シンフォギア×TIGAー星を結ぶ少年ー(AI絵あり)   作:トライダー

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第三十話 ウルトラマンティガ対ネフェリム・超・ノヴァ

 ☆

 

 

 

 

 

 その時、世界中の人々は、再びその存在を確認した。

 自分達が想いを託し、世界の為に戦う天使達を守るように降臨した神の如し光を放つ巨人を。

 

「う、ウルトラマン……」

「ウルトラマンだ……」

「ほんとに、居たんだ……」

 

 三ヶ月前にその存在を確認されてから、一切の音沙汰の無かったウルトラマン。既にその存在が空想のものと思われていたカレが、何故今姿を現したのかは誰も分からない。

 それでもその存在に、人々は希望を見出していた。

 

 

 

 

 ☆

 

 

「ウルトラマン……」

 

 光の球としてフロンティアの大地へと降り立った巨人は、その腕に抱えていた石造の建造物をゆっくりと降ろした。

 

「あれは――!?」

 

 その行動を皆が不思議に思う中、マリアだけはその建造物に見覚えがあった。

 建造物の一部が開いたかと思うと、中からナスターシャが姿を見せた。

 

「「「マムっ!!?」」」

 

「マリア……調、切歌……」

 

 マリア、調、切歌の三人が、彼女の元へと駆け寄る。

 三人の無事な姿を見て安心したのか、ナスターシャは眠るように意識を失う。もう二度と会えないと思っていた母親の姿に、三人は嬉し涙を浮かべていた。

 

「マム……マムっ!」

 

「良かったぁ……」

 

「本物のマムデスぅ!」

 

 目元に涙を浮かべつつも、喜びの笑顔を見せる調達。そんな彼女達を、穏やかな目で見つめた巨人は、立ち上がり振り向く。

 そして自分へと殺意を向け、威嚇するように吠えるネフェリムに対し構えた。

 

『グロアアアアアアアアアアアアァッ!!!』

 

『――デュアッ!』

 

 世界を焼き尽くそうという暴食の魔人の前に、光の巨人ウルトラマンティガが立ち塞がった。

 ティガは片手を手刀に、もう片方の拳を強く握る。スマートでありつつも力強さを感じさせる構えに、ネフェリムは本能的に警戒を強めていた。

 

『デュアッ!!』

 

 最初に動いたのはティガだった。その歩幅の広さから数キロは離れていた距離を一瞬で詰め、その勢いのまま飛び蹴りを叩き込む。

 その質量と速度から繰り出される重い一撃に、ネフェリムの巨体が大きく後退する。その隙を見逃さず、ティガは追撃を仕掛けた。

 

『ガアアァッ!!!』

 

 手刀、拳、蹴りなどの連打を喰らい、追撃を嫌ったネフェリムが、鬱陶しそうに腕の爪を伸ばし切り裂こうと振り回す。

 しかし怒り狂った獣のような大振りの攻撃を、頭を小さく振ることで回避したティガは、体勢を低くし胴体目掛けてタックルをかました。

 

『デュアっ……?!』

 

 ティガのタックルは受け止められ、その剛腕に投げ飛ばされそうになる。しかしティガは側転で勢いを殺し着地すると、追撃としてやって来た尾をバク転で回避した。

 華麗に距離を取り着地した後ティガは、こちらへと突進して来るネフェリムへと、手裏剣のような構えで光弾を放つ。

 

 《ハンドスラッシュ》

 

 二度三度、胸部で爆発する光弾は、ネフェリムの胸部を爆発させ、幾度も後退させた。

 

『ガアァアア……ッ!』

 

 だが、ネフェリムも黙っていない。

 口に貯めた赤いマグマのようなエネルギーを火球として吐き出す。

 一撃で響達を撃ち落とす程の破壊力を持った火球。

 

『デュアッ!!』

 

 しかしティガは、その火球の群れへと突っ込と、片手で簡単に打ち払った。

 そのまま勢いを弱める事もなく、跳躍したティガが繰り出した強烈な手刀が、ネフェリムの頭頂部に突き刺さる。

 

『グギャアアアアアアアッ!!!』

 

 地を揺らすほどの絶叫が大地に響いた。

 脳天を叩き割られたネフェリムは、苦悶に満ちた叫びを上げる。その生物としての急所を正確に撃ち抜かれ、無防備なままよろけた巨体にティガは、更なる追撃を仕掛けた。

 

「凄ぇ……アイツを押してやがる」

 

 クリスの言う通り、ティガの一撃は確実にネフェリムへとダメージを与えていた。

 自分達の攻撃でも傷をつけることは出来ていたが、ノイズの鎧を外皮に纏っているネフェリムには、表面上の攻撃は効かず、すぐに再生されていた。

 しかし同等の質量を持つティガの体の芯に響く攻撃は、ネフェリムの本体である内部にまで大きなダメージを与えている。

 ノイズの鎧に纏われている為、通常の攻撃や兵器は通じない筈のネフェリムに触れられるのは、ウルトラマンの持つ不思議な力のお陰なのだろう。

 

「何故だ……何故だウルトラマン!! 何故貴方が、英雄たるボクの前に立ち塞がるのですかぁっ!?」

 

 ウルトラマンを絶対的な英雄として心酔していたウェルは、その目標としていたカレが、自分の野望を打ち壊そうと立ち塞がる光景に理解が及んでいなかった。

 しかし彼の掲げる英雄像など、ウルトラマンには、一人の少年には関係が無かった。

 大切な人を守りたい。世界を救いたい。それらを傷つける事を、許す事はない。

 光となった少年が心に思うのは、ただそれだけだった。

 

「翼さん、わたし達も!」

 

「待つんだ、響くん。今は様子を見るんだ」

 

「な、なんでですか?!」

 

 ネフェリムとウルトラマンの戦いに響も参加しようとするが、それを弦十郎が押し留める。

 

「ヤツがまだ何者か分からん以上、迂闊に割り込むのは危険だ」

 

「でも、ウルトラマンさんはわたし達を助けてくれたんです! さっきの事だけじゃなくて、“あの日”も!」

 

「そうだ。だが奴が何の目的を持って我々に手を貸すのか分かっていない。迂闊な判断で手を出してしまっては、多くの人々を危険に晒してしまう事になるんだ」

 

 二年前のライブ、三ヶ月前のルナアタック、それで今回。三度によってウルトラマンは自分達を助けた形になっている。

 しかし、カレがもし何らかの野心を持ち行動しているとしたら、それを手助けする事はウェル以上の脅威を生み出すと言う事になってしまう。

 現在日本の最高戦力であるシンフォギア装者と、その組織である二課のトップ、そして彼女達の保護者代わりでもある弦十郎は、安直な判断をしてはいけないのだ。

 

「……分かってくれ、響くん」

 

「――分かりません!」

 

 しかし響はかぶりを振った。

 

「な! 響くん、君は……」

 

「師匠の言ってる事、難しくてよく分かりません! わたしに分かる事は、ウルトラマンさんは“人助け”をしてるって事です! わたし達を……わたしを……未来を助けてくれました!」

 

 自分達が神獣鏡の飲み込まれた時、自分達が聖遺物の呪いに蝕まれていた時、光の巨人の姿を見た。その時、自分達はあの光の力に救われた事を、二人は頭ではなく心で理解していた。

 

「自分を助けてくれた人を助けたいって、おかしい事ですか!? わたしは……わたしを、未来を助けてくれたウルトラマンさんの助けになりたいです!」

 

「響くん……」

 

 弦十郎の言っている事はわかる。しかしそれでも自分達を助けてくれた存在を見過ごす事など、人助けを目標に槍を手にした彼女に出来るわけが無いのだ。

 そしてそれは響だけでは無かった。響の真っ直ぐな想いを聞いた装者達は、互いに顔を見合わせると無言で頷いた。

 

 

 

 

『ハァッ!』

 

 ティガの足刀蹴りが、ネフェリムの喉元を打ち抜いた。その巨体が仰け反り、叫びと共に怒りの火球を乱射する。

 

『ガアアアアァッ!!!』

 

 あらゆる方向へ、まるで幼児の癇癪のように無差別に撃ち出される火球群。ティガは一歩距離を取り、右手で弾くように火球を防ぐ。

 しかし闇雲に放たれた火球は、カレの元を離れ、辺りの岩場を破壊する。

 そしてその内の幾つかが、翼達の方へと向かって行った。

 

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

 傍観に徹し、会話に集中していた為か、クリス達の反応が遅れる。既にバリアーを張る時間もなく、切歌達はその身を固め受け止めようとする。

 

『――デァッ……ッ!?』

 

 しかし想像した痛みが彼女達を襲う事はなかった。そのの火球を、巨大な背中が遮ったからだ。

 

「…………ウルトラマン?」

 

 目を見開いた調達の目の前に、四つん這いになるようにして自分達に覆い被さり、その背中で火球を受け止めるウルトラマンの姿が映った。

 

『グロアアアアアアアアアアアアァッ!!!』

 

 響達の盾となる為、距離を取り身を屈めているティガへと、ネフェリムは容赦なく火球を連続で放った。

 

『……ディア?!…………ディアァッ!!?』

 

 闇雲に放つものではなく、明らかにこちらを消すために放つ火球の大きさは先程の非ではない。

 しかし振り向いたティガは、向かって来る火球から逃げる事をせず、寧ろ両手を広げる形にして全てをその体で受け止めた。

 

「間違いありません。やはりウルトラマンは、私達を守ってくれています! あの日と同じように……」

 

 火球が着弾する度に火花が散り、まるで血液のようにティガの体から光の粒子が散る。

 それでもティガは下がらず。寧ろ両手を広げたままネフェリムへと距離を詰めて行った。

 

 

 

「間違いありません。やはりウルトラマンは、私達を守ってくれています! あの日と同じように……」

 

 火球が着弾する度に火花が散り、まるで血液のようにティガの体から光の粒子が散る。

 それでもティガは下がらず。寧ろ両手を広げたままネフェリムへと距離を詰めて行った。

 翼はその姿が、三年のライブの日、怪獣の熱線から自分達を守る光の巨人の姿と重なって見えた。

 

「……まさか、ウルトラマンは、本当に我々を守る為に戦っていると言うのか? 己の身を犠牲にしてまで……」

 

 そんな光景を見て疑いの目を持つ弦十郎では無かった。

 弦十郎は、自分でも気がつかないうちに拳を握り込んでいた。身を挺して何かを守るその姿は、ただの巨大な獣の姿ではなく、一人の“漢”の姿だったからだ。

 

『グ……ガァ…………』

 

 翼達から離れた場所で再び戦うティガは、先程のダメージを引きずっていながらも、ネフェリムの力を完全に上回っていた。

 苦しそうな呻き声をあげるネフェリムの姿に、弱っていることを確信したティガは、一歩後ろへ下がると両の手を突き出し重ねた。

 それはかつて、月の欠片を破壊した光線の構えだった。

 

 ピコーンッ   ピコーンッ   ピコーンッ

 

『グッ……ュアッ……!』

 

 トドメまであと僅かと思われた時、ティガは突然崩れるように膝をついた。

 

「ど、どうしたんデスか?! さっきまでは……」

 

「胸の宝石が、光ってる……?」

 

 切歌と調の指摘した通り、ティガの胸の宝玉。先程まで地球を思わせすほどに青く美しい光を発していた《カラータイマー》が、血のように赤く鼓動のように点滅していた。

 カラータイマーが点滅する度に、力が失われているのかのようにティガは、弱々しい声を吐いていた。

 

 

『ガアアァッ!!!』

 

『デァっ?!……』

 

 勿論その隙を見逃すネフェリムではない。

 苦しそうにうずくまっているティガの胴を蹴り上げる。二度三度と起き上ろうとするティガを、まるでボールのように蹴り転がし続けた。

 なんとか立ち上がったティガは反撃を試みるが、体に力が入っていないのか、一撃に先程のような重さを感じさせる事はなく、ネフェリムの動きは止まらなかった。

 

『デャァッ?!』

 

 ネフェリムの爪がティガの胸部を捉え血飛沫のように光を散らす。

 倒れたティガへとネフェリムの腕が伸び、分裂すると触手のように絡み付く。

 細い見た目とは裏腹に、強靭な触手に身動きが取れないでいると、そのままティガを拘束したまま豪快に投げ飛ばす。巨人の体がぶつかり、近場の巨大な岩山が軽々と砕け散った。

 立ち上がろうとするティガだったが、ネフェリムは動きを触手で完全に封じると、そのまま自身の体を放電させる。

 

『デュ……ア、ァッ…………!!?』

 

 触手をつたい流れる電流に、ティガは苦しそうな声を上げる。

 

「ああっ!? ウルトラマンが……」

 

「おいおい! ヤバいんじゃねぇのかよ!?」

 

「叔父様!」

 

 翼達が強く拳を握りしめる弦十郎へと目を向けた時、周りの騒音で意識を取り戻したのか、マリアの腕の中で眠っていたナスターシャがゆっくりと目を開いた。

 

「マム!」

 

「マリア……あの子は?」

 

「あの子?」

 

 ナスターシャは朦朧としているのか、霞んだ目で辺りを見回している。マリアには、それが誰のことを指していたのか分からなかった。

 

『アァ!…………グァ……ァ……!』

 

 その時、ナスターシャの耳にも、苦しむティガの声が聞こえた。ネフェリムの触手に絡み取られ、呻き声を上げる巨人の姿を見た瞬間、彼女の目がカッと見開いた。

 

「――っマリア!」

 

「マム?」

 

「お願い、あの子を……カレを助けてあげて!」

 

 衰弱している筈の体を無理矢理動かし、縋り付くように懇願するナスターシャ。命の恩人とはいえ、何故彼女がここまで必死に頼むのか分からない。

 

「ええ、勿論よマム」

 

 しかしマリアに断る理由は無かった。何故なら例えナスターシャに頼まれずとも、マリアは向かうつもりだったからだ。先程響が言った同様、大切な人を助けてもらってマリアが、この状況を黙って見ていることなどできる筈がなかった。

 

「まて、マリア」

 

「止めないで翼。そもそも私達が、貴方達の都合に合わせる筋合いは無いのだから」

 

「止めたりしませんよ」

 

 今にも飛び立とうとするマリアに声をかける翼、しかしそれは彼女を引き止めるためでは無い。

 響達もまた覚悟を決めた。理屈ではなく、自分達が正しいと思う事の為に戦う。このギアはその為の力なのだ。

 

「一緒に行きましょう、マリアさん!!」

 

「ええ、貴方の言う人助け、私にも手伝わせて貰う!」

 

 響が差し出した手を取り、二人は空を駆けた。勿論同じ想いを胸に抱いていたクリスや切歌達もその後に続く。その背中を見守っていた弦十郎は、既に止める意欲を失っていた。

 

 

 

  ☆

 

 

 

「アッハハハハハハッ! いいぞ、ネフェリムー! お前はウルトラマンなんかに負けたりしない! 偽物の英雄なんか殺してしまえーー!!!」

 

 ウェルの叫びに呼応するように、ネフェリムが獣のような咆哮をあげた。

 

『グロアアアアァッ!!!』

 

『デュ……ア、ァッ…………!!?』

 

 ピコーンッピコーンッピコーンッピコーンッピコーンッ

 

 まるで警告音のように音を早めるカラータイマーが、ウルトラマンのピンチを知らせる。苦しそうに呻くティガへトドメを刺そうと、ネフェリムは再び熱線を放つ為に大口を開いた。

 

「デデデデースッ!!」

 

 《蒼ノ一閃 》

 《終虐・Ne破aァ乱怒》

 

 しかしその時、巨大化した翼の大剣と、切歌の大鎌がティガの両腕を拘束する触手を切り裂いた。

 

「なにィッ!!?」

 

 ウェルの悲鳴が響く中、切断された触手が地に落ち、火花を散らした。

 

「離れて!」

 

 《EMPRESS†REBELLION》

 《裏γ式 滅多卍切》

 

 エクスドライブによって強化されたマリアの蛇尾剣と、調の巨大な丸鋸が脚の触手を。

  

「やあァッ!!!」

 

「ぶっ転びやがれェッ!!」

 

 《MEGA DETH PARTY》

 

『ガアッ?!!』

 

 

 ハンマーパーツを目一杯引き延ばした響の拳により首の触手が破壊され、バランスを崩したところにクリスのレーザーによる爆撃を喰らい、ネフェリムは転倒した。

 

「ウルトラマン……貴方が何故私達を助けてくれるのかは分からない。だが、三度みたびも命を救われた恩人を無視するなど防人の名折れ!」

 

「マムの命の恩人……傷つけさせたりしない!」

 

 例えウルトラマンが何者であろうとも、自分達を助けてくれた事実に変わりは無い。

 ナスターシャを助けてもらった調達だけではない。響達もまた、特に三年前にも命を救われた翼は、いずれその借りを返せる日を思っていた。

 

「各員、分散して攻撃を続けるぞ! 頭部や胴体ではなく、腕や足などの細い部位を狙うんだ!」

 

 翼の指示に頷いた全員が、ネフェリムを取り囲むように飛行し、縦横無尽から攻撃を仕掛ける。

 

「「はあァッ!」」

 

 《INFINITE†CRIME》

 《千ノ落涙》

 

 自分周りを飛び回る少女達を打ち落とそうと、ネフェリムが触手のように伸ばした爪を、マリアと翼は、自分達の周りに展開した無数の剣で切り裂く。

 

「いくデスよ調!」

 

「うん、切ちゃん!」

 

 《終虐・Ne破aァ乱怒》

 《終Ω式 ディストピア》

 

 調はギアの一部を変形させ作り出した巨大なオートマタに乗り込むと、再び三枚刃の大鎌を振り回す切歌の後に続いた。

 

『ギィヤアアアアアアァ!!!』

 

 緑と赤の刃がネフェリムの片腕を切り落とす。

 しかしそれによってネフェリムの怒りを買ってしまった調達にヘイトが向く。

 ネフェリムが火球を放つ。狙いは、特に目立つオートマタに乗り込んでいる調だった。

 

「――っ!?」

 

 分散しているが故に仲間のフォローが間に合わない。いくら巨大なオートマタと言ってもネフェリム達と比べれば大人と子供、以前その攻撃に耐えられるはずもなく、調はガードを固めて襲い来る痛みに備えた。

 だがその瞬間、調の視界を巨大な背中が遮った。

 

「……ウルトラマン」

 

『…………』

 

 調を襲おうとしていた火球を防いだティガは、彼女の方を振り向く。

 

「……心配、してくれているの?」

 

 自分を襲おうとしていた火球を受け止め、こちらを振り向くティガ。それはまるで自分達の身を案じてくれているように思えた。

 

「……ありがとう」

 

 ティガは答えない。しかしその口角は吊りあがっているように見えた。

 調の無事を確認したティガは、再びネフェリムへと構え向かって行った。

 

「行きましょう、皆んな!」

 

 マリアの号令に全員が頷いた後、六人の少女はウルトラマンに続くようにネフェリムへと立ち向かう。その姿はさながら、神に仕える天使のようであった。

 ティガがネフェリムの巨体を受け止め、機動力の高い響達は、腕や足や尾などの細い部位を狙いティガへの攻撃の妨害し、逆に切歌達を叩き落とそうとする攻撃をティガが防ぐ。

 

「〜♪」

 

 戦いの最中、響達は歌を口ずさんでいた。本来エクスドライブに歌は必要ないのだが、彼女達は自然と口ずさんでいた。

 それはまるで、ウルトラマンへの感謝を込めた、讃美歌のようにも聞こえた。

 

「フヒヒ! 無駄無駄、お前達や弱ってるウルトラマンの攻撃など効きはしな――」

 

『――グヤァッ?!!』

 

「なぁッ?!!」

 

 カラータイマーが鳴ってからは、力が弱まっているのかウルトラマンの攻撃は、ほとんど効いていなかった。

 にも関わらず、マリア達とともに戦うティガの拳や蹴りは、再びネフェリムにダメージを与えていた。

 カラータイマーは先程以上に点滅を強めている。しかしティガの力は、まるで彼女達の歌に鼓舞されるかのようにどんどん強まっていた。

 

『ハーーーッ……ハァッ!』

 

 光の力を増したティガの拳が、ネフェリムの横っ面を捉えた。今までで一番の一撃に、ネフェリムの足元がふらついている。

 ダメージの溜まったネフェリムは、体をふらつかせながらも、ドリルのように尖らせた腕を突き出す。しかしそんな破れかぶれかのような攻撃は、今のカレには通じなかった。

 ティガは突き刺しに来た腕を掴むと、自分の方へ引く。そしてネフェリムの背中を、己の背中で転がるようにして反対方向に回り込むと、体勢を崩したネフェリムの膝を足場にして膝蹴りを叩き込んだ。

 

『デュアァッ!!!』

 

 下顎への強烈なシャイニングウィザードに、ネフェリムの巨大が浮き上がり、遙か後方へと吹き飛び転がった。

 

『ガ……ガガ…………』

 

「よし! 押しているぞ!」

 

 弱々しい声を上げるネフェリムの姿に、翼が歓喜の声を上げる。

 その時、ネフェリムの体に異変が起きた。

 

『ガ……ガアアアアアアアアァァァァッ!!!』

 

 突如、ティガの膝蹴りで砕けたネフェリムの下顎部から緑色の光が漏れたかと思うと、その頭部に禍々しい光の渦が生まれた。

 

「な、なんデスかアレは?!」

 

「アレは――!」

 

 謎の現象に驚きを隠せない切歌達だったが、クリスだけはその光の渦に見覚えがあった。

 その時、調達のギアに通信が入る。

 

『チャンスです、皆さん!』

 

「マム?!」

 

 ギアの通信機から聞こえるナスターシャの声に反応するマリア達。現在彼女は、二課に保護され弦十郎から潜水艦の通信機を借り、皆との通信を共有していた。

 

『それこそがバビロニアの宝物庫。その異空間ならネフェリムが暴発しても周りへの被害はありません!』

 

「でも門が小さ過ぎる。あれじゃあネフェリムを放り込む事は……」

 

 マリアの言う通り、現在の門は、ネフェリムの頭部を覆う程度の僅かなもの。これではネフェリム本体全てを送り込む事は不可能だった。

 

『ネフェリムが喰らったソロモンの杖は、完全に取り込まれた訳ではありません。現在は停止状態にあり、ネフェリムにエネルギーを与えているだけの燃料と化しています。ならば貴女達の歌の力で杖を起動させれば、門を広げる事が出来る筈です!』

 

 ナスターシャの言う通り、今のソロモンの杖は停止状態にあった。

 今僅かに門が開いているのは、ティガから貰ったダメージによってネフェリムの力が弱まり、杖を取り込む事が困難になったからだ。

 ネフェリムの力が弱まった今なら、響達の歌の力で再び起動し、門を広げる事が可能なのだ。

 

「だけどソロモンの杖は、アタシらの手の中じゃねぇ。門を開く事はできても、閉じる事は出来ねぇぞ? どうすんだよ!」

 

 クリスの言う通り、門を開きネフェリムを送り込んでも、門が開きっぱなしではそのエネルギーは外に漏れ出してしまう。そうなれば本末転倒である。

 

『……信じましょう、(ウルトラマン)を』

 

「信じるって……」

 

「分かりました!」

 

 あまりに他人任せな発言に、クリスが何か一言言おうとするが、それを覆い被すように響が声を上げた。

 

「おいお前! なにを――」

 

「ウルトラマンさーーーーん!!!」

 

 突然耳元で大きな声を出され、クリスだけでなく全員が耳を押さえた。

 響の声が聞こえたのか、ティガは不思議そうに此方を振り向いた。

 言葉に反応した事に嬉しくなった響は、より大きな声で語りかける。

 

「わたし達がー! あの門を開いてネフェリムを向こうに送りまーーす!! だからウルトラマンさんは、門を閉じるのを手伝ってもらって良いですかーーー!!!」

 

(コクッ)

 

 響の言った事が分かったのか、ティガはゆっくりとその首を縦に振った。

 

「言葉が……通じた?」

 

「よし! 行きましょうクリスちゃん、皆んな!!」

 

 驚くクリスの手を握り、響は更に上昇する。他の皆もその後に続き、ティガの頭部よりも高い位置に鎮座した。

 そして再び、六人は手を繋ぎ歌を奏でる。

 

 Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl……

 Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl……

 

 エクスドライブ状態で放つ《絶唱》。遠く離れた場所のソロモンの杖を起動させるにはこれしかない。

 例え響と手を繋ぎながらでも、その負担やダメージはゼロでは無い。しかし皆で手を繋ぎ合い想いを共有する彼女達に恐怖は無かった。

 

『ガアアアアァッ……ガアアァ!??』

 

 絶唱の力により辺りに満ちるフォニックゲイン。それに反応するように、ネフェリム体内のソロモンの杖が反応し、頭部の門が広がりを強めた。

 数秒と経たずに、ネフェリムの背後に、六十メートルの巨大を呑み込む程に大きくなった門が出現した。

 

「よっしゃあ! 門が広がった!」

 

「後は、ネフェリムの奴をあちらに送り込み、門を閉じる事ができれば……」

 

「頑張って皆んな……響……」

 

(坊や……皆を、守って……)

 

 潜水艦の中で奏や未来達も、その光景を見守っていた。

 

『ガアアアアアアアアァァァァッ!!!』

 

『……』

 

 門に取り込まれないようにもがいているネフェリムを、ティガは無言で見つめていた。

 既にティガのエネルギーは殆ど尽き掛けていた。

 巨人の体を形成し維持するだけで大量のエネルギーを消費するにも関わらず、響達を守るためにダメージを受け過ぎていた。

 現に先程光線を撃つ事も出来ずに脱力し、倒れてしまった。理論的に考えると、恐らくもう一度光線を撃つ力はもう残っていない。

 

(………………聞こえる)

 

 しかし、光となった少年にとって、そんな理屈などどうでも良かった。

 

(ぼくの大好きな、お姉ちゃん達の……“歌”が!)

 

 彼の心には響いていたからだ、自分が愛する彼女達の歌が。

 その力強くも美しい歌声に、彼女達がまだ諦めていない事が分かる。だとすれば自分が諦める理由など存在しない。

 ティガは再び光線の構えをとる。両手を突き出しクロスさせ、水平に開くと少年()ウルトラマン(カレ)の胸の宝玉に光が、(フォニックゲイン)が集まっていく。

 

『デュアッ!』

 

 《ゼペリオン光線》

 

 腕をL字に組んだ瞬間、ティガの右腕から白銀の光線が放たれ、ネフェリムの胴体を捉えた。

 

『ガアアアアアアアアァァァァッ!!!――――」

 

 正面からやってくる高密度のエネルギーに耐え切れず、ネフェリムの体がバビロニアの宝物庫に押し込まれ呑み込まれる。

 

 ピコーンッピコーンッピコーンッピコーンッピコーンッピコーンッピコーンッピコーンッピコーンッピコーンッ

 

 カラータイマーが更に点滅を強める。しかしエネルギーが尽きかけているにも関わらず、ティガの光線が弱まる事はなかった。

 

(あれ?……痛みが来ない?)

 

(それどころか何だ?……)

 

(この凄え、心地よさは?……)

 

 来ると予想していた、絶唱によるバックファイア。しかし彼女達が感じたのは、自分達を照らす目の前の光の暖かさと安らぎだった。

 ティガの、少年の発する光の力が、彼女達の絶唱の負荷を中和させていたのだ。

 そしてそれはティガも同じだった。彼女達の歌が響く度に、ティガの額のクリスタルが輝き光を強める。

 その輝きに比例するように装者達のギアの光も強まり、それが更にティガに力を与えていた。

 

(絶対に諦めない! みんなの想いを胸に、奇跡を起こす! それが、《ウルトラマン》だッ!!!)

 

 

 “絶対に諦めない”亡き父とフィーネと交わした誓い。

 その決して折れない光の心こそが少年の一番の強さ。その想いを胸に彼の心の光は輝きを増す。

 彼女達の歌に、少年の想いに応えるように光線の光が更に強まった。

 

『ガアアアアアアアアァァァァッ!!!』

 

 光線によって宝物庫へと押し込まれたネフェリムの体が、ヒビ割れ砕けていく。

 それと比例するかのように宝物庫全体の空間にも巨大なヒビが入る。強まるティガの光線のエネルギーに空間そのものが耐えられなくなっていたのだ。

 

『ガ……アアァ…………………………』

 

 ネフェリムの巨体が、バビロニアの宝物庫が、そこから生まれるノイズ達が、白銀の光の中へと呑み込まれ消滅する。

 宝物庫の門である光の渦が大きな爆発を起こし、その空間ごと跡形もなく完全に消滅した。

 

 ――ネフェリム撃破。

 

 

 

 

  ☆






 《ウルトラマンティガ》

 ティグの紋章に光のエネルギーが集まった時、その姿を現す光の巨人。
 本来巨人となる際には、肉体となる依代、エネルギーとなる光、そして人間の魂が必要となる。
 しかしユウが変身する巨人には肉体となる依代が存在せず、彼の心の光のみで無理矢理巨人の形を作っている状態。その為巨人の姿を維持するだけでエネルギーの消費は凄まじく、現在は力の幾つかが封印されている状態にある。
 かつても月の欠片を破壊しただけで全ての力を使い切り、三ヶ月の時を得てもその力は回復し切る事はなく、複数の奇跡を起こした事でエネルギーは完全に尽きていた。
 しかし70億のフォニックゲインと、純粋なるナスターシャの願い、そして少年の強い思いを光と変え再びこの地に降り立ち、人類にその存在を示した。
 

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