――ワノ国はある男の影響で森と川等といった自然を少しずつ取り戻しているが、まだまだ荒地が存在している。
その中で最も広大な荒地。そこには――何やら数人が留まっていた。
「ウォロロロロ!!ソイツらが――」
その中から歓声を上げているのが――親父だった。
彼は上機嫌だった。それもその筈。
「リュドドド!!そう!コイツらこそが――」
そんな彼にオレも堂々と言い張りながら後ろを見上げる。そこには――
「ばぁい゛、ラウフェイでず……」
「ゔん゛、メニヤでずぅ……」
――2人の巨大な鬼がいた。
名はラウフェイとメニヤ――かつてのソード王国「巨神兵」、古代巨人族関連の研究の実験体であった者達だ。
彼らはオレ達についていくのを決意して以来、その航海で親交を深めていった。その成果なのか、ある程度の礼儀を身に付けられた2人は親父に謹んで挨拶できていた。
その姿に親父も感心せざるを得なかった。
「ウォロロロ……コイツらは使えるな。これならコイツらをまとめられるだろうな!」
その様子から察した2人の能力ならばある隊を率いられるだろうと親父も後ろを見上げる。それにつられてオレはもちろん、ラウフェイ達も興味深く見る。そう――
「イビ?」
「ジュキ?」
――自身達と似たような存在、「ナンバーズ」を……
ラウフェイとメニヤの2人を仲間として迎え入れた以上、同じ古代巨人族の実験体である「ナンバーズ」と顔を合わせるのが道理である。
ラウフェイ達は初めて見るが、相手も自身と同じような存在である故に互いに相手に興味を持っていた。
「リュドドド……やはり、興味を持ったな」
その様子にオレもニャリとし、親父も頷く。
「お前達!新入りだ!迎え入れてやれ!」
その指令に「ナンバーズ」がどよめき、その場が騒がしくなる。
「ナンバーズ」からの興味がますます増し、ラウフェイとメニヤも羞恥を覚えたのか、もじもじしてしまう。その様子にオレ達も微笑む。だが――
「ん?」
ふと「ナンバーズ」の様子に異変を感じたオレは視線を向けると――
「フガフガ!」
「くにゅ!」
彼らがオレ達に何かを訴えていた。その意図にオレも勘付き
「……ラウフェイとメニヤに挑戦したいのか?」
「ザキ!」
「ナギ!」
そう確認してみたが、その内容に「ナンバーズ」も一気に頷く。
同じすような存在といえ、新たに迎え入れられるのならば――まず、その強さを試みずにはいられない。彼らは本能的にそう感じていた。さすがは古代巨人族だといえるだろう。
その姿勢にオレは苦笑し、親父も機嫌よく笑う。
「ウォロロロ!!いい戦意だ!!なら――心いっぱいやれ!!」
「リュドドド……ラウフェイ、メニヤ。やれるな?」
親父がその意思を認め、彼らを鼓舞する一方でオレは2人にそう確認してみる。その内容、そして「ナンバーズ」の戦意に2人は――
「ばい゛!や゛れ゛ま゛ず!」
「よ゛ぉじ!」
――積極的だった。
彼らは仮に実験体といえ古代巨人族である上にソード王国の戦力だったのだ。その血が騒がずにはいられないのだろう。
その意思を確認できたオレも彼らの対戦を認めた。
そうして――ラウフェイとメニヤ、「ナンバーズ」の決闘が今ここに勃発された。
「よ゛ぉぉじぃ……や゛る゛がぁ」
「ゔん゛!」
「イビビ……」
「ジュキキ……」
自身の戦意を高揚させながら対峙している2人と「ナンバーズ」をオレ達も凝視する。そして
「――始めぇ!!」
その合図に彼らは雄叫びを上げながら強烈な勢いで駆け始めた。
●
「「バババ!!」」
「イビビビ!!」
「ジュキキキ!!」
――ラウフェイとメニヤ、「ナンバーズ」は……和気藹々と笑い合っていた。
実はさっきラウフェイとメニヤの2人に挑戦してみせた「ナンバーズ」だが――返り討ちにされていたのだ。
そもそも、その2人は「ナンバーズ」と比べたらある程度の知能、何より――〝人造悪魔の実〟の能力を持っているのだ。故に――敗れても無理もない「ナンバーズ」だが……それ程の強さを持つ2人を深く認め、受け入れられたのだ。
その為に今12人の巨大な鬼が全員活発に笑い合っている景色にオレ達も笑みを浮かべる。
「リュドドド!やはり何とかなったな!」
「ウォロロロ……全くだ」
物事が順調に進められたとオレ達は頷き合い――
「――改めて、「ナンバーズ」!ラウフェイとメニヤにお前達のリーダーをやってもらうが、いいな!?」
親父が「ナンバーズ」に対してそう指令すると――
「イビビ!!」
「ジュキキ!!」
彼らも異議がないかのように雄叫びを上げた。その姿勢に親父もする。そしてオレも
「ラウフェイ!メニヤ!お前らが「ナンバーズ」を率いるんだ!!」
そう宣すると2人も頷く。
「お゛ゔ!オレ達がや゛る゛ん゛だ!」
百獣海賊団「ナンバーズ」隊長
ラウフェイ
「ゔん゛!」
百獣海賊団「ナンバーズ」副隊長
メニヤ
新しい仲間ができただけでなく、彼らを率いる事になった2人はその事に気持ちを一新する――
――こうして百獣海賊団「ナンバーズ」は新顔を迎え入れた事で強化されていった……
●
ワノ国のある森には少しした集会が開催されている。それが――
「ガルチュー!!」
「ガルチュー!!――おぉ!!ゆガラ達は!!」
――〝ミンク族〟の集会であった。
百獣海賊団によりワノ国に強引に連行された彼らだが、集会を開催するのを許可されていたのだ。
故に今も開かれていたのだが、今回は特別だった。何せ――
「よくぞ出てくれた!!」
「元気そうで何より!!」
「……ご心配をおかけしたようだ」
「すまなかったな」
――イヌアラシとネコマムシが参加していたからだ。
彼らは今まで収監されていた「兎丼」の牢から出てこれたのを〝ミンク族〟は喜び、歓迎した。
小紫に仕える形で百獣海賊団配下に身を置いた2人は小紫の計らいで〝ミンク族〟と顔を合わせられたのだ。
歓迎してくれている〝ミンク族〟の様子に2人の固い顔が微かに緩んでいった。
実は彼らは〝ミンク族〟がひどい扱いを受けているのではと懸念していたので一見元気そうな姿に一応安堵できたのだ。
和気藹々な場にその声が響かれる。
「挨拶は済んだようだし……宴を始めよう」
――それはワノ国に住んでいる〝ミンク族〟のまとめ役を務めている羊のミンク、ひつギスカンである。彼は今回の集会をも取り切っているのだ。
「そうですね!宴を始めましょう!」
「「「おぉ」」」
そうして――宴が開始された。
そのまま〝ミンク族〟が思いのままに楽しんでいる中でひつギスカンとイヌアラシとネコマムシは議論をしていた。
「――では、やはり百獣海賊団に服従するんだな」
「……はい、そして我らはあなたの後釜にいずれ就く時の為に今のゆガラ達との関わりを持つようにとの事です」
「そうやき、あとまだ「兎丼」に収監されちゅうもんに対しての勧誘も行うようにとおっしゃられた……」
その確認にイヌアラシとネコマムシも頷き、そして小紫から任された役割を説明する。その内容にひつギスカンは眉をひそめる。
「……ゆガラ達も反逆するつもりがないんだな」
「……まぁ、今の我らにはそんな資格がないので」
「…」
その言葉に2人は揃って瞼を閉じる――彼らは小紫――光月日和に仕える為といえ、光月おでんへの忠誠を捨て百獣海賊団配下に身を置くのを決意した身だ。
それに……かつての同胞だったアシュラ童子が小紫に粛清されるのを止めずに見殺してしまった身だ。もはや何かをしても――何にもならない。
そう考えてしまう2人だが、ふと〝ミンク族〟を見渡す――彼らは楽しくやっているように見受けられている――国を滅ぼされ、強引に連行されてきたのにだ。
「……楽しそうだな。妙な事に」
「あぁ、わしも気になった――どうしてだ?」
その状況に2人がもっともな疑問を抱いているのにひつギスカンは口を開けようとする。
「あぁ、それは「牙を抜かれてしまったからですね」……!」
だが、それを遮って声が響かれた。それに皆が一気に視線を向けると――
「!ペドロ……」
――ペドロがいたのだ。
実は〝ミンク族〟の集会に百獣海賊団配下の者達も参加していたのだ。
それはとにかく、少し悩ましい表情を浮かべているペドロはイヌアラシとネコマムシに話し始める。
――最初こそ百獣海賊団に反感を覚えていた〝ミンク族〟だが……〝住まば都〟といったものだ。
最初に要求を拒否してしまった影響で制限を強いられたが、それでも意外に悪くはない生活を送るようになっていた。
しかも、爪を隠すように〝ミンク族〟が大人しくするとその姿勢につられて制限も少しずつ緩まれていった。
さらに〝ミンク族〟をぞんざいに扱う事はなく公平にされていた。もちろん、反抗的な者に対しては容赦していなかったが……国にいた時と同じ、しかもワノ国発展の恩恵を受ける事でさらに良くなっている境遇に持っていた反抗心も少しずつ弱まっていってしまった。
そんなところに――ワノ国に連行されてから生まれた子供達の存在が拍車を掛けてしまった。
「オレ達はとにかく――あの子達はここで笑いながらやっています」
重々しくそう言うペドロの視線先には――幼いミンクの子供達が遊び回っていた。その顔は明るく晴れていた――その笑みにペドロは微笑むが……少し苦悩を感じさせていた。
「あの子達の影響でここに住むのを受け入れる者が増えてきています」
「何せ、ここでは下手をすればモコモ公国より良い暮らしができるから」
「そんな暮らしを捨ててまで百獣海賊団に戦いを挑んで、ゾウに戻ろうとは思えなくなってしまったという……」
広がっていくその考えにペドロも――一理はあると考えてしまう。
「……だが、何より――」
「――ああいう子達の笑みを犠牲にしてまでやりたいとは思えない!!!」
「「…」」
ペドロがそう言い捨てるのにイヌアラシとネコマムシは何とも言えない表情を浮かべていた。しばらく気まずい雰囲気が漂う――が
「ぺどろ〜!」
「ん!」
その呼びかけにペドロは素早く微笑む。そんな彼に駆けてきた子供がいた。
それは全員が白い綿毛に覆われて髪色は明るい金髪でウサギ特有の長い耳が特徴な女の子――そう、ウサギのミンクだ。
その子が明るく笑いながらペドロに駆け寄る。
「どうしたの〜?」
「あぁ、この人達と話していてな」
その子にペドロが微笑みながらそう説明するとその子がイヌアラシとネコマムシに視線を向ける。そんな子に2人はすぐ微笑む。
ネコマムシがその子に腰をかがめて
「名前は何かぇ?」
その問いかけにその子は元気に答える。
「きゃろっと!」
「そうかそうか、いい名じゃ〜」
「うむ、元気でよろしい」
元気に笑うキャロットに2人も心が安らぐ。
そしてキャロットはペドロの手を引いて――遊びに戻っていった。その姿にイヌアラシとネコマムシは微笑み続けるも――その目は悩ましかった。
「……ワノ国もそうだが――〝ミンク族〟の有り様も変わりざるを得なくなってしまったな……!」
「……確かにな」
――百獣海賊団に恨みを抱く筈の〝ミンク族〟には異変が起こっていた……
●
ワノ国 スケープ
そこは「科学」を司る郷で、その役割に応える為の建物が多く建てられているが……その中の1棟――の中のある部屋にはある者がいた。それが――
「……あ〜ぁ、寝てばかりで退屈だ」
――ジニーであった。
彼女は自然光を浴びた皮膚が青い石のように固まり、やがて全身の皮膚が青く石化していく容態になっている為に自然光が届かない部屋で安静していた。
そんな彼女の治療をクイーンが請け負っているが、まずその病――〝青玉鱗〟は彼にも初めて見た未知のものだった。故にその分析に時間がかかる事にならざるを得なくなった。
その為に〝珀鉛病〟を克服した時のやり方をまだ実行できない状態だ。といえ、成果が全くない訳ではない。
ジニーの身体を蝕んでいる〝青玉鱗〟の進行は――一旦ストップできた。これで時間を稼げるだろう。そして彼女の調子もまた一応落ち着けていた。
ただ、元々活発な彼女は寝込む生活に気分が沈まざるを得なかった。
「……まぁ、死ぬしかないと思っていた私がこうやって生き永らえられているから、贅沢は言えないよね〜」
だが、最初は絶望的だった自身の命が予想を裏切って永らえているという事実から彼女はそう思い直した。そして
「こうなったのもあなたのおかげだよ……ステラ」
ジニーがそう感謝を告げたのが――ステラだった。その礼に微笑む彼女だが、率直に受け取ろうとしない。
「感謝するのはまだよ、ジニー。それは病が治ってからよ」
「……ふふっ、それもそうだ」
その忠言にジニーも可笑しそうに笑う。
最初に治療を拒否していたジニーをステラが説得するのをきっかけにこの2人はすっかり親友だという程に仲良くなっていた。そして、その2人を何より繋がらせているのが――
「〜♪」
「ぎゃぎゃ」
ジニーが寝込んでいるヘッドの身近には――彼女達の子供達がいた。ステラの息子、3歳になったノヴァがジニーの娘ボニーに対して歌ってあげていた。
その内容はまだ未熟さがみられているものの、声質は素晴らしかった。故にボニーも笑っていた。そんな姿に母達もほっこりしていた。
「……ノヴァ君はすごいね〜歌もきれいで……ボニーも感動しているし」
「当然よ。私とテゾーロの息子だからね」
ジニーがノヴァを褒め立てるとステラも誇らしげにする。その姿にジニーも笑う――しかし、どこか影がかかっていた。
「いいよね……ウチとは違うな」
そう呟くジニーはボニーを凝視する。だが、その時の彼女の表情には――苦痛があった……
――ジニーは一体、何を苦悩しているのかというと……
「(――あの子の父親は……それに今の私は……)」
愛しく思っているボニー――を取り巻いている境遇、そして今の自身の容態にジニーは激しい苦痛を感じずにはいられなかった。
「(――身体を汚されてしまった今の私じゃ……あの人に顔を合わせたくない……!)」
だからこそ、あれ程に会いたいと思っていた彼にジニーは今ではもはや連絡付けようと思えなくなってしまったのだ。
今も感じている苦悩に俯いてしまうジニーの姿にステラは真剣な表情を浮かべる。
「……ジニー」
「!」
「……あなたの苦しみは――私が理解してあげる――とは言えない……」
「……でも、あなたが想っている〝くま〟は――今のあなたを癒せない人なの……?」
「!」
ステラが真剣にそう言うとジニーもハッとする。そんな彼女にステラは続けてみる。
「……あなたがその人に会うのが怖いらしいけど――」
「……このままだと――あなたも〝くま〟も救われられなくなるんじゃない?」
「……!」
その言葉にジニーが目を見開く。そしてステラは優しく微笑みながら――言う。
「今は怖くても――いざ、愛しい人と会ってみると不思議な事に幸せな気持ちになれるのよ……!」
「そういう経験をした私からのアドバイスよ」
ステラがそう言い締めるとジニーは目を見開き――やがて心のわだかまりがとれたかのように明るく笑うようになる。
「……そうだ。そうなんだよ!」
口を開き始めるジニーの顔は――晴れ晴れしい。
「そうだな!私は生きて――くまちーと会い、ボニーと3人で生きるんだ!」
「そうこなくちゃ!」
決意を新たにするジニーにステラも喜ばしそうにする。そんな母達の姿に子達――ノヴァは首を傾げていて、しかしボニーは笑う……
「…」
――そして、そんな部屋……の外に留まっている者がいた。それが――
「……お父様、お母様、お兄様」
――12歳になったトラファルガー・ラミであった。
彼女は正確には違うが、〝珀鉛病〟と似たような病にかかっているジニーの事が気にかかっていた為にその様子見に来ていたのだ。
そして、密かに見ていたジニー達の姿勢にラミは失った家族を思い浮かべ、涙を流してしまった。
「……うん!」
だが、気を引き締めた彼女は前に進めようと歩く――