シンフォギア×TIGAー星を結ぶ少年ー(AI絵あり)   作:トライダー

45 / 57


 番外編第二弾。
 平成のピグモンことあの怪獣が登場します。




第四十四話 出番だデバン!

  ☆

 

 

 

 

 キャロル達の襲撃から数日、ティガとの戦いで数千ものアルカ・ノイズを失い、オートスコアラーとキャロル自身も負傷し錬金獣も倒された。

 多くの損害を受けたキャロルは、あれ以降活動を停止している。

 だがしかし、それで平和がやって来たわけでは無い、この日本では、また別の異変が起こっていた。

 

 

 

 

  ☆

 

 

 

「来ました! 例の“魔神”の電磁波です!」

 

「モニターに出せ!」

 

 けたたましいアラームが司令室に鳴り響く。

 藤尭が特定した電磁波のデータを、友里がモニターに映す。

 東京都のマップが映し出され、その上に紫色の電磁波のデータが波打って漂う。

 

「……始まりますよ」

 

 ナスターシャの重い声に、皆の周りの空気を張り詰めた。

 モニターの中の紫の波が一瞬強まる。しかしそれは一緒だけであり、波はすぐに収まり消え去った。

 

「消えた……」

 

「反応元は何処だ!?」

 

「R地区ポイント27…………これはッ!?」

 

「どうした藤尭ッ!」

 

「ポイント27に、“魔神”出現ッ!」

 

 藤尭は、報告と共にR地区の映像をモニターに出す。

 すると晴天の空に稲妻が走り、平和な街に巨大な魔神が姿を現した。

 

 《魔神 エノメア》

 

 一見武者鎧を着た女性にも見えるビジュアル、体のあちこちに棘を生やした“魔神”とも“悪魔”ともとれる禍々しい姿が、不気味に街を見下ろしている。

 

()()姿を現したか……響くん達に、すぐに招集を――」

 

「司令、魔人への攻撃が始まりました!」

 

 友里の言う通り、モニターの向こうでは、既に幾つかの戦闘機が魔人へと向かっていた。

 

(ニヤッ)

 

 しかし戦闘機が照準を合わせ攻撃を開始しようとした瞬間、魔神は此方を見て不気味に笑うとその姿を蜃気楼のように消してしまった。

 

「くそッ! ()()消えたかッ!!」

 

 弦十郎が鬱陶しそうに机を叩く。

 そう()()なのだ。

 ここ数日、強力な電磁波と共に謎の魔神が現れ、此方が急行した頃には消えると言った事件が頻発していた。

 

「警官隊が、現場の暴徒の鎮圧を始めました」

 

「ここからは彼らの仕事だ、あとは任せるとしよう」

 

 友里の報告を聞いて弦十郎はモニターを見つめる、その先では警官隊と街の暴徒達の、激しい争いが映し出されていた。

 魔神の放つ電磁波は、浴びた者の脳内に一種の恐怖ホルモンを与える。そして攻撃衝動と殺人衝動を引き起こした上、脳のあらゆる部分を破壊すると言った恐ろしい効果がある。

 これにより魔人の現れた区域は、デモにあったかのように荒らされ、力尽きた人々の死体が群がる地獄絵図と化していた。

 対処をしたくても、電磁波の出現ポイントは不規則でありすぐに消えてしまう。

 その為、学生である響達を現場に急行させる間もなく、彼らS.O.N.Gは完全に後手に回されていた。

 

「くそッ! なんでだよ……なんで来てくれないんだよ、ウルトラマン……!」

 

「ちょっと藤尭くん! 何言ってるのよっ!」

 

「だって、どう考えてもオレ達は、コイツにおちょくられてるじゃないですかッ! ウルトラマンさえ来てくれればこんな地獄、簡単終わらせてくれるのに……ッ!」

 

 自分達がどれだけ早く場所を特定しても、すぐに逃げられる。そしてその度に区域一つを地獄に落とす魔神の存在に、藤尭は己の無力さを感じ怒りを撒き散らしてしまう。

 

「藤尭、お前の気持ちも分かる。だがオレ達S.O.N.Gは、対怪獣組織の最前線だ。そんな弱気な言葉を決して漏らすな」

 

「……………………はい、すみません」

 

 S.O.N.Gの司令としての厳しい言葉に、藤尭は渋々ながら引き下がる。

 しかし厳しく咎めていながらも、弦十郎や友里達も内心藤尭と似た思いを抱えている事は事実だった。

 

「…………ウルトラマンがいれば、オレ達なんて……」

 

 沈黙の司令室の中で、誰かがそう呟いた気がしたが、それを咎める者はもう居なかった。

 

 

 

 

  ☆

 

 

 

 数日後の休日。

 ユウ達は、学園から少し離れた小さい遊園地へと遊びに来ていた。

 今彼らが居るのは、小さな遊園地の中にある更に小さなショーステージ。観客は殆どなく、人気が全く無いのがハッキリと分かる。

 

「デバーン、頑張ってぇー!」

 

 そんなステージを、ユウは観客席に座りながら、元気な声と共に大きく手を振っていた。

 観客が少ないながらも、団長らしき男がマイクを手にショートを盛り上げていく。

 

『さぁ、怪獣の郵便屋さんは困った! 何故ならぁ〜〜手紙を食べてしまったからだっ!』

 

 団長の後ろに居た、小さな怪獣のようなキグルミが、慌てたように動く。

 

『怪獣の郵便屋さんは、黒ヤギさんのお家へ走る走る!〜ぽてっと転んだぁ!』

 

 キグルミは、団長の声に合わせて豪快に走り転んだ。

 

『そこでピエロに助けてもらい〜もう一度、走る走る走る〜!!!』

 

「あっははははっ!」

 

 贔屓目に言っても決して面白くはなく、周りの誰も笑っていない。

 しかしユウだけは、ポテポテと頑張って走る怪獣の郵便屋さんに笑顔で拍手を送っていた。

 

「ねぇ、ユウ……せっかく遊園地に来たのに、こんなショー見てるだけで良いの?」

 

「うん! だってぼくこのショーが見たくてお姉ちゃん達を誘ったんだもん!」

 

 今日の遊園地デートは、ユウからのお誘いだった。

 勿論二人きりなどではなく、創世達や未来も混ぜた大人数で。しかし魔人事件で、S.O.N.G本部に缶詰になっている翼達はお留守番である。

 

「しっかし、ビッキー達来れなくて残念だったね?」

 

「仕方ないデスよ。魔人出現に素早く対応する為には、休日こそ本部に止まらなくては」

 

「響さん達、血の涙流してたね」

 

 よって装者達の中で来られたのは切歌と調だけ。

 彼女達は前回の戦いでシンフォギアを破壊され、尚且つLiNKERの過剰投与もしている。

 その為今回は、弦十郎によって強制的に休暇を取らされているのである。

 

「でもユウくん、なんでこのショーが見たかったの?」

 

「ぼく、《デバン》に会いたかったんだ!」

 

「デバンって、あの怪獣のキグルミの人?」

 

 弓美はステージの上で、わちゃわちゃと動いている怪獣の郵便屋さんを指差した。

 しかしユウは、何を言ってるのか分からないと言うように首を傾げる。

 

「んー? デバンは怪獣だよ?」

 

「あっははは! ユウくんは純粋だなぁ!」

 

 ショーのスーツに中の人など居ないと言うかのような、ユウの子供らしい言動にお姉ちゃん達はふやけた笑顔で頭を撫でる。

 

「んー?」

 

 しかしユウ自身は、何故頭を撫でられているのか分からずに首を傾げていた。

 

 

 

  ☆

 

 

 

 暫くしてショーが終わり、旅芸人一座『ゆかいな仲間たち』が片付けを行なっている。

 ユウはそんな彼らへと手を振り近づいて行った。

 

「おじさん、今日のショー楽しかったっ!」

 

「おお、ありがとう! もしや君が星乃結くんかい?」

 

「うん! おじさん達の配信、いつも見てるんだ!」

 

 笑顔で喜びを伝える少年の姿に、団長は嬉しそうに微笑む。

 彼ら『ゆかいな仲間たち』の芸は、殆ど見ている者が居ないが動画配信もされている。

 ある日からそれを見だしたユウは、以降彼らのファンになり、応援のお手紙も何通か送る程だった。

 

「ねぇねぇ、デバンとぎゅってして良い?」

 

「ああ良いぞぉ。おい、デバン!」

 

『キュイィ〜?』

 

 団長に呼ばれ、バンの後ろから怪獣のキグルミを着たままのデバンが、ひょっこりと顔を出した。

 

「デバ〜ンっ!」

 

『キュイィっ!』

 

 その姿を見たユウが、急いで駆け寄りデバンへと抱きつく。そこそこ勢いのあるハグだったが、デバンも嬉しそうに少年を抱き返した。

 

「あっはははっ! 良かったなデバン、もうファンが出来たのか!」

 

「うん! ぼく、デバン好き! 劇団の誰よりも一生懸命に芸をしてるデバンが、可愛くてカッコよくて好きなんだぁ!」

 

「そうかそうか! コイツも君からの手紙を嬉しそうにしてな、何度もオレ達に見せてきやがったんだぞ!」

 

『キュイィ〜!』

 

 団長の言う通り、デバンはファン第一号であるユウとの出会いに大いに喜び、嬉しそうに頭のツノをピカピカと光らせていた。

 純粋な少年と怪獣のキグルミの微笑ましい光景を、未来達は少し離れた場所で傍観していた。

 

「切ちゃん……わたし、キグルミになりたい」

 

「落ち着くデスよ調、ユウはキグルミが好きだから抱きついてるわけじゃないデスよ」

 

「それはそれとして、羨ましい……ああ、頬擦りまでぇ〜! ユウくんたら、後でしっかりと可愛がってあげないとねぇ……」

 

「未来さんの言う通りデスぅ、ふっふっふ……」

 

「お、落ち着きなさいよ、アンタ達……」

 

 キグルミのマスコットに嫉妬をしている切歌達を、若干怯えながら弓美が抑える。

 

「にしても、あのデバンさん……だっけ? 芸が終わってもキグルミのままなんて意識が高いわねぇ」

 

「本当ですわ、まるで本当に生きているみたいで、職人とは凄いものですねぇ」

 

 創世と詩織は、目や指先まで滑らかに動かすデバンの中の人の技術力に素直に感心していた。

 

 そんなある意味、いつも通りの日常を謳歌していたその時、突如晴天の遊園地に稲妻が走った。

 

「な、なに……何なのっ?!」

 

「この反応は……!」

 

 一般人の弓美達は戸惑っているが、調達はその現象を知っていた。

 稲妻の走った空間が歪み、何もなかった場所から巨大な“魔神”エノメアが姿を現した。

 

「ま、魔神がこんな所に!?」

 

「う、うわああああぁッ!!!?」

 

 魔神の巨体を見た瞬間、団長は恐怖に満ちた叫び声を上げると、他の団員と共にバンに荷物を積み込み逃げる支度を終える。

 

「ま、待ってよ! あたし達も乗せてよぉっ!」

 

「き、君らはこっちに来るな! ほら早く出せッ!」

 

 弓美達の声を無視し、デバン達団員を乗せたパンは猛スピードで逃げ出した。

 

「この人でなしーーーッ!!!」

 

「み、皆さん見てください! 魔人が……」

 

 詩織が魔神のいる方を指差す。するとそれまで立ち尽くしていた魔神が動き出し、バンの逃げた方を向くと額から青い光弾を放った。

 

「あの魔神……芸人さん達のバンを狙ってる?」

 

 不思議な事に、光弾は街でもなく遊園地でもなく、慌てて広場の中を逃げ惑う、一台のバンへ向かって放たれていた。

 その光景はどう見ても、彼ら旅芸人達を狙っているようにしか見えない。

 

『調くん、切歌くん!』

 

「「司令っ!」」

 

『君達のいるすぐ近くに、魔神の反応が出ている! 今どう言う状況だ?』

 

 そんな時、調達の耳に弦十郎からの通信が入る。

 

「魔神は今、わたし達の目の前に現れました。でも街やわたし達ではなく、一台のバンを攻撃しているんです」

 

『バン……だと? 一体どう言う事だ?』

 

 調が現在の状況を説明するが、やはり魔神の行動は謎に包まれていた。

 だがそうしている間にも、旅芸人達は追い込まれていく。魔神はバンの逃走経路を遮るように光弾を放っており、遊園地から逃げることが出来ず、結果広場の中をグルグルと回っていた。

 このままでは、彼らが破壊されるのも時間の問題だった。

 

(デバンや団長さん達を助けないと……!)

 

 ユウはティグの紋章を握りしめると、人気のない所に移動しようと試みる。

 しかし今の彼は、魔神が出現してからずっと、未来に強く抱きしめられ動けなくなっていた。

 

「未来お姉ちゃん、ちょっと離して――」

 

「ダメだよユウくん! 危ないよ、お姉ちゃん達から離れちゃダメ!!」

 

(うー! ど、どうしよう……?)

 

 力づくで離せなくもないが、自分を心配し善意で抱き止めてくれている未来相手にそんな事はしたくない。

 ユウがどうしようかと考えを巡らせていると、東京湾の方角から三本のミサイルが魔神へと飛来する。

 ミサイルの気配に反応し魔神が迎撃の体制をとる。

 しかしその瞬間、ミサイルの外装が分離し、三人の装者達が姿を現した。

 

「響っ!」

 

「翼先輩に、クリス先輩デス!」

 

 潜水艦のミサイルを使い高速移動を果たした響達。

 移動の最中にイグナイト・モジュールを発動していた彼女達は、その勢いのまま魔神へと挑み掛かる。

 響が突貫するのと同時に、翼とクリスも遠距離から援護を行う。

 

 《蒼ノ一閃》

 《MEGA DETH PARTY》

 

 三人の攻撃に爆発を起こし、魔神が後退する。

 

「様子見は不要だ、一気に決めるぞッ!!」

 

 何度も姿を消す魔神への初めての攻撃の成功。このチャンスを逃しては、もう二度と捉える事が出来ないかもしれない。

 翼の声に押され、三人は間髪入れずに追撃を試みる。

 

『フルゥ……!』

 

 しかし三人の攻撃が届く前に、再び魔神は虚空へと溶け消え去ってしまった。

 

「ああっ、くそッ!!」

 

 クリスが鬱陶しそうに近くの石を蹴り飛ばし、響や翼も悔しそうに虚空を睨み付ける。

 

「すみません師匠、魔神には逃げられました……」

 

『そうか……仕方あるまい、そちらに迎えを送る。すまないがそれまで、“彼ら”を見張っておいてくれるか?』

 

「彼らって、誰ですか?」

 

『先程魔神が狙っていたと言う、バンの者達だ。彼らから聞く事が多そうだ』

 

 目的の分からない魔神の、初めての明確な行動。

 狙われた彼らから情報を得られれば、何か魔神に対抗する手段が現れるかもしれない。

 響やユウ達は先程の魔神の攻撃で、横転したバンへと向かい団員達の救出を試みた。

 

 

 

 

  ☆

 

 

 

「――ではあの魔神の狙いは、そのデバンとか言う“怪獣”だと言うのか?」

 

 弦十郎からの質問に、S.O.N.G本部へと連れて来られた『ゆかいな仲間たち』の皆は、同時に頷いた。

 なんとキグルミと思われていたデバンは、本物の“怪獣”だったのだ。

 団長達はカレとの出会いの経緯を語った

 

「あれは……デパートの屋上で公演した日の事だった。昼飯を食って帰ったら、アイツがぽつんと立ってたんだ。てっきり入団希望者だと思ってな。変わったやつだけど、勉強熱心なのが気に入ってな」

 

「オレたちも最初はキグルミだと思ってたけど、本物の怪獣だって知って驚いたもんだよ」

 

「デバン、お芝居が好きなのよ。団長が『出番だぞ』って言うと、すごく喜んで反応するから。皆んなデバンって呼んでるの!」

 

 団長だけでなく、他の団員もデバンとの思い出を楽しそうに語る。魔神に狙われている事をわかっても捨てたりせず一緒に居るところから、カレがどれだけ愛されているのかがよく分かる。

 団長はまるで息子を見るような優しい目で、ユウと楽しそうにお話しているデバンを見る。

 

「なぁ坊や、デバンは怪獣なんだが怖くないか?」

 

「んー? そんなの知ってるよ。デバンは怪獣、お芝居が好きで一生懸命な優しい怪獣!」

 

『キュイィ〜!』

 

 初めて動画を見た時からデバンが怪獣である事は知っている。それでも一生懸命にお芝居を頑張っているデバンが、ユウは好きなのだ。

 怪獣が全て悪ではない事はユウもよく分かっている。あんなにお芝居を楽しんでいるデバンが、悪い怪獣な筈が無いのだ。

 

「えへへ! デバ〜ン!」

 

『キュイィっ!』

 

 笑顔で抱きつくユウに、デバンは嬉しそうにツノの光を点滅させていた。

 そんな光景を見ていたエルフナインは、不意に何かに気がついたように声を上げた。

 

「やっぱりそうです!」

 

「うわぁっ!? ど、どうしたのエルフナインちゃん?」

 

 驚かせてしまった響に謝罪したあと、エルフナインは端末を操作し、司令室のモニターにマップと電磁波のグラフを映し出した。

 

「これが今回、魔神が出現する前の電磁波反応です」

 

「それがいったいどうしたと言うの?」

 

 マリアは、今朝も見た電磁波のグラフに首を傾げる。

 

「実はずっと気になってたんです。これ程膨大な電磁波、しかもあんな毒物だとしたら、もっと被害は拡大している筈なんですよ」

 

「被害って、あれ以上って事なのか?」

 

 翼の質問に、エルフナインは深く頷く。

 

「ボクの計算ですと、今出ている被害の……およそ十倍」

 

「「「十倍っ?!!!」」」

 

 予想外の数字に響達は大声を出してしまう。その声にデバンがビクッと震えるのを、ユウは優しく落ち着かせた。

 

「でも被害が本来の十分の一で済んでいるのは、コレのおかげです」

 

 エルフナインが端末を操作すると、マップの中で波打っていた紫色の電磁波の波形が二種類に分解される。

 一つは元々と同じ紫色、もう一つは黄色の波形だった。

 

「魔神が電磁波を発生させるとほぼ同時に、別の電波が発生していたんです。しかもこの電波が発生した途端、電磁波全体が弱まってるんです」

 

「と、言う事は?」

 

「もう一つのこの黄色い電波。これが魔神の毒電波を中和していたんですよ!」

 

 エルフナインの言う通り、魔神の電磁波は観測されてもすぐに消え去っていた。

 それは発生と同時に中和の電波が出ていたおかげで、被害が広範囲に広がるのを抑えてくれていたからだったのだ。

 

「つまり、そのもう一つの電波の発生源を見つければ、これ以上の被害を出さずに済むって事ですね。エルフナインさん、その発生源とは……?」

 

「ここですよ」

 

 ナスターシャの質問に、エルフナインは数歩移動した後手を伸ばす。

 それは絶賛ユウが抱きつき中の“デバン”だった。

 

「デバンさんの……おそらくは生まれ持った体質が、電磁波を弱めているんですよ」

 

「体質……って事は、居るだけでって事?!」

 

「そうです。しかも喜びなどの、感情が強まってる時程、その力は強く出ているようです」

 

「へぇ、凄いんだねデバン!」

 

「つまりあの魔神は、自分の発生させる毒電波を無効化させるデバンを、排除するために出現していたと言う事か……」

 

 魔神は今まで函館、仙台、水戸、東京都、と言った彼ら一座が回っていた場所に出現していた。

 弦十郎の言う通り、デバンを天敵とみなして出現していたのだろう。

 だが遂に謎の魔神対策の光明を得ることが出来た、その事が嬉しくなった藤尭は、勢いよく立ち上がった。

 

「司令、すぐにこの怪獣を解析して、電磁波の発生地に送りましょう! そこに魔神も現れる筈です!」

 

「ちょっと待てよ! あんたらデバンを実験動物にするつもりかッ!!」

 

 魔神の被害に焦りを覚えていた藤尭が、つい思い立った事を言い放ってしまう。

 勿論そんな事を、団長達が許せるはずもなく掴み掛かった。

 

「あ、貴方達は被害が広がっても良いって言うんですかッ!!」

 

「知ったことかッ!!!」

 

 団長の大きな声に、司令室内がシーンと静まる。

 彼らの口論に怯え震えているデバンへと、団長は優しく手を伸ばした。

 

「コイツはな、オレ達の大切な仲間で劇団の一人なんだ……戦う力なんてないコイツを、争いの嫌いなコイツを、アンタらの戦いの道具にされてたまるかッ!!!」

 

 団長の圧力に皆が言葉を失う。

 そうしてる間に団長や団員達は、デバンを守るようにして司令室を出て行ってしまった。

 それを止められ者は誰も居なかった。

 

「……な、なんて人達なんだ! 怪獣一匹と、人間の命どっちが大切なんだ!」

 

「アイツら、自分達が助かればそれで良いのかよっ!」

 

 彼らが去った後、異識を取り戻した藤尭やクリスは、苛立ったように壁を殴りつける。

 彼ほどではないが、他の皆も同じような思いを抱えずには居られない。

 

「……ねぇクリスお姉ちゃんは、もしぼくに不思議な力があったら、戦場に出してくれる?」

 

「なっ!? そんな事させるわけねぇだろ!」

 

「………………でしょ? それと一緒なんだよ。団長さん達にとって、デバンはそれだけ大切な存在なんだ」

 

 皆んなが大切な人を守ってるように、彼らにとってデバンは大切な家族である。

 ユウは少し寂しそうな表情で皆を見回すと、デバン達を見送る為にカレらの後をついて行った。

 

 

 

 

 

  ☆

 

 

 

 

 本部を出たユウは、デバン達を見送るため、港から少し離れたパーキングエリアへと辿り着く。

 

「じゃあね、デバン。お芝居頑張ってね、またお手紙送るから!」

 

『キュウゥ……』

 

「心配してくれてるの? ありがとう。でも大丈夫だよ、デバンはもうこの星の一員なんだもん、無理して危険な事に首を突っ込まなくて良いんだよ?」

 

『キュウ?』

 

「ぼく? うん、ぼくは皆んなと戦う。だって皆んなぼくの大切な家族なんだもん。頑張ってる皆んなを、ぼくは助けたいんだ」

 

 まるで本当に言葉が通じているかのように、当たり前のように言葉を交わすユウとデバン。

 そんな可愛らしい光景の中、平和の晴天を壊すように、禍々しい稲妻が空に走った。

 

『フルルルルゥッ!!!』

 

 市街地の中心に、再び魔神エノメアが出現した。

 エノメアは全身を震わせると、体から紫色の禍々しい波動を広範囲に解き放った。

 放たれた魔神の毒電波、それは市街地全体を包み込み次々の人々の脳を侵食して行く。

 

「がぁあああああぁッ!!!」

「う……ウォオォオッ……!!!」

「ぐががががががががッ!!!」

 

 毒電波に脳を侵食され、苦しむ人々が暴徒と化し、街を破壊して行く。

 看板を割り、車を破壊し、物を叩き割る。

 そんな地獄のような光景を、魔神はただただ笑いながら見ていた。

 

『キュ、キュウ……』

 

 デバンはそんな光景を目を逸らす見つめていた。

 デバンはお芝居が大好きだった。

 それは芸のを披露する事で皆が笑顔になり、光に包まれているような感覚が大好きだったから。

 だが今の街に笑顔は一つも無い、皆が苦しみ絶望し悲しみに暮れていた。

 笑顔の達にお芝居を披露するデバンは、そんな光景を見たく無かった。

 そんな“想い”が、弱虫なデバンの背を押した。

 

「デバン? 待って、デバンっ!?」

 

「おいデバン! どこ行くつもりだっ!!」

 

 ユウや団長が引き止めるのも聞かず、デバンは街の中へと駆けていった。

 

 

 

 

 

  ☆

 

 

 

 

「魔人の電磁波……尚も拡大しています!」

 

 S.O.N.Gの本部で彼らも魔神の出現を察知していた。

 

「師匠、わたし達が行きます!」

 

「待ってください! 魔神の毒電波の濃度が今までの比ではありません。これでは、シンフォギアのバリアフィールドでは防げません! 今行けば、響さん達が街を壊す暴徒になってしまいます!」

 

「そ、そんな……」

 

 魔神の電磁波を、検出していたエルフナインが叫ぶ。

 今までの電磁波は、彼女が強化したシンフォギアで防ぐ事が出来たが、今回の濃度はその数倍。

 唯一の対抗手段であるシンフォギアすら抑えられ、S.O.N.Gは打つ手を失ってしまっていた。

 

「早く……早く来いよ、ウルトラマン!」

 

「藤尭くん……」

 

「どうせオレ達が頑張ったって意味がないんだ。ウルトラマンさえ居てくれれば、全部解決してくれるんだ……だから……早く」

 

 完全に戦意を失ってしまった藤尭が、端末から手を離しウルトラマンの出現を待つ傍観者になろうとした。

 だがその時、エルフナインが確認している電磁波に乱れが起き始める。

 

「これは……魔神の電磁波が、急激に弱まっています!」

 

「な、何が起きているのだ、エルフナイン?」

 

「魔神の電磁波とは別の電磁波……これはッ!?」

 

 エルフナインが端末を操作すると、もう一つの電磁波の発生源の映像がモニターに映し出される。

 そこには、地獄絵図と化した住宅地を怯えながらも歩き続ける、小さな怪獣の姿があった。

 

「デバンっ!!?」

 

「そんな、武器も持たずにっ!!」

 

 それはデバンだった。

 暴徒達の光景に涙を流しながらも、一歩一歩踏み出しそのツノから、自らの電磁波を発生させ毒電波を中和していく。

 毒気の抜かれた人々は、意識を取り戻した後、穏やかに眠っていく。

 

「……なんで怪獣のアイツが、戦う力なんて持ってないのに……」

 

 藤尭は理解が出来ていなかった。

 怪獣であるカレには、人類がどうなろうと関係がない筈なのに。ましてや戦闘能力を一切持っていないにも関わらず、危険な戦場へと姿を現し人々を救っている。

 それは人間だからとか、怪獣だからとか関係ない。この星に生きる仲間としての当然の事なのだ。

 

『フルゥッ!』

 

 だがそんな小さな怪獣の頑張りを、魔神が許す筈がなかった。

 魔神は住宅地を歩くデバンの姿を発見した。

 今回ヤツが、高濃度の電磁波を撒き散らしていたのは、邪魔者を介入させない為だけでなく、それを無効化出来るデバンを炙り出す為だったのだ。

 

(ニヤッ)

 

『キュウゥ……』

 

 魔神の青い目がデバンを見下ろした。

 その目に睨みつけられ恐怖に震えながらもデバンは電磁波を放つのを止めない。

 そんなカレへと魔神は、無慈悲に青い光弾を撃ち放った。

 

「「「デバンっ!!!?」」」

 

『デバンっ!!!』

 

 人間の子供程の身体が最も簡単に吹き飛び、アスファルトへと転がる。

 装者達が叫ぶ中、モニターの向こうで倒れたデバンへと駆け寄るユウの姿が映った。

 

『デバン……デバンっ!!!』

 

『おいデバン、目を覚ませよ!!』

 

 団長達も集まりデバンを抱え起こす。

 しかしユウや団長達がどれだけ呼び掛けても、デバンが目を開くことはなかった。

 

「………………師匠、わたし行きます!」

 

「響くん……」

 

「デバンが……あんな小さな怪獣が、頑張ったのにただ見ているなんて出来ませんッ!!」

 

「立花の言う通りです。この星の仲間の命、犠牲にはしませんッ!」

 

「電磁波の薄いところから突破口を見つけてやる。だからアタシらを行かせてくれ!」

 

「……分かった。こちらも魔神の解析を続ける、無茶をするんじゃ無いぞ!」

 

 弦十郎の指示に強く頷き、三人の装者は司令室を飛び出し戦場へと向かった。

 

「……このままで良いのか? あんな小さな存在が、我々を救う為に命を賭けてくれたと言うのに、戦うべきオレ達が、ただ見ているだけで本当に良いのか?」

 

 三人を見送った後弦十郎は、モニターの向こうのデバンを、放心したように見つめていた藤尭の肩に、そっと手を置いた。

 

「カレと同じように、オレ達に出来ることが一つでもあるなら、その一つに全力を賭けて足掻いてやろうじゃないかッ!」

 

 弦十郎の優しくとも厳しく諭す言葉に、藤尭の頬に無意識のうちに涙が伝っていた。

 

「……司令、オレが間違っていました」

 

 藤尭は袖で強引に涙を拭った後、脱力していた両手を再び端末へと添え操作していく。

 

魔人(アイツ)を解析して、突破口を見つけてやる! 友里さん、エルフナインちゃん、力を貸してくれ!!」

 

「ええ、勿論よ!!」

 

「はい! これだけ高濃度の電磁波を発生させていると言うことは、発生させる為の器官が身体の何処かに必ず存在する筈です! そこを見つけましょう!」

 

「ああ、デバンの頑張りを無駄にしてたまるかッ!!!」

 

 素早いタイピングでデータを招集していく藤尭達。そんな彼らに背を押され、他のスタッフ達もそれぞれ持ち場へと戻っていく。

 “自分に出来る事をする”。その志を胸に、S.O.N.G全体に再び闘志の炎が蘇っていた。

 

 

 

 

 

 

  ☆

 

 

 

 

 

「団長さん、デバンをお願い……」

 

 そしてここにも一人、その瞳に闘志を宿す者がいた。

 

「お、おい! どこに行くんだ星乃くん!?」

 

 団長の声を振り切り、ユウは魔人の元へと駆け抜けて行く。

 彼の心に悲しみはあっても、その瞳に涙は浮かんでいなかった。

 今自分がすべき事は、悲しみに暮れる事じゃない。

 少年ユウには、その事がよく分かっていた、だから彼は涙を見せなかった。

 

「ティガ、お願い力を貸して! デバンの頑張りに応えるんだっ!!!」

 

 小さな怪獣の頑張りと、小さな少年の願い。

 勿論その想いに、光の巨人が応えない筈がなかった。

 《スパークレンス》が開き、光が身を包む。その光を突き破るように巨人は、力強く右手を突き上げた。

 

『――デュアッ!!!』

 

 倒れた人々の救助を行っていた響が、その姿を目視する。

 姿を現したティガは、拳を強く握りしめワナワナと肩を振るわせていた。

 

「ティガが……ウルトラマンが、怒っている……」

 

『デュアッ!!!』

 

 怒りを闘志に変え、光の巨人が魔神へと会敵する。

 ティガの飛び蹴りがエノメアの胸を打ち抜き、豪快に転倒させる。

 

「来てくれたかウルトラマン、もう少し粘ってくれよ……!」

 

 ティガが現れても藤尭達の手が止まる事はなく、寧ろタイピングの速度を早めていく。

 ウルトラマンに任せるのではない、寧ろ自分達がカレを助けると言う強い意気込みで、S.O.N.Gの人々は動いていた。

 

『チャッ! タアッ!!』

 

 拳、拳、掴んで膝蹴り、ティガの怒涛の連続攻撃がエノメアを襲い掛かる。

 格闘能力では完全にティガが上回っていた。

 

『フルウウゥゥッ!!!』

 

 だが魔神もタダでやられている訳ではない。

 エノメアは全身を怪しく発光させると、再び毒電波を放った。今度は先程よりも更に濃度の濃い電磁波が、ティガへと集中していく。

 

『グ……グウウウウウゥッ!!!?』

 

「ティガっ!?」

 

「魔神の電磁波は、ウルトラマンでも耐えられないのか!」

 

 強力な毒電波に、ティガですら耐え切る事が出来ずついに倒れ、苦しみを堪えるようにのたうち回る。

 助けに行きたい翼達だが、ウルトラマンですら苦しむ程の電磁波を浴びてしまえば、自分達なら耐える事すら出来ず脳を破壊されてしまうだろう。

 

『フッフッフッフッフッ……!』

 

 そんな苦しむティガを見て、魔神は勝利を確信し笑っていた。

 だが再び住宅街一帯に、黄色い電磁波が広がっていく。

 

『キュウゥ…………』

 

 

 

 

  ☆

 

 

 

「これは……中和の電磁波が、再び広がってます!」

 

「デバンは、まだ生きてるんだわッ!!」

 

 マリアの言う通り、目を覚ましたデバンは立ち上がり、再び自らの電磁波を放ち、魔神の力を無効化していた。

 

「デバン、アイツ…………っ!? 解析結果出ました!!」

 

 再びデバンの勇姿を目視した藤尭は、ついに電磁波の発生源を特定した。魔神の強力なエネルギーが、両肩へと集中しているのが分かる。

 

「司令、肩です! 魔神は両肩の突起から電磁波を発生させているのです!!」

 

「よし! 皆に通信を繋げ! 反撃開始だッ!!!」

 

 

 

 

  ☆

 

 

 

『皆んな肩だ、魔神の両肩の突起が電磁波の発生源だ! ウルトラマンと協力して、破壊するんだッ!!』

 

「「「はい(おう)ッ!!!」」」

 

 ようやくやって来た反撃のチャンス。デバンが頑張り電磁波を無効化してくれている間に、三人はコンバータのスイッチを押しながらティガへと駆け寄った。

 

『フゥルウウゥゥッッ!!!』

 

 再び自分の電磁波を無効化され、遂に魔神の怒りは最大まで達する。

 周りを気にする間も無く、トドメを指すため怒りのままデバンへと青い光弾を撃ち放った。

 

『チャッ――!』

 

 だがその光弾を、ティガは片手で掴み受け止めた。

 攻撃を止められ驚いているエノメアへと、ティガは光弾を投げ返す。自らの光弾を身に受け、無様に転がるエノメアへと、イグナイトを纏った翼達が接近していく。

 

「ティガ! 私達はこれから、魔神の両肩を破壊する、援護を頼む!」

 

(コクッ)

 

 翼達の狙いがわかったティガは素早く頷くと、両手を額の上で重ね念じた。

 

『ンーーハァッ!』

 

 《パワータイプ》へと変わったティガは、大地を震動させながらエノメアへと突貫して行く。

 真正面からの突撃をエノメアが黙って見ている筈もなく、額から連続で放った光弾を次々とティガに直撃させる。

 だがティガの勢いが収まる事は無かった。

 

『ハアァッ!!!』

 

 そして繰り出される拳、パワータイプの一撃。重い打撃に、エノメアの巨体が膝をつく。

 その隙を見逃さず、背後へと回り込んだティガは、羽交締めの形でエノメアを拘束する。

 胸を張らせ、両肩の突起を分かりやすく突っぱねる。

 射程へと入ったクリスは大型のミサイルを大量に展開させた。

 

 《MEGA DETH INFINITY》

 

 クリスの放った大型のミサイル十二門が、正確にエノメアの肩へと直撃しダメージを与える。

 そしてヒビの入った両肩へと、翼と響は左右から挟み込むように仕掛けた。

 

 《天ノ逆鱗》

 

「いっけぇええええええぇッ!!!」

 

 翼は肥大化させた大剣を押し込み、響は肥大化させた右腕のガントレットを突貫させる。

 激しい破裂音と共に、エノメアの両肩の突起は、最も簡単に砕け散った。

 

「よし! やったぞッ!!」

 

「魔神の電磁波が、消滅していきます!」

 

 発声器官である両肩を破壊され、デバンの力で電磁波が完全に消滅するのに時間は掛からなかった。

 

『……キュウゥ…………』

 

「おいデバン! デバンッ!!!」

 

 全ての毒電波が消失した時、デバンは力尽きたようにその場に倒れた。

 どれだけ団長や団員達が呼びかけようとも、その目がもう開く事は無かった。

 

(ありがとう、デバン。ぼく、戦うから……君の分まで、皆んなの笑顔を守る為にっ!!!)

 

 ティガは拳を強く握りしめ、エノメアを殴り付ける。

 殴打、蹴り、投げ、パワータイプの格闘能力とユウの闘志の爆発が融合した連続攻撃、最大の武器を失ったエノメアに、反撃の方法はもう無かった。

 

『チャァッ!!』

 

 ティガのシャイニング・ウィザードがエノメアの額を捉える。

 額を砕かれ、遂に光弾すら放つ事が出来なくなる。

 だがしかし、勝ち目のなくなった者がする事は一つだった。

 

『フルウウウッ!!!』

 

「アイツ、また逃げる気かよッ!」

 

 その変化にクリスが叫ぶ。

 エノメアの体が発電したかと思うと、まるで景色に溶けるように、その姿が薄まっていく。

 幾度となく自衛隊やS.O.N.Gの追撃を逃れて来た逃走方法、だがそんな事を今のカレらが許す筈がなかった。

 

『デャッ!』

 

 ティガは両手を広げると、その間に帯状のエネルギーを発生させると、それを透明に薄れるエノメアへと放った。

 

 《ティガ・ホールド光波》

 

 その光の波がダメージを与える事は無かったが、光を浴びたエノメアの身体が、くっきりと実体化していく。

 

『フルッ……??!!』

 

 逃走方法を防がれると思っていなかったエノメアが、動揺しながら実体化した自分の体を見下ろす。

 その間に、ティガはチャージを終了させていた。

 両手に集めたエネルギーを胸の前に集め球体にすると、それを豪快に投げ飛ばした。

 

『デュアッ!!!』

 

 《デラシウム光流》

 

 高密度のエネルギーの放流に、胴体を撃ち抜かれエノメアは、崩れ落ち爆発した。

 

 ――魔神 エノメア撃破。

 

 

 

 

  ☆

 

 

 

 戦いが終わりティガが空へと去った後、ユウと響達はデバンの元へと駆け寄った。

 魔人が倒され街は平和を取り戻していたが、劇団の彼らは悲しみに包まれていた。

 

「…………デバン」

 

 ユウが近づき頭を撫でるが、デバンが目を開く事は無い。

 

「ありがとうな、星乃くん。コイツ、笑顔でこの世を去ったんだよ……。デバンは皆んなが笑ってるのが好きだったから、守れたのが嬉しかったんだろうな」

 

 最後の力を振り絞り皆を守った、小さな怪獣の寝顔はとても穏やかなものだった。

 団長と団員達は、力を合わせてデバンの亡骸を抱え上げると、その場を去ろうとする。

 

「あ、あのっ!」

 

「黙って行かせてくれないか? 頼むよ……」

 

 響が声を掛けようと手を伸ばすが、悲しみに満ちた団長の目に、それ以上何も言えなかった。

 

「叔父様、よろしいですか?」

 

『ああ、責任はオレが取る。彼らを行かせてやってくれ……』

 

 上層部からは実験動物にする為、亡骸でも良いからデバンを連れて来るように命令を受けていた。

 しかし弦十郎は自分達を救ってくれた友を、そんな者達に引き渡すつもりはない。

 弦十郎のその決定に、意を唱えるものは一人もいなかった。

 

『デバン…………ありがとう、ぼく達を助けてくれて』

 

 デバンをバンに乗せ、去っていく団長達を見送りながら、ユウはお礼の言葉を呟いた。

 

 

 

 

  ☆

 

 

 

 数日後の夜、就寝前のユウが今日届いたチラシや封筒を確認していると、一枚の手紙を発見した。

 そこには、『星乃結様へ ゆかいな仲間たちより』と書かれていた。

 

「良かった、団長さん達元気にやってるみたい……」

 

 手紙と一緒に写真が同封されていた。

 団長やピエロや着ぐるみのお兄さん達が、楽しそうに笑いながら肩を組んでいる写真。

 ユウはそれを見て頬を緩めながらも、その表情には何処か寂しさが見えた。

 

「……ん? んーー?」

 

 手紙の裏を見てみると、『皆、元気でやってるよ』と大きな字で書かれていた。

 ユウは首を傾げながらもう一度写真をじっくりと見てみる。

 すると、バンの窓の後ろに笑顔で手を振る小さな怪獣の姿が見えた。

 

「あ、デバンっ! 良かったぁ……」

 

 デバンは一命を取り留めていた。

 あの日団長は、デバンを政府の人間に連れていかせない為に、カレに死んだふりをさせていたようだ。

 案の定興味を無くした政府から逃げ切り、遠くの地で彼らはまた演劇で、皆を楽しませる事だろう。

 

「デバン、生きてねこの星で! 君だってこの星の一員なんだから!」

 

 数日ぶりに心からの笑顔を取り戻したユウは、ベッドの上でデバン達へのお返しのお手紙を書くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

  ☆






 次回からは本編再開となります。
 感想・評価などお待ちしてます。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。