ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第8話〝新しい仲間〟

「ほぉーワノ国のとは違う景色だな」

 

「まぁワノ国の文明は独特だからこそ逆に新鮮さがあるだろう」

 

 オレは今――キングさんを護衛に付けてとある島を散歩していた。

 ある程度大きくなったオレはそろそろワノ国の外に出かけるのを過保護的な親父はようやく許可してくれた。ただし護衛付きという条件付きだが――ま!確かにオレは未熟だしな……

 外に出かけるのは航海そして外海の世界を楽しむのもあるが、いずれ海賊としての仕事をやる為、そして「新鬼ヶ島計画」の為に参考になれる地をよく見る事もしなければならないが……

 

「しかし、他の島と同じようで何の特徴もないように見えるな」

 

「まぁ別にナワバリにする価値はねぇな……」

 

 あくまでここは航海の休憩として寄っただけで別に何の思い入れもない。故に休んだ後にさっさと出かけようと考えている……ん?

 何やらオレ達の近くに騒ぎがあるようだ。しかも……ただの騒ぎではないようだ。

 

「何だ?何の騒ぎだ?……行ってみるか」

 

「あ、お坊ちゃま!」

 

          ●

 

 オレ――ギルド・テゾーロは今、絶望の淵に立たされている。

 何せ最愛の女性、ステラを〝世界貴族〟――天竜人に奪われようとしていた。

 彼女とは危うく人買いに連れて行かれそうになるも辛く逃げ切り、人間屋まで行き着くところで出会った。

 オレは12歳で裏社会の世界に入り込んで、盗んだ金で不良とつるみギャンブルと酒とケンカに明け暮れる毎日を送ってきたどうしようもない男だ。

 その一方で彼女は父親のギャンブル狂いで人買いに売られたが、決してめげようとはせず「いつか私は買われちゃうけれど、心までは買われはしないわ」と気丈な態度を崩さない気高い女性だ。

 そんな彼女が悪評を知りながらもオレに微笑んでくれた、歌をも褒めてくれた……おそらく人生で1度きりの恋を彼女にした。

 恋をしたステラを自由にしたくて、彼女が嫌いな悪事で金を稼ぐ事はせずに、昼夜を問わずに真っ当な方法で働き続けて、あと少しで彼女を買い取れる金額までに稼げていたのに……

 

『気に入ったんだえ〜彼女を買うえ〜』

 

 突然町に現れた天竜人がステラを――いとも簡単に買い取ってしまった。

 当然納得できないオレは天竜人を殴ろうとしたが、天竜人付きのSPに呆気なく取り押さえられてしまった。

 チクショウ……オレはあの腹立たしい天竜人を殴る事さえできないのか!!

 自身の無力さに絶望するオレにステラは声を掛けてくれた。

 

「ありがとう。あなたが私の為に一生懸命働いてくれた事が何よりも嬉しかった。私は世界で一番の幸せ者」

 

「――私は心から幸せだった」

 

 そんな、そんな事を言わないでくれ。あの悪名高い天竜人に買われてしまったんだぞ。

 これから死さえ救いになれる程の苦しみを味わう事になってしまうのに幸せな筈がない。オレなんかの為に嘘を言わないでくれ……

 微笑んでいるステラがオレの前から遠いでしまう……最愛の女性が闇に囚われてしまう……

 

「う、うお、おぉお……」

 

 チクショウ……金を払えば助かった筈の親父といい、この世に救いはないのか!希望はないのか!

 

「ウオオォオ〜〜〜〜〜!!!」

 

 オレは世界の理不尽さに心から泣き叫んだ。

 その瞬間

 ステラを引っ張っていく天竜人が突然吹っ飛ばされていた。

 

「……は?」

 

 オレと自身を取り押さえているSPが吹っ飛ばされていた事で自由になったオレは状況を把握しようと周りを見渡ろうとすると――

 

「…」

 

「な、な!?」

 

 何やら背中から翼が生えてて炎を背負っている黒ずくめの大男が立っていた。

 

「あ、あんたは……?」

 

「……フン、お坊ちゃまの慈悲に感謝する事だな……」

 

 鼻を鳴らす大男はオレの後ろに視線を移す。後ろに何かがあるのに心当たりがあるオレは

 

「っ…ステラ!」

 

 同じく視線を移すと呆然としているステラに手を差し出す少年がいた。

 

「大丈夫か?あんた?」

 

「え、えぇ…」

 

 少年の手を借りて立ち上がるステラに少年はハッとする。

 

「あ!その首輪を外さなきゃ!」

 

「え?あ、これは……」

 

「少し頭を下げて」

 

 少年の言葉に従って頭を下げるステラ。少年は彼女の首を縛る首輪に手掛ける。

 

「あの、これは……」

 

「フン!」

 

 なんと少年は首輪を力ずくで外した。これでステラの首は自由になった。

 

「…」

 

 オレはその光景を信じられぬ思いで見つめる。

 

「さて!この島を出よう!あんたも…そこの男も!行こう!」

 

「フーッ…行くぞ」

 

「「え、は、はい」」

 

 そうしてオレとステラは少年と大男に連れ込まれて船に乗せられて、島を出た――

 

「……じゃなくて!いいのか⁉あんたら!?」

 

「?何の事?」

 

「チッ…うるせぇな…」

 

 しばらく呆然としていたオレだが、正気に戻って状況を把握するとそのヤバさを少年と大男は理解しているのかと大声を上げた。

 

「あんたらが吹っ飛ばしたのは天竜人だぞ!」

 

「これで一生海軍に追われるぞ!あんたら!」

 

「…あぁ、なら無問題。だってオレ達は海賊だからな」

 

「所詮豚共の飼い犬等、オレ達の敵じゃねぇ……」

 

「…えぇ〜〜⁉」

 

「!…海賊…」

 

 少年と大男の即答にオレは目を真ん丸にして驚愕し、ステラは彼らの正体に眉を顰めた。

 

「そういうあんたらはこれからどうするつもりなんだ?」

 

「!それは……」

 

 そうだ、むしろ心配するのはオレ達の身だ。何せ天竜人に逆らった……これから過酷な人生になるだろう……どうしたら。

 今後に悩むオレに少年は声掛ける。

 

「行く当てがないなら……百獣海賊団に入る?」

 

「!…しかし」

 

 確かにそういうのもありかもしれないが……

 オレはチラリとステラに視線を移す。

 何せ悪事を嫌う彼女だ、海賊である彼らを嫌悪しているだろう…しかし反対するかもしれない。

 オレのそんな考えを見透いたのかステラが言い出す。

 

「あなたが好きにして。テゾーロ」

 

「!だが…」

 

「分かってるわ。でも彼らに助けられた身よ。偉そうな事は言えないわ…」

 

「ステラ…」

 

「ただ、約束して。どのような道を歩もうとしても心を失わないで…」

 

「…あぁ、誓おう。君に」

 

 熱い視線を互いに投げ合うオレ達に少年は躊躇そうに言う。

 

「あの〜別に海賊になれとは言わない。望むなら料理番とか医療班とかに入れてもいいよ?」

 

「「⁉」」

 

 オレ達の様子に何かを察した少年はなんと海賊以外の道を用意してくれた。

 野蛮的だとイメージされている海賊にしては話が分かってくれる、そして気を遣ってくれている人達だ。

 なんとまぁ気持ちが良い少年だ。だが、だからこそ――

 

「いや、気遣いは感謝するよ。しかし、だからこそオレは海賊になって恩を返したい」

 

「…いいのか?」

 

「あぁ、真っ当に生きても愛する人を奪われるくらいなら、海賊になる方がましだというのもある。それに海賊の方が彼女を守りやすいだろうし」

 

 そう宣言するオレに続いてステラも宣言する。

 

「私は――海賊にならないけど、何の形で働いてあなた達に貢献したいです」

 

「――うん、分かったよ。歓迎するよ!ようこそ――百獣海賊団へ!」

 

「「はい」」

 

「オレはスサノオ。こちらはキングさん…これからは彼が説明するよ」

 

「フン…来い」

 

 そう言う大男――キングさんについてオレ達は歩く。

 

 ――そういえば……

 

「キングさん、なぜオレ達を助けよう……?」

 

「……そこの女が豚に連れられかけても気品さを失わないのとお前が豚に殴りかかっていたのをお坊ちゃまが気に入ってな……オレは彼の意思に従うまでだ」

 

 オレの疑問に対してキングさんがそう答えた――

 スサノオさん……!オレは何があろうとも――あなたに忠誠を誓いましょう!

 その答えを聞いたオレはそう決意した。チラリとステラを見ると彼女も同じ気持ちだったようだ。

 

「ステラ……あの少年の慈悲に命懸けて報いていこう!もちろん海賊になっちゃったけど、心を失わずに生きていこう!!」

 

「えぇ―えぇ!!私も!恩に報いて―世界に負けずに生きましょう!!」

 

 

――こうして〝ギルド・テゾーロ〟とその最愛の女性〝ステラ〟が揃って百獣海賊団に加入した。

そして彼は百獣海賊団のある丸々の大男と出会い、エンターテイナーとしてのライバルとして対立し合う事になるのは別の話……

 

          ●

 

しばらく時が経ち――

 

「親父!これが……」

 

「うわぁ…」

 

「ウォロロロ!驚いたか!そう!こいつらが……」

 

 オレとヤマトがあるものを見上げて感嘆してしまう。親父も自慢気にする。

 そのあるものとは――

 

「イビビ……!」

 

「ジュキキ……!」

 

 巨大な鬼であった。それも10名。

 

「古代巨人族だ!…の失敗作だがな」

 

「でもすごくでけぇ!!」

 

「世界にこんなに大きい人間がいたの⁉」

 

「ウォロロロ……まぁ〝いた〟さ!」

 

 ヤマトの言葉に親父は何か含みのある言い方で言葉を投げつけた。

 その言葉に引っかかりを感じるも一瞬、別の疑問が出てきた。

 

「〝古代巨人族〟って…?話に聞いた巨人族とは違うの?」

 

「ウォロロロ…おう、そこからか」

 

 オレの疑問にニャリとする親父は話し出す。

 

「実はな…古代巨人族についてよく分からない事が多いんだ。大体、遥か昔には巨人よりデカい巨人がそれなりにいたという古代巨人族ぐらいだ。昔の巨人族は元々今のよりさらにデカかったという、または巨人族の突然変異だという噂もあったな」

 

「「へぇ〜」」

 

 古代巨人族そして巨人族の謎、神秘についつい興味を持つオレ達。

 そんなオレ達を見て微笑む親父は話を続ける。

 

「それはそうとして…古代巨人族といえば〝魔人〟オーズが有名だな」

 

「オーズ?」

 

「今で情報がはっきりしている古代巨人の事だ。そいつはなんと島そのものを動かし、国を作り上げたんだ。それもあって〝国引きオーズ〟の異名を持っているんだ」

 

「島そのものを⁉」

 

「わーすごい!!」

 

「ウォロロロロ!!」

 

「つまり…欲しい島をここへこの人達に動かせられるのか!?」

 

「ウォロロロ!まぁ、そうするのもいいかもな!!」

 

 古代巨人オーズの伝説にオレ達は興奮して、親父も高笑いする。オレは親父に声掛ける。

 

「それはそうとして…この人達はそのオーズの子孫なの!?」

 

「…あ〜こいつらはな」

 

 ついに親父は彼らに触れて説明する。

 

「政府の奴が「人の巨大化」研究をやっていてな。それで古代巨人族が作り出されてやがった。一見完成かと思ったが……」

 

「フガガ……!」

 

「くにゅにゅ!」

 

「見ての通り、知能が低い事が分かってな…失敗作とみられちまった」 

 

「廃棄されようとしていたところをたまたまオレが知ってな、買い取って来た」

 

 親父の説明にオレ達は目をキラキラさせる。

 

「つまり、親父が古代巨人族を助けてあげたんだ!」

 

「お父ちゃん、すごい!!」

 

「ウォロロ…まぁな」

 

 オレ達の態度に苦笑する親父はこの場にいる巨人達の事を紹介する。

 

「こいつは一美」

 

 そう呟く親父は曲がった髭を生やした巨男を指差す。

 

「イビ!」

 

 

「それでこいつは二牙」

 

 続いて親父は大きい顎の形をした巨男を指差す。

 

「フガ!」

 

 

「三鬼」

 

 おかめのような顔をした太った巨男を指差す。

 

「ザキ!」

 

 

「四鬼」

 

 ピンク色の肌で背が低めで太っている巨男を指差す。

 

「ジャキ!」

 

 

「五鬼」

 

 背が高く長い首と背中全体に黒い毛が茂っており、同じく長い牙と角、緑色の肌を持つ巨男を指差す。

 

「ゴキ!」

 

 

「六鬼」

 

 丸っこい中年男性のような巨男を指差す。

 

「ロキ!」

 

 

「七鬼」

 

 緑色のパンチパーマで顔の輪郭全体が覆われている巨男を指差す。

 

「ナギ!」

 

 

「八茶」

 

 丸いサングラスをかけ、頭に二本の角があるキノコのような髪型の巨男を指差す。

 

「ハチャ!」

 

 

「九忍」

 

 おかっぱ頭に二本の角とゴーグルが付いたヘルメットを被っているビキニ姿の巨女を指差す。

 

「くにゅ!」

 

 

「十鬼」

 

 トカゲのような顔つきで左右に分かれた二本の黒い角が生えて紫色の肌を持つ巨男を指差す。

 

「ジュキ!」

 

「こいつらを「ナンバーズ」と呼ぶ。こいつらはここ鬼ヶ島はもちろんナワバリの護衛を任せようと思っている」

 

「あぁ、こいつらが暴れる可能性だが――ここに来た時は暴れようとしやがってな…躾をしておいた。心配はねぇぞ」

 

 そう言って説明を締める親父。

 そして親父の説明を聞いてたのか聞いていなかったのかオレ達は目をキラキラとしていた。

 

「カッコイイな!デカいのはもちろんだが!牙とか!」

 

「うんうん!ねーあの九忍の頭に登っていい?」

 

「おう!ウォロロ…おい!九忍!ヤマトを頭に登らせてやれ!スサノオは…一美!頭に登らせてやれ!」

 

「くにゅにゅ〜♪」

 

「イビビビ……!」

 

 親父の命に顔を縦に振った一美と九忍はまず手をオレ達が乗るように差し出す。

 その手にオレ達が楽々と乗ったら、一美と九忍はその手を頭上に近づける。

 ヤマトは九忍の頭上に足を踏み入れ、オレは一美の頭上に足を踏み入れた。

 

「あははは!これが古代巨人族の目線か!!」

 

「すごいすごい!」

 

「イビビ……!」

 

「くにゅにゅ〜♪」

 

 オレ達は古代巨人族の高い目線に興奮していた。オレ達の興奮につれて一美も九忍もナンバーズも笑っていた。その様子を見て親父も笑った。

 

「これからもよろしくな!!ナンバーズ!!」

 

「うん!よろしくね!」

 

「フガガ……!」

 

「ジュキキ……!」

 

 

――こうして世界政府の「人の巨大化」研究により作り出された古代巨人族の失敗作――「ナンバーズ」が百獣海賊団の新たな戦力として加入してきた。

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