夕日が沈まれようとする時に〝サンモン〟は――突如何者かの攻撃を受けようとしていた。
「せ、攻められている!?」
「!――慌てずに避難だ!!」
「海賊か!?」
その不測の事態に〝サンモン〟の民達が慌ててしまうものの、すぐある程度の落ち着きを持ち直し――避難を開始する。
そんな中に海賊かとの声も出てきたが……
「!!……いや!多分だが――海賊じゃない!!」
「あぁ!!あの艦隊にはドクロマークの旗を立てていない上に海賊にしてはどこか礼儀正しい体勢を整えてやがる!!」
その声に対して他方から異論を唱えられた。
その意見通り、まず攻撃を仕掛けてきている艦隊――にはドクロマークの旗が掲げられていない。
そして、その艦隊から〝サンモン〟に兵達が上陸してきているが、その姿勢は思いのままに暴れる海賊とは思えない程に礼儀正しい動きをしている上に布陣を整えられていた――まるで軍のように。
その事からどうやら今回の侵略者は海賊ではないようだ――たが、いずれにせよ今〝サンモン〟が攻撃を受けているのは確かだ。
故に民達は自身達の身を第一として行動しなければならない――それに今までのように今回のも海軍が何とかしてくれる筈だと――
そう信じる民達はそれならば、自身達は自身でできる事を果たそうと動き回っていく……
●
海軍Gー3基地――
そこでは〝サンモン〟が突如の攻撃を受けているという事態に海兵達が慌ただしく動き回っていた。
「――慌てるなぁ!!貴様ら!!まずは火が上がっているところに急げ!!そこに敵がいる筈だ!!」
「――すぐ艦隊を組んで、敵艦隊にも対処しろ!!」
「民達の避難を支援するんだ!!そして、避難所に着いたケガ人を治療するんだ!!」
といえ、さすが〝サンモン〟の平和を預かっているだけはあって海兵達は不測の事態に対して冷静に対応しようと動いている。
そんな中でのある一室は――
「ば、バカな……!?」
「ど、どうしてアイツらが……!?」
――スサノオとぶつかりかけながらも基地に駆けていたあの子供達がいた。
ただ、彼らはその部屋の窓から目視できる〝サンモン〟に攻撃を仕掛けてきた艦隊の存在に驚愕し、動揺していた。
どうやら、その艦隊の事を知っているようで――だからこそ今起こっている事態に衝撃を受けている子供達の様子にその近くに立っている大人も声を掛けざるを得なかった。
その大人……顔の左側の生え際から頬にかけて大きな傷跡があるオールバックの渋い男性。
彼はマサムネ。海軍Gー3基地長である海軍本部中将なのだ。
そんな彼は実はついさっきまでは子供達に対しての事態聴取を行っていたばかりである。
仮にも基地長が子供達に話を聞く義務がない筈だが、突如基地を訪れてきた訳アリに見受けられる子供達の報告を受けたマサムネはその由々しさを感じ取り、その為に自ら行う事にしたのだ。
そうしてマサムネは子供達に事情聴取をした事でその身分、事情を知る事ができた。
だが、まだ事情聴取を終えていないにも関わらずに突如今の事態が発生してしまったのだ。
海軍Gー3基地長としてマサムネは断固たる態度で子供達に容赦なく情報を求める。
「……今の君達の態度から、アレこそがそうなのかね?」
その言葉、何よりごまかしを許さぬ姿勢に子供達はしばらく俯き――そしてその中の1人、リーダー格らしき銀髪細身の少年が怯まずにハッキリ答える。
「はい。アレこそが――〝バシレウス〟です」
バシレウス――
それは4つの非加盟国から発足された連合の事を指す。
「世界政府」に加盟していない国は海軍の管轄外にあたる為に守ってもらえず、海賊等によって無法地帯と化してしまうのが普通だが……
どうやら、その連合は非加盟国にしては強大な力を持っているらしく、それによって海賊等の蹂躙を跳ねのけ、平和を築いているようだ。
ただ、元々4つの違う国々の集まりだ。そういう組織構成では足並みを揃えるのが極めて難しい筈だ。
にも関わらずに上手くやっていけるのは――その〝バシレウス〟に所属する人間の精神構造が関係しているらしい。
例え、どこのどのような者だろうが――〝バシレウス〟の為に行動するなら、その者を仲間として受け入れられるそうだ。その在り方に〝バシレウス〟の者達は疑問を抱かずに生きてきたらしい――まるで信奉のように……
そして、そんな〝バシレウス〟の体制もまた独特だった。
まず4つの国からそれぞれリーダーが選ばれ、そこから評議会を構成される。そして古き評議会から選ばれた議長と新たな評議会が〝バシレウス〟を指導する仕組みになっているのだ。
「――その議長がもう老齢で、しかも病に伏されているんです」
「それで――次の議長の座に就く為に評議会メンバー達がそれぞれ大きな功績を挙げようと行動しています!」
リーダー格少年はその〝バシレウス〟関連の仔細をマサムネに対して惜しげもなく実に細かく説明した。
その説明を受けた彼はその詳細さにむしろ心に引っかかってしまう。
「……実に細かく説明するな」
マサムネがそう指摘するとそれが分かっていたかのように少年――否、子供達は自身達に関しても懸命に説明し始める。
「――確かに私達はその〝バシレウス〟の兵士候補生だったんですが……!」
「――でも!そんなところに僕達は嫌気が差して、それで逃げてきたんです!」
「――そして!僕達はあなた達を信じて、ここまで来ました!!」
子供達が懸命にそう説明する――そんな中で黒髪でつり目な少年が口を開く。
「……オレ達がここまでの情報を提供したんだ。その見返りとしてオレ達の待遇についても一考してほしい」
その要求、そして子供達の身分と事情を先んじて聞いたマサムネも改めて納得する。
「……だが、アレは君達を追ってきた――果たしてそう考えるべきなのか……?」
そして〝バシレウス〟の攻撃の目的に関して彼はとりあえずそう見当をつけてみる。
今身を置かれている状況からそう考えても無理ではないかもしれないが……子供達からの情報からマサムネ自身もその可能性は低いだろうなと考えていた。そして、それを証明するかのように。
「はい!違うと思います!」
「そうだよ!僕達を追ってここを攻める訳がないよ!!そんなの――十分な功績にもならないよ!!」
子供達がそう否定してきた――そうなのだ。議長の座に就く為に誰もが文句を言えない程の功績を挙げなければならない状況下でたかが脱走した子供達を追う余裕があるとは思えなかった。
その意見に同じく考えているマサムネも率直に受け入れた。
「……確かに今の〝バシレウス〟の状況を考えれば、君達に余裕がないのはそりゃそうだろう――君達の情報が真実であればだが……」
そう言うマサムネだが、引き続きその可能性をも口にする。残念ながらあり得るその可能性に子供達も何も言えなくなる。だが
「……僕達の情報を信じるのが難しいのは理解できますが――今はそう言うしかありません!!」
「そうだよ!!信じて!!」
それでも言い張るしかない――そんな子供達の姿勢にマサムネもつい口をつぐむ。
「……うむ――目的は別にあって、君達はおそらくついでだろう」
そして考え得る可能性を口にしてみたマサムネはしばらく思案に耽るが――
「……もしや」
心当たりがあるのか冷静だった彼も目を見開く――
●
〝サンモン〟のあちこちでは〝バシレウス〟の艦隊から飛ばされた砲弾により損害され、そこから火が上がってしまっていた――そこにいた人々はその何から逃されようと避難しているが……逃げ遅れている者達もいた。
「はぁはぁ……お姉ちゃん……!」
「!――急いで逃げるよ!」
走っているものの、その速さが遅くなっている幼い女の子をその姉がなんとか急がせようとするが……
「「!!」」
そこに〝バシレウス〟の兵士が現れてしまった。
「…」
その者は目下の姉妹に対しては別に何も感じていないのか無表情で――そして銃を構えていた……
「「あ、あ…ぁ……」」
その姿勢に恐怖せずにはいられなかった姉妹に対して兵士は構わずに銃の引き金を引こうとする――まるで淡々と仕事するかのように。
哀れな姉妹はその命をあっけなく散られる――かと思われたら
「!!」
突如その兵士が勢いよく吹っ飛ばされていった。
「「!?」」
その出来事に恐怖もどこかに飛ばされ呆然とした姉妹の前には――金棒を大きく掲げた女性が立っていた。
「――大丈夫!?君達!!」
その女性――ヤマトは姉妹に対してできるだけ優しい笑みを作ってみながらそう言ってみた。
その笑みに姉妹も身体から力が抜き――涙を流した。そんな子達をヤマトは優しく抱いてあげる。
そんなヤマト達の近くに近付く者達がいた。
「……お兄さん」
「あぁ」
それに顔を向けたヤマトは顔をしかめながら呼びかけると――その意図にオレも頷く。
「……突然やってくれる」
そして〝サンモン〟のあちこちから火が上がっているのを見渡すオレは不愉快そうに顔をしかめる。
そんなオレにジャックが声を掛ける。
「――少なくとも、オレ達が目当てじゃねぇそうです」
今オレ達が身を置かれている状況からジャックがそう分析するのに引き続き、フドウも口を開く。
「あぁ、それに海軍が動いているようだ。これでオレ達がわざわざ動く必要がないんだが……」
フドウがそう言い張る通り、海軍Gー3基地から海兵達がやってきて〝サンモン〟の危機的状況の対処に動いている。おそらく、これで〝サンモン〟はなんとかなるかもしれない。
故にオレ達がわざわざ動く事は確かにねぇんだが……
「――だがなぁ、これを前にして大人しくするのはなぁ」
……少なくともこのオレは目前の状況をこのままにして大人しくする程に人ができている訳ではなかった。
……それに――
「……っていうか、よりにもよってオレ達がゆっくりしているところを攻撃しやがったな」
重々しくそう呟いたオレの額には――青筋が立っていた。
そう〝サンモン〟でオレ達かゆっくり息抜きをしている筈だったところを丁寧に邪魔した〝バシレウス〟に対してオレはイラ立っていた。
――そして、そのイラつきは皆もまた感じていた。
「……ゆっくり読書しようと思っていたんだ」
「そうか、オレはさっさと寝ようと思ってた」
「そうだよな〜なのに、邪魔しやがって……」
皆が自身が感じたイラつきをそれぞれ口にするのをしっかり耳にしたオレはそれによってこれからの方針が決まった。
「――お前らぁ!!」
その途端にオレがそう声を上げたが、それが分かっていたかのように皆がオレを一気に凝視してくる。そんな皆にこれからの方針を宣する。
「――オレ達、暴獣海賊団はアイツらを叩き潰そうぜ!!!」
「「「オォ!!!」」」
オレがそう宣言すると皆も異議を唱えず、雄叫びを上げた。
これで暴獣海賊団の方針が完全に決まったという事に頷いたオレは素早く指示を下そうと口を開く。
「ヤマトと小紫と明日郎はあちこちの火を消してくれ!」
「うん!」
「はい」
「おう」
オレが鎮火に適任な3人にその指示を下し、彼女達もそれに応える。
「それで――皆はジャックとテゾーロ、ペドロとシシリアンがそれぞれ率いき!アイツらを吹っ飛ばせ!!」
「「「オォ!!」」」
続いて下したその指示に皆が雄叫びを上げた瞬間にオレは言葉を付け加えておく。
「あぁ!――無茶かもしれねぇが、海軍と面倒事を起こさねぇようにしてくれ!!」
「「「…!!……おう!!」」」
その内容に皆も一瞬固まるが、すぐ承知してくれた。そう、こういう状況下で海賊であるオレ達も動くとかえって事態が悪化してしまうかもしれねぇのだ。
故にそういうごたごたするのを避けるように動く必要がある……難しいのはそりゃそうだが。
そして、そういう事情からさらに先の方針ももう既に決まっていた。
「――事が済んだら、すぐ〝サンモン〟から出るぞ!!これ以上の余計な騒動は無用だ!!」
その方針をもオレはハッキリ宣する。
――そう、海賊のオレ達が動く以上、事態が収束されても新たな騒動が起こるかもしれねぇ。だからこそ、その前に〝サンモン〟をさっさと出る必要があるのだ。
その意図を勘付けたらしく、皆も異議を唱えずに承知したところにオレは口を開く。
「オレは――」
そう言いかけるオレは視線を向けてみる。その先には――艦隊が留まっている海だった。
「――アイツらの上を叩く!!」
その艦隊を凝視するオレが口に出すその案に皆は目を見開くが、すぐ納得する。
「――それはつまり!」
「あぁ!――艦隊の中心らしき船に向かって暴れてやる!!」
その中の1人が試みに出してみたその声にオレはそう言い張る――そう、騒動は敵陣の大将をとれば、自然的に収束されるもんだ!!
だからこそ、オレは艦隊の中心に浮かんでいる外観も確かに一味違う船に向かう事にした。そう考えたオレは続いて、指示を下す。
「――フドウはオレの邪魔をさせないように艦隊を相手取れ!!」
「承知」
その指示にフドウも率直に受け取る。
「あと!ハッテンとキサメとヤヒコはどのような手段でも構わねぇ!アイツらの正体、海軍の方針等の情報をとってこい!!」
「「「はい」」」
少なくとも、オレ達の行動の進み具合を上昇させる為にやはり適任な3人に情報聴取を頼む。
彼らも承知してくれた事でもはや必要な指示を出し終えたオレは皆を見渡し――
「じゃあ!暴獣海賊団出陣だぁ!!!」
「「「おう!!」」」
その宣言に皆が雄叫びを上げ――その場から散らばった……
――暴獣海賊団もまた〝サンモン〟での騒動に参加する事にした……