ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第117話〝軋轢の悪化〟

〝サンモン〟に突如〝バシレウス〟が侵攻し、それに対してその島に所在されている海軍Gー3支部も負けじと立ち向かっていった。

そうして――〝サンモン〟を舞台とする海軍と〝バシレウス〟の戦争が勃発された……

――だが、その戦争には更なる勢力――暴獣海賊団もまた参戦していた……

 

 

「「…」」

 

 〝バシレウス〟艦隊の中心として浮かんでいる船の船上で――その2人が重苦しい緊張感を走らせている中で対峙していた。

 その片方らこのオレ――暴獣海賊団船長〝暴獣のスサノオ〟で、そしてもう片方は――今回の〝サンモン〟遠征を指揮する〝バシレウス〟評議会の1人、ハイレインであった。

 今回行われている戦争の主要人物だといっても過言ではないオレ達は互いに相手をしばらく凝視していた。やがて

 

「……お前が海賊なら――」

 

 その状況を切り替えるかのようにハイレインが口を開いてきた。

 そもそも、ハイレイン達が何者なのか知らないのもあって彼が何を言おうとするのか興味があるオレが耳を傾げてみるのに対してハイレインは――

 

「――この戦争にわざわざ参加する義理はない筈だ……横やりはやめてほしいな」

 

 ――何の事はない。ただ、このオレ達が戦争に参加するのを止めるようにストレートに頼んだだけだった。

 当然だ。ハイレインにとって今回の〝サンモン〟遠征とは今における〝バシレウス〟の状況、そして自身達の事情から熟考を重ねて計画してきたのだ。

 そして意を決して戦争を実施したというのに、そこにたかが海賊に横やりを入れられるのは確かに不愉快だろう。

 故に彼は何とかオレ達を戦争から手を離すように慎重に交渉するのを試みなければならなくなった。

 そう考えたハイレインは自身で出せられる手札を切ろうとする。

 

「……ここの財物を求めているのならば――オレ達がそれに値する以上のものを用意する事はできる」

 

「…」

 

 彼はオレが戦争から手を離した場合のケースをそう口にする。その提案にオレはしかし表情を微かさえも変えていないのに目を細めたハイレインは言葉を続ける。

 

「……戦いによる愉悦を求めているのならば――」

 

 そこまで言いつけるハイレインがその途端に覇気を放つ。その覇気の大きさにオレも眉を上げた。

 

「――それなりに痛い目に合ってもらう事になる」

 

「さぁ――どうする……!?」

 

 せうハイレインは自身が用意できる限りの選択肢を口にし、最後にオレに答えを迫ってきた。そんな彼からの大きな覇気を込めながらの要求に対してオレは――

 

「……リュドドド」

 

 ――朗らかに笑っていた。その態度にハイレインが顔をしかめるのをよそに今度はオレの方から口を開く。

 

「お前よ――海賊ってのは自由だぜ?」

 

「!」

 

 突如オレが言い張ったその内容にハイレインも訝しげにせざるを得なかった。それにオレは笑みを深くしながら言葉を続ける。

 

「海賊は自分の信念に従って生きるもんだ」

 

「その海賊であるこのオレに命令できると思ってんのか?」

 

「…」

 

 その内容にハイレインは理解を示す事ができないもののその言い草にオレの動向を勘付き、顔をしかめてしまう。その途端に冷たい表情を浮かべたオレが重々しく言う。

 

「……っていうか、テメェらの〝サンモン〟に対しての襲撃には頭にきてんだ」

 

「…っ」

 

 続いて言い放たれたその言葉にハイレインも自身の見当が的中になってしまったのを悟り、舌打ちしたい気分になった。だが、それに構わずにオレは言う。

 

「だからよ!オレ達はテメェらを叩き潰す事にしたんで――よろしく!!!」

 

 陽気ながらも勢いよく放たれたその宣言にハイレインも受け入れざるを得なくなった――オレ達の参戦を……

 

「……交渉決列だな」

 

「そうだ!!そのまま――このオレに潰されろ!!」

 

 重々しくそう言うハイレインに対してオレは「神武」を手にしながら駆け向かった。

 自身に攻撃を仕掛けようとしてくるオレにハイレインも身構えながら――改めて〝サンモン〟での戦争の局面に関して頭脳を全力で巡らせる。

 

「…(たかが海賊だ。といえ、計画にもうこれ以上の不安要素は避けたい――つまり、早く排除したい)」

 

「(それに海賊といっても――しゃれになれない怪物も存在しているが……まさか、コイツがそうだとは思えない……といえ、場合によってはやはりミラのサポートを要するな)」

 

 そう戦いの手順を決めたハイレインは自身の力を発揮する――

 

 

――そうして〝暴獣のスサノオ〟と〝バシレウス〟評議会員ハイレインの戦いが始まった……

 

          ●

 

 〝サンモン〟で勃発された戦争ではその局面に異変が起こっていた。

 

「――オラオラぁ!!どうしたぁ!!テメェらの強さはそんなものなのか!?」

 

「その程度の強さでよくも観光を邪魔してくれたな〜」

 

 ――そう〝バシレウス〟兵士達は劣勢に追い込められていた……海軍はもちろんだが、それだけではなく――観光客らしい集団によってだ。

 

「クソッ!!――コイツら、本当に観光客か!?」

 

「その割には強いじゃないか!!」

 

 今身を置かれている状況に動揺せずにはいられなかった兵士達はその張本集団である観光客達の強さに驚愕していた。

 ――そもそも、彼らは非加盟国の連合である〝バシレウス〟に所属するだけはあって決して弱くはない。

 それに今回の戦争では別に〝勝利しなくてもいい〟という事になっている。ただ、隠された目的を達成するまでに海兵達の足止めし、時間を稼ぐだけでいいのだ。

 そういう意味では精鋭と知らされている海軍Gー3支部の海兵達に引けを取らない――筈だった。

 だからこそ、突如現れたどこの馬の骨か分からない集団によって劣勢に追い込められるという事実に兵士達はイラ立たずにはいられなかった。

 その強さが本当にしゃれにならないんだと知った今ではかえってだ。

 

「……確かに本当に観光客なのか……?」

 

「……気を付けろよ。下手すれば、新たな敵かもしれねぇぞ」

 

 一方で観光客らしい集団と共に戦っている海兵達はしかし、その集団に眉をひそめていた。

 それこそ〝バシレウス〟兵士達の集団に対しての懸念への共感も少しずつ出てきている程だ。

 ただ、今のところどうにも自身達に攻撃を仕掛けてこないようだから放置している――しかし、同時に注意をも払うようにしていた。

 それ程に両陣から不審に思われている観光客らしい集団。そんな彼らは――

 

「…(あ〜!メンドくせぇな!海軍と面倒事を起こさずに戦うってのは!!)」

 

「(しょうがねぇだろ!!スサノオさんの言う通り、これ以上の面倒事は願い下げだ!!)」

 

「(っていうか、海軍を攻撃していねぇからそれで納得してろよ!!アイツら!!)」

 

 こそこそそう話していた。少なくとも、彼らには海軍に攻撃を加える意思はないようだった。にも関わらずに海軍との共闘には心地悪さを感じていた。

 それもその筈。何せ、彼らは――

 

「(そりゃね〜オレ達が海賊だと分かれば、ますます混沌だからね〜)」

 

 ――海賊であるからだ。

 彼らは〝バシレウス〟によって息抜きを邪魔されたイラ立ちを戦争に割り切ってでも兵士達にぶつけようとしていたのた。

 

「(君達!憂さを晴らすのは別にいいけど、スサノオさんの指示を忘れないようにね!!)」

 

 ただ――血の気が盛んな海賊にしては珍しく、彼らは面倒事の悪化を避ける為に変装を解かずに戦っているのだ。

 もちろん、そんな戦い方には少々煩わしく感じている海賊達だが――

 

「(――貴様ら!!仮にも暴獣海賊団の者だろう!!なら、何としてでも戦ってみろ!!)」

 

「「「(!!――オォ!!)」」」

 

「(やってやるごわす!!)」

 

「(あ、姉貴……)」

 

 何だかんだ言っても暴獣海賊団の海賊だ。負わされているハンデをものとせずに戦ってみせ、その強さを両陣にもみせられた。

 

「クソッ!!まずいな……」

 

「――怯むな!!弱気になるな!!貴様ら!!我々には……」

 

 そんな暴獣海賊団の海賊達、そして海兵達により劣勢に追い詰めれている〝バシレウス〟兵士達もその事実に焦りまくってしまう。

 だが、その士気を鼓舞しようとその声が広く響かれた。それにつられて他方からも声を上げられる。

 

「そうだ!!我々にはハイレイン様達――あのヴィザ翁までついているからな!!」

 

          ●

 

 その戦場は――異様だった。

 

「うむ……実に悪くはない動きをしたものですな」

 

 まず、そう感嘆の声を上げていたのは戦場に似合わない温厚に見受けられる老人――ヴィザであった。そして、そんな彼の周りには……

 

「ぐ…うが……」

 

「お、おぉ……」

 

「あ、が……」

 

 死屍累々が広がっていた。しかも、その地には心なしか鋭く斬られたような跡が多く残されているようにも見受けられていた。

 

「な、なんて奴だ……オレ達が一堂に会しても……か、敵わないとは……」

 

 ――そう、実はさっき少なくはない数の海兵達がヴィザに攻撃を仕掛けようとしたが……多勢に無勢だといえる状況に対して彼はなんと――海兵達を何の事はなく返り討ちにしたのだ。

 そのあまりにも異様な強さについ畏怖を感じずにはいられなかった海兵達にヴィザは穏やかに声を掛ける。

 

「何の何の、あなた達だって実によく考えられて熟練されている動きをしていたじゃないですか。おかげで私の血も久しく騒ぎましたよ」

 

 そう、そもそもヴィザは〝バシレウス〟でも五指に入る程の猛者である故に――その強さにより、そうそう本気を出す機会が少なくなっていたのだ。

 そんな自身を微かだが本気を出させられた程の海兵達の戦いぶりをヴィザは率直に称賛した。だが、そんな彼からの率直な称賛でも海兵達は素直に受け取れなかった。

 

「……あんたに別に褒められてもうれしくはねぇからな……!」

 

「あぁ……ここの海兵として何としてでもあんたを止めなければならねぇのに――こういう様じゃあな……!!」

 

 ヴィザの強さを身を持って理解させられた海兵達はだからこそ彼をここで止めなければならないのにどうにもできない自身達の無力感に歯を食いしばずにはいられなかった。

 その無念にヴィザも眉を微かに下げ

 

「……申し訳ない。だが、これは戦争ですから。この私も兵士として請け負った任務を果たさなければならないので」

 

 海兵達に少し気遣わしげに、しかし〝バシレウス〟の兵士としてキッパリそう言い張る。

 

「「「…っ」」」

 

 その言葉に海兵達は歯を食いしばるものの、その兵士としての有り様には確かにもっともだと考えずにはいられず、何も言えなくなった。

 そんな彼らをヴィザはもうこれ以上関わる必要はないだろうと置いとき、次に移そうとする。

 

「なので、ここで失礼させて頂きますよ」

 

「ぐ……待て……!」

 

 自身の任務を果たそうと足を進め始めるヴィザを海兵達は何とか止めようとし――しかし、身体に力を入れようとも立ち上がれない。

 それ程にヴィザの力はあまりに強大で――それを身に受けた海兵達もダメージが大きく動けないのだ。

 

「(く……!!奴を止めなければならないのに……!!動けん!!)」

 

「(〝サンモン〟を守らなければならないのに……無念!!)」

 

 今身を置かれている状況に海兵達が凄まじく無念に思っていた。それでもヴィザの足は止められない――かと思われた。

 

「……ん?」

 

 突如――止められた。そして前を凝視するヴィザは純粋な疑問符を浮かべていた。そんな彼の視線先には――

 

「あっは♡」

 

「…」

 

 ――ヴァニカとハクジが立っていた。そう、その戦場にその2人が姿を現してきたのだ。

 実は――まず、元々戦闘狂である彼女は今回の思うように戦えない事になっているという状況には不満を感じていた。

 それでも一応暴獣海賊団に所属している上、その指示に従って意外に我慢していたのだ。だが、そこに突如ヴィザの大きな覇気がヴァニカのいるところまでにも及ぼってきたのだ。

 その覇気にあてられたヴァニカも自身の激情をついに抑えられなくなり、すぐその源に向かっていったのだ。

 そして、そんな彼女の性質を理解しているからこそ監視していたハクジも何とか止めようと後を追ったのだ。

 そうして――ヴァニカ、ハクジとヴィザが対峙する事態になったのだ。

 

「さぁ!やろうよ!!血のたぎる戦いを!!」

 

「…」

 

 ヴィザに対してヴァニカは熱狂している一方でハクジは冷や汗を流しながら身構えていた。

 

「(この者……できる……!!)」

 

 そう、熟練の戦士である彼は目前の老人の強さを理解し、全力を出すのを惜しまない決意をする。

 その一方で海軍とは違い、しかし明らかに敵だと見なせる者達の登場にヴィザもつい口元を緩ませる。

 

「おや……さっそく不測の事態ですかな?」

 

 計画が少し破綻されているのを察した彼はしかし、怯まずに任務を遂行しようとする――

 

          ●

 

 ――その戦場でも海軍と〝バシレウス〟が交戦しているが……

 

「オラァ!!」

 

「チィ!」

 

「あぁ!?」

 

 ――海兵達は劣勢に追い込められていた――〝バシレウス〟の兵士、ランバネインによって。

 

「どうした!?お前達の強さはこんなものなのか!?」

 

「……やかましい……!」

 

「――っていうかぁ、見た目がいかにも脳筋ってくせに――メンドくせぇ!!」

 

 爽やかに笑いながら激しき攻撃を放ってきているランバネインに海兵達は煩わしく感じていた。

 しまいには1人の海兵が一見脳筋だと印象付けられるランバネインがしかし、実は周囲への警戒を怠らない慎重さも併せ持っているという事実にツッコまずにはいられなかった。

 だが、そのツッコみにさえもランバネインは丁寧に答える。

 

「ハハハ!!――このオレが脳筋であるのはどうにも否定できないようだがな!!」

 

「いや!!別に答えなくてもいいから!!」

 

 ランバネインがツッコミさえにも応えてきたその爽やかさに海兵達もペースを少し狂わされてしまう。

 とにかく、意外に腕が立っていて厄介なランバネインに海兵達も苦戦させられている――そんな中

 

「…」

 

 陰からその局面を凝視する者がいた……

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