シンフォギア×TIGAー星を結ぶ少年ー(AI絵あり)   作:トライダー

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第四十六話 本当の自分

 

 

 

 

 

 

 

「何故勝手な行動をした、ガリィ?」

 

 マリアを倒し、《チフォージュ・シャトー》へと帰還したガリィを迎えたのは、主人であるキャロルの鋭い視線だった。

 

「いやですよぉ〜。あたしはただ、手っ取り早くマスターの願いを叶えてあげようとしただけですからぁ〜」

 

「余計なことをするな。オレが殺したいのは、巨人としてのヤツだ。あの小僧に手を出すな」

 

「ふーん。やっぱりマスター、あの坊やには優しいんですねぇ? 最近やたら“向こう”を観てる時間が、多いですもんね〜」

 

「黙れ。お前達は、自分の役目を分かっているのか?」

 

 探るようにニマニマと笑みを浮かべるガリィを、キャロルは不機嫌そうに睨み返した。

 その視線に、部屋の空気が一瞬張り詰める。

 他のオートスコアラー達を見回すキャロルに、ファラが静かに口を開く。

 

「勿論ですとも。ダインスレイフの呪われた旋律をその身に受け、チフォージュ・シャトーへとエネルギーを送ること。それが我らに与えられた命令であり、宿命」

 

「分かっているなら良い。…………うん? ふっ、奴らの方で何やら動きがあったようだ。せいぜい監視してやるとしよう」

 

 そしてキャロルは、まるで眠るように目を閉じる。呼びかけても反応はない。完全に意識を“向こう”へと繋げている証拠だ。

 主人が意識を手放していることが分かったレイアは、ガリィへと視線を向ける。

 

「しかし、随分と派手に立ち回ったものだな」

 

「うっさい。あんた達は、これで良いの? このままマスターに計画を進めさせて」

 

「……我らは所詮人形、なら最後まで主人の指示に従うだけよ。例えそれが――マスターが望まぬ結果になってしまってもね……」

 

「ふんッ!」

 

 ファラの言葉に、ガリィは不服そうに鼻を鳴らし、静かに目を閉じた。

 そしてゆっくりと両腕を広げ、バレリーナのように優雅なポーズをとったまま動かなくなる。

 重く、ひややかな沈黙。

 機械仕掛けの心臓の鼓動だけが、チフォージュ・シャトーの中で淡々と響いていた。

 

 

 

 

  ☆

 

 

 

 

 日が沈み、時刻は夕方。

 爽やかなスカイブルーの空は、沈む陽に照らされて柔らかなオレンジ色へと変わり、海面も鏡のようにその色を映していた。

 そんな中、負傷したマリアを除いた装者全員が、研究機構の一室に集合し、今回の出来事について話し合っていた。

 

「あのオートスコアラーは、ユウを襲ったのか……しかし何故?」

 

「えっとぉ……ガリィには、相手からエネルギーとなる“想い出”を吸収して、他のオートスコアラーに与える能力があります。その……く、口付けで……」

 

「「「なにいぃッ!!!?」」」

 

 恥ずかしそうに顔を赤らめるエルフナインとは対照的に、その方法を聞いた装者達は修羅の表情を見せる。

 

「くっ! つまりあのデク人形は、私達のユウのあの柔らかく心地よい唇を狙って来たと言うのか!! 不届千万なヤツだ!」

 

「うん……今度見つけたら、細々に切り刻んで魚の餌にしてやる……」

 

 怒りの形相を見せる翼と、恐ろしいことを呟く調。二人だけでなく、それぞれが見せる殺気や憤怒に、見守っていた弦十郎達すら身震いした。

 

「でも、どうして優位に事を運んでも、とどめを刺さずに撤退を繰り返してるんだろう……?」

 

「言われてみれば、とんだアハ体験デス!」

 

 初めて会敵した時もそうだったが、彼女達は絶好のチャンスにも関わらず、撤退を繰り返している。命を奪うつもりなら、幾度となく機会はあったはずなのだが。

 

「気になるのは、マリアさんの様子も……」

 

「うん。力の暴走に飲み込まれると、頭の中まで黒く塗りつぶされて、何もかもわからなくなってしまうんだ……」

 

 敵側の奇行は謎が多いが、彼女達が今もっと気になるのはマリアの方である。

 なんとか被害を出さずに済んだが、一度でもあの“暴走”の深い闇を味わってしまったマリア、彼女の心境を考えるとどうしても思いはばかってしまう。

 暴走の経験のある響の言葉に、一室内が重い空気に包まれたその時――部屋の扉が勢いよく開き、緒川が姿を見せた。

 

「大変です! マリアさんが、部屋に居ません!」

 

「なっ! マリアのヤツ、あの怪我で一体どこに行ったんだよ!」

 

「えっと、ユウは居ましたか?」

 

 調は皆が会議をしている間、ユウがマリアの側で看護をしているのを思い出した。

 

「いえ……彼も病室に居なくて」

 

「なら、大丈夫。きっとユウも、マリアの側にいると思うから」

 

「デスデス! 今のマリアには、きっとあたし達よりも、ユウとの会話の方が必要なのデスよ!」

 

 ユウが怪我をしたマリアを見放して、何処かに行くなどありえない。きっと二人は一緒に抜け出したのだろう。

 皆は暫く二人事は少し様子を見ようと、会議を再開した。

 

 

 

 

  ☆

 

 

 

(人形に救われるとは情けない。私が弱いばかりに、魔剣の呪いに抗えないなんて……あの時、ユウが居なければ今頃は……)

 

 目を覚ましたマリアは、夕焼けの沈む海を見つめながら、先程の戦闘を思い出していた。

 自らが未熟であるが故の“暴走”。

 未遂で済んだから良かったが、もし完全に暴走していたら、未来やエルフナイン、そしてユウを傷つけていたかもしれない。

 

(強くなりたい……! あのウルトラマンのように、その為なら、私は――)

 

 力を渇望し拳を強く握りしめる。

 そんなドス黒い欲望に再び飲み込まれそうになった時、柔らかい感触がマリアの拳を包み込んだ。

 

「もう、マリアお姉ちゃん、また怖い顔してる」

 

「ユウ……?」

 

「せっかくお外の空気吸いに来たんだから、もっと元気よく過ごそ? ほら、スマイルスマイル!」

 

 ユウは両頬に人差し指を添えニコッと笑う。その純粋な笑顔を見ると自然と笑みが溢れ、心の中のモヤモヤが溶けて行くのを感じる。

 

「本当に不思議な子ね、貴方は。ユウと過ごしていると、どんなに心が荒んでも、不思議と穏やかな気持ちになってしまうもの」

 

「えへへ、ぼくも! 大好きなお姉ちゃん達と一緒にいると、胸の奥があったかくなって、元気がいっぱい出てくるんだ!」

 

 オートスコアラーに命を狙われ、マリアの暴走を目の当たりにした。間違いなく怖い思いをしたにも関わらず、ユウはいつもと変わらない笑顔を見せる。

 

「ユウは怖くなかったの? 私が暴走しかけた時……」

 

「どうして? だってマリアお姉ちゃんが大変だったんだよ、早く助けてあげたいって思ったから、そんな事考えてる暇無かったよ」

 

(強い子ね……)

 

 ダインスレイフの呪いが、人体にどのような有害を及ぼすか分からない。

 その上獣と化している自分に引くことをせず寄り添い、彼はこちら側へと呼び戻してくれた。

 

「ねぇユウ……強いって、どう言う事だと思う?」

 

 マリアは何の違和感も無く自然と呟いていた。

 自分の半分程の年齢しかない少年に、する質問ではないのかもしれない。

 でもマリアは、目の前のこの少年が、自分よりもずっと強い心を持っていると感じ取っていた。

 

「え? どうして、ぼくにそんな事を?」

 

「貴方が強いと思ったから。お願い、答えて」

 

「んーと……んーーとぉ…………」

 

 マリアの真剣な目に、ユウは周りの砂浜の上をくるくると歩き回り真剣に考え始める。

 三周、四周、五周したところでその場でクルクルと回転し、ピタッと止まるとユウは口を開いた。

 

「マリアお姉ちゃんは、強くなりたいの?」

 

「ならなきゃいけないの。弱い自分を、殺さないと……」

 

「どうして、弱くちゃだめなの?」

 

「それは……強くないと敵を倒せない。大切なものを守れない……」

 

「でもぼくは、マリアお姉ちゃんを倒した事ないよ? ぼくはちっちゃくて弱い存在なのに、どうしてそんなぼくを、“強い”って思ってくれたの?」

 

「そ、それは……貴方の強さは、力じゃ無いもの……」

 

 例え力が弱くとも、勇気を振り絞り、自分たちに希望と安らぎを与えてくれる存在。それこそがマリアがユウに感じた強さだった。

 マリアの答えに、ユウはニッコリと笑顔を返した。

 

「そうでしょ? 弱くたって良いんだよ。それでも一歩前に進める人が、本当に強い人なんじゃないかな?」

 

「弱くても……良い?」

 

「うん! 弱くたって自分を押さえる必要なんて無いんだよ。自分の弱さを認めて、その上で強くなれば良い。大事なのは、自分らしく生きる事!」

 

「自分らしく……生きる……」

 

「さっきエルちゃんにも同じ事言ってたでしょ? マリアお姉ちゃんは、もう既に大切な事を分かってるんだよ。ただ少し忘れちゃってただけ」

 

 “背伸びをして誰かの真似をしなくても大丈夫。大事なのは、自分らしく打つことだから”

 

 マリアは先程の特訓の時、エルフナインにそう伝えた事を思い出す。響や翼達に置いて行かれているような焦りが、そんな簡単な事を忘れさせていたようだ。

 力の緩まったマリアの手を、ユウは再び握り直し、上目遣いで彼女の両瞳を覗き込んだ。

 

「ぼくは、今のマリアお姉ちゃんが大好きだよ。だから無理に自分を、押し殺したりなんてしないで」

 

「……ありがとう、ユウ」

 

 黄昏時の海を背景に、マリアは優しく笑い、ユウを強く抱き寄せた。

 数秒とも数分とも言える時間抱き合った後、ユウは何かを思いついたように声を発した。

 

「あっ! 《笑顔が素敵な人》!」

 

「え、なに? 笑顔……?」

 

「うん! ぼくの思う強い人!」

 

 まるで好みのタイプを話すかのような、予想外の答えに、マリアは素っ頓狂な声を発してしまう。

 

「そ、それは強いかどうかとは、また別じゃないかしら?」

 

「えーなんでぇー? だって素敵な笑顔って、周りの人を元気づけられるんだよ! それってとっても凄いな事じゃない? それに、ぼくの知ってる“強い人”は、皆んな笑顔が素敵だよ!」

 

「ユウの知ってる、強い人?」

 

「うんっ! お父さんに、お母さん。それに、マリアお姉ちゃん達の笑顔が大好きっ!!」

 

 ユウは屈託のない笑顔で答える。

 そんな真正面からの愛の言葉に、マリアは嬉しいやら恥ずかしいやらで、顔が熱くなる。

 

「も、もうユウったら……」

 

 恥ずかしがりながらも、目の間の少年が愛おしく感じるのを抑えられず、マリアは抱きしめる力を強めた。

 

「――あらあら、妬けちゃうわねぇ〜」

 

 海風に混じって届いた冷たい声が、穏やかな時間を切り裂く。波間が膨れ上がり、海面から噴水のような水柱が立ち上がる。

 その頂に、優雅な姿勢で立つ青白い影――水のオートスコアラー、ガリィが居た。

 

「お前は――」

 

「今回は、確実に潰しに来てあげたわよ。その証拠に、大きなお土産があるんだから!」

 

「土産?」

 

 ガリィがにやりと笑う。

 次の瞬間、彼女を支えていた水柱が急速にしぼみ、反対に海が不気味に競り上がりはじめた。

 まるで山のように盛り上がった後、水飛沫が勢いよく散り、中から巨大な影が姿を現した。

 

「姿を見せな! 深海怪獣レイロンスッ!!!」

 

 ガリィの足元から姿を現したそれは、一言で言うなら超巨大な魚。特徴的な三日月のような頭部、両手に見える大きなヒレ、そしてトカゲを足したような顔と長い尻尾。

 これもまた、キャロルがデータを元に作り出した《錬金獣》の一体だった。

 

 《深海怪獣 レイロンス》

 

『ピシャアアアアァァッッ!!!』

 

 レイロンスが高らかに吠える。

 オートスコアラーだけですら手に余ると言うのに、錬金獣の追加。マリア一人にはどうしようもない、絶望的な戦力差である。

 だがそれでも、彼女の瞳から闘志は消えていなかった。

 

「行きなさい、ユウっ!」

 

「お姉ちゃん……」

 

「大丈夫。今の私の胸の内には、貴方から貰った“光”がある。もう闇なんかに負けないわッ!」

 

「分かった。直ぐに助けも来ると思うから、だから頑張って!」

 

 もう彼女に迷いはない、その瞳に強い光を感じたユウは、マリアに任せ浜辺を後にした。

 それと同時にギアの光が放たれ、激しい戦闘音が鳴り響く。

 

「いくよティガ、マリアお姉ちゃんを助けるんだ!」

  

 そして少年もまた、自分に出来る事をするため、人気のない茂みの中で、スパークレンスを夕焼けの空へと掲げた。

 

 

 

 

  ☆

 

 

 

 ガリィの放った水流が目前まで迫る。

 マリアは咄嗟に三本の短剣を空中に投げ放ち、それらを繋ぐようにエネルギーを展開。

 三角形状の光壁が瞬時に張り巡らされ、奔流を受け止めた。

 

「ぐっ……くうぅ……!」

 

「へぇ、さっきよりは頑張るわねぇ? でもぉ、レイロンスちゃん!」

 

『ピシャアァッ!!!』

 

 歌の力で防御を強化するマリア。だが、ガリィがパチンと指を鳴らすと同時に、足場となっていたレイロンスが大きく息を吸い込んだ。

 次の瞬間、トカゲのような口から、砲弾のような水の奔流が放たれる。

 ガリィの攻撃の比ではない、十倍の圧力にマリアの盾が簡単に砕け、圧縮された水流がその身を吹き飛ばした。

 

「うあァッ!!?」

 

 マリアの体が、コンクリートの壁へと弾丸如く叩きつけられ崩れ落ちる。ギアを纏っていなければ潰れてしまってもおかしくない衝撃。

 だがそんなダメージを受けても、マリアは諦めず立ち上がり、目の前の敵を睨みつける。

 

「ふーん、まだ目は死んでないみたいね。レイロンスちゃん、死なない程度に弱らせてやりなさい!」

 

『ピシャアアアアッ!』

 

 倒れ伏すマリアへと、レイロンスは容赦なく追撃を放とうとする。今度は先程よりも更に威力を増した一撃だ。

 大きく息を吸ったレイロンスが、勢いよく口を開こうとした――その瞬間。

 

『チャァッ!』

 

 閃光のように飛び込んだ影が、レイロンスの頭部を蹴り飛ばし、轟音と水飛沫が弾ける。

 

「ティガっ!?」

 

 激しい振動と共に、自らの目の前に降り立ったその影を、マリアは目視した。

 夕焼けに照らされ赤みを増した三色の巨人が、マリアを守るように敵の前へと立ち塞がった。

 

『デュアッ!』

 

「現れたわね、ティガの巨人。でもあたしの相手は、アンタじゃ無いのよ! レイロンスちゃんッ!」

 

 軽やかに浜辺へと降り立ったガリィが、手を掲げて命じると、立ち上がったレイロンスは、怒りの咆哮を上げ目標を変更した。

 

『ピシャアアアアァッ!!!』

 

『デュアッ!』

 

 ティガは街への被害を出さぬ為、敢えて突っ込み海上でレイロンスと衝突することを選んだ。

 夕日により赤く染まった海の上で、二つの影がぶつかり合う。海深十メートルの沖さえも、巨人たちの戦場では浅瀬に等しかった。

 

『――ッ!』

 

(……っ! ティガ?)

 

 激しい取っ組み合いの中、ティガの眼差しがコチラを見た気がした。

 「こっちは任せろ」。ティガの力強い眼差しは、まるで自分にそう伝えているようだった。

 

「戦えって言うのね。私の……私の戦いをッ!」

 

 いつも自分達を守ってくれる強き存在が、自分を信じこの場を託してくれた。その喜びとも責任感とも呼べる“想い”が、マリアを突き動かす。

 立ち上がったマリアは、胸のコンバータへと手を伸ばした。

 

「その力、弱いアンタに使えるのぉ?」

 

「弱くたって良い」

 

「……はぁ?」

 

「弱くても、傷ついても、立ち上がり自分に出来る事をする。私はそんな小さくも尊い存在を知っているッ!」

 

 挑発するガリィ、しかし今のマリアの心を揺り動かす事は出来ない。

 

「ユウ、何処かで聞いていて。そしてティガ、貴方にも聞いて欲しい。貴方達の光と勇気に応える、私の歌を!!」

 

 力を渇望していた前回とは違う。

 胸の内に強い光と勇気を持って、マリアはコンバータのスイッチを入れた。

 

「イグナイト・モジュール抜剣ッ!!!」

 

 《ダインスレイフ》

 

 機械的な音声と共に、コンバータが楔のように変形し、マリアの胸を貫く。

 例え覚悟を決めていても、痛みは変わらない。しかし全身を黒き闇に覆われていても、マリアは“笑顔”を絶やさなかった。

 

「……笑って、やがんのか?」

 

「ええ、そうよッ! あの子がくれた笑顔が、私に力をくれる!! こんなちっぽけな闇なんかに負けない、強さをくれるんだァッ!!!」

 

 マリアのシンフォギアが変わる。

 より強く、より雄々しく、それでいて“(優しさ)”を忘れない新しい姿。

 響達同様、黒々しく、禍々しく、それでも胸のコンバータだけは、優しい青い光を放っていた。

 

「ハァッ!」

 

 心の闇を武器に、心の光を支えに、マリアは駆け出した。

 

「笑顔が強さだぁ? そんな御伽話じゃあるまいしッ!」

 

 ガリィは手に持ったカプセルを投げ捨て、アルカ・ノイズを召喚し向かわせる。

 マリアは左腕のガントレットに短剣を装填し、まるで矢を射るように次々と撃ち放つ。

 イグナイトの力を得た光の弾幕が雨のように降り注ぎ、ノイズの群れを一瞬にして消し飛ばした。

 

「いいねいいねぇ!」

 

 ガリィは足場を凍らせ、フィギュアスケートのように滑り翻弄する。

 以前のマリアなら惑わされていただろう変則的な動き。

 しかし、心身ともに一つの壁を乗り越えた彼女は、その動きを見破った。

 漆黒の短剣が、ガリィの胴体を捉える。

 

「っ!?」

 

 しかしそれはガリィお得意の水の分身。

 切られた分身が、泡となり数を増やそうと試みるが、マリアは再び左腕から剣の矢を放ち迎撃する。

 

(歌が強まってる……コイツの一撃を受ければ、あたしが一番乗りだ!)

 

 主人であるキャロルの指示、それを達成するのが人形としての自分の勤め。しかも他の三体を置いて、一番乗りを成功させるなど、これ以上のない喜び。

 

(…………だけど)

 

 なのに、ガリィの表情に喜びはなく荒んでいた。

 一瞬渋い顔をしたガリィの懐へと、マリアが既に入り込んでいた。

 

(なっ!? しま――)

 

 慌てて障壁を展開するが、マリアの強い歌に反応し短剣の輝きが増すと、いとも簡単に砕かれてしまった。

 

「ハアァッ!!」

 

 そこへ容赦なく入るマリアのアッパーカット、顎に喰らいガリィの身体が空中に浮き上がった。

 それを追撃するようにマリアも飛翔。短剣を鞘に仕舞うようにガントレットへと差し込み、エネルギーを左腕に集中させる。

 

(不味い……このままじゃ…………)

 

 あと数瞬と経たず、人形として最高の喜びが自分の物となる。

 

(マスター……)

 

 だがその瞬間、ガリィの脳裏にマスター――キャロルの顔が浮かび上がった。

 その表情は、計画が成功して笑っている姿ではない。

 それは、真実を知り絶望している姿だった。

 

「ぐっ……あああああァッッ!!!」

 

「っ?!」

 

 マリアが必殺の一撃を放とうとしたその時、ガリィは大声を上げながら両掌から水を射出した。

 狙いはマリアではなく虚空。

 

 《SERE†NADE》

 

 炎を纏ったマリアの斬撃が、ガリィへと降り掛かる。

 しかしその刃が切り裂いたのは、ガリィの陶石の両脚だけだった。

 

「なにっ!?」

 

 一瞬にして大量の水を噴射する事で、身体をずらし直撃を避けたガリィ。両足を無くしたまま、彼女は水の勢いで空中を飛び、沖で戦うレイロンスの頭部へと着地した。

 

「あたしは、まだ……死ねないんだよぉッ!!!」

 

 ガリィの怒声に応えるように、レイロンスの身体を禍々しい光が包む。

 

『ピシャアアアアッ!!!』

 

『ッ!――デュアァッ?!!』

 

 急激にレイロンスの力が増したことに驚く暇もなく、その剛力によって、ティガは勢いよく吹き飛ばされる。

 《錬金獣》は、ただの怪獣ではない。錬金術によって作られたカレ等は、同じ属性の錬金術によってその力を増す事が出来るのだ。

 “水棲怪獣”であるレイロンスの属性は《水》、同じ水の錬金術を使うガリィの力を、その身に得ることによってパワーアップしていた。

 

「やっちまいな、レイロンスッ!!」

 

『ピシャアアアアッ!!』

 

 レイロンスは身体を震わせると、この口に大量の泡を浮き立たせる。そしてそれを、咆哮と共に射出した。

 口から離れた泡は、車程の大きさに膨れ上がりティガの身体を捉える。

 

『デュッ……グアアアァッ!!?』

 

 泡が触れ破裂した瞬間、凄まじい衝撃と爆発が、ティガの体を襲った。

 可愛らしい見た目とは裏腹のその威力に、油断し切っていたティガは大きくよろけ膝をつく。

 

『ピシャアアアアッ!』

 

 そんなティガへと、レイロンスは容赦なく追撃を行う。まるで散弾銃のように広範囲に広がるその泡達を、的の大きなティガに回避の仕様はない。

 

「そうはさせないわッ!」

 

 だが泡の群れが再びティガを襲うとした時、広がる閃光の花によって、レイロンスの放った泡は消滅した。

 カレを救ったのは、マリアだった。

 ガリィを追って海を渡り、ティガの肩へと降り立った彼女は、ガントレットから放った短剣で、レイロンスの泡を撃ち落としたのだ。

 例えどれだけ威力を持っていても所詮は泡、触れる前に破って仕舞えば脅威ではない。

 

「タッグマッチってわけ? 舐めるんじゃないわよ、ハズレ装者がァッ!!!」

 

『ピシャアアアアッ!!!』

 

「お願いティガ、力を貸して!」

 

 マリアの声に力強く頷いた後、ティガは彼女を肩に乗せ、巨獣へと向かって行った。

 夕焼けの海の上で、再び巨獣と巨人がぶつかり合う。

 二体が組み合っている中、高く跳躍したマリアとガリィもまた衝突する。

 

(ガリィさえ倒せば!)

 

「ぐっ……!」

 

 短剣と氷の刃の交差、制したのはマリアだった。先程の戦闘で両脚を失ったガリィに、既にまともな格闘は不可能だった。

 

「このまま押させて貰うッ!」

 

「舐めんじゃないわよッ! レイロンスッ!!」

 

 ガリィの掛け声に反応した、レイロンスの背鰭が黄色く点滅する。すると、レイロンスの背鰭の先端から、黄色い光線が放たれマリアへと向かう。

 

 《ハンドスラッシュ》

 

 だがその光線がマリアを捉える前に、ティガの放った光弾が壁となり彼女を守った。

 光線と光弾の衝突の衝撃に、マリアとガリィは吹き飛ばされ元の位置へと戻る。

 

「次で決めるよ。あたしの力、全部あんたにくれてやるわァッ!!!」

 

『ピシャアアアアァァッッ!!!』

 

 長期戦を不利と感じたガリィが、両手をレイロンスの頭部に添えると、巨獣の禍々しい光が更に強まる。

 必殺の攻撃が来る。レイロンスは口を開くと、そこから大量の水を噴射した。

 

『グ……アアアァッ!!』

 

 轟音と共に放たれた水流が、弾丸のようにティガへと襲いかかった。

 巨体を押し潰すほどの圧力。ティガは両腕を交差させて堪えるが、その流れは次第に力を増していく。

 

「凍ォっちまいなァッ!!!」

 

 レイロンスの放った水によって、濡れたティガの体が、ガリィの錬金術によってどんどん凍りついていく。

 本来ガリィの持つ力では、ティガを凍らせる程の氷を作るのは不可能。しかし彼女の力の源である水は、レイロンスが補う上に戦場は海の上、この二つの好条件が重なっているからこその必殺の戦法なのだ。

 

「くっ、ティガ!」

 

 海に面している足元から、徐々にカレの体が凍りついていくのをただ見ているしかないのか。

 いや違う――今の自分は、もう守られるだけの存在ではないのだ。

 

(凍ってしまうなら溶かせばいい。私の熱い(ハート)で、あの子への(ハート)でッ!!!)

 

 マリアは突如、短剣を伸ばす、伸ばす、伸ばす。

 そして何百メートルも伸ばした蛇腹剣を、ティガへと巻き付ける、巻き付ける、巻き付ける。

 凍ったティガの両脚から頭まで、漆黒の刃が螺旋状に覆うと、次第に無数の蒸気が立ち上り出す。

 マリアの巻いた蛇腹剣が、ガリィの氷を溶かす程に強い熱を帯び始めたのだ。

 

「あたしの氷を、溶かしてるだとッ?! そんな高熱、何処から……」

 

「愛だッ!!!」

 

「な、なんでそこで愛?!」

 

「私の胸の内に眠るユウへの愛! その熱い“想い”こそが、私の力だァッ!!!」

 

 今マリアの脳裏を駆け巡るのは、ユウの声。可愛らしく、そして愛らしい映像が動画のように再生されていた。

 

 “マリアお姉ちゃん”

 “マリアお姉ちゃん大好き!”

 “えへへ! マリアお母さん、だ〜い好き!”

 

 それによって蘇る劣情と、愛やらなんやらの様々な“想い”に、アガートラームが反応し、氷をも溶かす程の高熱を生み出していたのだ。

 

(……っ! マリアお姉ちゃん)

 

 そしてマリアの啖呵は、例え凍りつきながらもティガの、少年の耳に届いていた。

 

「だけど、それでもあたしの氷を溶かし切ることは出来ないッ!!」

 

 ガリィの言う通り、いくら彼女の想いに応えているとは言え、アガートラームは本来炎を出す聖遺物ではない。

 だがそれでも、ティガが動く為の補助をするには、充分だった。

 

(ぼくだって、お姉ちゃん達が大好き! その想いが、ぼくの力だっ!!)

 

 愛なら自分も負けていない。

 マリアの啖呵に続くように、ティガは両拳を握り締め気合を込めるように肘を曲げる。

 

『デュアァッ!!!』

 

 その瞬間、ティガの体が赤く染まっていく。

 《タイプチェンジ》では無い。マルチタイプのティガの姿が、まるで炎のように燃え上がっているのだ。

 

 《ウルトラヒート》

 

 マリアと、そして少年ユウの愛の炎を力へと変えたティガの体から氷が蒸発していく。

 

「なっ?! そんな……」

 

『デュアァッ!!!』

 

 赤い炎を纏ったティガが、氷を砕き両手を広げレイロンスへと突貫して行く。

 ガリィとレイロンスは、水の力を強め押し返そうとするが、既にその水すら蒸発させる程の熱を持っているティガには、無意味な抵抗だった。

 ティガの両腕が、がっしりとレイロンスを捕まえ離さない。

 

『ピッ……ピシャアアアアァァァッ!!!』

 

「あ、熱っ!?」

 

 熱なんて感じるはずのないガリィが、思わずそう呟いた。それほど今のティガが纏っている炎は、燃え上がっていたのだ。

 ジューという物音と共に、生魚を焼いている時のような臭いが立ち上る。高熱に苦しみ逃げ出そうとするレイロンスを、ティガは逃がさず寧ろ込める力を強める。

 そうしている間に更に熱は増し、ついに耐えられなくなってきたレイロンスの身体が次第にヒビ割れていく。

 

『ピッ…………シャ……ァァ………………』

 

 《ウルトラ・(バーニング)・ハッグ》

 

 そして限界に達した次の瞬間、轟音と光が爆ぜ、赤い海の上に巨大な爆発が起こる。

 

 数秒の静寂の後、煙が晴れる。

 そこには、夕暮れを見上げるティガと、その肩の上で同じように星々を見つめるマリアの姿だけが残っていた。

 

 ――レイロンス撃破。

 

 

 

 

 

  ☆

 

 

 

 

「マリアさんっ!」

 

 響たちが海岸に駆けつけたときには、すでに全てが終わっていた。

 赤く染まった夕暮れの海、その中央をゆっくりと歩いてくる巨人の姿。その掌の上には、傷つきながらも凛とした表情のマリアが立っていた。

 

「ありがとう、ティガ」

 

 陸につき、手のひらから降りたマリアは、共に戦ってくれた友へと礼を言う。

 ティガは静かに頷いた後、夕暮れの空へと飛び去って行った。

 

『…………デュアッ!』

 

 残されたのは、沈みゆく陽の残光と、潮騒の音だけ。

 マリアが静かに息を吐く。

 その背後に駆け寄った響たちが、安堵と驚きの入り混じった表情で彼女を見つめた。

 

「無事かマリア? オートスコアラーを倒したのか?」

 

「怪我は大丈夫よ、翼。でも、オートスコアラーは恐らく倒せていない……」

 

「なんだと?」

 

「彼女は、最後に逃げる力を残していたみたい」

 

 マリアは爆発の瞬間、ガリィが一足先に離脱するのを見ていた。生きる事に執着していた彼女は、最後にレイロンスを囮として逃げ延びたのだろう。

 

「チッ! 怪獣置いて自分だけ逃げんのかよ。どこまでも性根の腐ったやろうだ!」

 

 クリスが怒気を露わに吐き捨てる。

 だが、マリアは何かを思い出すように目を伏せた。

 

「…………そうなのかしら?」

 

「どうしたんですか、マリアさん?」

 

 エルフナインが不思議そうに問いかけると、マリアは少し間を置き、静かに言葉を続けた。

 

「あの子と戦っている時、なんて言うか強い“信念”みたいなのを感じたの。あの時の彼女は、まるで戦士というか騎士というか……」

 

「ガリィが……ですか?」

 

 エルフナインは目を見開く。

 彼女の知っているガリィという人形は、他のオートスコアラーの中でも特に性格が悪く、作ったキャロルにも“性根が腐ってる”と言われるほどである。

 そんな彼女が、自分が助かるために怪獣を盾にするのは想像出来るが、マリアの言うような騎士とはかけ離れた存在だと思ったからだ。

 

「オートスコアラーには、オートスコアラーなりの“理由”があるのかもしれない。彼女たちもまた、何かを守ろうとして戦っているのかも……」

 

「だけど、それはわたし達の平和を壊して良い理由にはならない」

 

「調の言う通りデェス! 戦う時は戦わないと、もっと大切なものを見落としてしまうデース!」

 

 装者達は顔を見合わせ頷き合うと、互いに戦う覚悟を高め合うのだった。

 

 

 

 

   ☆

 

 

 

 特訓を終え、マリアもまた一つの壁を乗り越えた。

 夜の帳が下り、最後に彼女たちはキャンプファイアーと花火で一日を締めくくろうとしていた。

 焚き火の灯がパチパチと鳴る中、ユウは小さな膝を抱えて座り、手の中で線香花火を垂らしていた。

 

「あはは! かわいい〜!」

 

「ユウの方が……可愛いデスよ?」

 

「は? 何言ってるの切ちゃん?」

 

 目元をキランと光らせ、どこかで見たドラマの真似をする切歌だったが、ユウには全く響く事なく花火を続ける。

 スベってしまったのを誤魔化すように、切歌はワザとらしく咳き込む。

 

「お、おほんっ! でもマリアが元気になって良かったデスよ!」

 

「マリアは元気だと安心するもんねぇ……」

 

「おかげで気持ちよく東京に帰れそうデスよ!」

 

 切歌の言葉に、夜空を見上げていた翼も深く頷いた。

 

「うむ、充実した一日だった」

 

「眼福だったしなぁ……」

 

「お前ら本当に特訓の意味分かってんのか?」

 

 奏が呆れたように突っ込む。

 そもそも今回の特訓は、彼女たちの“煩悩”を断ち切るためのもの。だが翼とクリスの緩みきった表情を見る限り、その成果は怪しい。

 

 心身ともに一つ成長した? 彼女達が各々花火を楽しんでいると、ふと空腹を訴えた響の提案で、再び彼女達は食料の調達の担当を決める為ジャンケンを開始する。

 

「「「「「コンビニ買い出しジャンケンポン!」」」」」

 

 全員揃っての大ジャンケン、再び勝負は一瞬でついた。

 勝利した翼、調、切歌の三人は嬉しそうに並び、二本の指をチョキチョキと動かす。

 

「ふ、私達を侮るとはな」

 

「甘いですよ、響さん」

 

「斬撃属性の勝利なのデースっ!」

 

「なんだか三人とも仲良くなってません……?」

 

 チョキを出したのは三人だけでないのだが、先程の買い出しで謎の友情を培っていたようだ。

 結果的にパーを出して響の一人負けとなった。

 

「う〜、拳の可能性を疑ったばっかりに……」

 

「しょうがない。付き合ってあげる、買い込むのも大変でしょ?」

 

「ありがとう、未来〜!」

 

 流石に一人で全員分を買うのは無理があるので、響と未来の二人で買い出しへと出掛けて行った。

 

 

 

 

  ☆

 

 

 

 響達が出かけ他の皆も花火を楽しむ中、ユウは少し離れた海辺に座り込むと、満点の星空を見上げていた。

 

「星乃さん、花火で遊ばないんですか?」

 

「うん、花火も良いけど、ぼくは星空(こっち)の方が好きだから」

 

「そうですか、じゃあボクもお隣失礼して良いですか?」

 

「勿論、どうぞ!」

 

 ユウが笑ってマットの隣を軽く払うと、エルフナインは小さく頷いて腰を下ろした。

 二人の間に、波の音だけが流れる。

 

「わぁ〜……すっごく綺麗ですねぇ……」

 

 一点の曇りのない夜空に、宝石のように散りばめられた星たちがそれぞれの光を放っている。

 季節が夏である為、天の川や、ベガ、アルタイル、デネブなどと言った有名な美しい星々に、エルフナインはうっとりと言葉を漏らしていた。

 

「こうやって星を見上げてると、お父さんの事を思い出すんだ」

 

「星乃さんのお父さん……星乃大吾さん、ですね?」

 

「うん。昔こうやって一緒に星空を見上げてたんだ、その時の話を聞いて、ぼくもお父さんみたいな宇宙飛行士になりたいって思った」

 

 語るユウの目は楽しかった思い出を語る明るいものだが、その奥に一瞬寂しさが滲んでいた。

 それでもすぐに、彼はいつもの笑顔を取り戻し、エルフナインに向き直った。

 

「ねぇ、エルちゃんのお父さんはどんな人だったの?」

 

「ボクのパパは、錬金術師でした。昔、街に広まった疫病を治してしたりもしたんですよ」

 

「そうなんだ、凄いお父さんだったんだね!」

 

「はい! そんなパパを近くで見て、ボク……と言うよりキャロルは、錬金術師を志したんです」

 

「そっか……キャロちゃんも、エルちゃんもお父さんが大好きなんだね!」

 

 エルフナインに宿るのは、あくまでもキャロルの記憶である。

 しかしユウは、自信満々に父親を語るエルフナインの姿に、彼女の想いが偽りではなく本物なのだと感じた。

 

「パパは、人と人が分かり合える世界を目指していました。その為に世界を知ろうとしていました」

 

「ぼくのお父さんも、人が皆んな“地球人”だって自覚出来るようになれる世界を望んでいた。その為に人類の宇宙進出を目指した」

 

「「ふふっ!」」

 

 自分達の父親の偉大であり、途方もない子供のような夢を語り合い、二人は同時に吹き出した。

 

「本当に子供のような夢をずっと語っていました」

 

「でもお父さんのそんな所が大好きだった……でしょ?」

 

「はい! 優しくて大きなその背中が、大好きでした」

 

「ぼく達、似たもの同士なのかもしれないね」

 

 尊敬する父親を持ち、そんな彼に惹かれて自分も同じ道を志す。自分達には多くの共通点が見られる。

 その父親を亡くしているところも含めて。

 

「こんな風に、キャロちゃんとも友達になれれば良いな……」

 

「キャロルと……ですか?」

 

「あの時のキャロちゃん……苦しんでるようにも見えた。本当はあんな顔、したくないんじゃないかって思うんだ」

 

 ティガとして彼女とぶつかった時、ユウは彼女の過去を見た。

 そして互いに力をぶつけ合った後、彼女は苦しんでいた。ユウにはそれが、まるで憎しみとはまた別の何かに苦しめられているように見えたのだ。

 

「キャロちゃんの事をもっと知りたい。あの子がなんでティガを憎むのか……まずその理由が知りたいんだ」

 

「星乃さん……」

 

 大好きな父親と笑い合う姿、それは自分となんら変わらない少女の姿だった。あんなに優しい笑顔を見せる少女が、あそこまで強い憎しみを見せる理由、ユウはそれが知りたかった。

 

「…………あれ? 響お姉ちゃん?」

 

 そんな話をしていると、買い出しに出掛けていた響が帰って来たのが視界に入る。

 しかしその手には何の荷物もなく、一緒に出かけた未来も居なかった。

 

「……響お姉ちゃん、泣いてるの?」

 

 クリスやマリア達の側で、惚けたように笑っている響。

 しかしユウには、そんな彼女の表情が泣いているように捉えられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

  

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