ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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情勢変化編
第103話〝複雑な激情〟


――その暴れぶりから一海賊団としての箔が付くようになった暴獣海賊団。

――その名が世界に知れ渡っていくのにつられて彼らに襲いかかろうとする者も増え、戦いが多く発生していった……

――そして、今も……

 

「オ゛オ゛ォ゛!!?」

 

「ぐがぁ!!?」

 

 ……その海上には戦いが展開されていた。

 

「つ、強ぇ!!」

 

「あ、あぁ!!か、敵わねぇ!!」

 

 ――もっとも、それは一方的だが……

 実はその海賊団はある程度名が知らしめられているのだ。それによって調子に乗ってしまった彼らは突如近くで遭遇した海賊団に勢いよくケンカを売ったが……

 

「も、もう逃げるんだぁ!!」

 

「あぁ!!――何なんだよ!!あの巨人達は!?ただの巨人族よりデカすぎだろぉ!!?」

 

 自身からケンカを売った相手――暴獣海賊団に一方的にやられている海賊団はその強さに増長していた心があっさり折れてしまった。

 ちなみに暴獣海賊団の船から現れてきた巨人族より異常に大きい巨人達――ラウフェイとメニヤの姿を目視してしまった時点で海賊団はすぐ戦慄してしまっていたが……既に遅しだ。

 とにかく、その海賊団は暴獣海賊団から逃げようと船を素早く進めようとするが――

 

ズババン!!

 

「「「!!!?」」」

 

 ――その決して小さくはない筈の船が突如……真っ二つにされた!

 その出来事にその海賊団の海賊達は完全に恐れ入り――そのまま海に落ちていった。

 こうして――その海賊団は壊滅する事になった……

 

 ……そして、その船を真っ二つにしてみせたのが――

 

「……他愛ない」

 

 ――そう呟いた尋常ではない美貌の女……小紫であった。

 彼女は刀を勢いよく振った事で放った斬撃が船を真っ二つにしてみせた――そう、船を見事に斬り捨てたのだ。

 

「……スッゲェ!!ああいう船を見事に真っ二つにしやがった!!」

 

「あぁ……かつてとは見違えたもんだ」

 

 自身の手によって砕け散り沈まれていく船に興味がないかのように背中を向け、揺るぎなく歩き進んでいる小紫に暴獣海賊団の海賊達はその腕を称賛しざるを得なかった。

 それ程に彼女の強さは――過去とはあまりにも見違っていたのだ。

 そんな彼女はしかし称賛を受けてなお、平然としていて――ある者がいる方向に向かって歩いていった。

 

「――いかがでしたか?」

 

 そして、その者に対して小紫は恭しく頭を下げながら――そう問いかけてみた。

 そして、その者とは――

 

「リュドドド!!おう!!――実に美しい一振りだったぞ!!」

 

 そう、オレだ。

 ――今回出くわした敵の強さはそれ程ではなかったのでオレは出陣せずに座していたのだ。

 ただ座していただけのオレだが、さっき目にした小紫の一振りの美しさに感銘を受けずにはいられなかった。

 

「ああいうのは〝侍〟――光月おでんと霜月牛マル達以来だぜ!!」

 

「……それは何よりです」

 

 小紫の一振りに対してオレがそう言うと彼女も慎ましく頭を下げる――が、その口元は少々ながら嬉しそうに歪まされていた……

 彼女には自身の強さをおでん達のと同じくみられるという事実には光栄に感じていたからだ。

 その姿勢にオレも少し口を歪ませられていた。

 

「…(可愛ぇ〜)」

 

 ――小紫は普段では凛々しいが、その一方で快活で可愛らしい面も持ち合わせているという事がオレの琴線には触れていた。

 そのように和気藹々としている雰囲気だが

 

「――お前ら!!ご苦労だったなぁ!!」

 

「「「オオッ!!」」」

 

 とりあえず気を取り直したオレは戦ってくれた皆に対してまず労いをかけた。

 それに対しての皆の雄叫びにオレも頷き

 

「よし!宴――んん?」

 

 その勢いのままに宴を始めようと考えたオレだが、突如何かに気付き口を閉じる。

 その何かとは――

 

「……ニュースクーか」

 

 そう、ニュースクーだ。

 そのカモメ群がオレ達の上空をも飛んでいて――そこから新聞が落とされてきた。

 その新聞をオレが受け取り、さっそく確認してみる――

 

「…!!」

 

 そして、オレが険しい表情を浮かべてしまう。

 そうせずにはいられないその新聞に書かれてある見出しとは――

 

『〝聖地〟マリージョア襲撃犯

 フィッシャー・タイガー死亡!!』

 

          ●

 

時は遡る――

 

たった1人で〝聖地〟で暴れ回り奴隷達を解放したという偉業を成し遂げたといわれるフィッシャー・タイガー。

彼は解放した魚人と人魚に加え、その事件を聞きつけ海上に駆け付けたジンベエとアーロン一味達と共にタイヨウの海賊団を結成し、世界にその名を轟かせてきた。

 

「こいつは必ず故郷へ送り届ける!!!」

 

その航海中である仕事を頼まれた――それは元奴隷の人間の少女コアラを故郷に送るという仕事であった……

天竜人の元で奴隷として強いられた過酷な経験により、怯えながらも常に笑顔を絶やさずにいるという異常な状態に陥ってしまったコアラだが……

そんな彼女とタイヨウの海賊団は航海中で親交を結ばれ、その温かさに彼女も本当の笑顔を取り戻せられ――そして、タイガーもまた微笑んでいくようになった……

そして、タイヨウの海賊団は彼女の故郷である〝偉大なる航路〟フールシャウト島にコアラを確かに送り届けられた。

 

「あたし村のみんなに言うよ!!魚人にはいい人達がたくさんいるって!!」

 

「おめー元気でなー!!」

 

「コアラ〜〜!!」

 

その別れには笑顔があって、確かに希望があった――

 

「!!!」

 

「私は「海軍本部」ヤマカジ中将だ!!!」

 

――しかし、「世界政府」と取り引きをした島人に裏切られて通報された事でタイガーは海軍に襲撃され、瀕死の重傷を負ってしまう……

なんとか海軍から逃れたタイガーだが、彼は出血多量で輸血が必要な状態だった……

 

「入れるな!!!」

 

「そんな血で生き永らえたくはねぇ!!!」

 

だが、タイガーは頑なに輸血を拒んだ。

確かに治療をしていた船は海軍から強奪した軍艦で船員の中にはタイガーと同じ血液型の者もいない為、輸血できる血液は全て人間のもの。

そうはいっても魚人と人間の血液は成分的には同じであるにも関わらず、それでもタイガーが輸血を拒んだのは――彼の胸に刻まれている〝爪痕〟がそうさせているのだ。

 

「オレは!!!奴隷だった!!!」

 

そこで船員たちに語られたのはタイガーがかつて消息を絶った時に天竜人に奴隷とされていた事実だった。

それ以来、人間の狂気と差別意識を知ってしまったタイガーは平和を望むオトヒメの思想の正しさを理解しながらも、人間への恨みが消えられなかった。

 

『――言っとくが、天竜人共は人間じゃねぇよ。あれは――豚だ』

 

『人間をあんなのとは一緒にしないでくれよ』

 

――出会ったスサノオ達の存在、それによる人間と天竜人の明瞭な相違を認識する事ができても――その心が拒絶せずにはいられなかった。

しかし人間を憎悪していてもその和平を望む心は本物。

タイガーはスサノオ達のような人間、そしてコアラのように何も知らない純粋な子供達が次の世代を担い〝魚人島〟を変えられるように「魚人島には何も伝えない事」を仲間達に願う。

 

「──だから頼む!!お前らは島に何も伝えるな!!オレ達に起きた〝悲劇〟を!!人間達への〝怒り〟を!!」

 

スサノオ達の存在から人間にも優しい者がいるという事を知ったからこそ、自身達のような死んで行く者が恨みを残すべきではない。

頭では分かっていても、彼自身は心の奥の「鬼」が人間を憎み身体がその血を拒絶してしまう。

人間との和平を望む意思をスサノオ達、コアラと魚人島の子供達等の次の世代に託す事はできても――自身ではもうそれができなかった。

 

「オレはもう…!!!人間を……!!!愛せねぇ………!!!」

 

 その絶叫に船医にして同じく元奴隷であったアラディンが声を上げずにはいられなかった。

 

「お頭っ!!何を言おうと解放して貰った全ての奴隷達にとって…!!あんたは一生の大恩人なんだ!!!」

 

「偉業を成した〝魚人島の英雄〟なんだよ!!!」

 

 アラディンの心からの言葉に対してタイガーは――

 

「嬉しいねぇ……だが……知ってるだろ……アレは……オレだけじゃねぇんだぜ……?」

 

「――もちろん!!スサノオ達にも感謝してる!!だからこそ――全ての人間をもはや――憎もうとは思えねぇ!!!」

 

 微かに笑うタイガーが一応そう諌めておくとアラディンも言葉を続ける。

 その言葉に彼もますます微笑む。

 

「……そうだ……それでいい……」

 

「……頼みが……ある……」

 

「!何ですか!?」

 

 心なしか安堵が少しみられたタイガーがなんとか口を開こうとする。

 

「……スサノオと……ヤマトに……悪ぃな……とつた――」

 

 ――フィッシャー・タイガーはそう呟きかけ……

 

 

――それからアーロンは怒りと悲しみのままに無謀にも単身で海軍を襲撃し、返り討ちにあって逮捕されてしまう。

 

「お前ら人間が!!!あの人を死に追いやったんだよぉ!!!!」

 

取り調べの際にフィッシャー・タイガーに関してアーロンがそう言い張った結果――

海軍はアーロンの証言を「人間に供血を拒否されたので失血死した」と解釈して発表してしまう……

 

 

「――やれやれ……とりあえず、フィッシャー・タイガーの件はこれで片付けたかな?」

 

「そうだな……タイヨウの海賊団がまだ残っているが……時間の問題だろ」

 

 海軍基地の中である海兵達が息抜きしていた――彼らは対応してきた問題がようやく片付けられそうとしていたのだから……

 

「……しかし、ボルサリーノ中将達がいない時はどうしようかと思ったが――」

 

「あぁ――どうにも情勢が不安化したところがあって……そこには人手が足りないから、その支援にあの人達も向かざるを得なくなっちまったからな……!」

 

 息抜きに海兵達が始めたその会話の内容の通り、フィッシャー・タイガーの件は実は以前までは――実力があるボルサリーノ中将が担当していた。

 だが、最近の情勢不安化によりボルサリーノ中将達も他の各地への支援に行かせざるを得なくなったのだ。

 まぁ、彼らがいなくてもフィッシャー・タイガーを撃破できた為に杞憂だったが……

 

「――そういや、この情勢不安化の原因にはある海賊団の暴れぶりが関係しているらしいぜ」

 

 そんな会話中である海兵がそう声を上げた。その言葉に海兵達も興味を惹かれる。

 

「へぇ?どこの海賊団だ?」

 

「あぁ、それはな――」

 

 好奇心な故の問いかけに海兵もその名を口にする。

 

「――暴獣海賊団というらしいぜ?」

 

          ●

 

時は過ぎる――

 

〝シャボンディ諸島〟辺海――

 

 その海上には――カイリュー号が留まっていた。

 

「――今は寄す方が良いだろうとの事です」

 

 その船上でオレは真剣な表情でその報告を受け取っていた。

 

「……だろうな」

 

 その内容にオレも重々しく頷く。

 ――実はフィッシャー・タイガーの件を受けてオレは〝魚人島〟に急ぎ向かったが……

 そんなオレ達の来訪にネプチューン達は感謝を覚える一方で……フィッシャー・タイガーの件による民達の感情状態と情勢を重く見て、オレ達には少なくとも〝竜宮城〟に近付かない方がいいと勧めざるを得なかった。

 その意図を理解できるオレも無理にせずに従う事にした――

 

「……ジャック、キサメ」

 

 そして、オレは気がかりなジャックとキサメの感情を確認する為に顔を向ける。

 オレが視線を向けられたジャックは身を引き締め――

 

「……大丈夫です。スサノオさん」

 

「…」

 

 ジャックがハッキリと言った一方でキサメは何の感情も読み取れない表情で海面を凝視する――

 この2人も今回の件に思うところがあるようだ……

 

「……ヤマト」

 

 その姿を目視したオレは続いてヤマトに視線を向ける。彼女は――落ち込んでいて三角座りしていた……

 

「……うん」

 

 オレからの声にヤマトも悲痛な表情を浮かべながらそう返すしかなかった……彼女も今回の件には大変ショックを受けていたのだ。

 その胸内を察せるオレも頷き――呟く。

 

「……見舞いしたかったんだがな……!」

 

          ●

 

〝竜宮城〟――

 

「スサノオ殿からあい分かった、お大事にとの事です」

 

「……そうじゃもん」

 

 その報告、それによるスサノオの意図にネプチューンは改めて感謝を覚えた。そして同時に自身達の対応が刺々しくなっている事に関しても申し訳なく感じていた。

 

「感謝するじゃもん……スサノオ殿……だが」

 

「……彼にはもうこれ以上苦労をかけたくないじゃもん……!」

 

 哀しげにそう呟いたネプチューンが見下ろす先には――病架に寝込んでいる魚人……フィッシャー・タイガーの姿があった。

 

 ――そう、死亡してしまったと思われたフィッシャー・タイガーだが……実は彼は一命をなんとか取り詰めていたのだ。

 ……ただし、傷の深さと出血多量の影響により命を永らえられても――昏睡状態にならざるを得なかった……

 そんな彼は〝竜宮城〟で養生している。

 

 その事実はタイガーの身の安全を考慮して〝竜宮城〟でも知る者が限られていた……

 もちろん、その事実は「世界政府」にも把握されていない――ただし、スサノオは人間といえ……信用を置ける者である為にその事実を知らせていた。

 

          ●

 

 〝シャボンディ諸島〟辺海で留まっているオレ達だが、〝魚人島〟に入国しない事にした以上、もはやこのまま留まる事はない。

 故にオレは航海を再開しようとする。

 

「行こう……ん?」

 

 そう口を開きかけたオレの目に突如何かが写された。

 それは――小船だった……それにはフードを深く被っている者が乗っていた――

 ただ、それだけだが……その者が何か気になったオレはすぐ〝風雲〟でカイリュー号からその小船に近付いてみた。

 

「…!」

 

 突如現れてきたオレにその者が驚愕し、その様子にオレもすぐ口を開く。

 

「あぁ、悪ぃな。驚かせて……!どうしたんだ?お前?」

 

「あ、いえ。気になさらず……!」

 

 オレからの声掛けにその者は煩わしそうにしていて、しかも何かを急ぎたいように見受けられていた。

 

「――ううっ……!」

 

「おい……ん?」

 

 そして、何かに痛むかのように突如俯いたその者の姿にやはり、何かが気になるオレは気遣わしげにその顔を覗かそうとし――

 

「…!!」

 

 そして、その顔を目視したオレは目を見開く――

 ――その者は――ピンク髪をしている女性だった……ただ、その肌は青い石のようになっていた……

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