すように睨みつけなくても良いじゃん……」
逃げようとしていたレイだったが、先読みされてルビーに腕を引っ張られ、アクアの眼光を前にして逃げられなくなってしまった。
「そやで。うちも聞きたいわぁ。……紛れもなく、1年の中。いや、紛れもなくこの学校の中でもトップ中のトップの超大物。そんな人とひかり君は何処でどう知りおうたんか。……気になるわぁ」
「そうだぜひかり! まだHR中なのにルビー中心に大騒ぎになって中断しかけて大変だっただろ? もう観念して全部吐いちまえよ」
みなみと大地からの更なる追及。
そして、極めつけはルビー。
「聞いてよお兄ちゃん! ひかりってば、あの不知火フリルと顔見知り……いや、知り合いだったんだよーーー!!??」
もう既にメディアに引っ張りだこである超大物。
紛れもなく同年代の頂点。
歌って踊れて演技も出来て……何より美少女。
【不知火フリル】
何処にどういう接点があったと言うのか……?
あの不知火フリルと、斎藤ひかりが、星野レイが知り合いである、と言う事実に驚きを隠せないのだ。
「さぁ、吐け! ここで皆の前で説明するんだ! ひかり!!」