ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第97話〝影の隠匿〟

 如何なる禍に見舞われている〝エレインホール〟――

 その中で最高潮に達していくかもしれない禍が存在していた……

 それこそが――

 

「オォォォ!!」

 

「―!!」

 

 ――暴獣海賊団船長〝暴獣のスサノオ〟と「世界政府」からの刺客ペインの戦いであった。

 

「〝嵐脚〟!!!」

 

 ペインがオレの顔に向かって〝嵐脚〟を放ってくるのに対してオレは「神武」の金棒で防いでみせた。

 

「!」

 

 それに眉をひそめるペインに対してオレは「神武」の金棒を勢いよく振り返した。

 

「〝雷鳴八卦〟!!!」

 

「〝鉄塊・黒剛〟!!!」

 

 それを受けてペインは素早く〝六式〟の1つ〝鉄塊〟、そして「武装色の覇気」を同時に発動させる事で自身の身体を硬化させ〝雷鳴八卦〟を受け切ろうとするが――

 

「オォ!!」

 

「!!」

 

 オレの〝雷鳴八卦〟の半端ない威力に身受けたペインがたまらずに勢いよく吹っ飛ばされていった。

 大ダメージに顔を歪めるペインは吹っ飛ばされながら、それでもなんとか体勢を立て直して地に足を付けた。

 そしてよろけながらオレを凝視する。

 

「……分かっていたが――とんでもない素質だ……!」

 

 ペインは身を持って受けたオレの強さに関してそう呟かずにはいられなかった。

 ――彼はスパイとして潜入してきた暴獣海賊団の中からオレ達を観察し続けてきたからこそ、知っているつもりだが……やはり、その素質は常識を越えている。

 そして、ある可能性を思わずにはいられなかった。

 

「……だからこそ、スパイであるオレ達を見逃していたのか?」

 

 ペインはその可能性を口にしてみる――そう、上手く潜入した筈の自身達の事をオレは気付いていた――にも関わらず、問い詰める等をしなかった。

 その事を疑問に思っていたペインはオレが自身達の強さに自信を持っているからこそではないのか?と考えていた。

 その考察に対してオレは――

 

「……いや、お前達の事を様子見していた理由はそれじゃねぇな」

 

「……それに、いくら強くても――それで全てではねぇのを知っている……それはもう――」

 

 そう重々しく呟くオレの頭には――黒炭家と光月おでんの事を思い浮かんできた。

 ――猛者であったあのおでんが猛者ではない「黒炭家」にまんまとやられてしまったという事実から力を持てばいいだけではないという教訓になれる。

 

「スサノオさん……」

 

 そう考えているオレに小紫は何かを感じ取れたか、そう呟く。

 

「――まぁ、裏工作の怖さをオレは少なくとも理解しているつもりだ」

 

「だから、このオレはもちろんフドウとキサメにも警告して、お前達を監視していたんだ」

 

 重々しい様子とは一変させたオレは笑みを浮かべながらそう説明した。

 その内容にペインも頷く。

 

「……なるほど。脳筋かと思っていたが……それなりの考え方を持ち合わせていた――という訳か」

 

「まぁな」

 

 その考え方でペインはオレに対しての評価を改めざるを得なくなった――だが、だからこそ……

 

「そんなお前だからこそ、いずれ「世界政府」に禍を間違いなくもたらすだろう!」

 

「もうこれ以上強くなる前にここで排除する!」

 

「!」

 

 重々しくそう言い放つペインにオレは突如眉をひそめる――

 その姿勢には何か違和感を感じられたからだ。

 だが、その正体を掴み取れず思案するオレにペインは構わずに駆け向かっていった。

 

「〝嵐脚・線〟!!!」

 

 その勢いのまま一直線の鎌風を発生させて撃ち出してやった。

 ――ただの〝嵐脚〟じゃオレを倒せないと判断したペインは〝嵐脚〟の威力を一点的にまとめるものを食らわそうと試みたのだ。

 

「〝雷光八卦〟!!!」

 

 だが、その〝線〟をオレは「神武」の大剣で斬り捨てていった。

 それを目視したペインは怯まずに次の手を打った。

 

「〝嵐脚・乱線〟!!!」

 

 ペインは〝線〟を数々放ってくるのに対してオレは「神武」を勢いよく振り回す。

 

「〝軍荼利有龍乱〟!!!」

 

 「神武」の大剣を振り回す事で連続斬撃の如く〝乱線〟を斬り乱してきた。

 

「フンフン!!」

 

「オォォ!!」

 

 〝乱線〟さえもものにならないという事にペインは怯まずに〝乱線〟を次々に放ち続け、オレも〝軍荼利有龍乱〟で対応していた。

 しばらく張り合うかと思われたが――

 

「〝雷鳴八卦〟!!!」

 

 オレはある1つの〝線〟を〝雷鳴八卦〟で打ち返してやったのだ。

 

「!!」

 

 自身に返ってきた〝線〟をペインはギリギリでかわしてみせた。だが、その際に体勢を少し崩してしまう。

 そんなペインに――オレが素早く近付いていた。

 

「〝雷鳴八卦〟!!!」

 

 オレが間を与えずに〝雷鳴八卦〟を放った。対するペインは――

 

「フン!」

 

 全身の力を抜き〝雷鳴八卦〟により生じる空気の動きに身を委ねる事で紙の如くひらりと紙一重でかわし――

 

「〝紙絵・反抗〟!!!」

 

 ――その勢いでオレの顔に〝嵐脚〟を放った。

 顔を手痛く攻撃されたオレの体勢が少し崩されているところをペインは追撃を行った。

 

「〝肢嵐銃〟!!!」

 

 ペインは両人差し指を突き放つ、両足を振るのを繰り返した――

 ――そう、〝指銃〟と〝嵐脚〟を強烈な勢いで放ち続けた。

 ――「CP9」の者は長らく鍛錬を積んできただけはあって驚異的な身体能力を誇っているが、ペインはその比ではない。

 ましてや〝六式〟の全てを極めている彼はその派生技も生み出して操るのだ。

 

「オォォ!!」

 

 その激しき攻撃にオレも効いているのか、声を上げた――ペイン本人の能力が並ではないのもそうだが……

 そもそも、オレは小紫からの手痛い攻撃を受けたばかりでまだ癒えていない。

 まぁ、だからこそペインはこのタイミングでオレに挑むのを決意したのだろう。

 ――ただ!このままで済むオレじゃねぇがな!

 

「〜〜オォォ!!」

 

「!!」

 

 そう吠えたオレの筋肉が青筋を立て脈動し――そして武装色を纏う。

 そうして強化されたオレの肉体に対して攻撃を加えていたペインの手足はその硬さにより逆に痛められていた。

 その思わぬ事に少し怯んでしまうペインにオレは攻撃を放ち返してみせた。

 

「〝雷鳴八卦〟!!!」

 

 「神武」の金棒の頭部をペインの腹に向かって強烈な勢いで突き放した。

 

「!!!」

 

 その重い一撃を腹に受けたペインは声にならない叫びを上げながら勢いよく吹っ飛ばされていった。

 そんなペインが地を飛び跳ね、そのまま壁に叩き付けられたが――

 

「……ぐ、ぐぉ!」

 

 危うく地に倒れかけたペインはそれでも踏ん張り――地に足を付ける。

 よろけながら、なんとか立つペインはオレに対して顔をしかめる。

 

「ハァ…ハァ……「世界政府」の中には「四皇」であるカイドウの報復を恐れて、お前に手を出すべきではないという意見が出ているが……」

 

「ハァ…その理由はそれだけではなくなるようだろうな……」

 

 負わされているダメージに荒い息になるペインがオレの強さに改めて恐れ入らざるを得なかった。

 そんなペインの姿にオレは抱いているある予感を確信に変えた。そして、その事をストレートに口にしてみる。

 

「……ペイン。お前は――」

 

「?」

 

 重々しく口を開くオレに首を傾げるペインだが、続いて出される言葉に目を見開く。

 

「――何か迷いを抱えているな?」

 

「…!!」

 

「……これはあくまで想像だが……お前は「世界政府」に従う事そのものに忌避感を持っているんじゃねぇか?」

 

「!!!」

 

 そう口にしてみた想像にペインは痛いところを突かれたのか、動揺していた。

 その様子にオレも自身の確信をますます強めていった。

 さっき、小紫の感情を身を持って受けた影響はあってペインの攻撃をオレが受けた際に彼が迷いを抱えているのに気付けたのだ。

 ――尋常ではない諜報員だけはあって、あいにく感じ取れたのはその事だけで仔細までは把握できなかった。それ程にペインは自身の心を上手く隠しているのだ。

 それ故に何かを迷っているかのは想像してみる事になるが……あいにくペインに関しての情報は少ない。

 そんなオレの頭にボヤッと思い浮かんできた可能性を口にしてみたが……案の定だった。

 

「(そりゃ、そうだ)」

 

 そして、その可能性にオレも妙に納得できてしまう。

 オレからすれば「世界政府」とは何を考えているか分からねぇが……こんな世界にしている元凶だ。

 今の世界の有り様からぜんぜん機能していねぇ組織であるのがオレの評価だ。

 ……ただ、そこに所属する人間達はさすがに全員がそういう訳ではねぇだろう。

 目前のペインは確かに「世界政府」の人間であるが……その前に――1人の生きてる人間である。

 今までの様子からおそらく、聡明であろう彼は実は「世界政府」の事が気に食わなく考えていてもおかしくはねぇかもしれねぇだろう。

 

「――なぁ「今から!!」……!」

 

 そう考えるとペインの口から彼の考えを知りたくなったオレは声を掛けてみるが、その声さえを遮ったペインは――身構えていた。

 ――何やら新たな技を放とうとしているのだろう……

 

「オレは今から――全てを放ってみせる……!!受けきれるならやってみろ!!」

 

 そう言い張ったペインの表情は――人形の如き無表情ではなかった……何か強き意思が込められていた。

 そんなペインの姿勢にオレは――

 

「……いいだろう!!来ぉい!!」

 

 受け立つ事にした。

 ――今まで本心を仮面で隠してきたペインが初めて素を現してきたように見受けたオレはその心意気を受けてみたくなったのだ。

 ――まぁ、これこそがオレが脳筋である所以だな……

 そんなオレに向かってペインはそれを発動させる――

 

「……!奴の身体が……!」

 

 目前の光景に目を見開くオレがそう呟く通り、ペインの身体が鈍く光り出していた――

 

「……行くぞ」

 

 ペインがそう宣言した途端に彼の姿は一瞬で消え――オレのすぐ前に姿を現してきたのだ。

 

「!!」

 

「〝神羅天征〟!!!」

 

 〝六式〟の〝剃〟とはあまりに比にならない程の高速移動に驚愕するオレに対してペインはもう既に構えてある拳を強烈な勢いで放っていった。

 そのペインの全力を込めるには異常的に強すぎる拳を身に受けたオレの身体は呆気なく――凄まじい勢いで吹っ飛ばされた。

 そのまま――その場からそう近くない所へ飛ばされていった。

 

「…」

 

 オレの姿が飛ばされていくうちに見えなくなったペインは感嘆の声を上げた。

 

「……分かっていたが――凄まじいパワーだったな」

 

 そう彼は感慨深そうに呟くが……その内容はどこか妙だった――そう、スサノオを吹っ飛ばせた程の自身の力をまるで他人事のように言っているのだ……

 それもその筈。何せ――

 

「――〝暴獣のスサノオ〟のパワ―は……!」

 

 自身の拳を凝視するペインがそう呟いていた……

 

 

ペイン――

 

彼は〝エネエネの実〟を食った「エネルギー人間」なのだ。

彼はエネルギーを操作できる。

その性能は自身に向けられたあらゆるエネルギーを吸収、それにより身体能力を増強し、また体内に蓄えたエネルギーを任意の形で放出する事ができるという。

 

 

 その能力でペインは今までスサノオからの攻撃を身に受ける度にそのエネルギーを吸収し続けてきたのだ。

 ……ただ、スサノオのエネルギーはあまりにも強大で――それこそ、ペインでも吸収できる許容量を越えられていたのだ。

 だが、ペインがそのエネルギーの強大さから激痛を感じてなお、それでも踏ん張ってみせた甲斐はあって溜まっていた強大なエネルギーをそのまま全てスサノオに放出できたのだ。

 遠くに飛ばされていったので今のスサノオの状態は分かりにくいが……大きなエネルギーを込めた一撃――〝神羅天征〟の威力により、さすがの彼もただでは済まないだろう。

 スサノオの飛ばされた先を凝視しながらそう思案するペインだが――その前に新手が現れてきた。それこそが――

 

「……小紫とハンコックか」

 

 そう――小紫とハンコックが憤怒の表情を浮かべながらペインと対峙していた。

 

「おのれぇ〜わらわの愛しき人をよくも殴り飛ばしたな!!!」

 

「……斬る」

 

 その2人は想いを寄せているスサノオを吹っ飛ばした張本人であるペインに対して怒りが湧き出ずにはいられなかったのだ。

 その様子にペインも可笑しいのか苦笑を浮かべていた。

 

「……愛されているな、スサノオは――」

 

「……しかも、あのハンコックまで魅せられているとは」

 

 ――小紫はとにかく、男嫌いとして知らされているあのハンコックがスサノオの事を慕っているという事実にペインも青天の霹靂だった。

 そんなペインに対してハンコック達は誇らしげにする。

 

「そうよ!!あの方は他の男共と違って尊い方なのだから!!」

 

「……気に食わないが――その意見には同感よ!!」

 

「……ほぅ、それ程か」

 

 そう言い張るハンコック達の姿勢にペインも関心を新たに持たれるようになった。

 ――今までの観察、今やっている戦いからスサノオがただではないという事を理解しているが……その認識をまた改められたような気がしていた。

 そう思案するペインに対してハンコック達は――身構えていた。

 

「わらわの怒り、思い知るがいい!!」

 

「……私の剣の糧になれ……!!」

 

 少なくともスサノオに傷を負わせたペインにその落とし前を付けようとする2人に対して彼も身構える――が

 

「……!」

 

「「!」」

 

 突如何かに気付く。遅れて小紫とハンコックもそれに気付いた。

 そんなペイン達が素早く上空を見上げると――

 その空から何かが来ようとしていた……

 

「「「!」」」

 

 ペイン達が目を見開く間もなく、その何かが――その場に勢いよく降り立ってきた。

 その何かに対してペイン達が改めて身構えるが……

 

「リュドドドド!!!」

 

「「「!」」」

 

 その場に響かれた笑い声に小紫とハンコック、そしてペインもなぜか笑みを浮かべていた。

 そんな彼らが抱く期待に応えるかのように何かがその姿を現してきた――

 

「効いたぜぇ!!」

 

 そう、スサノオ――オレがそう言い放った。

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