――暴獣海賊団が〝エレインホール〟を出てからしばらく
海を進むカイリュー号の船上で船員達が仕事をする、または意のままに行動している中――
「ペイン」
オレは〝エレインホール〟の方向に顔をしばらく向けているペインに声を掛ける。
このオレから突如声を掛けられる事にペインも軽く驚きながら振り返るのに対して確認したい事をさっそく聞いてみる。
「――お前は「世界政府」にオレ達の事を報告したよな?」
「え、えぇまぁそうですね――ある程度ごまかしておきましたが」
その問いかけにペインも混乱しながらも率直にそう答えた。
その答えに頷くオレは続いて上空を見上げる。
「……そろそろか?――ニュース・クー……」
「!」
見上げながらそう呟いたオレにペインもその意図を把握し、合点がいった。
「――今までの暴れぶりに加えて今回の件ですから――あなたの期待通りになる筈です」
「……だよな〜」
ペインからそう説明されるとオレも頷く。そして、その説明に応えるかのように
「!」
空には突如何かが現れてきた――そう、それこそがオレが待ちわびたものであった。
――空に現れたもの、それは――水兵帽を被り首から新聞の束を入れた赤いカバンをぶら下げているカモメであった。
新聞配達を請け負っている彼らは今も新聞を届けに飛んでやってきたのだ。そんな彼らから何かが落とされた――まぁ、新聞だろう――をオレは受け取る。
「……さて、どうなるかなぁ?」
その登場から何か期待を寄せているオレがそう呟きながら新聞を確認してみる。そして……
「……ニッ」
それを確認できたオレの表情にはイタズラが上手くいった時の子供の如き笑みを浮かべた。
「……おぉい!!」
「「「!」」」
オレはさっそくそれを皆に知らしめる為に大声で呼びかける。
その呼びかけにそれぞれ活動している皆も反応してオレを見上げる。
何事だと首を傾げる皆に対してオレはそれを掲げる。
「――見ろよ!!これ!!」
「「「……ん?」」」
●
〝聖地〟マリージョア
パンゲア城内「権力の間」――
その部屋の空気はもはや重かった――その中の者達にとっては深刻な事態に陥っているといっても過言ではなかった。
「……全く、癪に障る……!!」
「あぁ……事態がままならないのは分かっているが――こうなってくるとは……!!」
――「五老星」がその事態に苦々しい表情を浮かべざるを得なかった。
彼らにそうさせてしまう程の事態。それは……
「――あの暴獣海賊団があの〝エッジオブパシフィック〟が所在する〝エレインホール〟によりにもよって寄りかかっていただけでもマズイなのに」
「――そこで騒ぎが起こり」
「――その騒ぎにより「CP9」のエージェントを6人も失う憂き目を見るとは……!!!」
「……幸いな事にペインとコナンがその難を逃れていて、しかもペインの潜入が続行可能だ……!!!」
そう――〝エレインホール〟での動乱であった。
思わぬ結果をもたらし続けたその動乱に関して「五老星」も語気を強めながら議論していた。
「――〝エッジオブパシフィック〟は我々がエージェントを回していたのに気付かれてしまったようだな……!!」
「あぁ……これで下手に出る訳にはいかなくなった……!!!」
「――コナンの潜入もその影響が及ばれた事で続行が難しくなっているらしい……もう「映像電伝鳥」は諦めて、コナンが持ち帰った技術で手を打とう」
――〝エッジオブパシフィック〟関連の議論は最終的にその結論で締められた。続いて――
「……「四皇」〝百獣のカイドウ〟の息子だという事実を抜きでもあれだけ暴れ回ってきた〝暴獣のスサノオ〟に対しての警戒を怠れないのはもちろんだが――」
「――その部下もやはり侮れなかったな……!!」
「あぁ……もはや〝暴獣のスサノオ〟1人の強さだけの集団だとみる訳にはいかなくなった」
そう「五老星」はテーブルに置かれているスサノオの手配書――だけではなく、数枚の手配書を険しい目で凝視する。
●
〝シャボンディ諸島〟――
そこは〝偉大なる航路〟の前半部の終点にあるヤルキマン・マングローブと呼ばれる巨大な樹木の群生地の事を指す。
あまりにも巨大なのでそれぞれの根の上や根元が実質的な小島と化しており、民家や何かしらの店・施設などの建物も多数ある。
その性質上〝偉大なる航路〟の島特有の磁場は一切発生していないが、前半の航路で〝魚人島〟を示す指針を辿っていくとここに行き着く事になる。
この島の向こうには〝赤い土の大陸〟があり、正規の方法で〝偉大なる航路〟後半の海〝新世界〟に進むには〝聖地〟マリージョアを通るしかない。
その為、海賊等の無法者達は〝新世界〟への裏ルートである〝魚人島〟を通る海底ルートへの準備をする島として、このシャボンディ諸島を利用しているのだ。
――その島である2人の男が言葉を交わしていた。
「レイリーさん。オレァ本当に驚いたよ!!!」
「〝東の海〟に…!!ロジャー船長と同じ事を言うガキがいたんだ…………!!」
「船長のあの言葉を…!!!」
その1人――シャンクスが目前の老人に対して〝その子〟の事を嬉しそうに話していた。
その事を言われている老人――レイリーは微笑みを浮かべていて、しかしどこか含みがあるように見受けられていた。
レイリー――正確にはシルバーズ・レイリー
――実は彼こそがあのロジャー海賊団副船長であった。
そう〝海賊王〟ゴール・D・ロジャーの右腕として活躍した「海賊王の右腕」「冥王」と呼ばれた伝説の海賊である……
現在は隠居して〝シャボンディ諸島〟でコーティング職人をしている。
それ程の人物とシャンクスはまるで親しい者同士であるかのような調子で会話していた――それもその筈。
――シャンクスもまたロジャー海賊団に海賊見習いとして在籍していたのだ。
つまり、顔知りである2人は久しぶりに再会し、会話に花を咲かせていたのだ。
「……楽しそうだな。シャンクス」
「!――あぁ!!ああいうガキ達と会ったら、そりゃな!!」
ある意味我が子のようにみてきたシャンクスが大人になった今でも子供のようにはしゃいでいる様子で〝その子〟にあの〝麦わら帽子〟を託してきたという事を話してきたのにレイリーも嬉しそうにする。
――ただ
「うん?――ガキ「達」?」
レイリーはシャンクスの言葉のある部分に着目する。
――ガキ「達」……つまり、シャンクスが気を掛けている子供が他にもいるといえる……なら、その子とは一体?
レイリーがその疑問を抱いた様子にシャンクスも自身の言葉の微妙さに気付いた。
「あぁ……それとは別にあるガキとも会っていてな――」
「――そのガキもなかなか面白くてな」
シャンクスがその者の事も話した――ただ、その調子はさっきのはしゃぎと違って複雑さも感じられていた。
その調子にレイリーも片眉を上げ――
「……お前がそういうふうに話すとは……どういう奴なんだ?」
興味を少し惹かれたレイリーにシャンクスは瞼を閉じ――踏み切って目を開け、答える。
「……ソイツは」
そう話すシャンクスがある手配書をレイリーに掲げる。
「コイツです」
自身に向かって掲げられた手配書に写されている顔にレイリーは目を細める。
「……カイドウの子か」
そう見当を付いたレイリーは微笑みを浮かべるが――それには凄みが少し込められていた。
その見当にシャンクスも頷く。
「……あのガキと会ったのは――〝エレジア〟ででした」
そうシャンクスは説明する――自身達が寄った〝エレジア〟での出来事を……
「……なるほどな」
その話を聞いたレイリーは納得し、微笑む。
「……それはまた面白そうな若者だな」
そう言うレイリーはまだ見ぬ者――〝暴獣のスサノオ〟に興味が湧くようになる。
そんな彼につられて少し微笑むシャンクスだが、すぐ憂いのある表情を浮かべる。
「――レイリーさん」
「ん?」
「……あのガキはもちろんだが――」
そう言うシャンクスが突如視線を移す。その視線先にレイリーも視線を向けてみると――
「はぁぁ〜…綺麗…!小紫……!」
――シャンクスの娘ウタは上方に掲げる1枚の手配書を見上げながら感嘆のため息を吐いていた。
……その手配書に写されている者はウタにとっては友達だが――以前会った時はなかったその美貌に感動せずにはいられなかった。
その様子にレイリーは心が穏やかになるも、すぐ疑問符を浮かべる。
――ああいうのは確かに可愛らしいが……一体何を言いたいんだ?
そう考えているレイリーに真剣な表情を浮かべるシャンクスが口を開く。
「……実は、あのガキの船には――」
「…!!!」
そして、告げられたその事にレイリーも真顔になる。
「…」
しばらくレイリーが真剣な表情を浮かべるのにシャンクスは声を掛けてみる。
「……レイリーさん」
「……分かっておるよ」
「――あの子が意思をもって決めた道だ……これ以上何かを言うのではない……!ましてや表舞台から去った老人では……!」
「……そうですね」
声を掛けられたレイリーはそう言い切ってみせる。その調子はハッキリしていながらも、どこか辛そうな響きもあった。
それに勘付いたシャンクスも相槌を打ち、それっきり黙る――
黙るようになった2人はある豪快な侍――そして、ある赤ん坊を思い浮かんでいた。
「――この世には偶然等ないのかもしれない。全てが必然であるかのように……〝縁〟はやおら形を成してゆく……」
「……その〝縁〟――暴獣海賊団……どのようなものをもたらしてくるだろうか……?」
●
〝ワノ国〟鬼ヶ島――
――百獣海賊団の本拠地であるその島中のある部屋にはその主が座しているが……
「ウォロロロロ!!!」
……その主――〝百獣のカイドウ〟は高笑いを上げていた。
そんな彼を凝視する者がいた。
「……嬉しそうッスね〜カイドウさん……」
――カイドウの懐刀の1人であるクイーンは上機嫌な彼に何ともいえない表情を浮かべていた。
「……まぁ!確かにスサノオの奴らも生意気な事をしてくれやがったからなぁ!!――なぁ!キングゥ!」
といえ、その理由である自身にとっての弟分の活躍ぶりにクイーンも喜ばしく感じていた。
それで同じ懐刀の1人であるキングに話の矛先を向けようと彼を見てみると……
……キングは1枚の手配書を凝視していた。心なしか、その雰囲気はいつもより少しだが――柔らかった。
「……フン」
その手配書を凝視しているキングは嬉しそうに鼻を鳴らす。
「…」
その姿にいつもなら嫌口を吐く筈のクイーンも口を閉じるしかなかった。
そんな2人に構わずにカイドウは相変わらず高笑いを続ける。
「ウォロロロロ!!!――これで一海賊団だとして箔が付いたなぁ!!!」
彼は手に持つ新聞と数々の手配書を凝視しながら誇らしげにする――
●
場面は戻って――
――カイリュー号の船上はいつも騒がしかったが……今は一味違った。
それもその筈。何せ――
「リュドドド!また上がったな!」
新たに発行された自身の手配書を見るオレはニャリせずにはいられなかった。
『〝暴獣のスサノオ〟
懸賞金10億ベリー』
そう、オレの懸賞金が上がったのだ。
……しかも、今回はそれだけに留まらなかった。
自身の手配書を堪能したオレは視線を移してみると――皆は数々の手配書を見ていた。それこそが――
『〝白獣のヤマト〟
懸賞金1億ベリー』
「やったぁ!!!手配書が出たぁ!!!しかも億超え!!!」
――ヤマトは自身の手配書が発行してきた、しかも億超えである事に喜びをみせていた。
『〝裁火のフドウ〟
懸賞金1億6000万ベリー』
「フン……やっとか」
――フドウもまた自身の手配書が発行してきたのにニャリとしていた。
『〝鉄槌のジャック〟
懸賞金1億ベリー』
「……このオレが焼き鳥より下だとぉ〜?」
――ジャックは彼の手配書が発行してきたはしてきたが……その懸賞金額がフドウより低いという事実に腹が煮えきり返っていた。
『〝狂獣の小紫〟
懸賞金8000万ベリー』
「……あの蛇より下……」
――小紫も同じく彼女の手配書が発行してきたが、その懸賞金額には納得できていなかった。
――今まではオレだけ手配書が発行されてきたが……今は他の手配書も発行されてきたのだ。
その発行に皆は――もちろん様々な反応をそれぞれみせていた。
――自身の手配書の発行に対しての喜びもあれば、懸賞金額に対しての嘆きもまたあり――しまいには自身の分の発行さえもなかったという事実に対しての嘆きもある始末だ。
そんな悲喜交交な状況にオレも苦情せざるを得なかった――が、船長として声を上げなければならなかった。
「――おぉい!!お前ら!!」
「「「!!」」」
オレからの呼びかけに自身の感情を露わにせざるを得なかった皆もなんとか視線を向けた。
その様子を確認したオレは口を開く。
「――まず!!手配書が発行された奴らはおめでとさん!!!」
「うん!!」
「あぁ」
オレはまず手配書が発行された者達にはお祝いを言っておく。そう祝われたヤマト達も喜んで受け入れた。
「――それから手配書が発行されなかった奴らは……残念だったな!!!」
「…」
「クッソ〜」
――続いてオレは手配書が発行されなかった者達に対しては労っておいた。そう言われた者達は改めてその事実を痛感し、悔しがっていた。
その様々な様子を見届けたオレは言葉を続ける。
「……そんなお前ら、あと!懸賞金額には納得できなかった奴らも次に向けて一層努力しようぜ!!!」
「「「!!」」」
自身の手配書が発行されなかった者達、そして発行されたものの懸賞金額には納得しない者達をオレは激励した。
その激励に落ち込んでいる者達も――そして、手配書を発行された者達もまた自身を奮い起こした。
「「「……オォオオ!!!」」」
その活気が勢いよく戻ったのに満足気に頷いたオレは宣言する。
「――これでオレ達――暴獣海賊団の名は世界に知らしめられただろう!!!」
「このまま――世界に名をさらに深く刻む勢いでいこうぜ!!!」
「「「ウォオオオオオ〜〜〜ッツ!!!」」」
――〝暴獣のスサノオ〟が率いる暴獣海賊団の名は――世界に知れ渡る事になった……