認めない子   作:アイらゔU

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第19話 光と闇の境界線

 

 

夜の闇が密やかに息を潜めるようにして、二人を包んでいた。

男と女は言葉少なに向かい合い、その静寂が一層、不穏さを漂わせている。その空気はとてつもなく……重い。

 

 

そして、場の雰囲気を一言で表すなら………【不吉】が似合う。

 

 

 

 

「今回のターゲット、清水沙良、沢尻結衣……。それも全て失敗です。こうも続くと最早誰かが妨害している、としか思えません」

 

 

 

女の冷えた声が、微かな動揺を隠しきれずに零れる。報告を受けた男は、ゆっくりと瞼を閉じた。そのまま、ただ沈黙でそれを受け入れた。

彼の周りの空気がゆっくりと重く変わっていくのその女は、かすかな恐怖を覚えながら感じ取っていた。だが、ほんの少しだけ恐怖を覚えただけ。それ以上でもそれ以下でもない。

 

 

 

「――探偵を雇っている気配もありません。何より場所も全てがバラバラ。費用を考えても現実味があまり…………」

 

 

 

実行場所に選んだ所も全国各地。そして対象が入ってる事務所もまた別々。

 

 

「なのにも拘わらず全てが躱され、尻尾を掴ませない。……それこそまるで雲をつかむような感覚です。なので今回も手掛かりは一切つかめていません。周囲をこれからも探らせてますが、報告内容は全て肩透かし。……全く無駄足を踏んでいます」

 

 

ここまでくればただの偶然で片付けたい気もするのだが、自分の本能が警笛を鳴らし続けている。危険だと鳴り響いている。故に無いと判断はできない。

 

 

 

 

「―――豊富な資金源、何よりよほど慎重で、計算深い相手と見ていいでしょう」

 

 

 

 

それが報告の全て。

調査報告書も目にする。

 

そして―――彼は、微かに笑ったようだった。しかし、その笑みには、確かな異常性が滲んでいた。心の底に沈んでいた狂気が、少しずつ水面へと浮かび上がり始めていた。

 

彼女がそう報告する以上、相手は確かに、ただものではないのだろう。それでも……

 

 

 

 

「僕達の事を、邪魔をするなど、許されないことだよね」

「……当然です」

 

 

 

 

男の心の奥で密かに、初めて「怒り」という感情を感じ始めていた。

彼の心は、アイと共にあることで初めて生き生きと満たされる。傍にいられなくとも、共にあれる事は出来る。……そしてそれが断たれた瞬間、すべてが無意味になる。

ただただ、意味をなさなくなり、ひたすら虚無へと沈んでいくかのように。だが、それでも、それでも、彼女のために捧げられる尊き犠牲(・・・・)が、なおも彼女を輝かせていくことができるなら、それでいい。

 

だが今、その「輝き」を汚そうとする者がいる。

 

そう意識せざるを得ない状況になってきている。

それを意識すれば自然と自分の手が小さく震えているのを感じる。

 

それがかつて自分が知らなかった「怒り」という感情であることを、この時ようやく理解する事が出来た。

 

 

 

「――アイのために。それを邪魔する者はすべて消えてしまえばいいよね。彼女だけが、その至高の存在で在り続ける為にも不要だよ」

 

 

 

つぶやきに近い声が闇の中でこだました。彼の視線が手元に落ち、自らの指先がかすかに動くのを見つめた。

 

「……そうか、そうだったんだ。これが【怒り】なんだね」

 

その声には、初めて見つけた感情への興味と、自分自身に芽生えた新しい一面を確認するような響きがあった。その瞬間、彼の心には、その瞳には、黒い星が輝いているかの様な、そんな気がした。

 

今は慎重に動くべき時、なのだろう。だけど止まる訳にはいかない。何者かの妨害がある。……不本意だが今まで以上に慎重に慎重を重ねなければならない。

 

次にアイに捧げるための【生贄】を思い描く。

足りない、まだ、足りない。渇望して止まない。

 

彼女を超える者など、あってはならない。だが、それも必要。それこそが、最高の贄となるのだから。

 

次々と、黒い世界を思い描く。それはやがて広がり始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は、その物語は移り変わる。

1人の男が、暗い路地の間から煙草を吹かせながら、ゆっくりと出てきた。

煙草の煙が夜の冷えた空気に溶け込み、ゆっくりと闇に吸い込まれていく。その青白い煙を眺めながら、探偵:北斗夏樹は黙然と目を細めた。

冷たく鋭い目の奥に、彼が抱えている葛藤が垣間見える。

 

―――レイ……。お前はいつも、俺が知っている誰よりも強い意志を持っているな。あんなヤベェ奴を前に、一切ブレねぇ。とんだ精神力だよ。

 

彼の思考は、いつしか甥・レイの顔へと向かっていた。バカな妹が残した唯一の存在――それがレイだ。

もう親はいない。……妹も居ないものとした。その精神性に危うさは当初から思っていた事だ。だが、レイの才能をもってすれば、少なくとも表面上は【良い母親】である事が出来るだろう、と楽観視していたのがいけなかったのか。

……いや、あんな事件(・・・・・)が起きるなんて一体誰が想像できると言うモノか。仕方なかったんだと己に言い聞かせ、煙を吐く。まるでその想い事煙に巻く様に。

 

 

「……そろそろ、奴さんらはそう(・・)考えるころ合い、かね」

 

 

様々な犯罪者を見てきた経験と勘。それらだけは現役連中にも負けてないと自負している。如何に類を見ない程の外道の黒を相手にしているからと言って、その思考回路が鈍る訳はない。

 

ただ―――レイのことを思えば思うほど、危険な目には遭わせたくないとも思う。

それでも……レイの瞳に宿る決意の光を見る度に、夏樹は胸の中で何かが疼くのを感じていた。

 

「バカな妹の代わり、ってわけじゃないんだがな……。親になれねぇオレなんかが、よ」

 

嘗て別れた女房と子供の事を思う。

居なくなって初めて気づいたかけがえのないもの。損失が大きすぎるが故に埋められず、親になってはいけないと思う様にもなってしまう。

 

「……はっ」

 

何を考えてるんだ? と呟きに自嘲の笑みを浮かべ、ふっと大きく煙を吐き出した。

代わりと言う訳じゃない。だがそれでもレイは、彼にとって今や唯一の肉親であり、決して失いたくない存在だ。あんな思いは二度と……ゴメンだから。

 

でも、だからこそ思う。

そんな大切な存在を、まさか自ら危険に踏み込ませることになるとは――。

 

けれど、あの「眼」を見てしまった以上、彼の決意を踏みにじるわけにもいかない。レイは確かに、ただの子供ではない。その内に秘めた意志の強さが、彼の心に重くのしかかってくる。

 

あのレイの目には、例え行く先が死地であったとしても止まる事の無い程に揺らぐ事のない信念が宿っている。それでも……俺が最期の一線だけは越えさせない。

 

内心でそう強く誓いながらも、彼の心には消えない不安と迷いがあった。甥を守りたい気持ちと、彼の決意を尊重せざるを得ない苦しさ。二つの感情がせめぎ合うたびに、夏樹はふと己の無力さを感じずにはいられなかった。

 

 

そのとき、ふと口元が緩む。レイが自分の全力で挑んでいるのを知りながらも、彼が思い通りにはさせないという矛盾が、どこか滑稽に思えてしまったのだ。

 

「……そろそろ、こっちの存在にもいい加減気づく頃合いでもある、か」

 

そうつぶやいた言葉は、夜の闇に溶けていった。タバコをもみ消し、夏樹は無言で空を見上げる。星も見えない暗い夜空に向かって、彼は最後の決意を込めるように、自らの覚悟を再度固めた。

 

彼にとってレイは、決して失うことのできない存在。だからこそ、最後の一歩だけは、何としても止めてみせるつもりだ。その決意を秘めながら、彼は静かに闇の中へと消えていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、更に他第三者の物語も―――時計の針を先へと進めさせていた。

 

「…………」

 

 

夜の暗い空を、眺める。それが日課になってもうどれくらいになるだろうか。

瞬く星々は、人々を空から見守ってくれているかの様。でも―――あの時は護ってくれなかった。最後の最後まで、消えゆく魂をこの場に留めてくれなかった。

 

 

「………言い訳」

 

 

ぼそり、と呟く。

全ては自分が招いた事。なのにも拘わらず言い訳なんか口に出来ない。考える程度で納めていてよかった、と思ってしまう。口に出していたら、思わず自分の頬をひっぱたいていた所だ。

流石に顔にケガをする訳にはいかない。……仕事にも支障をきたす訳だから。何より家族に心配をかける訳にはいかない。

 

 

「……やれる事。私がやれる事を、ただやるだけ」

 

 

星に願いを込める。

どうか、願いが叶います様に……と。他力思考かと思われるかもしれないが、願う事くらいは許してほしい。罰なら―――受けるから。

失われたモノを、取り戻せるなら何でもするから。

 

 

――もう1人にさせない。

 

 

暗い星が、その瞳に宿り……決意の強さを表していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面、及び時系列が変わり【今ガチ♡】収録中。

参加者の1人であるゆきを皆で囲み、驚きの声をあげていた。

それも当然だ、彼女は【今ガチ♡】を辞めたい、と言ったのだから。

 

 

「こんな途中で!!?」

「なんでそんな事言うんだよ!!」

 

 

男性陣が主に前だって、ゆきの真意を問いただす。

彼女が突然訳もなく辞めたいなんて言う訳がない。言うなら自分達はプロなのだ。プロが仕事を放り出して辞めるなんて早々ない、と思っているから。

 

 

「……最近ね。学校の男子とかがからかってくるんだ。『お前、こういう男が好きなんだー』とか。自分の好きって気持ちを、皆に見せるのって、こんなに怖い事ないよ」

 

 

目に涙を溜めるゆき。軈て一筋となって目から流れ落ちた。

それをそっと拭う様にハンカチを伸ばすのはフリルだ。

 

 

「……それだけじゃない、よね。ゆきちゃん」

「………っっ」

 

 

ゆきは、フリルの指摘に思わず目を見開く。

どうして? とその顔は言っているかの様に見えた。

 

 

「私だって解るよ。だって、今まで一緒にやってきた仲間なんだもん。ゆきの事、傍で見てきたんだから」

 

 

あかねも、フリルの隣にたってゆきの肩を摩った。

2人の真っすぐな目を見たら……ゆきは、もう黙っている訳にはいかなくなってくる。嘘をつくのがこんなにも難しい事だったなんて、思いもしなかった、と内心毒づく。

 

 

「……私、2人の事も大好き」

「……うん、嬉しい」

「ありがとう、ゆき。私も」

 

 

ゆきは、また涙を流して……胸の内を訴えた。

 

 

「……私の学校でも、フリルちゃんの大ファンがいて……、『不知火フリルの邪魔をするな』って、きつく言われた事もあった」

「ッ………」

 

 

凡その予想は立てていたのだろうフリルだったが、いざ直接言われるとなると、やはり応えるものが合った。

 

 

「それと、あかねの事だってそう。……劇団ララライのエース、だもんね。界隈じゃ人気だーって事も、……改めて、今回の仕事を通して知ったんだ」

 

 

フリルとあかねによる、レイ争奪戦。

最初こそ、何で名も無い男を名のある2人が取り合うの? と疑問視する声の方が多かったが、独特の世界を作る3人の絡み、何より恋愛事での三角関係。否応なしに注目されるコンテンツ。注目されればされるほど、彼女たちの素性チェックにもはいってくる。フリルは既にトップスター。故に調べるまでも無い事だが、そのフリルに物怖じせずに、インパクトを残し続けるあかねの存在もまた異質に映っている。

フリルがいなければ、一瞬で全てをもっていく、視線を向けざるを得ない不思議な引力を持つ存在。……そう、まるでアイの様なカリスマ性がそこにはあった。

 

 

「私は……2人にも負けたくないって思った。それでも楽しくて、心地よくて、そんな素敵な現場だな、って思ってた。自分の好きを皆に見せるの、確かに怖かった。でもそれ以上に好きになっちゃった。……だけど、観ている皆にはそう受け取ってもらえなかったんだ」

 

 

誹謗中傷めいた事もされた。

それぞれのファンから、熱心なファンだからこそ、彼女たちの前に立とうとする2人に比べたら無名のゆきは格好の餌食になってしまったんだ。

 

 

「……っそれは」

 

 

それは、大なり小なり、他のメンバーも解っていた事、だったのかもしれない。今回に関してはあかねがかなりの存在感を出したが為に、希薄になっていたのだが、本来は不知火フリルと言う大きな光を前にして何事も無い訳がない、と心の何処かでは思っていた。

 

だけど、フリルは皆の事を分け隔てなく接し、更には裏でも自分だけを使わず必ず平等にと制約も取り付けてくれていた。純粋に交流を深め、絆を深めたい、と思ってくれていたのが心から伝わる。

 

 

「私……2人に嫌われたくない。嫌いにも、なりたくない。……だから」

「ばかやろう!! なんで、なんで1人で抱え込むんだよ!!」

 

 

そんな時、一歩前に出てくるのはノブだった。

一番ゆきと絡む事の多かった人物でもある。

 

 

「1人じゃないんだ。ここには皆が居る。……オレだっている。傍にいる! それでも辞めるって言うなら、オレだって一緒に辞めてやるからな!! それと―――」

 

 

ノブはフリルやあかねの方を見て言いきった。

 

 

「仮に、本当に、マジで、止めて欲しくないけどマジで辞めるってなったとしても! オレはフリルの事もあかねの事も、大事な仲間だって思ってる。それだけは絶対に曲げない。変えないからな!! これだけは忘れないでくれ!! お前たちのせい(・・・・・・・)なんかじゃ、絶対ない!!」

 

 

原因は、自分に、自分達にある。

フリルもあかねも、そればかりはどうしようもない。止める様にどう訴えたとしても……増長するだけの可能性だってある。言わせている(・・・・・・)なんて思われた日には、とんでもない事になったって不思議じゃない。

 

 

「ありがとう。ノブ君。……それとゆきちゃん」

 

 

フリルは、ゆきの方を真っすぐに見て―――言った。

 

 

「これだけは、言わせて」

 

 

 

――次回予告――

 

起こるべくして起きた事態だったのかもしれない。

想いが強い、強すぎるが故に起きた軋轢。

ゆきは本当に番組を降板してしまうのか。……そして、フリルがゆきに言った事とは?

 

この後、衝撃の展開が―――

 

 

 

 

 

「やっべ。めっちゃ熱い!!」

「うっそーー! ゆきちゃんだって普通に面白くおかしくあかねやフリルちゃんに絡んでただけなのに、文句言う隙間なんてある??」

「うっわ~~、ネット民でしょ。そいつ。絶対引きこもり! 許せないよね!!」

「止めちゃだめだよぉ! ノブ君だっているじゃん!! 三角関係ばっかりになるのも悪くないけど、胸やけするから王道恋愛がみたいのーーー!」

 

 

そして、ネットを中心に大きく騒ぎだし―――軈てYaho! Newsに掲載されるまでに至った。

 

 

「わーーー! やった! 記事になってるよー。見て見て! 私もちょっとは視聴率に貢献できたかな??」

「おお……。結構コメントもついてるな。貢献って言えば今回の話、MVPだろ」

「えへへ! やった! アクアありがとう!」

 

 

けろっ、と持ち直したゆきを見て、思わず目を丸くさせるのはあかねである。

 

 

「え、えっと。本当に辞めるの……??」

「えー? 辞めれないでしょ。契約残ってるのに」

「!! え!! じゃあ、今の演技ってこと!?」

 

 

あかねは更に目を丸くさせた。

演技を生業にしているあかねから見ても、ゆきのそれは堂に入っている、と言わしめる程のクオリティだったから。

 

 

「えっへへ。あかねにそんなに驚いてもらっちゃった~ってなると、役者の道も私向いてるのかもね~」

「うん。とても上手だった。びっくりした」

「わーーー! フリルちゃんからも?? 嬉しい!」

 

 

子供の様に燥ぐゆき。本当に今までの涙はなんだったのか、と思いたくなる面々である。

 

「へっへへ。オレはそうだろうな~~~って思ってたぜ?」

「そう? ノブ君。滅茶苦茶慌ててたって感じだよ? 汗もやばそうだ。流石にそれは自在に操るって訳にはいかにでしょ?」

「うお! ネタバレするなよひかり!! 流石に無理無茶だよ」

 

背中をつん、とつつくレイ。

秒で見抜かれたノブに対して笑いが沸き起こる。

 

 

「凄いよね。決して嘘じゃない。だからこそ、芯に響いてくる、って感じだった」

「うぅ~ん。流石ひかりっ! 2人に言い寄られるだけの事はあるねっ!?」

「……や、その言い方はちょっと止めて欲しい、かな??」

「あかねももっともっと頑張らないと、フリルちゃんにとられちゃうよ??」

「ん」

「あ、ぅうぅぅ……」

「あははぁ~~。あかね、()に戻っちゃったネ。普段からあのモードだったらいい線行くと思うのに~」

 

 

フリルがVサイン。あかねは顔を真っ赤にさせた。

 

あかねのこの今ガチにおける雰囲気仕草は全て役を演じているからこその芸当とのこと。故に元々の性格のあかねに戻ると――――積極性が失われ、直ぐに顔を赤くさせてしまう程の初心になってしまう。

その逆で、レイは初心初心モードは収録外では半分は解けてしまっている。初心モードがかなり好評だ、って事にもなってるので、解けている部分に関してはなるべくカメラに映らない様に、そしてカメラマンたちも良い絵と被らない様に最低限の事をやってくれている。レイも意識している。絶妙なバランスでこのクオリティを生み出しているのだ。

 

 

「ゆきのアレ全部嘘って事なの??」

「うんや? ちょっと自分の気持ちを膨らませて話しただけだよ。ほら、フリルちゃんのファン層なんて滅茶苦茶広い上に多いから、どうしてもエゴサしちゃうと目についちゃうし、あかねのララライでの活躍だって凄いから、全く同じ理由。こーやって仲良し~な所も見てもらいたいよね」

 

MEMちょの問に対してゆきはそう答えた。

レイが言った通り、全て嘘じゃないとのこと。その場その場に応じて臨機応変になんでも使う。本当に器用で良い性格だな、とアクアは思ったりしている。

 

 

「アクアのとこも大変じゃないの? ほら、ひかりって同じ事務所だし。今のゆきの話を聞くと―――ひかりの方もやばいんじゃね? って思っちまうよ」

「……ああ、その辺は大丈夫。ウチの事務所総出で全力でカバーしてるから。色々力入りすぎててとんでもないくらいに」

「……そりゃあ……まぁ、安心だわな」

 

 

アクアの静かだが、自信満々な感じを見てケンゴは苦笑いをした。

苺プロは、確かに規模としては小さいかもしれないが、影響力は他の大手に負けてない。寧ろ年々増してきていると言って良い。何故か? 決まっている。あの伝説のアイドルで現在フリルをも凌ぐタレントのアイが所属しているのだから。

 

そのメンバーが全力で~~となったら……そりゃあ安心だ。ちょっとでも攻めたヤツが可哀想だと思えてしまう程に。

 

 

「こらーーー! ひかっち!! じゃあなにかーー! メムはバカ。自分のチャンネルでバカやってるから実際にバカだから~~って言ったのも本当のマジだから受けた! 芯に響いたって言うのかーーー!」

「わぁぁ!! そ、そこまで言ってないよ! メムさん待って待って待ってーー!!」

 

 

レイとMEMちょが楽しそうに絡んでる。

あかねが羨ましそうな眼で見ていて……フリルはどっちも好きだからか、まだ楽しそうだ。

 

 

「よっしゃ! アっくん。今日こそは飯行こうぜ!! 因みにひーちゃんは来るんだって」

「え?」

 

 

アクアは少し驚いた様に、レイの方を見た。

いつもは家で一緒に、家族皆で晩御飯を食べているのに、今日はどうした? と。

 

 

「だって、その……、メムさんが焼肉食べ放題だ~~って、ノブから聞いて……」

「え??」

「そうそう! しかも安い店じゃないよ! そこそこするとこ」

「ええ!?」

「メっさんが奢ってくれるってんなら行く一択っしょ!!」

「ええええええ!! ちょっと待って待って! 全然聞いてないし、言ってないよぉ!!?」

「……奢られる。新鮮で良い響き、かも」

「いや、フリルちゃんは焼肉なんてよゆーでいつも食べてるんじゃ……!!?」

「んー……やっぱりスタイル維持大変だから、そんな頻繁には無理だよ。でも、それ以上にこうやって奢ってもらうのは中々ないから。堂本君にはよく奢られるけど、こういうのとはまた違うでしょ?」

 

 

とんでもない大物の名前が出て一時騒然とした―――が、それで有耶無耶に出来る訳もなく、フリルの眼差しも突き刺さり、更にはノブに最近の登録者数事情、取り分もバラされ………最終的に。

 

 

「うらぁぁぁぁ!! 言った言った言ってやった!! 二言はなーーーい!! ついてこいやーーー!!」

 

 

やけくそになるMEMちょだった。

 

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