ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第7話〝ゲッコー海賊団〟

〝大海賊時代〟――

 

 〝海賊王〟ゴールド・ロジャーの放たれた言葉から始まった時代。

 熱に衝き動かれて海へ出る男達――海賊の人数が激増した。

 ――といっても海のレベル、そして自身の強さを誤解してしまう半端者が多くそれだ。

 ――だが、いるのだ。その中には確かな実力を持つ海賊もまた存在している。

 

 ――〝鷹の目〟ジュラキュール・ミホーク。

 

 ――〝砂漠の王〟サー・クロコダイル。

 

 彼らのようなルーキーが少しずつ登場し、世間を賑わせ名を上げてきた。

 ――そしてここにまたあるルーキー海賊が足を踏み入れた。

 その海賊の名は――

 

 ――ゲッコー・モリア。

 

 懸賞金3億2000万ベリーの首を持つゲッコー海賊団の船長だ。

 彼らが足を踏み入れた地は――

 

 ――百獣海賊団が本拠地にしている〝ワノ国〟。

 

 そうモリア率いるゲッコー海賊団は〝百獣のカイドウ〟の首を獲りにやって来たのだ。

 

          ●

 

ワノ国 鈴後――

 あそこは霜月牛マルが治めている地である。

 気候は冬で雪が降り積もっている。

 そこで2つの集団が対峙していた。

 

「ウォロロロ……」

 

 片方の集団は〝百獣のカイドウ〟率いる百獣海賊団である。

 

「キシシシ!!」

 

 もう片方はモリア率いるゲッコー海賊団だった。

 500名の海賊達を率いる船長――モリアは不気味なほど白い肌にスリムな体型と首が長く鋭く尖った顎も含む悪魔のような人間離れした頭部が特徴の7m近い巨漢だった。

 そして――全身に覇気が満ちている。

 いい度胸しているモリアにカイドウはニャリとする。

 

「ウォロロロ……オレにケンカを売りにここまでやって来るとは……覚悟はいいって事かぁ!!?」

 

「キシシ、覚悟も何もオレ達が進む道にはてめぇは邪魔だ!ぶっ倒して進むのみ!」

 

「……言ったな……なら容赦はしねぇ。皆殺しだ!!」

 

「上等だ!――行くぞぉ!てめぇら!!」

 

「「「オオオ〜〜〜!!」」」

 

 モリアが部下達を率いて百獣海賊団に向かって突進する。

 それに対してカイドウ率いる百獣海賊団もまた突進する。

 

 

――こうして百獣海賊団とゲッコー海賊団の戦争がワノ国で勃発した。

 

「「ウオオ!!」」

 

 カイドウの金棒とモリアの長剣がぶつかり合い、衝撃波が周囲に広がっていく。

 モリアが長剣を振り回す。

 だが、その振り回しにカイドウは力でゴリ押していく。

 カイドウの圧倒的なパワーに押されるモリアは顔をしかめてしまう。

 

「(っつ!凄まじいパワーだ……なら、やはり搦め手でいくか!)」

 

「〝影法師〟!!!」

 

「あぁ⁉」

 

 モリアの影がなんと実体を得て現れた。

 

 ――ゲッコー・モリアは悪魔の実の能力者である。

 そして食った実は〝カゲカゲの実〟。それでモリアは影を支配し、自在に操る事ができる〝影人間〟と化している。

 

 モリアはパワーで叩き込もうとするカイドウに対してスピードと技で立ち向かう。

 しかも影の分身と連携して幻想的な攻撃を放つ。

 

「ぬぅ!」

 

 戦いに明け暮れているカイドウでも初見殺しといえる能力とその攻撃に翻弄されていた。

 といえさすがはカイドウ。能力に対応してきている。

 対応し始めているカイドウにモリアは

 

「キシシ――〝欠片蝙蝠〟!!!」

 

 〝影法師〟を多数のコウモリに変化させ、カイドウに噛みつく。

 

「むっ!?」

 

「〝蛇影〟」

 

 〝欠片蝙蝠〟をさらに一匹の蛇に変化させ、縛る。

 〝蛇影〟に縛られて動きを制止されているカイドウにモリアは長剣で斬り込もうとするも――

 

「フンガ!!」

 

 カイドウは自身を縛る〝蛇影〟を力いっぱい剥がしてバラバラにした。

 

「おぉっと!――ならこれはどうだ!」

 

「〝角刀影〟!!!」

 

 多くの影を先端がトカゲの形になっている巨大な槍状に変化させ、それがカイドウの胸を串刺しにする――

 

「キシシ!……むっ!?」

 

「……フン!」

 

 なんと〝角刀影〟の刃がカイドウの胸に届かず押し返された。そこは無傷だった。

 カイドウの怪物的な肉体に呆れてしまうモリアは思案に耽る。

 

「オイオイ、そんなのありかよ……(うーん……これは奥の手を出すしかねぇな……)」

 

 そう決意したモリアは獰猛な笑みを浮かべ――バッと両手を広げる。

 

「⁉」

 

「見るがいい!!これがオレの――オレ達の〝力〟だ!!」

 

「――〝影の集合地〟!!!」

 

「!」

 

 モリアの身体が突如大きくなる。それが続き――カイドウをまんまと超える巨体になった。

 

 ――〝影の集合地〟

 それはモリアの支配下にある影を自身に取り込む技の事を指す。

 取り込まれた影の全ての戦闘力はそのままモリアに反映され、同時に取り込んだ量に応じて体格も巨大化し、パワーアップできるのだ。

 この技の為にモリアはゲッコー海賊団の仲間達の影を預かってもらっているのだ。影を取られた者はどのような状況にも関わらず気絶してしまう欠点があるが、その辺りは能力をコントロールして調整してきた。

 ――とにかくゲッコー海賊団の総力だといっても過言ではない。

 

「キシシ!……ゲッコー海賊団の〝力〟をくらえぇぇぇえ〜〜っ!!!」

 

 モリアの巨大化した右パンチをカイドウに叩き込んだ。

 

「うおおおお!!」

 

「キーシッシッシ!!」

 

 パンチを身に受けたカイドウの絶叫にモリアは頬を上げる。

 当然だ。モリア自身を含めた仲間達の力を集結させたこの〝力〟はパンチ一発で島を叩き割る程を秘めている。

 カイドウが例え強くても叶わうわけがないのだ。

 勝利を確信したモリアは更なるパンチの連撃をカイドウに叩き込み続ける。

 

「おぉおおお!!」

 

 手も頭も出ないカイドウをモリアは嘲笑する。

 

「キーシッシッシ!なんて様だ!カイドウ!所詮オレの敵ではなかったようだ!」

 

「お前にも〝悪夢〟を見せてやる!」

 

 そう叫ぶモリアはトドメに力を込める右パンチをカイドウに叩き込もうと――

 

 

 

「――弱ぇえ!!」

 

「!!?」

 

「〝雷鳴八卦〟!!」

 

 なんと手も頭も出ないようにみえたカイドウが得意技をモリアの顔に叩き込んだ。

 

「がはぁぁあああああ!!?」

 

 その攻撃により吹っ飛ばされたモリアは凄まじい勢いで空を飛ばされ、地に叩き付けられた。

 

「あ…がぁ…あぁ……」

 

 大きなダメージで危うく気が飛びそうとしても起き上がって体勢を直そうとしているモリアをカイドウは無表情で見つめる。

 

「……〝影の集合地〟……なるほど、悪くはねぇ技だ。並の奴には効いたかもしれねぇ…」

 

「だがな……」

 

「所詮他の奴の力を借りる技だ……オレには効かねぇよ」

 

「あぁ!!?」

 

 カイドウの冷めた言い具合にモリアはこめかみに青筋を走らせるが――

 

「それにその技に欠点はある」

 

「!?欠点!!?」

 

 カイドウの指摘にモリアは唖然とする。

 

 ――欠点?この技に欠点だと!!?そんな訳がねぇ!!!

 

 仲間達との絆の象徴といってもいい技をバカにされたように感じたモリアは怒りに吠えようとして――

 気付く。気付いてしまった。

 

「……!?影が……!」

 

 モリアは自身の身体の中に込められている影が少しずつ消えていくという事に。

 モリアは身体の中の影を解放している覚えはない。にも関わらず消えていくという事は――

 

「!!まさか……!」

 

 ある可能性に顔を青ざめせるモリアは素早く周りを見渡る――

 

 

 

「あ゛ぁ゙あ゛あ゛!!」

 

「……弱ぇ癖に自分の強さを過信しやがって……」

 

 ある所ではキングが〝火災〟の異名に恥じなく身体から発生させている炎で敵を焼き尽くしていた――

 

 

 

「……ぁ……っ……」

 

「ムハハハ!オレ達に手向かう虫けら共には殺虫剤だぜ!!」

 

 ある所ではクイーンが〝疫災〟の異名通りに敵に何やら毒かを打ち込んで異常な形態のまま殺していった。

 

 

 

 ある所では身体に穴を多く開けされて――

 

 ある所では首を斬り落とされて――

 

 ある所では無惨に踏み潰されて――

 

 

 

「た、助けてくれ〜〜船長!」

 

「やめろ、やめてくれ……!!」

 

「ぎゃあああ〜〜〜!!」

 

 

 

「てめぇら〜〜〜〜!!!」

 

 モリアは怒りで敵に向かって突き進もうとした。無惨に殺されていく仲間達を救う為に――

 だが

 

「フン」

 

「!!がっ……」

 

 カイドウから金棒を頭に叩き込まれてしまう。

 

「うぅ……」

 

 また体勢を崩したモリアはカイドウに苦しい姿勢で攻撃しようとしても届かない。

 あれ程の猛攻を極めたモリアから力と勢いを感じられない。

 無理もない。モリアの先程の〝力〟は仲間達の影を借りて力を集結させたものだ。

 ただし影は持ち主が死ねば問答無用で戻る。そして消えてなくなってしまう。

 仲間達を殺され続けているモリアの〝力〟が段々と弱っていくのは当然だった。

 これでは仲間を助けたくても肝心の力がなければ、どうにもならない。

 

「あ、あぁあ……」

 

 自身に攻撃を試みようとしても届けられないモリアを見てカイドウは無表情で呟く。

 

「……仲間の力を借りるのは別に構わねぇ」

 

「だがな……自身の力をもっと鍛えておくんだったな。そうすればその様を晒し出さなかった」

 

「はぁ……はぁ……くぅ……!」

 

 モリアはなんとか起き上がろうとして気付いてしまった。

 あれ程響いていた仲間達の悲鳴が聞こえず、静かになってしまった事に。

 そして……身体の中の影が1つさえも残されずに消えてしまっている事に。

 

「……!……て、てめぇら…!よくも…よくも〜〜!!!」

 

 その事から編み出される結論にモリアは慟哭してしまう。

 そんなモリアにカイドウは声掛ける。

 

「……モリア、お前――」

 

「オレの部下になれ」

 

「そうすれば命は助けてやる」

 

「だが……断るのならば――」

 

「仲間達の所へ送ってやる」 

 

「…!!」

 

 カイドウはそう言う――勧誘だった。モリアの腕を買って、彼を勧誘したのだ。

 カイドウからの勧誘に対してモリアは――

 

「ふ、ふざけんじゃねぇ!!誰がてめぇの下に付くのか!!」

 

 血走る目で吠えた。

 彼の答えにカイドウは

 

「そうか……なら死ね」

 

 金棒を振り上げ、振り下ろそうとする。

 

「っ……!!」

 

「!?あぁ……影か!」

 

 カイドウからトドメを食らえそうとするモリアの姿が突如影に変わった。

 モリアは自身の影を別の場所に移動させて、入れ替わった事でまんまとカイドウから逃げ遂げられたようだ。

 こういう状況で一本取られたように感じて苛立ちを覚えたカイドウは部下に捜索の命を出した。

 こうして百獣海賊団は周囲を捜索していた。

 

          ●

 

どこかの墓場

 

「ハァ……ハァ……」

 

 そこにモリアは逃げ歩いていた。深く傷付けられた身体を必死に動かしながら――

 

「ハァ……ハァ……クソ……」

 

 モリアは顔をぐちゃぐちゃにする。だが、それは身体を蝕む痛みにではない――心を蝕む痛みによってだった。

 

「クソ……クソ……」

 

 長く苦楽を共にしてきた何よりも大切な仲間達を――失ってしまった。

 

「クソクソクソ!!!」

 

「――――――――――っ!!!」

 

 あまりの喪失感にモリアは慟哭してしまう。しまいには声にならない絶叫してしまう。

 ガックリとモリアは頭を下げる。

 やがて――

 

「……仲間……なんざ……」

 

「……生きてるから……失うんだ……」

 

「……ならば……」

 

「……全員が……始めから……死んでいれば……」

 

「……何も……失う物は……ねぇんだ……」

 

 そう呟いているモリアの顔は少しずつ――ついには狂気に陥った。

 

「……キシ、キシシ……それだ……そうなんだ……!……それならば死者の軍団を作れば……!!……キーシッシッシッシ!!!」

 

 狂気溢れる高笑いを上げるモリアの血走る目がある墓を見つめる。

 その墓、そして刺されている刀を見て、ある伝説を思い出した。

 

 ――海外を放浪中に空飛ぶ竜を斬り落とし、さらにワノ国を狙う外敵をことごとく退けて世界に「ワノ国の〝侍〟」という存在を知らしめた侍の伝説を。

 

「……キシシ……」

 

 

――百獣海賊団との戦争に敗北したゲッコー・モリアはワノ国を……新世界を……後にした。

 

――そして同時にワノ国の英雄〝刀神〟霜月リューマの墓が〝墓荒らし〟に遭い、彼の遺体と愛刀「秋水」が姿を消されてしまってワノ国中が涙したという。

 

          ●

 

「すげぇな……!!」

 

 百獣海賊団とゲッコー海賊団の戦争を近くで傍観していた影があった。

 それはスサノオだった。

 

 オレはゲッコー海賊団の襲来に対して自身も参戦しようとしていたが、親父には確かな実力を持っているといえ、まだ未熟な上に幼い為に参戦をを許されていなかったのだ。

 変わりに戦争を生で見るのを許された。戦争の実感を――そして百獣海賊団の強さを身で感じてもらって成長の糧になってもらう為だ。

 現にそれはすごく参考になれた。親父を含む百獣海賊団の強さはもちろんだが――負けたといえモリアの戦い方もなかなか興味を持てた。

 力でゴリ押しする戦い方がオレにとっての常識だった――しかしモリアのみせた搦め手そして悪魔の実の効率良い使い方がオレを魅せられた。

 

「すげぇな……!!ああいう戦い方もあるのか……!!」

 

 姿を消したモリアを見つけられず不機嫌になるも一瞬、勝利を宣言する親父を見つめているオレは不敵に笑う。

 

「ああいう戦い方を身に着けるのもありだが、親父の戦い方を捨てるつもりはねぇ……なら!全ての戦い方を身に着けてやる!……親父に勝って「最強」になる為に!」

 

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