――〝エレインホール〟での動乱から明くる日
〝黒の組織〟――
彼らは〝エッジオブパシフィック〟から「映像電伝鳥」を手にする為にまず〝オーシャンヴァリー〟で爆発を起こし、そこから生じてきた危惧を利用して脅迫していたが……
――そうまでする程の野望は偶然関わる事になってしまった暴獣海賊団と〝エッジオブパシフィック〟が結成したチームの奔走により阻まれた。
しかも、それだけに留まらずに全員も拘束され――そのまま壊滅の憂き目を見る事になった……
「CP9」――
暴獣海賊団に潜入した組と〝エッジオブパシフィック〟から「映像電伝鳥」もしくはそれに値する技術を入手しようとする組に分かれていたが、その2組共揃って〝エレインホール〟での動乱に巻き込まれるハメになってしまっていた。
だが、彼らはその動乱を逆手に取って技術入手と暴獣海賊団の弱体化の2つを果たそうと試みたが……
――暴獣海賊団の海賊達によって返り討ちにされた上に思いがけない出来事も起こったという幕切れになった……
――そのような様々な事を起こされていた〝エレインホール〟は今……
「――〝黒の組織〟の奴らめ!!ここをメチャクチャにしやがって!!」
「そうだな。だからこそ綺麗サッパリにして一泡吹かせてやるんだ!!」
「「「おう!!」」」
……復興されようとしていた。
――〝黒の組織〟等によって損害されてしまった〝オーシャンヴァリー〟を含む〝エレインホール〟をその民達が復興しようと駆け回っていた。
自らの居所を再び活気付かせようとするその姿は実にたくましかった……もちろん、その中には――
「――さて、大抵の区域は済んだようですし。後は――皆」
「あいよ!分かってら!――社長」
「は〜い♪――エンジン全開といきますかぁ!」
「……ったく、面倒かけてくれやがったなぁ〜」
「まぁまぁ……復興が順調に進められて何よりだよ」
――そう、〝エッジオブパシフィック〟もまたその復興に取り組んでいた。
――そもそも、そこは〝エレインホール〟で建てられた会社である。
その会社が設立地の復興に貢献するのも無理ではないだろう――そして……
「たくましいな。ここの民も……オレ達も負けられねぇぞ!」
「だね!――お兄さん!」
――オレ達、暴獣海賊団もまたその復興に協力していた……
――〝エレインホール〟には楽しませてもらっているからこそ、そのままにしてはおけないと思っているオレ達は自ら進んでいったのだ。
……まぁ、騒動とそれによる損害の原因の半分がオレ達にあるのも理由になっているが――
とにかく、ヤマト達が復興に向けて精密で十分な働きをしているのにオレも満足する。
「――しかし……思わぬ面をまたしても見えられたな」
そう呟くオレの目は――復興状況とそれに応じての活動方針に関しての議論に参加しているある女性を凝視していた。
その女性こそが――
「――こうした方が良いでしょう」
「なるほど」
――そう、小紫であった。
彼女は以前の不安定な様子と違って今は調子良く動いていた――が……そのビジュアルは大きく変わっていた。
――以前の彼女は凛々しい侍だと印象付けられてきたが……今の彼女は――花魁であるかのような外見をしていた。
その目の縁と口元に紅をひいて、小紫と孔雀と骸骨が描かれた絢爛とした着物を着ている上に華美な髪飾りを付けていた。
そういう様が妖艶な魅力をばら撒いてて、まさに花魁だと印象付けられているが――腰に差している二刀の存在がが彼女を女剣士だと証明しているのだ。
――抱え続けてきた苦悩から気が吹っ切れた小紫は今までの反動からか、洒落に熱が入るようになっていったのだ。
……まぁ、このオレの隣に立つ際に恥じないようにしているのもあるらしい――全く!いい女だぜ!
小紫の姿勢にオレが感激を覚える一方で視線を向けているヤマトも頷く。
「――そうだね!小紫が綺麗で強いのは知っているけど……あのように采配を振るうのもすごいね!」
〝エレインホール〟の復興計画に関して効率的な助言と指示を出す小紫にヤマトも感嘆を受けた――
――実は「黒炭家」の出現と「光月家」滅亡への過程、ワノ国の有り様に思うところがあるオレが政治等に関しての勉強を行っているが……小紫も同じ事を考えていたのか、政治等に関しても勉強していたらしい。
そのおかげでそういう知識をも身に着けている彼女は今あのように指揮能力を発揮しているのだ。
その姿にオレもやはり感激を覚えて笑みを浮かべるのに対してヤマトは――ニャニャしていた。
「……ししし」
「……何だ」
その薄笑いにオレがムッとするが、ヤマトはしかししらばっくれる。
「……いんや〜どこかの鈍感がやっっっと気付いたな〜とは思っていないからな〜」
「……コイツ」
「ししし」
いやらしい言いぐさをしてくるヤマトにオレも苦笑を浮かべた。
だが、オレはふとし――
「……小紫の身元だが――」
真剣になるオレはヤマトに対して重々しくそう言いかける……
――そう、実は小紫の身元に関しては今暴獣海賊団の皆が認識している。
もちろん、それによるひと悶着が起こってしまったが……今は皆が小紫を仲間として認めてくれている。
――ただ、ヤマトの場合はみせる反応が少ない上に彼女は光月おでんの事に熱中している。
故にオレは彼女が今はどう感じているのかを知りたくて、聞いてみようとするが……
「あぁ!――小紫は小紫だよ!」
その意図を勘付いたヤマトは爽快にそう言い張った。その言葉にオレが眉を上げるのにヤマトはニコリとする。
「そりゃ――気になるはなるけど……それって小紫には失敬じゃない?」
そう爽快に笑うヤマトが言い放つ言葉にオレも笑みを浮かべる。
「……リュドドド!だな!」
オレ達が和気藹々としているのをよそに――
「…(何か楽しそうですね)」
――小紫がそんなオレ達にチラリとしていた。その様子が彼女には引っかかるが……
「(……しかし――スサノオさんが私に見惚れてくれている……!)」
少なくとも、想いを寄せているスサノオが自身に見惚れているのに気付いている小紫は密かにほくそ笑む。
「(スサノオさんの心を私のものにしてみせる……!そう、あの蛇なんかには渡してたまるものですか……!)」
――様々な事を経験した少女は――女に羽化していった……
●
それから少しして――
「気分はどうだ?」
復興が落ち着くようになり、人々がくつろいでいる中でオレはある者達と議論していた――
「えぇ、気分が爽快です」
――その問いかけに対してペインが爽やかにそう言い放っていた。
――彼が「CP9」――否、「世界政府」を裏切って暴獣海賊団に加入する……
それは余程に大それた事だが……彼はスッキリできていた。
――ただ、この〝エレインホール〟には……まだコナンがいる。
彼女がその事実を知ったら――もちろん受け入られず、ペインを始末しようと動く筈――かと思われたら……
「そんで、お前は?」
ペインの答えを聞いたオレが続いて視線を移してみると――
「同じ気持ちです」
――そこにはコナンも立っていて、しかもオレの確認に柔らかく答えていた……
そう、なんと――コナンもペインに続いて暴獣海賊団に加入していたのだ。
――実は彼女は……ペインとは同郷で――幼なじみであるのだ。
もちろん、そういう事情からか2人の立場もまた同じである。
だからこそ――彼女自身もまた「世界政府」に対して忌避感を持っていて、ペインの気持ちが痛い程に分かってしまうのだ。
故にペインの決意とその経緯を聞いたコナンも「世界政府」を迷いなく裏切り暴獣海賊団に加入するのを決意したのだ。
「――しかし、この私は「CP9」の立場と今回の任務事情からあそこに戻らなければなりませんが……」
「コナン……」
――ただ、コナンは〝エレインホール〟での動乱により一旦「世界政府」に戻なければならなくなっていた。
その事に少し憂鬱な気分になってしまうコナンにペインも気遣げに声を掛ける。だが、すぐ彼女は微笑みを浮かべる。
「大丈夫よ。ペイン――あそこにいるからこそできる事もあるし……奴らに対して情報を上手くごまかしてきます」
そう言い放つコナンは「CP9」の立場を利用して暴獣海賊団に都合が良くなるように情報操作をするつもりだ。
――なお、〝エッジオブパシフィック〟での任務に関しては……動乱を理由に入手不可能という報告、そしてゼロ達が手放しても無問題な技術を差し出す事になっている。
「――あなたは暴獣海賊団での潜入任務を続けるという事になるのね」
「あぁ」
――そして、ペインは〝ヤヒコ〟として暴獣海賊団にいる事になっている。なお、同じ潜入任務を請け負ったタングドーサムは――動乱に巻き込まれて殉職する事になっている。
――彼だけではない。ペインとコナン以外の〝エレインホール〟にいたメンバーは全員――殉職しているという事になっていた……
……まぁ、仲間にならない諜報員を生かしても利益はないどころか――害しかならないからな。
その実情に少し思うところがあるオレにコナンが言葉を続ける。
「もちろん、ハンコックに関してもそのあたりの情報を操作しておきます」
――「王下七武海」〝女帝〟ハンコックが暴獣海賊団――それも「四皇」の一角とつながりを持っているという事実もペインとコナンは目をつぶるどころか、彼女達に都合の良いように情報操作を行うつもりだ。
「……それはハンコックの奴も喜ぶだろうな」
その説明を受けてオレは彼女が自身となかなか会えにくい事にじれったく感じているのを思い出した。
――そうなれるならば、ハンコックがすごく喜ぶ事になるのも想像に難くなかった……そして、小紫がイラつく事にもなってしまうのだろうという事もだ。
思い浮かんでしまったその想像につい苦笑を浮かべてしまったオレはふとコナンに視線を向ける。
「……コナン」
「!――はい、何でしょうか?」
その呼びかけに反応してくるコナンにオレは試みに聞いてみる。
「本当に「世界政府」を裏切るのか?――中には親しい者がいなかったのか?」
――ペインと違ってコナンの意思をオレはまだ知らない。だからこそ今聞かずにはいられなかった。
その質問に目を見開くコナンだが、すぐ冷静になり――
「……そりゃ、奴らには少し情がありますが――」
「このまま所属するなら――さっさと離れるに限ります」
そう断言するコナンの目は冷静だった――が、すぐ軟らかくなる。
「……あなたには感謝しているんです――スサノオさん」
「!」
突如のその言葉にオレが目を見開くのをよそにコナンは言葉を続ける。
「……この私はとにかく――ペインが奴らに縛られるのが心痛かったんです」
「――だからこそ、奴ら…「世界政府」からペインを解放してくれたあなたに恩と義理を感じます」
「――あなたの為なら何でもしましょう」
そう提唱するコナンにオレも頷く。
「――お前の意思は分かった……改めて歓迎するぜ。コナン」
「はい」
――こうして「CP9」の〝コナン〟は暴獣海賊団に加入した。
●
――さらに少しして
――〝エレインホール〟の復興はまだ完全ではないものの、ある程度落ち着けていった。
それで――祝い事を行われていた。
――今までは行われない訳ではないが……あちこちで損害されているのもあって少々に留まらせていたのだ。
だが、今は落ち着けたので徹底的に行う事になっていた。
「――〝黒の組織〟の奴らが来やがった時はどうしようかと思っていたが……」
「だな!!ハハハッ!!」
――祝い事をしているだけはあって、人々が楽しく騒いでいた。
なお――
「――あの美しき白き狼に乾杯!!」
「「「乾杯!!」」」
――〝オーシャンヴァリー〟で恐怖に慄いている人々に安心をもたらしてくれた白き狼――〝大口真神〟に変身したヤマトの事を人々が称賛する事もあった。
――その称賛をそばで聞いた者がいた。
「……だって〜白き狼様?」
「ヴァニカ!///」
――そう、ヤマトだ。
その称賛に関してのヴァニカからのからかいに彼女は顔を赤くする。
――彼女が羞恥心を感じていたのはもちろんだが、同時に少し誇らしげな気持ちにもなっていた。
「……へへ///」
ヤマトが嬉し笑いをこぼしていた……
――そんな彼女達から少し遠くの所でオレはある者達と議論していた。
「――〝エッジオブパシフィック〟を助けて頂いて、我が会社を代表して感謝を申し上げます」
「我が〝エレインホール〟も感謝を申し上げます」
――〝エッジオブパシフィック〟社長ゼロと〝エレインホール〟の代表を務める中年男性がオレに対して頭を下げていた。
――オレ達の目的がどうであれ、結果的に〝エレインホール〟を救ったのだからこそゼロ達はその感謝を申し上げるべきだろうと考えたのだ。
その礼をオレは素直に受け入れられなかった。
「いやいや……オレ達にはオレ達の目的があるからやっただけだ――それに……」
そう言うオレはゼロに視線を向ける。
「……コナンの件でそちらが矛を収めてくれたし」
「……それは確かに我々が矛を収めたが――」
その言葉に少し目を見開いたゼロがすぐ目を細めながら口を開く。
「――それはあなたがあの時で彼女のあれ以上の攻撃行為を止めてくれたからですよ……」
「――それに、「世界政府」に対しての手持ち札を手に入れられたし……気にする事はありませんよ」
そう不敵な笑みを浮かべたゼロに対してオレも獰猛な笑みを浮かべた。
「――じゃあ!お互い様って事で!」
その悪どくて活発的な笑みを浮かべたオレにゼロは呆気に取られ――
「……ハハ――ではそういう事にしましょう」
「おう!」
とりあえず、話がそう決まったオレとゼロに今度は代表が口を開く。
「話は決まったのですかな?――では私の番ですな。何しろ〝エレインホール〟はあなた方にまだ礼を果たしていないんで!」
「おぉ……だったら――」
――そうしてオレ達が議論した結果。
――〝エレインホール〟は百獣海賊団のナワバリと化した。
●
それから数日後
「よぉし!――出港だぁ!!」
「「「オォォ!!」」」
あれ以降で〝エレインホール〟の周遊を十分楽しんできたオレ達は出港して次の航海に出ようとしていた。
その出港を〝エレインホール〟の代表数人と〝エッジオブパシフィック〟の幹部陣が見送ろうとしていた。
「――色々!!ありがとうございました!!」
その人々を代表してゼロは出港しているカイリュー号に向かって頭を深々と下げていた。それにつられて人々も頭を下げる――
「元気でな!ヤマトちゃん!」
「うん!そちらも!」
その一方でヴォイジはヤマトに対して手を振っていた。それを受けた彼女も手を振り返す――
――この2人は互いの性格が似ている故か相性が良いだろう……
とにかく、少しずつ姿が小さくなっていく〝エレインホール〟を凝視し続けるオレに声を掛けられた。
「スサノオさん」
――小紫がオレの方に近付きながら声を掛けてきたのだ。
彼女もまた〝エレインホール〟を感慨深そうに凝視する。
「……思えば、あそこで色々ありましたね」
――それは本当に思わぬ物事を身をもって味わってきた彼女の心からの言葉にオレも苦笑しながらも〝エレインホール〟を凝視し続ける。
「あぁ……ビックリする程に目ぐるましかったな〜」
――こうして転換期を迎えた暴獣海賊団は心機一転でき、新たな航海に出ていった……