認めない子   作:アイらゔU

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第30話 眩しさの向こうへ

 

 

——また悪夢から覚める。血塗られた光景から解放されると同時に狂おしい程の後悔と遠い日の無力さを思い返される。

 

 

目を閉じる度に、あの遠い日の光景が蘇ってくる。血に濡れた光景、背中に突き刺さる凶刃。零れ落ちる笑顔。

 

 

 

『……ねえ、どうしてこんなに苦しいの?』

 

 

——これは夢? 悪夢?

 

 

 

それは嘗ての自分自身の自問自答なのか、あの凶刃に倒れた彼の言葉なのか……。。

それら脳裏に描きながら、軈て1つの結論が導き出される。

——これは現実だと言う事に。

 

全ては過去のものだった筈なのに、また再びあの悪夢が現実味を帯びて迫ってきている。だからこそ、弾かれた様に動く。

二度と、もう二度とあんな思いをしない為に。失わない為に。

 

 

 

 

全てはあの出会った時から……始まっていたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

——約10年前——

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

苺プロダクションは今まさに波が来ている。好調と言って良い。

 

それは当然、アイのB小町の活動に加えて、歌番組・ドラマ等各方面に引っ張りだこになってきた為だ。

大手メディアからも注目されて、順風満帆とはまさにこの事だ、と言える程に。潜在的な問題点は確かに存在するかもしれないが、少なくともこの大きな波には乗らなければならない、乗るしかない、のが苺プロの方針であり、今後も()に向かってフルスロットル~と言った所で更なる風が事務所に吹きこむ事になる。

 

 

 

 

「苺プロに大型新人がこの度入ってきますよ」

 

 

 

 

本日の一番の話題はミヤコの一言から始まった。

だが、そんなミヤコの言葉にアクアは眉間に皺を寄せる。

 

 

——大型新人……、ね。

 

 

何故ならアクアにとって、正直大型新人なんて言われてもピンとこないからである。

でも、それも仕方ない事なのだ。

 

 

苺プロ(ここ)に来ても、ママを前にしたら直ぐに掠んじゃわない? 何せママがぜーーんぶ掻っ攫って食べちゃうんだし?  まあ、それは当然で仕方のない事なんだけどっ!?」

 

 

そう、胸を張って答えるこのルビーの辛辣過ぎる一言。アクアは苦笑いをしつつも否定はしない。その通り過ぎるから、である。

 

完全な身内びいきでマザコンだと思われても致し方ない面があるが、それらを考慮したとしても、アイと言う存在は超が付く巨星。一番星の生まれ変わりとはよく言ったモノで、誰もが目を奪われる存在なのだ。

そんなアイが所属している苺プロに今更? と言う考え。

 

 

「ふふ。そんな事ないですよ? 何故なら、引けを取らない所か、先へ行く人ですから。あ、それに2人ともよーく知ってる人で凄い人です」

 

 

ミヤコの言葉を聞いて益々解らなくなって困惑するアクア。

新人なのに自分達が知っている? 凄い人?? 色々と考えてみるが中々に思い浮かばない。

アイで勢いがついたと言っても、苺プロはまだまだ小規模の事務所だ。大型なる新人が他から移籍してまで入ってきたい、と思える様な場所か? と問われれば首を横に振りたい。何せ、アイのワンマンと言われても仕方がないくらいにアイだけが輝いている事務所だから。その輝きはアイだけに留まらず事務所そのものが絶好調! と思わせる程だから。

 

だからこそ、その大型新人が此処へ来たとしても、人気を博すどころか、瞬く間に塗りつぶされてしまうだろう、と思う。

 

 

「(仕方ないよ。だって、アイだし)」

 

 

アイとはどこまでも輝く存在。

一番星の生まれ変わり。

煌めくステージに立てば、その笑顔で歌えば、誰もが目を奪われる。無数のサイリウムが、スポットライトが彼女を追いかけ続けるだろう。その輝きは———あまりにも眩し過ぎるんだ。

だからこそ、その大型新人とやらはどうなる? 

煌めく光の中で何が出来る? 己が輝きを見せる事が、見せ続ける事が出来るのか? いや、普通に吸い込まれる様に大きな光の中にかき消されてしまうのが関の山だろう。

 

 

そもそも、自分達の知る《大型新人》なんて存在は————

 

 

「……ぁ」

「うん? どしたの?」

 

 

アクアは1人思い浮かんだ。

確かに、入ってくるとすればかなりの衝撃だし、ミヤコを含むその他皆が色めきだったとしても不思議ではない。

思い浮かんだのは《有馬かな》の名。

国民的人気を博している子役であり、芸歴=年齢とも言って良いキャリアだから、新人と言う言葉はそぐわないけれど、苺プロでは、と言う枕詞が付けば新人と言われても間違いではない。そして条件にも合致している。

『10秒で泣ける天才子役』とも称される程の折り紙付きの演技力。傍から見ても高い演技力は目の当たりにしている。

 

だけど、それ以上に押しては寄せてくる記憶の波。

 

 

【媚びるのが上手いだけでしょ? コネの子って訳?】

 

 

思い返せば返す程に、脳裏にピキッと何かが走る。

あの時の怒りは、我が妹ルビーも共有しているから、直ぐ横で首を傾げているルビーに説明すればすぐにでも解ってくれる事だろう。

ただ、口にすると余計に鮮明にあの時の場面が脳内で放映されてしまうから口には出さずに、どうにかこうにか頭の中だけで処理する事にした。

 

 

【あ、ダメ、ダメだって————】

 

 

そんな時だ。

記憶の中で、もう1つの陰が、もう1人が確かに表れた。

明らかに天狗になって高くなった有馬かなの鼻。それを優しく、それでいて毅然として諫める声が、アクアの耳に、記憶の中の自分自身の耳に入ってくる。

 

 

【感謝と尊敬の念を忘れない様に。……もしも何かあった時、助けてくれるのは皆なのかもしれないんだから】

 

 

めっ、だよ。とそれはまるで子供に言い聞かせる様。※実際に子供。

 

まるで空気を和らげてる。それは有馬かなを抑えるだけでなく、現場そのものを調整し、調律している様にも見えた。頭を必死に真摯に下げている姿を目の当たりにすれば、大人たちはもう笑うしかない。……こんな小さな子供が他に居るだろうか? と。

 

そう、確かにいた。―――もう1人、居た。

 

世界に認められる大型新人。大型~なんて括りじゃひょっとしたら表せないかもしれない程に、それでいて規模で言えばアイにも勝る彼の名は———。

 

 

 

 

 

 

「本日より、苺プロダクションの所属になりました、北斗レイです!」

 

 

 

 

 

 

そう、レイだ。北斗レイ。その名だった。

どうして今の今まで出てこなかったのか? と思いたくなるくらい、インパクトと言う面では、有馬かなにも決して劣っていない存在だった。

 

 

「こうして憧れの苺プロダクションに迎えて頂けた事、この様な素晴らしい環境で皆さんと一緒にお仕事が出来る事を、とても嬉しく思います!」

 

 

そう、あまりにもインパクト………、新たな衝撃をこの場所でも発揮している。

確か、齢にすれば同級生。故に同じ3歳だった筈だ。なのにも関わらずこれは完全に社会人の挨拶、スピーチだ。

 

 

「そしてずっと憧れていたこの場所に立ててる事が、本当に夢のようです! これからどうかよろしくお願いします!」

 

 

ペコリ、と頭を下げる。本当に綺麗に、90度しっかり傾いてブレが無い。

何なら、レイの隣にいる母親であろう女性の方が礼儀がなってないのでは? と思える様な対比が凄い。

 

 

「(……何だろ? 凄い既視感(デジャヴ)が……)」

 

 

んんん、と眉間に皺が寄ってしまうのはミヤコである。

レイの完璧な挨拶にはあまりにも面食らってしまって、疎らではあるが拍手も起きている……が、ミヤコにはベッタリとへばりつく様な既視感が拭えないでいた。

 

そう、既視感。それはそうだ。こんな感覚は初めてではない。歳相応じゃない対応や振る舞い、佇まい、もう既に経験している。丁度直ぐ隣に要る双子の子供たち。こちらも負けてないくらいに大概だった。赤子が喋るのだ。それ以上のインパクトはない筈……と思っていたのに、僅か3歳児がビジネスマンみたいな挨拶とその所作、姿勢をしている。

 

 

「(なんなの? 苺プロ(ここ)って変なのが集まる呪いでもかけられてるの? 地鎮祭とかしてなかったっけ? あ、いや確か神って言ってたから……、つまりここって、神の寄合所にでもなっちゃってるの………?)」

 

 

そこで、ミヤコは悠長に おお~~と、声をあげてるアイの方を向いた。

本当に楽しそうに眼を輝かせてるアイ。何だかミヤコの目には元凶? な感じがしている。※かなり鋭い考察。

 

彼女も彼女で、あの双子……つまり、アクアやルビーが普通じゃない事くらい解っている様だが、本人は『ヤバい位の天才っぽいな。遺伝だね』とあっけらかんとしていたが……。

兎にも角にもそんなアイに対して、ミヤコは耳打ちをした。

 

 

「(……実は、この子も。この子達皆合わせて三つ子だったー、なんて事、無いわよね? 外でまた作ってきてたりしてないわよね?)」

「え?」

 

 

中々にぶっ飛んだミヤコの発言だったが、当のアイ自身はあっけらかんとしていた。

言っている意味を直ぐに理解すると同時に、けらけらと笑いながら笑顔を見せて。

 

「あっははは☆ そんな訳ないじゃーん。出てきた時は2人だけだったし? それにそもそもする(・・)時間もそうだし? 相手だっている訳ないじゃん。正直ご無沙汰だよ?」

 

 

ツボった、と言わんばかりに笑うアイ。

アイが産んだ子は全員が……と、ミヤコは訝しんだが、当たり前だがどうやらその線は無さそうだ、と取り合えず納得した。

 

因みにアイは、ミヤコの言葉を聞いて、少々妄想を広げている。レイも思いの他カワイイ。アクアやルビーの2人が負けてる! なんて思わないけれど、先ほどから愛くるしい笑顔とキラキラした瞳でこちらを見ているのが本当に可愛らしい。

天井知らずの天才と言う点においても、似通ってる部分はきっとある。

 

なので、子供が3人いたら、更にもっと賑やかで楽しそうだな~と、アイは目を輝かせてていた。

 

 

そんなアイを横目に、ミヤコは考える。

これまでドラマの撮影等で現場に入った事は何度かあって、そこに子役も何人かいて顔合わせもしたが……、アイがここまでの反応は見せてなかった気がする。

 

 

「———余計な事は考えないでくださいね?」

 

 

なので、ミヤコは先に釘を刺さすのだった。

 

でも、流石に大丈夫だろう、とミヤコは思っていた。

何故なら、レイの隣には歴とした母親が居るのだから。……色々と、多分、いや間違いなく癖の1つや2つありそうな人物の様だが。よく在りがちな大成した子を持つ親特有の歪みがありそうだが、それでも親は親。アイが入る隙間は皆無。

と、この時は思っていたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミヤコが既視感(デジャヴュ)を感じていた時、アクアはレイの挨拶を聞きながら彼の経歴を思い浮かべていた。

 

 

◇ 北斗 レイ

齢3歳にして世界の最高峰ピアノコンクールである『シャパン・コンクール』ジュニア部門にて最年少記録を樹立している。

そもそもジュニアと言えども年齢制限を設けられていた筈だがルールを覆したのが彼だ。

 

その天才が奏でる曲を母親が動画で撮影・配信した事で一気に広まった事が全ての始まり。

 

天才や神童と呼べば良いのかもしれないが、その枠を軽く突破していると感じている。

これまでの常識を覆した異質にして異端児。国内よりも海外で一躍有名となり、日本でもその頭角を現しつつある。部門が部門な為、エンタメ枠としては成し遂げた偉業にしては、認知が広がる速度はそこまで早くはないが、それでも間違いなく日に日に増していく事だろう。

 

有馬かなとの共演もその一端と言える。

 

元々2人は幼馴染と言う関係性もあるから、と言う話も本人から確か聞いたが、ピアノを演奏する時、感情を露にするその技術は演技力にも反映されていた。男女の子役として人気を今後博していくとすれば、有馬かなと北斗レイは鉄板だろう。

 

 

「………なるほど」

 

 

ここまで考えが纏まった所で1つの結論に至る。

このレベルの経歴なら、例えアイと言う一番星が傍に居たとしても、その圧倒的な輝きの近くに居たとしても、掻き消される事は恐らく無いだろう。と言う事だ。

———寧ろ……。

 

 

「これ……普通にアイも上回ってる存在、かも?」

 

 

それぞれの立ち位置は違うが、そう評されたとしても何ら不思議ではない。

異形にして異端。そして何より……ひょっとしたら彼も自分達と同じ……。

 

それがアクアの意見である。

 

 

「……む、なにそれ」

 

 

そんなアクアの独り言が聞こえたのか、頬を膨らませてムスッ、と露骨に不満そうな顔をするのはルビーである。

 

 

「そんな事ないし! ママの方がすっごいし!! アクアわかってないよまったく!!」

 

 

ルビーの全力のアイ推しに、アクアは一瞬だけフリーズした。

 

 

「あははは。ルビーってば、私の為に張り合ってくれちゃった? でもーレイ君みたいにピアノ弾けないからな~~」

「む~~~」

 

 

アイに抱きかかえられたルビーは少しの間足をじたばたとさせていたが、アイに抱いてもらってるので、直ぐに落ち着きを取り戻した。

アクアは余計な事を言ったかな? と思ったのだが……正直これは仕方がない事ではないか? と思わずにはいられない。相手は世界。世界で活躍をしてきた存在なのだから。

まあ、でも――――。

 

 

「……最終的には、アイの方かな」

 

 

ぽろり、と口にしたアクアだったが、アイ推しはルビーに勝るとも劣らないものであり、実績面に目が眩んでしまって口にしてしまったが、それでも最後はアイである、と言い切るのだった。

 

 

「はいはい。馬鹿言ってないで仕事だ仕事。今から事務所内の案内だ」

 

 

騒ぐのも大いに結構だが、やる事山積み。

壱護はレイの母親と契約についての話があるから、と応接室に。

ミヤコとアイ、そしてアクアとルビーの4人で苺プロ内を案内する事になった。

(最初はミヤコだけだったが、アイがごり押し。そして2人はアイにくっついていった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃーん! ここがレッスンルームです!」

 

 

 

 

 

案内役になったアイが手を広げて、レイに説明をする。

壁際には大きな火神が貼られていて、レッスン用のバーも設置、広々とした空間で奥には大きなモニターがあり、映像資料も流せるようになっている。

 

 

「――わぁ、大きな部屋、ですね。将来もっと大きくなって、メンバーが増えても十分賄えそうで。あ、でも増築したり移転したり、の方が良い、かな。もっともっと規模が大きくなると思うし……」

 

 

目を輝かせてみている所だけは子供っぽいんだけれど、話している事が全然子供っぽくない。苺プロが大きくなることを確信持って言ってくれているのは非常に嬉しい事ではあるのだが……、将来を見据えている所が本当に子供っぽくない。

 

 

「なんでそんな事まで考えてるの?」

 

 

思わずルビーが聞いてしまった。

内心では【きもちわるっ!】くらいには思っている。

こんな感覚は、アクアと初めて口をきいたあの時以来だ、とも思ってる。

 

 

「え?」

 

 

レイはルビーに言われて小首を傾けると、ニコニコと笑顔で告げた。

丁度大きなモニターに映し出されている映像を目にしながら。

 

 

【みんなーーーー! 盛り上がってるーーー!!? まだまだいくよーーーー!!】

 

 

それはB小町のライブ映像。

【サインはB】

を熱唱しているアイの姿。誰もが目を奪われるその姿。

 

 

「あのアイさんの姿をみたら――――そうなるとしか思えなくて」

 

 

レイは照れた様に笑っていった。

アイが居る場所なのだから、当然事務所はもっともっと大きくなる。それは確定で確実である、と言っている(様にルビーは視えた)。

 

 

「えへへ。すごいでしょ?」

 

 

つい先ほどまで、張り合う姿勢だったルビーだったが、アイの映像を食い入る様に見つめて、目を輝かせてる姿を見て、嘗ての自分の姿がそこに重なって見えた気がした。

 

何度も何度も見続けたその映像、自分も昔……遥か昔は、あんなふうに見ていたんだ、と思った。

 

 

「はいっ! すごい、なんて言葉だけで終わらせたくないですっ。アイさんはとっても、とってもスゴイですっ!」

「いや、語彙力……、あ、いや、これが普通か……」

 

 

隣に居たアクアが思わず突っ込んでしまうけれど、これがある意味普通で、こっちの方が普通なんだ、と思い直した。

アイの事になると今の今までいろんな意味で凄かったレイが、子供の様になるのは、何となく誇らしい、と思ってしまうんだ。

 

 

「えっへっへ~~、嬉しいこといってくれるねー、レイくん!」

「はいっ! ずっと、ずっと見ていたいです! すごいなぁ、すごいなぁぁ……!」

 

 

【あなたのアイドル。サインはB!】

 

 

決めの一言とアイの視線、所作、その全てに目が奪われて心まで奪われている。そう思えてしまう。

画面に向かってアイに手を伸ばすレイ。画面の中のアイも手を伸ばしている。伸ばしたら、手に届きそうで……、何度も何度も同じ様にした事があるな、とルビーとアクアは思った。

 

 

「でも、レイくんの方だって凄いんだよ?」

 

 

いつの間にか、モニターとレイの間に入っていたアイが、手を伸ばしたレイの手を取った。

 

 

「今日から仲間だし、いつか、キミと一緒に舞台で一緒に輝けたら最高だねっ♪」

「!」

 

 

眩い光がアイを照らしているかの様だ。

手を取って、その温もりを知って、レイは頬を赤くさせる。

 

 

「はいっ! ぼく、頑張りますね!」

 

 

アイドルと同じ舞台に立てるとは思ってないだろう。だけど、顔を赤くさせながらも迷う事なく頷いた。

アイの事が好きなんだ、とそれだけでも十分解った。

でも、何だか妬ける気持ちもルビーにはあった。

 

確かに間違いなくレイはスゴイ。大型新人と言われても納得できるし、それどころじゃないくらいは理解できているつもりだ。

でも、それでもやっぱり……アイの舞台に、アイと一緒の舞台に自分も……と思ってしまう。あのキラキラと輝く舞台に、一緒に立って歌って踊って……、と夢を見てしまう。

レイはアイの舞台にもう既に届いている様に見える。

だから、アイの様にレイの事も眩しく思ってしまうんだ。

 

そんな時、だった。

 

不意に、レイに手を伸ばされた。

 

 

「え?」

 

 

伸ばされた手、そして笑顔。何も言っていないが、ルビーは思わずその手を取った。

そして、レイは同じく、アクアの方にも手を伸ばした。

アクア自身もなに? と思ったが……、まるで引き寄せられるように、吸い込まれる様に、その手を取った。

 

2人の手を取ったレイは、ぐいっ、とルビーとアクアを引き寄せる。

3人が揃った所で、再びレイはアイの方を見て、はっきりと言った。

 

 

 

 

―――ぼくは、皆と一緒にいきたいです。

 

 

 

 

 

ルビーは目を思わず丸くしたが、それでも届かない場所。自分にはいけない場所だと線を引いてしまっていた所をあっさりと超えさせてくれた。

羨ましくて、悔しくて、でもその境界線はあっさりと溶けて消えた。

ただ、真っすぐに「一緒にいきたい」と言ってくれただけ。

 

 

――私も、一緒に行きたいな。うぅん。行かなきゃ。

 

 

ルビーはこの時、レイを心から信頼し、信愛した瞬間だった、と思う。

 

 

 

「あー……でも、ぼくは志望してないんだけど……」

 

 

 

空気を読みたい所存ではあったが、アクアは2人の……3人の住まう舞台には立つ事は無いだろ、とやや引き気味にみていた。

引力の様なモノに惹かれたのは事実で、認めている。けれども、これはこれ、それはそれ、だ。

 

 

だけど、そんな少し冷めた発言をしてしまったアクアも、ルビーの様に心から惹かれて、信頼する様になったのは少し後の話である。

 

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