ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第102話〝強烈な逢引〟

――〝エレインホール〟を出港した暴獣海賊団はそれからも海を旅し、様々な島々にも上陸し冒険してきた。

――そして、ある島にも寄りかかっていた。

 

「異常は……ないか」

 

 その港に寄っているカイリュー号には数人が留まっていて、その中の1人――フドウはその場を監督していた。

 そんな彼のそばには――ヤマトもいて、その分析に頷いた。そして問いかけてみる。

 

「……お兄さんはどう?」

 

「……ここを巡りに行ったが――」

 

 そこまで言うフドウの顔が少し面倒そうにする。

 その意図に勘付いたヤマトも苦笑を浮かべる。

 

「アハハ……お兄さんはモテモテだね」

 

 皮肉ともみられる言葉を口にするヤマトだが、実はそれ程に兄の魅力がすごいという事に彼女は誇らしげにしていた。

 その意見にフドウも肯定し、そして島の街に視線を向ける。

 

「……スサノオさんは大丈夫だろうか?」

 

 その中で少し面倒事に巻き込まれているといっても過言ではないスサノオの事を思い浮かんだフドウがそう呟いた……

 

          ●

 

 その島の街には人々が歩き回っていた。彼らは買い物と散歩等に取り組んでいるのだ。

 そんな平和な空間中での1本の街路をある3人が歩いているが……その3人に多くの人々が注目していた。

 それもその筈。その3人とは――1人の男が左右に2人の女を伴っているという並びになっているが……そのうちの2人の女の美貌は半端ではなく、男女関係なく多くの目を釘付けにしていた。

 それ程の美貌を持つ2人の女――それこそが……

 

 

――〝狂獣〟小紫

 

――〝海賊女帝〟ボア・ハンコック

 

 

 その2人は左右からそれぞれ男の腕を組んでいて――そして、互いに相手を睨みつけ合っていた。

 両腕をそんな彼女達にそれぞれ組まれている男――オレは苦笑しながら、冷や汗を流していた。

 その体勢は「両手に花」という男の羨望であったが……それもオレには窮屈だった。

 ……まず両腕を組まれている体勢もそうだが――2人の間に漂われる重苦しい空気には参っているのだ。

 そんなオレの意図を知ってるか知らずか小紫とハンコックは嫌口を言い合っていた……

 

「……ここでさぼらず、仕事に戻るのはいかがですか?」

 

「……なんのなんの、幸いな事に仕事が捗ってな、やる事がないから顔を見せにやってきたのじゃ」

 

「……そうですか〜それは良かったですね〜」

 

 2人はそう微笑み合っているが、その裏には殺気が溢れていた……

 

 ――なお、今こうして「王下七武海」が海賊と親しくやっている景色を人々に見られているんだが……

 実は――その島は百獣海賊団のナワバリである。そういう事情から「世界政府」に知らせる義理を持ち合わせていない。

 それに加えて「王下七武海」に加盟したばかりの彼女にかかっている監視の目はもう既に下げられている上にコナンの暗躍でそういう情報が届かないようになっている。

 そうして身動きの制限性が低下されたハンコックは――羽ばたいて想いを寄せているスサノオに顔を見せに行っているのだ……

 ……まぁ、小紫がいる以上そう簡単にスサノオと逢瀬を楽しむ事もないんだが……

 

 とにかく、少し息苦しい体勢で歩き進めているオレ達だが

 

「……あら?――スサノオさん!見えたんじゃないですか?」

 

 突如そう声を上げた小紫の視線先には――緑一杯の景色が写されていた。

 そここそが――島の中でもなかなか広い緑地であった。

 その緑地にオレは行ってみるつもりであったのだ。その意図、そして小紫の声につられてハンコックもそこを目にした瞬間

 

「おぉ!見えたな!――行くぞ!」

 

 駆け向かっていた――オレを連れながら。

 しかも、それを受けて小紫も

 

「むっ!――行きましょう!」

 

「ちょ、ま、まて――」

 

 彼女もまた駆け向かってしまった。そんな彼女達の勢いにオレもただ引きつられていった――

 

          ●

 

 その広い緑地で人々がくつろげているが……その中にはオレ達もくつろげていた。

 

「――このように緑だらけもいいよな」

 

「そうですわね」

 

「そうじゃな……スサノオさん!」

 

 その緑一色の景色を堪能しているオレに小紫も共感し、同じく共感しているハンコックだが、すぐオレに寄ってきた。

 

「「!?」」

 

 目を見開くオレの目下に「それ」が展開された――

 

「――わらわが腕に物を言わせて作ったお弁当じゃ!召し上がるのじゃ!」

 

 そう胸を張って言ったハンコックの言う通り、そこには――大きな弁当箱があり、その中にはよく作られている華風料理が込められてあった。

 その豪華さにオレもつい声を上げた。

 

「お、おお「スサノオさん」ぉぉ――……?」

 

 だが、そこに声を掛けられ顔を向けてみると――それはまた大きな重箱から分かれて展開されていた。もちろん、小紫もお弁当を用意していたのだ。

 そして、その中に込められている和風料理も負けじと豪華だった。

 

「私もお弁当を作ってきました……こちらをぜひ召し上がれ」

 

 小紫はハンコックに負けじとオレにお弁当を掲げていた。

 その姿勢にハンコックもムッとし――

 

「スサノオさん!ぜひこちらを!」

 

「いやいや!こちらを!」

 

「何じゃ!」

 

「何よ!」

 

 2人ともオレにお弁当を掲げ合い、しまいには張り合おうとする始末だ。

 そんな2人にオレは声を上げずにはいられなかった。

 

「お前ら!!食事ぐらいはゆっくりしろ!!」

 

 ――そんな一喝によりオレ達は落ち着いて食事できていた。

 

「……うん!ハンコックの料理は――辛さを上手く生かして味を作っているな!」

 

「うむ!」

 

「――小紫の料理は……それぞれの素材を生かす上で全ての味を混ぜていて――独特だな!」

 

「はい!」

 

 オレは2人の料理を食べさせてもらったが……それぞれの味の感動を口にしていた。

 そう感動を言われた2人は揃って胸を張り――そしてオレに詰め寄る。

 

「「それで!?」」

 

 2人共同じようにそう問いかけてきた――彼女達にとってはオレから自身の味こそが最高だと称賛してほしいのだ。

 その意図にはもちろん勘付くオレは――真剣な表情を浮かべていた。

 

「……小紫、ハンコック」

 

「「!」」

 

 その真剣さに2人共身を引き締める。それにオレは言葉を続ける。

 

「……オレにとって食事は――楽しむもんだ……だからこそ、差をつけたくねぇんだ……それを分かってくれ」

 

「「…!」」

 

 その説明に2人は不服な表情を浮かべる――も口を閉じる。その様子にオレも苦笑を浮かべ

 

「――まぁ!2人共美味ぇぞ!――お前らも騙されたと思って互いに食べてみな」

 

 オレがそう勧めると2人は顔を合わせ――

 

「「…」」

 

 互いに相手の料理を口にしてみた。そして――

 

「「……フン」」

 

 互いに顔を背け合った。その様子にオレも微笑みを浮かべた。

 ――一見嫌い合っているように見受けられているが……互いに相手の料理に関して嫌口を言わなかった。それは――そういう事だからだと思っている。

 

          ●

 

 緑地でたっぷり堪能できたオレ達はそれから街路を歩いてみた。

 張り合っていた小紫とハンコックもある程度落ち着けたのか、今度はオレの腕を組まずにそのままついていくという体勢になっている。

 とにかく、オレ達は今その街路の端に並んでいる数々の店を覗いていた。

 そんな店からオレ達はこの島の文化を味わいながら何を買おうかと考え巡らせていた。

 

「……!あれは」

 

 ふと、何かを見つけたオレはその店の中に入っていった。

 

「!スサノオさん?」

 

「…?」

 

 それに小紫達が首を傾げる。それからしばらくすると店から出てきたオレが2人に近付く。

 

「すまんすまん……あの店でお前らに合う物を見つけてな――」

 

 首を傾げる2人にオレは理由を口にする――そう、さっき入った店には2人にそれぞれ合う物があったので買ってきたのだ。

 そして、その物を小紫とハンコックに対して贈ろうとしていた。

 

「まず、小紫――」

 

 さっそくオレは小紫と向かい合う。真剣なオレに小紫も身を引き締める。

 

「……お前には色々悩み苦しませてしまったよな」

 

「…」

 

「――それでも結局このオレの事を想ってくれたよな……!」

 

「…」

 

 そう静かに言うオレに小紫も微笑み――頷く。そんな彼女にオレは力を込めて言う。

 

「――ありがとな……!」

 

 そう感謝を告げたオレはそれを彼女に掲げる。それに彼女は目を見開く。

 

「これは……」

 

「そう――耳飾りだ」

 

 そう、それこそが――紫色の花を形作られた耳飾りであった。

 心なしか、その花は小紫としても見えるも見えないとか――だからこそ小紫にふさわしかったのだ。

 オレからのその贈り物に対して小紫は――目を潤ませていた。

 

「――ありがとう……///」

 

 彼女が感激しながらその耳飾りを受け取った。

 その姿にハンコックは何ともいえない表情を浮かべていた――が、そんな彼女にもオレが顔を向ける。

 

「――ハンコック」

 

「!」

 

 その呼びかけに反応するハンコックに対してもオレは口を開く。

 

「……ハッキリ言って――オレはお前の事を仲間として大切に思っている」

 

「…」

 

「だからこそかもな……お前にその感情をなかなか持てないんだ」

 

「…」

 

 オレが重々しくその言葉を言うのにハンコックも真剣に耳を傾げてくれている。

 

「……こんなオレをそれでも慕ってくれているんだな……!」

 

「――ありがとな……!」

 

「…」

 

 口を開かず、しかし威厳に満ちているハンコックにオレはそれを掲げた。

 それこそが――腕輪であった。それは人の前腕全体に巻き付ける程の金の蛇を形作られていた。

 九蛇海賊団船長であるハンコックにふさわしい物であった。それに対してハンコックは――

 

「……そちらこそ、わらわにもわざわざ贈り物を用意してくれて――感謝する……!」

 

 ――腕輪を受け取りながら礼を口にした。その様は凛としていた……

 ……そして言葉を続ける。

 

「……そなたの心が小紫に向いていて――」

 

「――わらわにはそう向けにくいのが理解できた」

 

 その事をハンコックがハッキリ言い放つ。

 内容が敗北宣言だとしては威厳がある様子にオレは不審に思う。その一方で小紫はハンコックをただ凝視する。

 そして、ハンコックは言う。

 

「――ただな、わらわは――九蛇の海賊じゃ!」

 

「蛇の如きねっとり、そなたの心を絡んでみせようぞ!」

 

 そう宣言するハンコックにオレも呆気に取られ――そして、小紫も微笑む――それでこそハンコックだというかのように……

 

          ●

 

「――それでもスサノオさんは小紫さんを選ぶだろう」

 

 ……カイリュー号の船上でフドウとヤマトが議論をしていたが、そんな時にフドウがそう宣した。

 その言葉に目を細め、続きを促すヤマトにフドウは説明する。

 

「……まず、スサノオさんの小紫に対しての想いがそう薄れる事はないだろう……」

 

 フドウが自身なりの分析による結論を冷静に口にする。

 

「――聞いてきたスサノオさんと小紫の決闘の際のああいう様子ではかえってだ」

 

 確信に至る理由を口にするフドウは続いて他の理由も口にする。

 

「それに……」

 

「……手配書に写された小紫の写真が気に入らないスサノオさんの様子ではな」

 

「?」

 

 フドウが口にしたその事にヤマトは首を傾げる。

 

「……何で気に入らないの?――小紫の美貌が上手く表れていると思うけど?」

 

「だからだ」

 

 ヤマトが口にしてみた疑問にフドウはあえて、そう返した。

 ますます疑問符を浮かべるヤマトにフドウは――冷や汗を流していた。

 

「……あの写真によって――賞金稼ぎより求婚者が集まってしまうのではと恐れているからだ」

 

 冷や汗を流すフドウが口にしたその理由にヤマトはもちろん、そばで耳を傾げていた人々がズッコケた。

 

「お、お兄さん……」

 

 兄の新たな面を知ったヤマトが苦笑を浮かべるのに構わずにフドウは真面目に説明を続ける。

 

「――そりゃアホくさいかもしれんが……注目したいのはそんなスサノオさんの姿勢だ」

 

 そう言うフドウの目がカッと見開く。

 

「――意外にスサノオさんは独占心を持っている……!」

 

 フドウのその断言にヤマトは口を開けて――頷いた。

 

「……そうかも〜」

 

 兄の今までの様子を思い返したヤマトはうんうんと頷く。そして、ふとする。

 

「……小紫だけじゃなく、ハンコックとも交際するのは……?」

 

 ハンコックの想いを無造作に扱いたくないと考えているヤマトがその案を口にするが――その案をフドウが否定する。

 

「それはないだろう――なぜならば……」

 

 そうフドウはハッキリ言い放つ。

 

「……スサノオさんは――カイドウさん譲りの真面目だからな」

 

          ●

 

時は過ぎ――夜

 

 カイリュー号の船長室でオレはもちろん、小紫もいた。

 

「今日はどうだったか?」

 

「えぇ、楽しませて頂きました」

 

「そうか」

 

 今回の周遊でオレがそう確認してみると小紫も微笑みながらそう答えた。

 その答えに満足したオレに小紫は真剣な表情を浮かべる。

 

「……ハンコックの想いには応えないのですか?」

 

 ハンコックの想いを目にしてきた小紫はオレの姿勢が気にかかり、そう問いかけてみたのだ。

 その問いかけに対してオレは眉を上げた。

 

「……何だ?オレがハンコックに奪われてもいいんか?」

 

「いえ、それはありませんね」

 

 その疑問を小紫はそれはそりゃ気持ちいい笑顔を浮かべながらキッパリ斬り捨てた。

 

「あなたの一番はこの私が頂きます」

 

「……リュドドド」

 

 そしてハッキリそう宣言する小紫の姿にオレも苦笑し――そして、密かに見惚れていた。

 それに気付いているか気付かずか小紫は続ける。

 

「……どんな女だろうが――あなたに寄りかかるのは許しませんね」

 

 ハッキリそう言い放った小紫は窓に歩き進め――そこから月光に照らされる海面を眺める。

 

「……まぁ――ハンコックなら二番手ぐらいはいいじゃないかと思いますがね」

 

 小紫はそう言い放った――彼女には気に食わなくても、ハンコックの想いを認めているのだ。

 そんな彼女だからこその案にオレは目を見開き――真剣になる。

 その案を出してまでハンコックの想いを認めている小紫の疑問に対してオレは――真剣に答える事にした。

 

「……ハンコックの気持ちはありがたいが――やはり、彼女にそういう感情を抱いていねぇな?」

 

 ハンコックに対しての自身の感情をオレはそう分析する。

 

「……オレは結ばれるなら、愛し合う者同士がそうなればいいなと思っている……」

 

「だからこそ、その感情を持っていねぇオレがハンコックと交際するのは……彼女への侮辱だと思っている」

 

「その……まぁ、ハンコックと交際する訳にはいかねぇんだ」

 

 自身の考えを説明するオレが改めてその事を口にする。

 

「……真面目ですね」

 

 そんなオレの考え方に小紫も苦笑し――微笑む。

 

「……ま、そんなあなただからこそ――惹かれてしまったかもしれませんね……」

 

「……お前がこのオレの真面目さに惹かれてくれるとすると――ラッキーだな」

 

 苦笑を浮かべるオレに小紫が近付き――そのまま身を寄せた。

 

「……うふふ、あなたとこうしていると――穏やかな気分になれますね」

 

 そう言ってくれる小紫をオレは黙って――抱き寄せた。

 その2人はしばらくそうしていた――

 

          ●

 

その時を同じくするカイリュー号の船上には――

 

 ――ハンコックが立っていて、月光に照らされる海面を眺めていた。

 そんな彼女に近付く影があった――

 

「……フドウか」

 

「……あぁ」

 

 ――そう、フドウだ。

 彼は彼女の隣に立つ。そんな彼にハンコックは口を開く。

 

「……何のようじゃ」

 

「……スサノオさんとの事で少し聞いてみたくてな――」

 

 そう言うフドウにハンコックはつい語気を強める。

 

「……そなたはスサノオさんの事を諦められないわらわを醜く思うだろうが――」

 

「――わらわは初めて抱いたこの想いを――捨てたくないのじゃ!」

 

「誰が何を言おうが――あの人の心を手にしたいのじゃ!!」

 

「その為には……何でもしてみようぞ!!」

 

 自身の想いを微かも隠さずに全て口にしたハンコックが息切れしているところにフドウが口を開く。

 

「……いいんじゃないか」

 

「!」

 

「……美しさとか醜さとか――その基準は人によっては曖昧だ」

 

「……なら、もはやそんなの気にせずに自らの心に従えればいい」

 

「少なくとも――スサノオさんを諦めないお前をオレは醜いとは思えんな」

 

 フドウはそう言い張る――それには慰めも下心もない真面目な言いぐさにハンコックは呆気に取られ――笑みを浮かべる。

 

「……フン、言ってくれる」

 

「…」

 

 威厳を保ち直したハンコックの姿にフドウも笑みを浮かべる。

 

 

――様々な想いが交差するその夜は深かった……

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