フィッシャー・タイガーの件を受けて〝魚人島〟に急ぎ向かったオレ達――暴獣海賊団。
――だが今の情勢、魚人達と人魚達の感情状態を考慮した事でオレ達は〝魚人島〟に入国せずに航海を続けようと決意する。そんなところに突如――その者と出くわした。
その者は――ピンク髪をしている女性で……その肌は青い石のようになっていた――
それから時は過ぎ――
オレ達は今――
「――頼んだぞ!!クイーンさん!!」
「分かってら!!オレ様に任せな!!」
オレがそう頼み込むとクイーンさんもそう応え、ピンク髪の女性が寝込む病架を連れながら駆けていった――
その姿が見えなくなった途端にオレはため息をついた――
「……とりあえず、なんとかなるだろうな」
そう呟いたオレが今いる場所――それは独特的な特徴もみられる一方でSFを彷彿とさせる多数の工場と研究施設……「スケープ」だ。
――そう、オレ達はワノ国に帰っていたのだ。
まだ〝金色神楽〟の時期ではないにも関わらずにオレ達が早く帰ってきたが、その理由はもちろん――
●
時は遡る――
「何だ!?その肌は……!?」
出くわした者――ピンク髪の女性の青い石のようになっている肌にオレも驚愕せざるを得なかった。
「あ、いえ……私なんかに気にせずに……!」
その反応にビクッとするものの、なんとかそう言い張りながら小船をさっさと進めようとするその女をオレは慌てだたしく制止する。
「いやいや!!待て待て!!あんたの事情は知らんが、このまま海に出るのは無茶だろ!!その肌!!それに――」
「――赤ん坊を抱く身じゃかえってだ!!」
オレからの指摘通り、その女――の腕には赤ん坊が抱かれていた。
オレの慌しさ、女――おそらく母親の必死さを知る由もないその赤ん坊はスヤァと穏やかに寝ていた。
その穏やかな顔を目にしたオレはますます女達を放置できなくなった。
「まずオレの船に乗って治療を受けろ!!話はそれからだ!!」
「い、いえいえ!本当に気にしないで……!」
オレがその案を口にするものの、女が承服せずに急ごうとしている。
それ程の姿勢にオレも眉をひそめざるを得なくなる。
「なぜ?」
だからこそオレがそう問いかけると女もさすがにイラ立ちを覚えてしまったのか語気を強めた。
「いいから――どけ!!!早く〝ソルベ王国〟に急――う、ううっ……!」
女がそう言い張りかけた途端に彼女が俯き――倒れた。その姿にオレも険しい表情を浮かべる。
「言わんこっちゃない!!」
そう言ったオレはその女達を優しく抱き――カイリュー号に戻っていった。そこでその女に対して医者達が素早く治療を開始したが……
「申し訳ありません……!ですが、初めて見る病です……!故にどう治療すべきか見当が付きません……!」
「クイーンさんのワクチンでも一時的に抑えるのがやっとです……!」
「……そうか」
医者達からの報告にオレは表情をますます険しくする。
その女の身に起こった容態は医者達でも初めて見る――未知なものだった。
それは――自然光を浴びた皮膚が青い石のように固まり、やがて全身の皮膚が青く石化していく進行性の奇病……というそうだ。
この「石化」は日光と月光等全ての自然の光で広がり、それを完璧に防いでも時間による病気の進行は避けられない……
――クイーンによって作り上げられたある程度の病、ウイルス、毒等にも効けるワクチンでも一時的に抑える効果しかもたらさなかった――その効果は万能でもないので無理もないかもしれないが……
今は自然光が入り届かない部屋に女を寝かせて安静させておくしか対応できなかった。
その事実にオレは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、思案に耽る。
「――よし!」
やがて考えをまとめたのか顔を上げたオレは勢いよく宣する。
「――ワノ国に帰るか!!」
●
そうして――オレ達は〝珀鉛病〟を打ち破れた業績を持っているクイーンさんのいるワノ国に急ぎ向かった。
オレからの連絡を受け取ったクイーンさんも受け入れ用意をし、待機してくれた。
そのまま女の身柄をクイーンさんが預かり――治療を開始していった。それをオレ達はただ見届けるだけだ……
「……ジニー。大丈夫かしら……」
そう呟いたステラはあの赤ん坊を抱いていた――その子の名は〝ボニー〟という。
そして、もちろんボニーの母親であるピンク髪の女性は〝ジニー〟という。
オレ達がワノ国へ急ぎ向かう中で同じ母親同士としてステラはジニーに親身になって関わっていたのだ。その姿勢に暴れかけていたジニーも心を開くようになっていき、穏やかに会話するようになっていった。
しまいには彼女にとっても大切なボニーをステラに預かる程に信頼を置くようになれた。
「……大人しく治療を受ける決心をしてくれたけど――万が一の時は〝くま〟って人に伝えてほしいと言っているし……」
あれ程に否定してきた治療を受けるというジニーの決心に微かに安堵したステラは彼女から万が一をとって預かったメモと手紙を悲痛そうに凝視する。
そのメモは〝くま〟という者への連絡番号が書かれてあり、そして手紙はもちろん彼に対しての伝えたい事が書かれている。
そのメモと手紙、そしてボニーを凝視するステラにオレは呟く。
「……〝くま〟って奴にはジニーの事を伝えるべきだろうな」
その言葉に顔を勢いよく向けるステラにオレは言葉を続ける。
「ただし、オレ達とここの事はもちろん伝えられねぇ……どこかの島で会ってボニーを会わせよう――ジニーはそうそう移動できねぇだろうから、電伝虫での会話で手を打とう」
百獣海賊団総督「四皇」〝百獣のカイドウ〟の息子として甘い顔をもうこれ以上できないオレはそのギリギリな案を出さるを得なかった。
その案にステラも抗議せずに頷く。
「そうすべきですね……でしたら――」
そうしてオレ達はジニーとボニー、〝くま〟を取り巻いている状況に関しての議論をする。
「――よし、その方向でいこう」
「はい!」
その議論の締めとしてオレがその結論を口にするとステラも顔を少し明るくして頷く。
その反応に頷くオレに声が掛けられる。
「――あ!終わりました?」
議論をしているオレ達の近くで待機してくれていた者が今の状況を見て、そう声を掛けてきた。
その言葉をオレが肯定すると言葉を続けられる。
「カイドウさんが待ちです!」
●
「おう!意外に早い帰りだったな!!」
百獣海賊団の本拠地、鬼ヶ島で親父はオレ達の帰還に少し驚きながらも歓喜の声を上げた。
「しかも、その理由もああいうだし――本当にお前は甘ぇな」
「……しょうがねぇだろ――赤ん坊を抱きながら病に苦しむ女性をほっとく訳にはいかねぇんだ」
オレ達の帰還が時期より早い理由に苦笑を浮かべる親父だが、オレがそう返すと真剣な表情を浮かべ直す。
「……まぁ、それはそうだな……」
どこか遠いところを見つめるような……そういうふうに何ともいえねぇ表情を浮かべた親父の稀な姿にオレも珍しく感じせざるを得なかった。
だが、オレを反応に気付いたか気付かなかったか親父もすぐ活発な笑みを浮かべる。
「――まぁ!それは置いといて……今回の旅の土産を持ってきたよな!?もちろん、あの国の土産もだよな!!?」
「あぁ!――様々な島々のもそうだが……やはり、あの国――〝ソード王国〟の技術が一番だな!!」
オレ達が航海で得られた利益はもちろん、〝ソード王国〟で入手した値打ちがありすぎるものに親父も強き期待に気分が昂ってくるのを抑えられず、勢いよく頷き続ける。
「――古代巨人族関連の研究の実験体、ラウフェイとメニヤも……!」
「――〝人造悪魔の実〟もそうだが……!」
以前のオレ達からの報告を受け取った親父は〝ソード王国〟の技術を次々に上げ、それにつられて笑みをますます深くするが……その目も突如鋭くなる。
「――1人が2つの〝悪魔の実〟の能力を持つようにする研究が最も興味深ぇな……!」
「あぁ」
その前代未聞の成果を実際に出した驚異的な研究に強き興味を持たずにはいられない親父の姿勢に理解を示すオレだが、顔をしかめる。
「……ただなぁ、その資料はオレ達には理解できない程に難しくなっているんだ……今ジニーの治療に当たっているクイーンさんを待つしかねぇ」
「ウォロロロ……そうか、口惜しいが……待つしかねぇな」
そう議論を締めるものの、互いに笑みを浮かべ合うオレ達だが――
「……その女はどうしたんだ?お前がわざわざ連れてきたんだから――何かがあるんだろ?」
親父はさっきから気になっていたオレの後ろに控えている小紫について言及してきた。
その言葉をオレは待っていたかのように頷き、小紫に視線を向ける。
しばらく伏せ続けていた小紫はその雰囲気を受けて、顔を上げて自己紹介を始める。
「……初めまして――小紫と申します」
そう挨拶した小紫は微笑む――それはあまりにも美しくて――人間味がないように捉えられかねなかった……
「あぁ、こうして顔を合わせるのは確かに初めてだな――だが、お前の事は知っているぞ。スサノオがお前を気にかけていたから記憶に留めているぞ」
「しかし、手配書を見ても思ったんだが……見違えたな。以前とは様変わって――なんというか……今はキレイになったな」
その紹介に親父も既知だと答え、そして小紫の様変わった様子にたまげていた。
その言葉に小紫も目を少し見開くも、すぐ微笑む。
「……えぇ、この度の旅で心変わりしたんです……その事であなたに報告しなければならない事があります」
重々しく言う小紫の言葉に親父も耳を傾げる。
「……おう、何だ?」
丁寧に耳を傾げてくれている親父にオレも緊張せずにはいられず息を呑んでしまう。
「(ここから正念場だ……!)」
これから始まる正念場に対してオレもそう考えてしまう。
「……私は――」
――そして……小紫は明らかにした。
「……かつては光月日和という名を持っていた――光月おでんの娘でございます」
「……!!!」
――〝百獣のカイドウ〟の前でその身分を……
明らかにされた小紫の正体に親父もあまりの衝撃に目を大きく見開く――
●
光月日和――光月おでんの娘の登場に驚愕する親父にオレは素早く補足として説明をする。
――今の状況に至った過程はもちろんだが……このオレと小紫――敵対立場に立つ筈のオレ達が想い合っているという事実に親父もさすがに未来である神がみせたものに負けない驚愕の表情をみせてしまった――おそらく彼の人生で一番の驚愕だっただろう……
しばらく騒乱した場だが、やがて落ち着けられた親父はオレ達、特に小紫を興味深そうに凝視する。
「……スサノオがおでんの娘とそういう関係になっているのはそうだが……いや、マジで?……あぁ!いやいや!」
まだ混乱と動揺が収まっていない親父は顔を勢いよく振り、気を取り直してみせる。
「まさか、おでんの娘があの時――あの城から生き伸びて――ここまでにも入り込んできたとはなぁ!!いくらスサノオの力添えがあるといえ……大したもんだ!!」
親父が小紫の活動力に舌を巻いた。
「すまねぇ、カイドウさん。オレとした事が……ちゃんと仕事をしていなかったとは――これでは〝火災〟の名が泣くな……!」
そんな親父にキングさんは自身の不手際を詫びる――そんな彼にオレも声を掛けておく。
「いや、キングさん。あんたの事だ。手抜かりがあったとは思えねぇ――それでも上手く逃げられた河松という奴を褒めなきゃな」
「――それに、今こうして小紫という強者を得られたんだ。それでいいじゃねぇか」
オレのその言葉を親父は否定せずに――声を掛ける。
「あぁ、スサノオ……お前は小紫の正体に気付いていた上でよく招き入れたな?」
その言葉にオレも答える。
「あぁ……王の素質を持ちながらも名前がねぇなんてオレ達に知られたくねぇ身分であるのが分かるからな。それでもそうそうねぇ人材を仲間にしたくてな」
オレの答えを聞いた親父は頷いて獰猛な笑みを浮かべる。
「お前の賭けが上手くいったな……現に新たな強者が生まれた……!」
「……しかし、あの光月おでんの娘という事は――オレ達の喉元に刃を突き付けられる危険性を持つのでは?」
突如キングさんが小紫を置く危険性を口にする。
そんなキングさん、そして親父に説明しようとするオレの服を掴む手があった――小紫だ。彼女はオレに話しかける。
「スサノオさん……ここからは私が話します」
小紫のその言葉にオレが頷くと彼女は親父達に頭を下げ――語り出す。
「カイドウさん、キングさん……この私は――心からスサノオさんの事をお慕いしているのは真でございます」
そう小紫は自身の言葉で語る――オレを想い慕うようになった過程、暴獣海賊団を居場所としてみるようになった事、ワノ国に愛想を尽かした事を――
――そして……その胸中に秘めている野望を――
「私は――スサノオさんを……最強の海賊王にしてみせます!!!!」
「そして――カイドウさん……あなたをスサノオさんが討ち取った際に百獣海賊団を奪い――スサノオさんと共にものにしてみせます!!!!」
「――ワノ国に……綺麗さっぱり滅ぼして、新たな国にしてみせます!!!!それもつまらぬ人間が淘汰され、あなた方のような強者が讃えられる国に!!!!」
「――以上なのが私の野望!!!!」
小紫がある意味、反逆宣言とも受け取れる宣言を覇王色の覇気を放ちながらも堂々と掲げた。
その宣言、何より彼女から溢れ出た猛烈な覇気に疑わし気にしているキングさんもつい気圧されざるを得なかった。
「――カイドウさんとオロチに対しての憎しみは確かに持っています……それを捨て去るつもりもまたありません……」
「しかし!!スサノオさんと暴獣海賊団を支えたいという想いもまた――確かに持っています……!!!」
「すなわち!!少なくともスサノオさんと暴獣海賊団を裏切る事は決してありません!!!」
「ぜひ!!その想いを信じて、この私を置くのを認めて頂きたい!!!」
小紫が堂々とその宣言を掲げ終える。
それから静寂になった――だが、そこに笑い声が響き渡われる。
親父だ。
「ウォロロロロロ!!!面白ぇ!!!違う有り様だが――その覇気!!!その意思!!!――おでんの奴を思い出ずにはいられねぇ……!!!モモの助というガキがあんなのだったから奴は子に恵まれられなかったと思っていたが――違ったようだ!!!」
親父も自身の前でその宣言を堂々と掲げてみせた小紫を率直に称賛した。
その称賛に小紫も微笑み――
「それで――私を認めて下さると?」
その確認に親父も肯定する。
「いいだろう!!!――第一!!ウチの息子が惚れた女をぞんざいに扱いたくねぇしな!!」
その言葉に小紫、そしてオレも笑みを浮かべずにはいられなかった。
「感謝します。私を認めて頂けて……」
「オレも感謝するぜ。小紫を認めてくれて……!」
オレ達の感謝に気を良くした親父も笑みを浮かべる。
「ウォロロロ!!気にするな!!そもそもオレはおでんの奴が嫌いじゃねぇしな!!アイツの娘はもちろんだが、お前のような強くていい女なら大歓迎だ!!!」
そう言い張る親父の目が突如鋭くなる。
「スサノオ!大切にしろよ!!」
親父がオレにそう言葉を掛けておく。
……〝大切にしろよ〟?そりゃもちろん――
「リュドドドド!!言われるでもねぇ!!」
オレが心を込めて放ったその言葉に親父は深く頷く。
「スサノオさん///」
そして、その言葉を放ったオレに小紫が目を潤ませながら凝視する。そんな彼女にオレも笑みを浮かべる。
そんなオレ達に微笑んでいる親父だが
「……あ…あ〜……お前ら!」
突如オレ達の見つめ合いを親父が邪魔してきた。だが、その様子は申し訳なさそうにしていた。
「さっそくで悪ぃんだが――小紫、おでんの娘であるお前だからこそ、やってもらいたい事がある……!」
そんな親父が小紫にそう要求する。それに小紫は――
「はい、何でしょうか?」
凛々しく姿勢を整えていた。実は彼女的にはこのオレに恥じないように振る舞うつもりなのである。
そんな彼女に親父もつい口元を緩ませながら――その指令を下そうとする。
「それはな――……」