認めない子   作:アイらゔU

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第37話 今ガチ打ち上げ・in 苺プロ

 

苺プロダクションの事務所は、夜の静寂にそっと包まれていた。

 

時計はすでに深夜を回り、都会の喧騒も遠くかすむ。

窓の外では、ビルの隙間からわずかに覗く星がキラリと瞬き、まるでこの小さな事務所が芸能界の星々の中心であるかのように輝いている。

 

レイとアクアの2人が「今ガチ❤」の打ち上げが終わって、戻ってきた後、苺プロ内でも打ち上げ(強制)が終わったばかりの室内は、まさにカオスの残響で満たされていた。

 

テーブルには空のジュース缶やポテチの袋、食べかけのスナックが無造作に散らばり、色とりどりのパッケージが蛍光灯の光に反射してチープな華やかさを放つ。

 

壁にはB小町のポスターが貼られ、アイのキラキラした笑顔が事務所を見守るように微笑んでいる。因みに古いポスターで昨日まではここにはなかった。いきなり打ち上げ場所に決めた後に、アイが着飾ったのである。

元々ルビーは大ファンだから、興奮気味、ノリノリだったが、ミヤコ、壱護らは冷ややかな目で見ていたりするのは別の話だ。

 

この甘ったるいジュースの香りと、打ち上げの熱気が冷めやらぬざわめきが漂っていた中で、レイはテーブルの上に額をガクッと突っ伏し、まるで魂が半分抜けた人形のようにしていた。  

 

レイは力なく刻む指のトントンというリズム、どこか懐かしいピアノの旋律を思わせる。皆よく知ってる。その所作は気を紛らわせるためのものであり、何処か現実逃避したい時に指を動かしたりするのだ。やはり、本業はピアノの方なのだ、と思いたくなる仕草だが、哀愁漂わせてる姿には少なからず同情するモノも出てくるだろう。苺プロ内で同情する人は少数派かもだが。

 

それはそうと、汗で額に張り付いた前髪、ぐったりと垂れた肩、弱々しい息遣いである。

 

実はこれは今しがた行われていた打ち上げ(疑)があったからだ。

 

今ガチの結末について、アイとルビーの容赦ない追及大会が始まり、当事者で演者側のアクアは「触らぬ神に祟りなし」ときれいに放置。レイには目で頑張れ、と伝えている。(アクア談)

 

色々な追い打ちをかけられて、疲れ切ったレイは電池切れ寸前だ。

 

テーブルの木目を見つめる目は、どこか遠くを見ているようで、しかしその奥には、かすかな熱が宿っている。

 

一方、唯一この場に残ってる有馬かなはソファーの端にちょこんと腰かけ、ジュースの缶を片手にズズッと啜りながら、ジト目でレイを眺めていた。

 

彼女の手には、なぜかエリマキトカゲの本――あのシュールで謎めいた一冊が握られている。彼女のマイブームらしい。選んだセンスは独特のものだといえる。

ページをパラパラめくる指はどこか気だるく、しかしその目は、獲物を観察する猫のように鋭く光る。

かなの唇には、意地悪な笑みが浮かんでいた。彼女の赤い髪が蛍光灯に照らされ、まるで舞台のスポットライトを浴びる女優のように鮮やかだ。事務所の奥からは、アイとミヤコの笑い声が遠く響き、さっきまでのカオスが脳裏に蘇る。

 

レイのグデグデっぷりを眺めながら、かなの胸には、幼馴染への愛らしさと、女優としての嫉妬がチクリと混じる。ほんの数十分前、事務所はまるで嵐のような騒ぎだった。アイがレイをソファーの端に捕まえ、キラキラした星のような瞳でニヤニヤと追及していた。

 

『ねー、レイ?? 実はほんとは好きな子、決まってたりしない? 2人とも選ばなかったけど実は〜みたいな?? 番組の裏でコッソリ何かヤッちゃったり? 』

 

その声は、アイドルらしい無邪気さと、どこか人を試すような鋭さを帯びていた。

実にセンシティブな内容を義理とは言え仮にも息子に直球でぶつけてくる母親ってどうなんだ。いや、マジでどうなんだ? 仮にも親だぞ? と言いたくなるのは、アクアだったりする。

 

レイはただただ顔を真っ赤にするだけだから。

 

『う、うう…アイ母さん、違うよ! あれは打ち合わせ通りの対応だったわけで……』

 

と縮こまるばかり。両手をブンブン振って否定する姿は、まるで追い詰められた子犬のようだ。そんなレイの言葉を聞いたアクアが、ソファーの反対側にいて、呆れた様子だった。

 

でも、アクアの目は冷静だが、実は口元には微かな笑みが浮かんでいた――まるで、このカオスを遠くから楽しんでいるかのようにも見えなくもない。アクアとて未だに安堵感がでてきているからだ。これくらいは仕方ないし、甘んじて受け入れるべきだと、何処かでは思っていたからだ。

 

 

そんなアクアの思考は置いといて、ルビーに関してはもっとストレートだった。

 

『レイは誠実さがないよ絶対! 可愛い女の子二人泣かせたも同じじゃん! 可愛い子2人も侍らせて、最後は捨てちゃうなんて、女の敵ですーー』

 

と、腕を組み、目を吊り上げてレイを叱る。

 

レイは

 

 

『う、うう…ルビーも、そこまで言わなくても………』

 

 

とさらに縮こまり、ほとんどソファーに埋もれそうだった。そこへミヤコは手をパンパンと叩いて強制的に話題変更。

 

『はいはい。アイ。もう良いでしょ? そろそろ時間よ。 今度のCMの撮影の打ち合わせもあるから、遅れちゃマズイでしょ』

 

 

と強引にアイを引っ張っていく。アイは時間がない、おしている事は理解してても。 

 

 

『えー、レイの話、もっともっと聞きたかったのに~!』

 

 

と、駄々こねる。

でも、最後には笑いながら連れ出されていった。

ルビーと言うと

 

 

『私もみたい! 今度のアイのCM! 久々に見たーーい!』

 

 

と、まさにアイの様に目を輝かせてノリノリでついていく。

アクアはと言うと、それに乗じて

 

 

『疲れたから…もう休む』

 

 

別室へササッと消えた。

 

 

そして今、残されたレイは、アイの追及、ルビーの怒り、アクアの放置にやられ、グデグデでテーブルに突っ伏していたのである。

 

かなだけが、この場に残っていた。

何故エリマキトカゲの本を手にしたのかは不明だが、兎に角残って、先ほどまではアイやルビーに遠慮して、何も言えなかったから、今度は自分の番、とでも思っていたのかもしれない。

 

それは恐らく的中。まるでこの状況を心から楽しんでいるようだった。レイの指は、テーブルで弱々しくトントンとリズムを刻む。まるで魂の奥底でピアノの鍵盤が鳴っているかのようだ。かなはジュースを啜り、本をパラパラめくりながら、口元に意地悪な笑みを浮かべる。彼女の声が、静かな事務所に響いた。

 

 

「それにしてもやっぱ流石ね〜〜。やーおみそれしました! プレイボーイなレイくんはやっぱひと味違うわー!」

 

 

かなの声は、まるで毒を塗ったキャンディのように甘く鋭い。

ジト目でレイを射抜きながら、エリマキトカゲの本を膝に置き、ジュースを吸い付くし、潰しそうになるまで吸い上げていた。

 

レイはテーブルから顔をわずかに上げ、目に見える疲労感で呻く。額に張り付いた前髪が、汗でしっとりと濡れている。

 

 

「うう……ぼ、僕としてもアレがベストだと思っててー……何度も説明した、でしょ? そんなのじゃないよー」

 

 

レイのか細い声は、まるでアイとルビーに絞り尽くされた果実のよう。

 

 

 

「今ガチ」の最終回――不知火フリルと黒川あかね、二人からの告白を正面から断った選択。

 

 

 

レイはそれを必死に弁護しようとしている。だが、かなの追撃は結構容赦ない。アイやルビーとは違った方向性で的確に射抜いてくる。彼女はソファーに背を預け、赤い髪を軽くかき上げながら、ニヤニヤと続ける。

 

 

「褒めてるのよ? 流石っ!  って。なにせ今をときめく不知火フリル! そんでもって、まぁ確実に劣るけど、あの劇団ララライのエース黒川あかね。そんな2人を正面から振るなんて〜ね? そんな男世に存在するんだ〜ってね? 最早流石としか言いようがないじゃない?? やーーすごいわーーー」

 

 

かなの言葉は、表面は称賛なのに、トゲトゲしい笑顔が本音を隠す。エリマキトカゲの本を軽く叩き、目は楽しんでる、と言わんばかりにキラリと光る。

レイはテーブルに顔を再び埋め、肩を震わせながら呻く。アイの

 

 

『裏でヤッちゃったり?』

 

 

な追及、ルビーの

 

 

『誠実さがない!』

 

 

な理不尽な怒り、そして助け舟なしなアクアの放置――

 

その全てが、レイの心を疲弊させて、さらにグデグデにしていた。それに加えてかなのコレ。

 

 

「……絶対先輩、褒めてない。めちゃ楽しんでる。アイ母さんとおんなじだ……」

 

 

レイの声は、まるで子犬が尻尾を振って助けを求めるよう。と言うより、もう止めて、と懇願してるように見えなくもない。

 

特にルビーの真剣な糾弾――

 

 

『可愛い女の子二人泣かせたも同じじゃん!』

 

 

――が、相応にレイの胸に突き刺さっている。

確かに純粋たる好意を、あかねにしもフリルにしても、向けてくれている。そこは演技なんかじゃないことくらい、レイにだって解ってる。 

 

 

――でも、あの時はアレが最善の策だと、自身の考えに尊重してもらいつつ、現場のDにも太鼓判だったんだから。

 

でも、人の感情とはそう簡単ではない。全てフィクション、というわけではない、恋愛リアリティーショーと言う内容がそれに拍車をかけることになってしまったと言えるだろう。

 

 

かなは鼻で笑い、エリマキトカゲの本を更にパラパラめくる手を一度止めた。

 

彼女の目には、幼馴染への愛らしさと、どこかチクリとする嫉妬が混じる。

 

 

「そんなわけないじゃない? 可愛い可愛い弟分の恋の行方、これでも応援してたのよー??」

 

 

かなの声は明るいが、ニヤニヤが止まらない。猫がネズミを弄ぶような表情に、レイはテーブルに顔をガクッと突っ伏す。指のトントンは一瞬止まり、すぐにまた弱々しく再開する。それは、まるで前世のピアニストが魂の奥で鍵盤を叩くかのよう。レイ自身も解ってないが本能で、自分はレイじゃなくて〜と現実逃避をしようとしてる所作かもしれない。――無論、レイは勿論、当然ながらかなにもそんな秘密は見えないし、察するのも無理がある。

 

ただ、グデグデのレイが、どこか愛らしいだけだ。

 

 

「……そんな、スゴク面白かったです! みたいなめっちゃ良い笑顔で言う台詞じゃないよね!?」

 

 

突っ伏していた顔をぐるっと捻り、かなを見て言うレイの反撃は弱々しく、声に力がない。

 

テーブルに指だけがトントンとリズムを刻む。

 

かなはニヒヒと笑い、エリマキトカゲの本を膝に置き、飲みきったジュースをゴミ箱へ放る。

 

ふっと小さくため息をつき、レイには聞こえないくらいの声で呟く。

 

 

「まあ、お疲れ」

 

 

その一言は、優しく、複雑な響きを帯び、事務所の静寂に溶ける。レイの突っ伏した頭には届かず、ただ、かなの胸の中でだけ反響した。

 

 

 

 

 

――有馬かなは考える

 

 

 

 

 

普通に考えれば、最終回でのレイの選択は「今ガチ」は炎上確定の案件だった。

今をときめく恋愛リアリティショー、SNSで毎週トレンドを席巻する話題のコンテンツ。国内トップタレントの不知火フリルと、劇団ララライのエース黒川あかね――

 

 

【あかね・ひかり・フリル】

 

 

の三角関係は、一番人気なトップコンテンツ。

視聴者の心を掴んで離さなかった。

 

SNSでは「#今ガチ」が連日飛び交い、ファンアート、考察スレ、ミームが溢れ、まるで現代のコロッセウムのように、誰もがレイの選択を息を呑んで見守っていた。

 

初期は【フリル優勢】の声が圧倒的だった。

 

彼女のカリスマは、まるで太陽のようにまばゆい。完璧な美貌、圧倒的なスター性、スクリーン越しでも視聴者を虜にする笑顔。フリルが登場するたび、SNSで

 

 

【フリル神】

【メッチャ可愛い!! ドラマの夢の跡の時のフリルより断然こっち!!】

【ひかり! 選ぶならフリルしかないぞ!】

 

 

と、熱狂的な投稿が並んだ。

対するあかねは、知名度では劣るものの、劇団ララライのエースとしての実力は折り紙付き。彼女の演技力、役作りの深さは、番組が進むにつれ、フリルに奪われる注目をらじわじわと視聴者の心を、掴んでいった。

 

かなは最初、気付かなかった。あのあかねが何を模倣していたのかを。

 

リアリティーショー映えする性格じゃない、とかなは知っていた。だからこそ、役柄を纏わせて戦う姿勢、それを選んだのは声には出さないが、内心では百点満点だと言える。

それほどまでに、あの黒川あかねは、有馬かなをして、天才と言わしめるだけのものをもっているからだ。

でも、あかねが何を演じているのかまでは当初は解らなかった。

 

彼女の役作りの本質を見抜けなかったのは、かなだけではない。視聴者の多くも、何故ああも黒川あかねに、不知火フリルが居るのに迫るのか、と疑問に感じていた。

 

だが、かなは、アクアが不意にポツリと呟いたのを聞いて納得できた。

 

 

【――アイに似てる】

 

 

それに対してルビーも

 

 

【え、ほんと!? アイのあのキラキラ感、まんまじゃん!】

 

 

と目を丸くした。

2人のその一言で、かなはハッとした。黒川あかねは、黒川あかねであって、黒川あかねではなかったのだと。

 

彼女が憑依していたのは、一世を風靡した元トップアイドル、元現トップタレントのアイその人だった。

 

 

あかねの洞察力、技術、執念――アイの笑顔、仕草、声のトーンを完璧に模倣し、フリルと同じ土俵に立とうとしたのだ。

アイを演じることで、レイの心に最も響く存在になろうとした。

 

レイがアイを特別視してるのは、かなも解っている。

 

あかねの役作りは、まるで魂を乗っ取るような憑依型だった。レイにとって、アイ以上に刺さる人物はいない。

それを、あかねはわかっていた。フリルのスター性、あかねの憑依型演技。どちらも、レイを巡る戦いの中で、互角以上の輝きを放っていた。SNSで

 

 

【フリル一択!】

【いや、あかねもやばい!】

 

 

と、議論が白熱。ファンの予想は二分し。

 

 

【ひかあか・ひかフリ。最後はどっちを選ぶ?】

 

 

がトレンドの頂点を極めた。かなも、内心、レイの選択に興味津々だった。アクアへの複雑な想いを抱えつつ、弟分であるレイの恋の行方を、複雑ながら、面白くない、と言いつつも見守っていた。

 

 

なのに、レイは二人とも振った。

※どちらも選ばなかった、が正しい。

 

 

それは並々ならぬ度胸だった言える。

 

フリルの告白――その完璧な笑顔と、視聴者を釘付けにするカリスマ。

あかねの告白――アイを模倣した、魂を揺さぶる真剣な眼差し。

 

 

どちらも、普通なら誰もが心を奪われる瞬間だった。

かなはリアルタイムで画面を見ながら、予想外に驚きつつ。

 

 

【こりゃ燃えるな】

 

 

と確信した。

折角例の大事件で沈静化したのに、また荒らすなんて〜〜と、選ばなかった事に内心喜びながらも、心配もしていた。でも、驚くべき事にそうはならなかったのだ。

 

 

SNSは「#今ガチ」で大荒れ、炎上の嵐が吹き荒れる――はずだと思った。

 

 

かなは、そう思っていた。芸能界に長らく過ごしているからこそ、強く思い、心配もした。

だが、違った。

 

 

あの瞬間、誰よりも光を放ったのはレイ……ひかりだった。

 

 

選ばない理由を、誠実に全てを打ち明けた。

 

 

元より、最初フリルが番組に来て最初からひかりに好意を向けていた。それはあかねも同じく。

ヤラセ?を疑う程に、いきなりスタートから飛ばしていたのだ。でも、回を重ねる事に、何より実名、恋愛リアリティショーだからこそ、本気度が画面を通して伝わる程だった。

 

 

ひかりは、フリルやあかねよりも数段劣る事を焦点に当てていた。光り輝く2人を選ぶ立場に、自分はいけていない、と。名前負けをしているも同然だと。

2人が真剣だからこそ、自分も真剣に考えて、感じていた。

烏滸がましく、偉そうだと思われるかも知れないけれど、2人に見合う男になりたい。そんな立場になりたい。

 

 

そして、その後今ガチの最初のシーンが放映された。

そう、ひかりの自己紹介のシーン。

 

 

 

『この、機会に、か、変われたら。皆さんと仲良くなれたら………って、思ってます』

 

 

 

この件で大きく成長したのは間違いなく。

それは視聴者全員が証人である。

でも、ひかりはまだまだ納得してない。出来てないのだ。

フリルやあかねから発する光。それに見合わない。淡過ぎると。

 

 

 

――待っていて欲しい

 

 

 

 

そのひかりの言葉が、万人を納得させ、そして何よりも今後もっともっと大きく成長する。出来る。と確信させる程の説得力がそこにはあったんだ。

 

 

その時のひかりはまさに圧巻だった。

 

 

フリルもあかねも、まるで置き去りにされるかのように。

2人の告白シーンですら、手を伸ばしたシーンですら、ひかりと言う強烈な光にかき消されたかのよう。

そして、同じ立ち位置にいるはずの2人が、観客席の特等席でひかりの輝きに見入るように。

 

振られたショックなど吹き飛び、ひかりの一挙一動、セリフの一言一句、表情の微妙な変化に、ただ魅せられていた。ひかりの言葉を、今か今かと待ち望む観客のように。

 

ひかりの演技は、まるで魂そのものが舞台に降臨したかのようだった。誠実でありながら、どこか超越的な輝きだった。

 

 

 

誰も選ばないと言う選択。普通なら有馬かなが言う通り、炎上するだろう。これまでにも似たような展開はあった。

 

だが、今回のそれは覆したと言っていい。

 

視聴者の心を掴み、SNSでは

 

 

【ひかり君、ガチで泣けた!】

【確かに!! 寧ろあそこまで好意持たれた最初が疑問! あの返答は誠実すぎる!】

【メッチャ今後応援する!! 頑張れーひかり!!】

【ってか、ひかりってピアニストだったんだな?? 今後何で出てくるんだろ??】

【今後の動向、要チェック!! 苺プロに注目!!!】

 

 

という称賛で埋め尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かなは、そんな反応を思い出しながら、胸の奥でチクリと疼く感情を抑えきれなかった。

 

 

「……妬けるわよ」

 

 

声は小さく、レイには聞こえない。かなはアイドルに転身したが、女優の道を諦めたわけじゃない。演技への情熱は、胸の奥で今も燃えている。だからこそ、アクアの演技を、レイの輝きを、いつも注視してきた。自分の糧にしようと、目を凝らしてきた。

 

アクアとルビー、そしてアイの圧倒的なキラキラも――そして、レイの、まるで魂が踊るような演技。

 

それぞれが、かなの女優としての心に火をつける。

なのに、レイのあのキラキラは、かなをまざまざと突き放した。

 

思い返すは、かつて世界を震撼させたショパンコンクール。5歳のレイ、かなの天狗な鼻をへし折った気がした。

 

天才少年の残響。例え忘れていたとしても、レイの魂はあの輝きを覚えている筈だ。かなはそう確信していた。

 

 

 

「……ぁぁ、もう、もうっ…… 」

 

 

  

でも、とうの本人はこの調子。

ある意味仕方ない。アイの追及、ルビーの怒り、アクアの放置、かなの追撃――全部が頭の中でぐるぐる回り、心は電池切れ寸前だから。

 

 

それが何だか本当に愛らしいし、可愛らしくも見える。

もう、レイに対して本人の前では姉貴面はしないつもりだったが、やっぱ無理! と言いたくなる。

 

 

「ほらほら、いつまでそーしてるのよ? アンタだって疲れてるんじゃないの? そろそろ休んだら??」

 

 

世話を焼きたくなる。

そう、いつまでも。

 

レイは、ぐでーっとなりながらも、かなに言われるがままに体を起こした。

 

 

「てか、今ガチの方の打ち上げは大丈夫だったの? ………泣かれたんじゃない??」

 

 

休め、と言われつつ追い打ちしようとしてくるかなに、レイはガクッと頭を下げた。

 

 

「そんなこと無いよ。その、ちゃんと皆解ってくれたし?? 大団円だったんだから!!」

 

 

 

レイのその言葉。

信じないわけではないが、いつか聞いてみたいかも? とかなは思うのだった。

 

 

 

 

 

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