認めない子   作:アイらゔU

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第3章 「恋愛リアリティショー編」
第15話 嘘の境界


 

 

「うん、うん………。そっか」

『ああ。お前さんの見立て通り、言った通り。………ヤツ(・・)は色々動き出してるぞ』

 

 

人気のない場所でレイは静かに携帯を手に取り、耳に当てていた。

場所は苺プロのベランダ。以前もそうだが、この場所はある意味秘密の場所になっているので、聞かれたくない事を話す時は丁度良くなっている。防犯の観点から考えてもここがベスト。……無論、あの時(・・・)のアイの様に乱入される危険性は残っているので、ある程度の注意は必要だが。

それはそれとして、話の内容を聞いてレイの思考はかき乱された。そしてレイのその表情はこれまでに見た事が無い程険しく……、いや 憎悪と言って良いモノへと彩られている。

 

 

「前々から鏑木さんから候補(・・)は聞いてたから。……それでも当たりをつけてて良かったよ」

『その辺は感服だ。まるで未来(さき)でも読んでたってのか? って思わせる程にな』

 

 

長らく鏑木にも話を聞いていた。レイの中で組み立て、洗い出し、そしてなるべく拡大せずに限定化させた事が功を成したのかもしれない。

勿論、見逃してしまう可能性だってあった。……本当に良かったと安堵している。

全てを、知っている訳じゃないし、何より自分は変えてしまった。

 

 

見えない部分、隠れた部分で暗躍し犯したものの存在をずっと危惧していたから。

 

 

『今お前が考えてる事を当ててやろうか? ……レイ。オレをあまり舐めるなよ。そんな心配は杞憂だ。オレがマークしている以上、見逃さねぇよ』

「……そっか。うん。ありがとう」

 

 

レイの心配事が、その声色からでも読み取ったと言うのか、相手の指摘は鋭い。洞察力に長けている証拠だろう。……それでも直接会って話していると言う訳でもないのに、電話越しでとは驚きを隠せれない。

 

 

『……だが、聞いてた通り、いや想像以上に危険な相手だ。とっとと通報でもして警察にでも任せた方が良いと思うんだが』

「それは無理だと思うよ。……それに解って言ってるよね? 刑法第61条。……解ってるでしょ? 元刑事さん(・・・・・)

『……………まぁ、な』

 

 

今度は苦々しい忌々しい、と言った様子なのが電話越しにも伝わってくる。それをレイ自身が感じていた。

今回の件……極めて慎重に事を運ばなければならないと最初の内から告げていた筈だ。

元々、レイは1人で対処するつもりだったが、成り行き上強力な協力者が出来たから、その辺りは反芻させている。

 

 

『証拠不十分の不起訴。……仮にその時の(・・・・)音声を出したとしても無理だ。……腹ン中の本心部分まではどんなにやっても撮れないからな』

 

 

ガシガシ、と頭を掻き毟る音も聞こえてきた。

わかりきっている話だと言うのに、何でそんな風に言うのか? ……これもまた、決まり切っている話でもある。

 

 

「……心配してくれてありがと。だけど、やらなきゃいけない事だから。……僕が絶対に」

『ガキの癖にしょい込み過ぎだってんだよ。……ったく。あの件(・・・)。何度でも言うがお前は悪くねぇぞ? そもそも俺だったらその場で〇ってる』

「ははは。流石は元刑事。迫力が違うや」

 

 

少しだけ、空気が軽くなるのを感じると同時に、告げた。

 

 

『それと、もう1つ。お前の母親の件だが』

「あ、うん。……そう言えば、そっち(・・・)もあったね」

 

 

自分自身の両親の話だと言うのに、随分な反応じゃないか……と普通なら思う事だろう。

だが、レイに関して言えばそうは全く、1mmも思わない。ただ、それ以上に申し訳なさだけが出てくるのだ。

 

 

『随分な塩対応だな。……んで、相変わらずの音信不通。こっちの方はまだ時間がかかりそうだ。……まぁ、逝ってる訳じゃないのは確かだと思うがね。そうそうくたばるタマじゃ無え』

「そう言うそっちこそ、肉親(・・)に対して随分と辛辣な物言いだと思うけどね」

『違ぇねぇな』

 

 

ほんの少しだけの乾いた笑みを浮かべて、軈て真剣な物へと姿を変える。

 

 

『耳ダコかもしれねぇが、オレは何度でも言うぞ。……危険な事だけは止めておけ。大人に任せろ。お前はまだまだガキだ。どんだけ凄いヤツだったとしても、オレにとってみりゃまだガキなんだ。……これ以上、自分を傷つけるな。お前を大切に、大事に想ってくれてる人達の顔を忘れるな』

「…………」

 

 

少し、ほんの少しだが、レイの心臓が跳ねた。

心から心配してくれているのが解る。電話越しでもそれは伝わってくる。本当に我が親の肉親なのか? と思わず疑問に思ってしまう程に。幼い我が子をあっさりと捨てたあの母親と同じ血が流れているのか、と。

 

 

「うん。大丈夫。だから心配しないで」

『はぁ。これ以上無いくらいに信用出来ない台詞だな、おい。……まぁ、いい。なんか進捗がありゃ連絡するよ』

「了解です。……ありがとね、お兄さん(・・・・)

 

 

そういうとレイは通話を切った。

その後はスマホをポケットに滑り込ませて、ふと夜空を見上げる。

今日は星の無い夜だった。いつも皆を照らし、見守ってくれている様な綺麗な星々の輝きはそこには無い。

 

 

 

―――でも、良い。それで、良い。

 

 

 

レイはそう思う。

この世界で生きていく目的。最低限の目的を果たさなくて、生きてる価値は無いとさえ思っている。

 

そう考える北斗レイ。

その瞳は黒い何かが光っている様だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな時、だった。

コンコンっ……と、ベランダと部屋を繋ぐ窓を叩く音が聞こえてきたのは。

 

 

「レイー、電話、終わった??」

 

 

その叩く音―――ノックと同時にベランダに現れたのはアイだった。

少しだけ驚いたが、直ぐに何でもない様な顔をするのはレイである。

 

 

「アイ母さん? うん、大丈夫だよ」

「そっか。良かった良かった。……もう少し、遅かったら有馬かなちゃんが殴り込んでくる所だったよ??」

「な、なぐりこみ?? いや何でそんな物騒なこと……」

 

 

アイのあっけらかんとした笑顔で物騒な事を言われると、何となくそのギャップの差が凄すぎて、思わず身震いしてしまうと言うものだ。

 

 

「って、いやどうして、有馬先輩が??」

「う~~ん、私もついさっき聞いたばっかりで……、又聞き、なんだけどね?」

 

 

頭を掻きながら苦笑いをするアイ。

最初の笑顔は引っ込んでいる様だから……これは結構厄介なヤツだ、とレイは直感する。アイが笑顔のまま、変な事や大変な事を言うのは日常茶飯事だが、こうやって時折表情を変えてくるのは、また違った意味で大変な事が起こった、若しくは起こる、と言うモノ。

自分自身でどうにか解決できる自信があるものに対しては、アイは笑顔を崩したりしない。

 

でも―――今回のは……。

 

 

「かなちゃんをスカウトする過程で、その~~ルビーがポロっ、と言っちゃったっぽいんだよねぇ。……レイのこと」

「……はい??」

 

 

思わずアイを二度見するレイ。

 

 

「……えっと、一体何を??」

 

 

何を言ったのか? とレイはアイに聞き返したが……そんなもの、聞くまでも無い事くらい自分の中では解っていた。解っていたが、聞かずにはいられなかった、と言うのが正しい。

何故なら、自分の口でちゃんと説明をする~と事前に言ってあったからだ。

でも、ルビーがポロっと……ともなれば……、その約束を誤って反故にしてしまった可能性の方が遥かに高くて……。

 

 

「だからレイのこと、だよ……えっと~~、つまり、北斗レイのこと」

「…………」

 

 

一縷の望みはあったんだけれど、それは今ハッキリと砕かれた瞬間だった。

 

 

 

なので、レイは慌ててベランダから中へと入っていった。どたばた~と慌てて駆けるレイ。飛び降りる様に階段を下りていき……軈て、足音は聞こえなくなった。

 

 

「…………」

 

 

そんなレイの背を見送った後に、アイはベランダから暗い空を見上げていた。

 

 

【今日は星が見えないな、残念】

 

 

とぽつりと呟く。

 

 

 

アイの瞳は、まるでその暗い空を映しているかの様に、黒く淀んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、1Fでは絶賛修羅場中である。

無論、レイが部屋の中に入った途端にスタートだ。

レイの姿をかなが捕らえた瞬間に弾かれた様に動き始め。

 

 

「説明しなさいよーーーー!!!」

 

 

ゴッ!!

 

中々に重い重い一撃がレイの頬に炸裂した。

衝撃で視界が揺れる。有馬かなは見た目華奢な少女だ。体躯は一回りレイより小さく、この事務所の中でも一番小さい、と言っても良い。

でも、彼女のその一撃は、想像以上で誰よりも重く、強く感じられた。

 

 

「なんで……どうして嘘ついたのよ。私はずっとずっと、あんたの事心配してて………。芸能界で頑張っていればきっとまた会えるって言い聞かせてて……、なんで、どうして話してくれなかったのよ!!」

 

 

そしてかなの声は震えていた。

その目には涙が浮かんでいる。感情が爆発して、抑えきれない想いが涙として溢れ出ていた。

 

【北斗レイ】

 

その存在は、有馬かなにとって特別なモノだった。家族の様と言えばそうだが、そんな浅い言葉で済ませたくない位には、特別で重いものだった。

共に過ごした時間、切磋琢磨しあい、この世界で生きていく為に駆け抜けようとした戦友。

だから、学校で視た時、心臓が跳ねた様な気がした。アクアと再会した時とはまた違う種類のもの。……そして、違うと言われて、それを聞いて……また、心が痛くなって……。

 

 

「………ごめんなさい。有馬先輩」

 

 

レイの声は静かだった。

だが、その言葉に込められた感情は何よりも重く感じられた。

かなとて、長年役者はやっていない。人を見る目だったり、ある程度の言葉の真意や重み、それらの違いの機微は読み取れるつもりだった。

 

あの時謝ったレイの言葉と、今謝ってるレイの言葉。

 

それらは等しく重く、決して軽いものじゃない、と言う事くらい解る。そして、自分の中に居る北斗レイは、嘘をついて平気でいられる様な男じゃなかった。

 

 

「ご、ごめんねレイお兄ちゃん! それに先輩も! お願いだから聞いてっっ!! 今回のは全部私が悪かったから! 私がちゃんと順序良く説明してれば―――」

「いや、ルビーは説明するんじゃなくて、黙ってたら、が正解。最初からレイに任せておけばよかった、が正解」

「ぅぅぅぅ……そ、その通り、です……」

 

 

ルビーもルビーでかなり落ち込んでいる様だった。

アクアの辛辣な意見も真っすぐ受け止めるしかない。ぐうの音も出ない。

発端はルビーが北斗レイと星野レイの関係性を、かなをスカウトする際に思わず言ってしまったのが始まりなのだから仕方がない。

 

 

「有馬かな。一先ず言ってた通り。【一発】は入れたし、レイ自身もそれを受け入れた。……クールダウンできそうか?」

「………………」

 

 

ぎゅっ、と口を噤むかな。

アクアの言う通り、一度感情が爆発した故に、解消とまではいかないが、言葉を聞き入れる事くらいの隙間は出来た―――と思う。

 

 

「アクア」

 

 

レイはアクアの肩を掴んで後ろに追いやる。

 

 

「ちゃんと、ちゃんと僕の口から説明するから」

 

 

そう言ってかなを真っすぐ見据えて―――事の経緯をレイは説明するのだった。

 

 

北斗レイと星野レイの事を、レイが覚えている範囲で全て包み隠さず説明をする。

それを補足する様に、肯定する様に、義両親であるミヤコ、そしてアイも言葉を紡ぐ。

 

それらの説明をかなは決して口を挟まず、黙って聞き入れた。

 

 

――――アクアは、そんなその光景を見て、冷たい眼を向けていた。

 

 

それは、レイやかなたちに向けられたモノではない。

嘗ての有馬かなと北斗レイの間にあった絆は、もう二度とは戻らないのだろう。

失ったものの大きさを、改めて実感すると同時に、その冷たく暗い炎は、アクアの瞳に宿る。

 

 

【レイはここに居る】

【誰も傷ついていない。皆幸せだった】

 

 

心の何処かでは、そんな想いはあったのかもしれない。

それがあの時の、北斗レイの願いだった筈だから。……その想いを無碍にせずに、この生活を大事に、大切に暮らしていければ……と言う甘い考えは持たない、と改めて思う事にした。

 

最後の願いかもしれない。

 

けれど、奪ったモノの重みがのしかかる。……そして、それを必ず償わせる。思い知らせる。このまま無かった事には絶対にさせない。

 

 

 

 

 

 

 

かなは、レイの説明を聞きながら何度も口に出かけた事を堪えた。

 

 

『なんですって……?』

『そんな、嘘、でしょ?』

 

 

驚愕する事ばかり。

確かに病院に運ばれていた事は知っていた。何度かお見舞いに行った記憶もある。

でも、転院した、と言う話を聞いたのが最後で、何処にいったのか解らなくなったのだ。

 

 

……まさか、レイが記憶障害を患ったなんて思いもしなかった。

 

 

『どうして言わなかったの!?』

 

 

と、また怒りたくもなった。怒りの感情が、発散した筈の感情がまた戻ってきた様にも思えたが、かなはそれも押し殺した。

 

演じてきたからこそわかる。その手のドラマを演じていたからこそ、葛藤が孤独感が……解らない訳がない。

フィクションの世界を演じていた。それがまさか現実で起こるなんて、思いもしない。

 

 

「ごめんなさい。……僕は、嘘をついてしまいました。僕は北斗レイとは違う、から。……そう思っていたから」

 

 

想像を絶する孤独をその内に宿し、暮らしてきたと考えれば、その苦悩は……解る。演じる為に理解しようとしてきた今までの積み重ねが、よりかなの理解度を深めていた。

 

だから、レイを罵倒するなんてもう出来ない。出来る訳がなかった。

 

 

「そう、だったんだ……」

 

 

ようやく絞り出せた言葉。

レイの言葉を聞きながら、彼もまた自分とは違う孤独を。……比べ物にならない程の孤独を抱えていた。だと言うのに、自分は安易にその心の傷に、触れてしまったんだ。

 

 

「ごめんね。私の方こそ、ごめん。……知らなかったとはいえ、勘違いでこんな事を……。手まであげて……」

「んーん。でも、良い気付けになった、って思ってるよ。……有馬先輩に来てもらおう、ってなった時。ちゃんと罰が欲しかったから。……想像以上に重たい一発だったけどね」

 

 

頬をすりながら、レイはにこっと笑う。

その笑顔は知ってる。かなも知ってる。……記憶は無いのかもしれないが、彼は彼だ。彼の本質は同じなんだ。

どうしようもなかった自分の傍に居てくれて、優しく諭してくれてた。とても優しい人なんだ、って。

 

 

「レイ。あなたも辛かったんだね」

「……辛く無かった、って言ったら嘘になる、かな。でも、大丈夫なんだ。僕には皆が居てくれたから。それに、有馬先輩にも打ち明ける事が出来た。……先輩には申し訳ないけど、ちょっぴりホッとした自分も居るんだ」

「それで良いのよ。あなたは、あなたのままで良いんだから。レイが救われたって言うなら、私にとっても嬉しい」

 

 

そう言ってかなとレイは握手を交わした。

そんな2人を見守る面々。雪解け出来た事が心から嬉しかったのは言うまでもない。

 

 

「ううう~~~~、よ、よがった、よがっだ………でも、でも、わだじも、ごべん、ごべんなさいぃ……」

 

 

そんな中、ルビーは一番号泣だった。

それも仕方がない事。発端は自分であり、自分の不注意でこのような事になってしまったのだから。

 

 

「ルビーも泣かないで。大丈夫だから」

「で、でもぉ、でもぉ――――レイ、にぃ……」

 

 

ぐすぐす、と涙を流す。

そんなルビーの頭を撫でてあげた。

 

 

「ありがとう、だよ? 寧ろ」

「えぇ……?」

 

 

感謝の言葉を言われるなんて思っても無かったから、ルビーは思わずレイを見上げた。

いつも通りの笑顔が、微笑みがそこにはあった。

 

 

「本当の事はいつかは必ず言わなきゃダメだったんだし。……僕だって勇気が出ずに引き延ばしてた可能性だったある。……結果論だけど、有馬先輩と向き合う事だって出来たし、それに―――」

 

 

レイは頬を触って更に笑っていった。

 

 

「有馬先輩にも言ったけど、この一発は僕への罰だって受け取ってる。どんな事情があったにせよ、嘘ついちゃったのは僕自身だから。誰が許そうとも、その事実は変わらないから、ね」

「ああもう。そんな泣かないの。アイドルやるんでしょ? ならもっと強くならないといけないわよ」

「ぅぅぅ~~~~~」

 

 

ルビーとかなは、只ならぬ因縁が!! みたいなことをルビー自身が言っていた様だが、この時ばかりはそんな因縁など最初から無かった、と言わんばかりにルビーを慰めるかな。

 

 

何となく、何となく―――上手くいくだろう、とミヤコは思っていた。

新生B小町。

 

 

 

「はぁ、アクアの勧誘の仕方やルビーの地雷踏み。怒涛の連続だったけど、兎に角形になったようでホッとしたわ」

「だよねだよね。うんうん。ああいうぶつかり合いが合って、どんどん上に登っていくって言うのが王道ってヤツだよ」

「それはそうと、アイ(アンタ)アクアの育て方絶対間違えてるわよ。どうやって有馬かな(あの子)を引っ張ってきたか聞いてる?」

「え? なにそれ」

 

 

アイとミヤコの会話、である。

今の修羅場からの雪解け、解決編と言う一連のドラマの様な展開を見せられて忘れそうになっていたが、アクアの有馬かなスカウト手法も中々えげつないものだった。

 

 

「ただの人読みだって。【共感力が強く】て【圧しに弱い】。だから【泣き落とし】や【ごり押しが有効】かな? と思って試したら上手くいった、だって」

「へーーー。それの何がいけないの??」

「………はぁ、あんたも夜道には気をつけなさい。と言うより、絶対1人で夜道なんて歩かないでね」

「解ってますよーだ。……それに、アクアはそれ本心で言ったんでしょ? 嘘ついた訳じゃなくて、有馬かなちゃんの事を本心でそう思ってるなら、私はそれで良いって思うよ。……本当で、愛を語れるなら、それで良いじゃん」

 

 

小っ恥ずかしくなるようなことを臆面も無く言い切るアイに、ミヤコは頭を押さえて苦笑い。ずっとずっと嘘をつき続けて、それが軈て本当になれば、と思って過ごしてきた彼女にとって、最初から嘘をつかずに、本心で引き込めた~と言うのは正解だと思っているのだろう。

 

 

「……はぁ、まぁあの子自身【嘘ついてない】って言ってたし。まぁ、それで良いわね。色々気を付ける様には言ってあるし、何とかする、出来るでしょ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一通り落ち着いた後。

 

 

「……いつまでもウジウジ考えてても仕方がないわ。プラスな事だけを考えてゆっくりと昇華していく」

「うん。よろしくお願いします」

「それはそうと、あんたのあの時の演技指導、なかなか大したものだったわね」

 

 

今日あまの舞台で、メルト相手に色々とやっていた事をかなは言っているのだ。

あれから間違いなくメルトは変わった。それは客観的に見ても、今まで辛辣過ぎる、それ以上の罵詈雑言だらけだったレビューが良い方向に変わったのだから歴然とした事実なのだ。

 

 

「あはは。ありがとうございます。僕自身、自信になりますね」

「……役者としての才能もあった、って事なのね……」

「才能もあった、と言うよりは……その、ずっとずっと、演じようとしてた杵柄があったから、と言いますか……」

「……あー」

 

 

北斗レイはもう居ない。

でも、それでも皆の為に、大丈夫だと安心させるために、北斗レイを演じる星野レイが生まれた。そのことを言っているのだろう。なら、そのキャリアは常に演じる24時間365日、と言っても過言じゃない。

普通の子役や、その他の俳優陣のそれより桁が違う、とも思える。

 

 

「何らかのカンフル剤を、って考えていた所に渡りに船。……あんたやアクアから技術を盗んで、自分のモノにする。うん。方向性は決まったわ」

「方向性って……。私たちでアイドル活動しよう! って方向は?」

「それは次いで、ね」

「ひどっっ!!」

 

 

ルビーもすっかり元通り。

元々、いつまでも引きずるような性格じゃなかったから、ある意味良かった。

 

 

「それで? アクアとあんたは何か、2人で一緒の仕事~って聞いてたけど、何するの??」

「え? あ、その――――えーーっと……うん。ある、一緒、だよ?」

 

 

今の今まで淀みなく返答をしていたと言うのに、ここにきて歯切れが悪い。

 

 

「?? なに? どうしたの?」

「…………」

ルビー(あんた)まで渋い顔して。一体なにがどうだってのよ」

 

 

どう説明したら良いものか……と、レイは思っていたのだが、ここでもルビーが先行してくれる。

悩みや焦り、それらを一点突破してくれるのは本当にありがたい事……なのだろうか??

 

 

 

とにもかくにも、かなにノートパソコンの画面を見せた。

 

 

 

その画面を見たかなは――――。

 

 

「えっ……!?」

 

 

一瞬、言葉が詰まり……即座に決壊する様に吐き出される。

 

 

 

「恋愛リアリティショー!!?」

 

 

【今からガチ恋♡ 始めます】

 

 

もう既に、プロモーションビデオも作成済み、である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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