認めない子   作:アイらゔU

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第14話 顔が可愛い子

 

 

アイは淡々とレイとフリルの件をルビーに説明……出来る訳もなく、思い出しては時折頬を膨らませたり、むくんだりしている所作が目立っていた。ルビーもルビーで、レイとフリルの事が気になっていたのだが、次第にアイの仕草の方が気になってくる様子。

 

 

「そりゃまぁさ? 私としてもレイのお相手~ってなるとさぁ?? 慎重に慎重を重ねる訳で?? より良いコ、より素敵なコ、って思うじゃない?? でもさぁ、厳正な審査の結果————やっぱり早いと思うのだって仕方ないよね~~!? ルビーもそう思うよね? ね??」

「お、おぅ??」

 

 

ルビ太くんは、ミヤえもんよりも先に、ママえもん? の話を聞く事にしたのが……、正直それが良かったのか悪かったのかは微妙な所になってしまっている。

 

取り合えず、いじめられる~~などと言っていたルビーの考え過ぎな思考は一時収まったので、ある意味はアイの説明で良かった。

でも、アイのアイによる愛するレイへの想い打ち明け大会になってしまったのは……流石の娘としても手放しに喜んで良いのか? と思考ブレーキにもなってしまう。

 

勿論アクアもレイもマザコンである。

ルビーも人の事言えない性質なんだけれど、そこは棚に上げているのは言うまでもない。

 

因みにアイも当然の様にレイやアクア、ルビーにもベッタリする事がって……あれ? この場合どう呼べば良いのだろう? 逆マザコン? ムス(息子)コン?? スメ(娘)コン?? と、変に考え込んでしまう事態にもなってしまった。

 

 

「つーか、一体全体どの口が言ってんだ。お前がゆーなって話だろ!」

 

 

傍に居た壱護が何処からともなく取り出したハリセンで、すぱーーんっ! とアイの頭を叩いた。

 

それはそうだろう。

アイなんかレイ・アクア・ルビーの歳の頃妊娠が発覚して大変だったのだから。

特に壱護やミヤコなんて大変~~って所の話じゃなかった筈。

 

B小町も人気が出てきていたし、これからの大きなプロジェクトだって控えていた。

そんな時に、アイドル生命を一発で仕留めてくる様な致死量を100倍超えた毒を時限式で組み込まれた様な、そんな事態に見舞われたのだから。

堕胎出来る時期なんかとっくに超えたし、父親に関しては意地でも口を割らないし、で大変極まった。仕込んでくれた野郎はどんな手を使ってでも追い込んでやろうか、と危険思想まで頭を過っていた。

 

———で、結果論だけを言えば、何とかなって良かった。と、なる訳なのだが、当時の心境を思い返せば、正直ハリセン一発じゃ足らない。矯正し強制的に改善し改造させたいと思う。

 

 

因みに不思議そうにそのハリセンをレイやアクアが視てたら壱護が視線に気付いたようで、ハリセンを肩に担ぎながら言った。

 

 

ハリセン(コイツ)は今日現場で使ってたヤツだ」

 

 

と、壱護がアクアやレイに説明をしてくれた。(そこまで知りたかったわけじゃないが)

どうやら、アイの仕事はバラエティ番組。そこから持って帰ってきていた、との事。……小道具を持って帰ってくるってどういう事? 大丈夫なの? と思ったのは別の話。

 

因みにアイはと言うと、ハリセンで叩かれた頭を摩りながら、頬をぷくっ、と膨らませている。

確かに自分自身を鑑みれば————壱護の言う事も解らんでもない。

でも、それはそれ、これはこれ、精神が色濃く出ているので。

 

 

「とーーにーーかーーーく!! レイにはまだ早いってことなのーーー!! 勿論フリルちゃんは可愛い凄い、とても頑張り屋さん! 好感度抜群! すごーーい、って思っちゃうんだけど、それはそれ、これはこれなのーーー!!」

 

 

わーわーわーわー! と手足じたばたさせるアイ。

駄々っ子の様にいやーいやー言ってる。

そんなアイを視て、ガックリと肩を落とすのは壱護だ。ミヤコも呆れた表情を見せてる。

 

 

「だからお前はほんっと……。つか、いま自分が何歳(いくつ)だと思ってんだ?」

「………」

 

 

歳の話題はあんまり出したく無いミヤコだったが、壱護がハッキリと自分の代わりに代弁してくれた。あんまり年齢に関しては見て見ぬふりしたい所ではある。色々と過ぎた(・・・)女に歳の話題は厳禁なのだから。

 

 

「ぶーー! 歳は関係ないですーー! 心はいつもあの時のアイドル(・・・・・・・・)のままなんですぅ~~!」

 

 

アイのこの言葉を聞いて、ほんの少し———ほんの少しだけ、心に思う事があった。

だが、それも瞬きする位の時間。誤差みたいなものだ。そして、更にほんの一瞬アイと視線が合った———気がした。

 

そして、その一瞬を使ったをアイは見せる。次の瞬間にはまた壱護とやり取り(駄々っ子)。……何やら意味深に笑う彼女の真意に、レイは気付く事が出来なかった。

 

 

「でもまぁ、母さんならその辺のアイドルにまだ全然負けてねぇよな? 寧ろ圧勝してんじゃね?」

「そこはアクアに同意だね。昔取った杵柄~って補正無しでも。……でも流石に駄々っ子モードなアイ母さんを視てるのは嫌だなぁ。……事務所内だけにしてよ?」

「わーー、安定のマザコンズだーー」

 

 

アクアもレイも満更でもない、と言ったご様子にに渋い顔をするルビー。

レイとフリルの関係性は……取り合えず解った。解ったからと言って即座に納得できる! と言う訳ではないが。

 

 

「でもさっ、ズルいって感じるし、仲間外れにされてる~~って感じも辛いしーー。このモヤモヤどーすれば良いのさーー!」

 

 

アイ程ではないが、ルビーも手をバタつかせてレイに抗議の声を入れた。

アクアはまだ呆れている様だが、色々と思う所はある様で、得に咎めたり止めたりする事無く、レイに委ねる事にした様だ。

 

 

レイはレイでルビーからの指摘に、ルビーの真似? と思える様な似た渋い顔を見せる。

 

 

「……ルビーも解ってよぉ。アイ母さんも言ってたでしょ? あの時だって不知火さんは本当に売れっ子だった。影響力が半端なかったし」

 

 

別に不知火フリルはアイドルと言う訳じゃない。

大手なのは間違いないが、恋愛事NGを出してる、と言う訳でもない。

 

ただ、それでも……レイとしては、巻き込みたくなかった(・・・・・・・・・・)、と言う事情もあるんだ。

 

 

「彼女の迷惑にもなるくらいだったんだ……。本人はそれでも良い~~って感じで来てたんだけど、……流石に僕の方が嫌だから。それで不知火さんは納得してくれたんだよ」

「ふ~~ん。レイお兄ちゃんってば、いつの間にプレイボーイになっちゃったんだか。あーんなに可愛かったお兄ちゃんなのにね~。芸能界の闇に捕らわれちゃったかー」

「……幾らルビー相手だったとしても、可愛いは止めて。カワイイは自分の方でしょ! それにそんな変なのに捕らわれてないから!」

 

 

タコの様に唇を尖らせるルビーに対してレイは苦言を呈する。

可愛い、綺麗、それらの代名詞は間違いなく星野家のものだ。ポッとでの男が冠するものじゃない。……寧ろ、可愛いは要らない。そもそもぽっとでだろうが何だろうが、漢が冠するものじゃない。

 

 

———芸能界の闇(・・・・・)については、思う所がない訳じゃないが……。

 

 

 

兎に角その後壱護とミヤコがどうにか収拾を付けた。

明日も学校や仕事があるから、これ以上心労を掛けるなー、と言うのが肝心な部分だろう。

アイはアイで、まだ納得してる訳もなく、不知火フリル関係から【今ガチ】出演の件に関しても難色あり、な表情を作っていた。

息子LOVE! なのは兎に角事務所内だけにしてくれ、お願いだから、と壱護やミヤコがガン詰めしたのは言うまでもない。

アイはのらりくらり~といつも通りな事をしようとしたのだが、そこは阿修羅な顔つきになったミヤコである。

何せ、ついこの間作ったアイの今日あま現場突入(前科)があるのだから。

 

法的だろうが何だろうが様々な(ペナルティ)を与えた後に、親権的には斎藤夫妻(自分達)が持っているので、物理的に会えなくさせるぞ、と脅しを掛けたら……流石のアイも折れた。ぽっきり折れた。

 

 

「れい~~、あくあ~~、るびぃ~~」

 

 

涙目になって助けを求めてくるけれど、流石のそれは駄目。

 

 

「「「駄目です!」」」

 

 

レイもアクアもルビーも、全員まとめて腕を交差させて全面で×マークを作る。

こればかりは仕方がない。

レイからも聞いているし、そもそも単独行動なんて危ない事をしたアイが悪い。親心~と言うなら、以前襲われた事がある、それを命がけで守ってくれた子供もいる、その事を考慮して貰いたいモノだから。

 

 

「ぅぅ~~~……」

 

 

懇切丁寧に~説明した訳じゃないが、その訴える眼差し、星野家特有の目の輝きを視てしまったら、もうアイはぐうの音もでない。元々反省している面はあったんだけど、もう許された! とちゃっかり思ってしまった節があるので、取り合えずは良いとしよう。

 

これで、今ガチの舞台への授業参観? 的なノリは未然に防ぐ事が出来た。……一応明記しておくが、フラグなんかじゃない。壱護もミヤコも目を光らせているので、そこは完全防御姿勢を取ってくれる。あの包囲網を掻い潜る~なんて、気配断ちが出来る忍者、くのいちでもない限り、アイじゃ無理だろう。

 

 

「はいはーーい、取り合えず僕関係の話は終わりで、ルビーの話も進めないと、でしょ?」

「ん? なんだっけそれ」

「……いや、アクアくん。君の側頭部に引っ付いてるモノは竹輪なのかな? 聞いてなかったの?? 新生B小町のメンバーの件だよ全く」

 

 

流石にレイとフリルの関係やらアイの幼児化退行やら、濃い内容話ばかりだったので、忘却の彼方だったのはある意味仕方がないかもしれないが、ルビーの【ミヤえもーん!】も中々のインパクトだったと思う、とレイはアクアをジト目した。

 

アクアもアクアで、今察しました、といわんばかりの澄ました顔しているのがまた何とも言えない。

 

 

「あ、メンバーには心当たりがあるよ! 今日友達になったんだけど、寿みなみちゃんって言う胸が物凄くデカくて可愛いコで~~」

「他所の事務所のコでしょ! ダメ!! つか、事務所通さずレイを使った鏑木さんのトコに、形だけとはいえ抗議文送ってるウチが、同じ様な事しちゃ駄目でしょうが」

 

 

ミヤコは盛大にため息。

その件に関してはレイも何も言えないので、何処か遠い目をして視線を逸らせていた。

鏑木との付き合いはそれなりに有るし、何よりレイにとっても利があるのは間違いないから断然OKなんだけれど、苺プロにも面子と言うモノがある。周知していないとはいえ、タレント名を使ってないとはいえ、レイはアイやぴえヨンに続く稼ぎ頭なのだから猶更だろう。

 

 

「はいはーーーい! じゃあ、新生B小町には初代のカリスマ最強アイドルである私が————」

「おまえはちょっとこっち来ような?」

「いたっ、いたいいたい!! 耳ひっぱっちゃ嫌―――!!」

 

 

アイが立候補! と手を挙げるが当然ながらそんなの問答無用で速攻で壱護に却下されてしまう。

 

 

何せ世間ではまだまだアイは独身で通している。

もうアイドルではないのだから~と言う簡単な話ではなく、アクアやルビーの年齢を考えたら簡単に逆算して一体いつの時の子供なのかなんて簡単にバレてしまう。

アイドル時代に拵えた子供~なんて世間にバレたら大変な事態。大炎上待ったなしだ。

暴露するにしても、相応の準備やらなんやら~と考えなければならない事が山積みであり、アイ自身の新たな夢である【親子共演】は叶えてやりたい気もない事は無いが、苺プロ的にはこのまま黙っていてくれ、と言う想いの方が強いのだ。

 

 

「ん……心当たりはない訳じゃない」

 

 

そこでアクアが手を挙げた。

それに目を輝かせるルビー。

 

 

「え! ほんとっ!! お兄ちゃん!!?」

「うん。……ただ、ちょっと覚悟を決める必要性があるが……」

 

 

ちらり、と視線を向けられるのはレイである。

レイはアクアの視線に気付いて、「ぼく?」と小首を傾げて自身に指をさす。

アクアはそれに小さく頷いて続けた。

 

 

「他所属がネックだって言うなら、フリーで1人いるだろ? 名前が売れてる割に仕事がなくて————顔が可愛い子」

 

 

アクアがそこまで言った時点で、レイも大体解ってる。

そして、覚悟を決めなければならない、と言っている意味も。

 

 

「……有馬かな。元天才子役って知名度は今でもある程度は通用する。新人アイドルとしては申し分ないだろ」

 

 

ついこの間、ごめんなさい。人違いです。と頭を下げたレイ。

でも、同じ事務所タレントとなったとしたら、いつまでも隠し通せるわけがない。

 

 

「……なるほど。2~3発くらい殴られるかもしれないね。そう言う意味の覚悟……か」

「いや、流石にそこまでは思ってなかったぞ」

 

 

有馬かなと北斗レイの関係性は此処にいる全員が知っている。

年齢の割に大人びていて、有馬かなを導こうとしている節があって……、それで、有馬かな自身はまるで自分がお姉さん! と言わんばかりの態度で背伸びしている感が微笑ましくて……。

 

兎にも角にも、一度レイは違うと かなに言った。ハッキリと目を見て、その演技力を遺憾なく発揮して。演者としてはプロの中でもトップクラスだと言って良いあの有馬かなをも信じさせるクオリティ。……やっぱり役者としてもレイはヤバいよな、とアクアは思っていた。

 

 

「うん。僕なら大丈夫だよ。……あの時は、事務所が~~ってのを免罪符に、有馬さんに謝ったんだけど。……やっぱり、罪悪感の様なモノはあるから。……僕は、違うから(・・・・)

 

 

嘗てのレイではないとはいえ、とレイは苦笑いをする。

その仕草を視たら、誰もが同じ様に思う事だろう。

 

有馬かなと一緒に居た、共に傍に居たあの北斗レイは厳密にはもういないのだと言っている、と。―――ただ、アイだけは少し違う様だが。

 

 

「罪悪感なんてレイが持つ必要ありませんっ! ……レイ、何か間違っちゃった事した? 自分は間違えてる、ってハッキリ言える? ……私の目を見て」

 

 

アイはまっすぐにレイを視て言う。

いつの間に壱護から離れた!? と言う驚きはこの際どうでも良い、と思える程の透き通った瞳。天性のもの、スター性。それらアイドルを引退して尚、色あせる事なく彼女を象徴していると言って良い。アイの眼。

 

 

「……ぼく自身は、そう……だけど、やっぱり……」

「もう、レイは優し過ぎるよ! そう言うのは全部私のせいにしていいんだから! レイが悩む必要なんかありません!」

 

 

アイはそう言うと、レイを抱きしめた。

居なくなってしまったのは自分のせいだと。自分を守る為に……自分を守った結果、居なくなってしまったんだと。

 

アイは、レイに小声で言う。

レイだけに聞こえる様な小さな声で。

 

 

「……それとも、レイは私の方が居なくなっちゃった方が良かったって思う?」

「そんな訳ない!」

「うん。……ありがと。だからね。今のレイが罪悪感なんて持つ必要無いの。あ、でも、有馬さんに嘘ついちゃったのは事実だから、そこは勿論謝って許して貰って、それで終わり! 新たな苺プロの仲間としてがんばろーーー! で良いじゃん」

 

 

 

アイのその行動に対して、誰も茶々を入れたりはしない……が、少しした後に呆れた様にため息を吐くのはミヤコである。

 

 

「ほんっと、極稀に良いママやってる~っての、こうも見せてくるから性質が悪いわね」

「だな。でもま。普段の自分の方をもっと見直せよ、ってなもんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

芸能科2年の校舎へとやってきた3人。

傍から見たらストーキング……な訳が無いが、取り合えずやや遠目で 目的の人物、かなの姿はハッキリと視界に捕らえた。

 

その姿をルビーはじっくりと吟味する。

 

 

「あのよく手入れされた艶々の髪、あどけなさの抜けない童顔……」

 

 

子役時代と比べれば完全に落ち目、オワコンと呼ばれている有馬かなではあるが、如何なる場合においてもオファーがくれば対応が出来る様に自分磨きは欠かさない。

それらの全てがその容姿に表情に、佇まいに全て現れる。

 

 

「加えてあの天然おバカっぽいキャラクター! ……確かにそう。私も確信出来た!」

「あれ? 有馬さん、おバカキャラ、だったっけ?」

「いや、ルビーが勝手に言ってるだけだろ」

 

 

ルビーはぐっ、と拳を握りしめて断言する。

 

 

「長年アイドルを追ってきた私の経験が言ってる! ああいうコはコッテリしたオタの人気をメチャクチャ稼ぐって!!」

「――――褒めてる感出してるけど、それ、絶対喜ばないと思う」

「視点も分析もなんか嫌だなあ」

 

 

元々がアイドルではなく役者。

なのだから、やれオタやら何やらの基準でモノを図られるのは有馬かなとて嬉しくないだろう。全年齢層相手に勝負を仕掛けてやろう! としているのだから。

 

 

「兎に角、レイも覚悟決めて本当のこと話すって言ってるんだ。オレの中での懸念事項はそこだけだった。ルビーの目から見ても人気でそうなら良いじゃん。誘うだけ誘ってみたら?」

「……いやまぁ、そうなんだけどさ…………」

 

 

ルビーもレイの事は聞いてる。そこの所がOKだったら、アクアの様に決断をするだろう。

でも、ルビーはそれだけじゃなかったんだ。

 

 

「ほら、私とロリ先輩にはただならぬ因縁があるじゃない?」

「因縁? ナニソレ。宿命のライバル~みたいな?? 前世とかの設定かな?」

「んなもんあるかバカ」

「バカとは何よぅ! それに設定いうな!! お兄ちゃんズも解ってるでしょ!!」

 

 

中々に辛辣なコメントを頂いたルビーは憤慨して拳を上下にぶんぶんと振って言う。

 

 

「あの人私に対して感じ悪い~~って。絶対解ってる! 解ってるよね!!」

「そりゃ、お前が何度も重曹重曹言うから」

「ルビーが悪い。……そもそも、《10秒》を【重曹】、《泣ける》を【舐める】の空耳はヒドイ分類だよ。きっと。想像しちゃったら、絵面がバケモノになっちゃった」

「むぅ……お兄ちゃんたちが妹に優しくしてくれない……」

 

 

ルビーの場合は幼少期からだ。その聞き間違いの件は。

勿論、聴覚に異常があると言う訳でも、それ以外の聞き間違いがある訳でもない。何故か、かなに対してのみ、あんな面白ワードが完成してしまった。

アクアが言う様に、かなが嫌な顔をしたって不思議じゃない。

それに、それ以外でも初対面の時中々にルビーは失礼な事を言っていた様にも思えるし。

 

 

「優しくないとは心外だな。ルビーのアイドル活動の為にひと肌脱いでやってるのに」

「そうそう。アクアが辛辣なのは、愛情の裏返し~って思ったら良いよ。よっしゃ。んじゃ、僕の方が有馬先輩のトコに行ってこようか?」

「いや。それは俺がやる。スマホで連絡先も知ってるし、いきなり行ってルビー()のトコに来て~だと失敗する可能性の方が高い」

「………そりゃまぁ」

 

 

今から言って、ルビーのお願いを聞いて~だと、即断られる可能性だってある。

約束させて、落ちあう場所を決めて……来てくれたなら、即帰る~なんて事も無いだろう。

 

それに、アクアからのメッセージだ。かなが喜ばない訳がないだろうから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2年教室。

かなは、エゴサーチの真っ最中だった。

無論、その内容はあの《今日あま》のドラマの件。

一般人ユーザーらが何をどうTweetするのかが気になって仕方がない。

 

 

「―――――♪」

 

 

でも、かなの心は晴れやかだ。

これまで、エゴサーチする事自体が苦痛で仕方が無かった。……あのドラマの出来を考えたら当然だ。

 

 

評価はいつ見ても【★★★★☆】

 

 

コメントでは

 

 

『☆1すら入れたくない』

『マイナスでも足りない!!』

 

 

などなど……。見たくない。見る度に心が削られていく様な感覚に見舞われる。

もう慣れた、と口々には言うが……そんなの嘘だ。

 

いつだって、いつだって……辛いし苦しい。

 

 

だから、いつ以来だろうか……。

 

 

 

 

・『今日あま』何で最終回のあのクオリティでやらんかった?? 最後のヤツヤバいよ。あの涙のシーン、思わずこっちも泣いちゃった。

・酷い×∞なドラマだったから、先入観ありありの増し増しだったけど、よく見返してみると、有馬かなの演技だけ頭1つ抜けてるのが解るよな。

 

 

 

 

自分自身を褒めたたえてくれるコメントばかりだった。

そうだ。自画自賛をする訳じゃないが、自分の演技の力量は同年代を対象にしても絶対に負けてない。何処でだって勝負出来る自信がある。……干されて、干されかけてしまってる今は辛くキツイけれど、これを切っ掛けに、よりテコ入れをしていけば、以前と同じように……とまでは言わずとも、少しでもあの輝ける世界に戻れるかもしれない。

 

そう思うと、これからの事に気合が入るし、思わず表情が綻ぶ。

 

 

そして、もう1つのコメントが目に入った。

 

 

 

 

・あのストーカー役、演技めちゃキモくて嫌悪感鹿ないんだけど、よくよく観るとカオ良くて複雑………。

・それよかメルトの方だろ。顔だけマン棒読み大根役者だったのに、最後のアレなんだよ? って感じ。隠してて実は~~、なんてドラマじゃ映えねぇぞ、と言いたい。……大根だった最初からの話は消せねぇんだぞ、と。

 

 

 

アクアの事を褒めたたえて? いる。

そう言う役柄だった。キモイや嫌悪感、なんて誉め言葉だ。

たった1話の数シーン出ただけで反響を呼ぶなんて……と少なからず嫉妬もあったが、それ以上に頬が熱くなってくる。

 

 

役者を続けてくれていた事は嬉しい。でも、それ以上に—————。

 

 

 

「――――っ。っとと、そうだ。メルト君の事も書いてるんだったっけ」

 

 

顔があまりにも熱くなってきて大変だったので強引に1人しかいないと言うのに口に出して軌道修正を図った。

 

メルトの事も話題に上がってる。駆け出しのモデルで、鏑木に見初められる位には整ってる容姿。話題にならない方がおかしいが、あのヘタクソな演技で悪い意味で目立ってしまっていた。

 

悪いコメントで溢れていたんだけど、最後に関してはメルトも例外なく称賛されている。

その理由は————言うまでもない。

 

 

 

星野アクア

斎藤レイ

……ついでに妹。

 

 

 

かなは、それだけの人材を有する苺プロに興味が出てきた。

あのトップタレントであるアイを有するのだ。規模こそは大きくないが、その影響力は最大手と相対したとしても何ら見劣りしないだろう。

 

 

 

 

 

自分もそんな人達の所に行けたら。環境が変われば————。

 

 

 

 

 

そんな考えが頭を過ると同時に、1つのメッセージが入った。

差出人は————アクア。

 

 

 

「!!!!」

 

 

 

ここから有馬かなの逆転劇が始まる—————の、かもしれない。

 

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