認めない子   作:アイらゔU

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第5話 あの時の教え

「ねーレイお兄ちゃん、今助かった———って思ってない?」

 

 

あの後、かなはアクアを追いかけていき、レイとルビーは一緒に帰る事にした。

その道中、不意にルビーはそう聴いてきたのである。

 

 

「……どして?」

「ほら、ロリ先輩の事。………だって、レイお兄ちゃんは昔、ロリ先輩と………」

 

 

最後まで言い切る前に、ルビーは口を噤んだ。

レイとかなの関係性、それはアクアは勿論ルビーも知っている。

 

 

関係性、レイとは一番初めに母親のアイから仕事関係で知り合い、そして次に現場にてアクアとルビーと出会った。苺プロへの移籍を希望し始めたのは大体そのころだっただろうか。

 

そして、その後にかなと一緒に同じ現場現場で出会ったのだ。

 

あの日の事は今でも覚えている。

レイは、どちらかと言えばかなの保護者的な立ち位置。でも、かなはかなで、レイのお姉さんぶってる節があった。……教える様な、世話する様な仕草はレイなんだけど、確か生まれた日が自分の方が早いから~~ってずっと言ってた気がする。

 

その後かなは レイの移籍の件でかなり渋っていた様だが、なんだか色々と説得をしていたのも覚えている。………その辺りでレイの精神年齢の高さには驚き、2人してひょっとしたらレイ自身も転生者なのではないか? と疑い始めたのだが……全否定された。

 

 

過去の回想はこれにて終了。

 

 

レイはルビーの頭を撫でた。

 

 

「心配してくれてありがとう。嬉しいよ」

「わぷっ!! も、もうっ。レイお兄ちゃん、ほんと私の頭撫でるの好きだよね。でも気を付けてよ? そう簡単に女の子の頭を撫でちゃダメなんだからね」

 

 

満更でもなさそうながら、ルビーは頬を膨らませる。

 

 

「ふふっ。解ってる解ってる。こんな事するのはルビーだけだし。僕自身がルビーに沢山してくれてたしね~。お返ししないと」

「あー 言われてみればそんな事もあったねぇ~。しまった、私たちがシスコンお兄ちゃん作っちゃったんだっ!」

 

 

忘れもしない事だ。

レイは記憶を取り戻そうと色々と模索していた。YouTubeを只管見続けるのも良いが、これまでにレイ自身が居た場所、仕事場、関わってきた人たちに会う、色んな事をしてきた。幸いな事に事務所も手助けしてくれて、全部願いは叶えてくれた。

でも、結果は決まりきっている。どれだけ行動しても、戻る事は無い。それはレイ自身が最初から解っていた。

 

そんなレイを見て、意外にも一番傍にいて構ってくれたのがアクアだった。慣れてないのが直ぐ解るようなぎこちない手で頭を撫でて、時折抱きしめて肩を叩いてくれて。

そして、それに続く形でルビーが、アイやミヤコまでもが参戦して色々と大変だった。大変だったが……凄く嬉しかったし、何より楽しかった。嫌な思い出じゃなく良い思い出に昇華する事が出来たんだ。

 

 

「因みに、ルビーがこんなことさせるのも僕とアクアだけ、だよね?」

「さぁてね~~♬ どーでしょーねー? 私もママみたいに美少女だしぃ? ほっとかない人だって出てくるかもだしぃ?」

「むっ、ルビーこそ変な男に騙されちゃダメだよ!? ほいほい言っちゃう癖があるんだから。アイドルらしからぬ行動はNGだよ絶対!」

「何それー! そんな事ないし! ただ、揶揄っただけだもん。私だってしっかりしてるんだから!」

「そんな事あるの! だって中学の時、僕やアクア結構相談されて色々大変だったんだから! しっかり教えた事守ってよね! ルビーが可愛いのはわかりきった事なんだから」

 

 

色々と言い合って言い合って……最後の最後では笑い合うのが定番だ。

ただ、今日はアクアが居ないので、笑ってる2人+呆れてるアクア、と言うのが本当の定番、である。

 

 

 

とにもかくにも、ルビーの心情を大体理解したレイ。

心から安心させてあげたくて、大丈夫だといってあげたくて、その頭を軽く撫でたのだ。

髪は女の命!! 撫でられて喜ぶのは幻想!! 等等あるが、ルビーに関しては撫でても大丈夫である事をレイは知ってる。勿論アクアや自分に限りではあると思うが。絶対(シスコン)

 

 

 

 

 

そして、その後―――ルビーに聞かれた事の真意を思っている事を告げた。

 

 

 

 

 

 

「助かった、か……。うん。違うよと言ったら嘘になる。でもちょっとだけ、ね。だって有馬さんに心配かけたくなかったから。……何より申し訳ないし」

 

 

アクアにくっついて行ってくれた事。ルビーの言う通りなのだ。

間違いなく助かったと思っていた。

ルビー自身は想像通り、だと思ったんだけれどその理由がよく解らなかった。

 

 

「そっか。……ん? 申し訳ないってどういうこと?」

「……だって、今の僕は斎藤ひかりが北斗 玲の皮を頭からかぶってる様なモノ、だから。どれだけ上手くレイを演じれたとしても、やっぱり昔とは違うから。……忘れられたってなったら、有馬さん悲しむかもしれない、って思ったから」

「………そっか」

 

 

笑顔だったルビーだが、今また少しだけ、顔を俯かせた。

やっぱり余計な事を言っちゃった、聞いちゃったと自己嫌悪に陥る。

そもそも別に話す必要だってなかった筈だ。レイがあからさまにほっとしたトコを見てしまったから思わず……だった。

 

アクアの方を追いかけて出て行ったかなを見て、フラれたね~的な弄りをしようとして、ちょっとデリケートな部分に触れてしまったんだから。

 

 

「まぁ、仕方ないよ。誰が悪い訳でもないし。僕は僕で何があっても頑張るだけだ。ね、ね?それより入学した時の事を考えようよ? ルビーは誰と同じクラスになると思う? 同年代の芸能人出来て欲しい人とか、いたりしない?」

 

 

極めて明るく、楽しそうにするレイを見て、またちょっと心が痛くなる。

 

 

 

 

 

【レイと言うルビーのもう1人の兄は、本当に演じるのが上手い】

 

 

 

 

役者志望したらとんでもなく大成するのではないか? と素人目でも解る程に。

ただ、本人は役者としての道を行くつもりは無い様子。そもそも顔を出していないとはいえ、音楽系YouTuberで大成しているから行くとしたらそっち方面だろう。

 

でも、本当に上手い。何度だっていう。……とんでもなく上手いから、納得するしかないって思ってしまう。

だからこそ、本心が中々見えない事だって増える。無理している様であっても、それを嘘で隠すのが本当に上手だから。

それこそ、母親のアイのように。

 

 

だからこそ、支えてあげなきゃダメなのだ。

 

 

どんな形でも、必ず。

 

 

「えっへへ~~! そーだねーー。私の今の最推しはやっぱり不知火フリルちゃんで————!」

 

 

だから、ルビーは明るく振舞う様に意識する。

レイに負担ならない様に。それくらいしか……思いつかないから。

 

 

「おぉ~不知火さんか……。って、メチャクチャ大物な名前出してきたね。あの人は超人気のタレントさんだから、難しいんじゃない?」

「そりゃ私もそう思うけどさ? でも、もしも―――同じクラスだったらって思ったから、テンション増し増しだよ~~! あーーー考えただけでテンション上がってきた! レイお兄ちゃん! またママの曲弾いて!! サインはB! 歌う」

「ふっふっふ~~。りょーかい! ―――でも歌をうたうのはちょっと…………」

 

 

2人はそうやって、歩幅を合わせながら帰路に就くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丁度そのころ―――。

 

 

「なんで俺の方に来た? ひかりに用があったんじゃないのか」

「私にとってはどっちも重要なの。あっちは同じ芸能科だし、接点持とうと思えば比較的容易だと思ったんだもん。でも、あんたは違うでしょ! よくわかんないきもい理由で芸能科こなかったんだから!」

「きもいってヒデェな。そもそもなんでそんなに怒ってんだよ……」

 

 

有馬かなは、このアクアマリンを優先させた。

勿論、あの斎藤ひかりについては思う所はあるし、まだまだ疑惑が払拭された、と言う訳じゃない。

アクアに言った通りにだ。でも、かなの中ではアクアの方がウエイトを占めている、と言う事でもある。本人は認めないかもしれないが、幼少期に競演したあの時から、アクアの事は気になっていた。あの時――――レイが苺プロへ移籍をすると聞いて同じ様に自分も行きたい! とわがままを言った事だって覚えている。

勿論、親と事務所が稼ぎ頭であるかなを手放す訳もなく、最終的にはレイ自身の説得もあってかなは折れた。

 

 

その話は別にいい………、今はアクアの事だ。

 

 

「取り合えず、まずは私の疑問に全部答えてよ。監督って? 何処いくの? 誰のこと? どこに住んでるの!? っていうかそもそもあんたドコ中!!」

「絡み方、最後とかめっちゃヤンキー女子じゃん……。ってか一度に聞く量じゃないだろ。多い多い」

「じゃ、1個ずつ答えてね」

 

 

別に了承をした訳じゃないんだが……、とアクアは思ったがあまり茶々入れると余計に話が長くなりそうだったから、取り合えず抑えた。

 

 

「アクア、まだ役者やってるんだよね?」

「……いや、もうやってない」

「!!」

 

 

アクアが目標だった。

あんなに悔しかったり、苛立ったり、それでいて顔が熱くなったのも初めての事だった。

同じ役者として、この道を進んでいるんだろうと、心の中では確信していた筈なのに、アクアの口から出た言葉は、希望していたそれとは違ったんだ。

 

 

「そういう訳だから。俺、急ぐし」

「え、あ! ちょっと話しようよ! ねぇねぇ、これからカラオケ行かない?」

 

 

だからと言って、かなはアクアを諦めたりしない。

ひょっとしたら、これも何かの縁。……また、役者の道に戻ってきてくれる可能性だってゼロじゃない。本人は芸能を持ち合わせていない、と言っていたが、レイ疑惑の男、ひかりが推薦していた事実がある。

きっと、また役者をやってくれてもおかしくないから。

 

 

「いかねぇよ」

「え? じゃあ……」

 

 

断られたが、このまま引き下がる訳がない。なので、かなはもう一つのプランを口にする。

 

 

「私の家、とか?」

「いや、距離の詰め方えぐいな。ヤバいぞ、お前」

 

 

自分でも解っている。言われるまでもない事だ。

ただ、それを踏まえても自分の方に言い分がある。正義は我にあり、なのだ。

 

 

「仕方ないでしょ! だって私これでも芸能人なんだから! ちょっと喫茶店でお話~

って訳にはいかないの! 個室のある店なんてこの時間まだ開いてないし……!」

「あーー、なるほどな。そういう。……だったら、今から行くとこついてこいよ。有馬も知らない人って訳じゃないし」

「え! それって例の監督のトコ?? いくっ!!」

 

 

 

そして、アクアとかながやってきたのは五反田スタジオ――と言う名の五反田実家。

 

 

スマホで先に連絡をして人数が増えるのを伝える。渋る文面が返ってきたけど、ダメとは言われてないのでそのまま直行。

 

 

「おー、有馬かな! アクアに言われて懐かしい名(・・・・・)だな、と思ったら実物見て更に思ったわ」

「ぐッッ!!」

 

 

【懐かしい名】

にクリティカルヒットを受ける有馬かな。

言葉の刃と言うモノは時に物理を超える。かなにとって、それは心臓を貫く勢いで刺さってくる即死級の攻撃だ。

 

だが、彼女は耐える。このくらい何度も何度もあって、何度も経験をしてきて――――。

 

 

見ない内(・・・・)に、デカくなったなオイ!」

「かはッッ!!」

 

 

何と無慈悲で無情な大人だろうか。

頑張って耐えていたと言うのに、追い打ちまでしてくるとは……。

このまま黙っていたら〇んでしまう……、と思ったかなは、攻撃は最大の防御! と言う勢いでどうにか絞り出す。

 

 

「い、いや……、仕事は、してますよ……。そ、そりゃ子役時代に比べたら、アレですけど……」

「おうおう。……それにしてもしっかり、教え(・・)守ってて良かったろ? 痛感してるだろ??」

「!!」

 

 

ここで、五反田は懐かしむような表情を見せながら、かなに言った。その言葉の真意を直ぐに理解するかなと、何を言っているのかよく解ってないアクアは首を傾げて五反田に聞き直す。

 

 

「教えって何のこと? 監督、有馬に何か教えてたのか」

「いや、教えてないって訳じゃねーけど。あん時の有馬は大人に対する敬意がねーっつーか、天狗っ鼻だったっつーか。言っても聞かねぇ状態だったし」

「ぅ………、おっしゃる通りで」

 

 

なまじ自分の演技が評価されて、幼い内から国を代表する子役のような扱いを受けて、絶大に売れていた有馬かな。……だからこそ、、周りを低く見がちだった。ただ胡坐をかく訳ではなく、自分自身もストイックだが、それ以上に周囲には傲慢な態度を取り続けたんだ。

 

でも―――彼のおかげで、誤った道を進まなかったと思ってる。

 

 

「アクアも知るヤツだ。北斗玲」

 

 

その名を五反田が発した途端、空気が変わった様な感覚に見舞われた。

 

 

「……アイツがこの高飛車な子役様に必死に説き続けたんだ。現場じゃもう見慣れた光景だったぜ。【信頼と信用の積み重ねが何よりも大切】【失うのは本当に一瞬】【いつか困った時、助けてくれるのはこの人たちかもしれないんだから】ってな。……アクアも相当な早熟ベイビィだったが、あっちもあっちで人生何周してんだ? って思えるくらいのもんだったよ。ご丁寧に、これまで売れては消えていった子役のまとめ動画まで見せてきて何度も有馬(こいつ)に、な」

 

 

くくくっ、と懐かしむ様に、何処か儚く、それでいて寂しそうに言う五反田。

 

色々と知ってるアクアはこれに対しては何も言えなかった。

 

かなは、五反田と同じく懐かしむ儚む、そして寂しそうに目を閉じて当時の風景を、記憶を揺り起こす。

 

 

「……私はそのおかげもあって、幼少期程とは比べ物にならないですけど、何とかこの世界で生きていけてるくらいには………出来てると思います。なかったら、もう跡形もなく消えてたかもしれません」

「そうだろそうだろ。……ま、それでも全然クソ生意気だったけどな!」

 

 

がっはっはっは! と大笑い。

色々と痛い所を突かれた次は、原点であり、分岐点でもある出来事を思い出させてくれる。また、立ち上がる気力を沸き立たせてくれる。

こういう人だから、アクアはいるのかな……? とかなは感銘を覚え始めていたのだが。

 

 

そんな気持ちは速攻で霧散する。

 

 

 

「おかわり、いるかい!! 食わなきゃ大きくならんよ!!」

「あ、大丈夫です。糖質抜いてるんで……」

 

 

 

豪快な初老の女性がご飯を振舞ってくれた。

五反田の奥さん―――ではなく……。

 

 

「……色々ショックだな。大切な事、思い出せてくれたと思ったら、監督が親元で寄生虫してる、って事実突きつけられて」

「やっぱ大人にたいする敬意がねぇガキだな!! お前はよ!!」

 

 

クリエイターあるあるだ。

大きな実家があれば1人暮らしする意味ない!!

 

以前アクアにも力説したことを散々かなにもしたのだが、やっぱり馬耳東風だった。

 

 

 

 

 

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