ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

123 / 180
第120話〝戦局の推移〟

「ガポ……ハハ……参ったな…動けん……」

 

 苦笑しながら何とかそう口にするランバネインの肉体は見るに堪えなかった。

 ゼノンの〝無間捻骨〟を身に受けたのはもちろんだが――「ケリードーン」を破壊された事で起こってしまった爆発を間近で受けてしまったのだ。

 何とか命を落とさずに済められたものの、その身体に重傷を負わされて動けなくなったのも無理ではないだろう。

 今の自身の容態に苦笑せざるを得ないランバネインに影がかかる。

 

「!」

 

「…」

 

 ――ゼノンがランバネインの横に立っていて……その首元に骨で形成された剣を向けていた。

 そう、ランバネインはゼノンにトドメを刺されるのだ。

 

「……これは戦争だ。故にお前が殺されても問題はないよな?」

 

 無表情のゼノンが冷たくそう宣する。その言葉、そして今身を置かれている状況に対してランバネインは――

 

「……ハハハハハ!!その通りだな!!」

 

「!」

 

 何と、朗らかに笑った。今まさに死を迎えようとする者の反応にしては異常だった。

 故に眉をひそめたゼノンにランバネインはすぐ真剣な表情を浮かべる。

 

「――このオレは〝バシレウス〟でも格別な名家に生まれたんだ。だからこそ、兵士として生きる運命付けられたんだ」

 

「まぁ!戦いを楽しんできたから、生き方に別に不満はないな!!」

 

「……兵士として戦争に参加する以上、嫌でも危険に晒されざるを得なくなる……それこそ殺される事もな」

 

「そんな可能性がある以上――覚悟はもう既にできているさ」

 

「だからこそ、今の状況をただ――受け入れるだけだ」

 

 その考えを重々しく説くランバネイン――が、突如陽気な笑みを浮かべる。

 

「まぁ!!拷問とか無惨な死を迎える者もいる中でこういう意味じゃ――ある意味ラッキーだな!!」

 

 その死を恐れずにむしろ好意的に受け入れるような態度をみせるランバネインの姿にゼノンは――その胸内に何かが引っかかろうとする。

 

『ゼノン!』

 

「……フン」

 

 それが心に浮かんだ途端にゼノンは鼻を鳴らし――ランバネインを凝視する。

 

「さて!!手間をかけたかな?――大丈夫だ!!いつでもいいぞ!!」

 

 ゼノンから凝視されるランバネインはそう告げ、トドメを刺されるのを待つ。だが、そんな姿勢にゼノンはしかし微かさえも動かずに彼を凝視し続ける。

 

「……?どう「やめだ」し――何?」

 

 さっさとトドメを刺してこないゼノンに訝しく思ったランバネインが問いかけようとし――しかし、その途中で突如ゼノンがそう宣した。

 その内容に疑問を持ったランバネインにゼノンは言葉を続ける。

 

「お前を殺すのはやめだ」

 

 そう言ったゼノンは向けていた剣を下ろし――ランバネインに背を向けた。

 

「!?……いいのか?トドメを刺さなくて」

 

 その動向に驚愕したランバネインはすぐ目を細め、その意図を確認してみる。そんな彼にゼノンは淡々と言う。

 

「……そもそも、お前らがここで暴れるのがオレには不都合だったからこそ戦っただけだ。そのお前がもう暴けなくなった以上、もはや必要はない」

 

 その内容にランバネインは目を見開き――

 

「……そうか!!それは一本取られたな!!」

 

 そして一理あると朗らかに笑う。その態度にゼノンは顔をしかめ――

 

「……アイツらみたいな態度をとりやがって……」

 

 ボソッと何かを呟いたゼノンに対してランバネインはきょとんとする。

 

「ん?何か言ったか?」

 

「……別にどうでもいいだろう。それに」

 

 その疑問にはゼノンは答えず、そしてある方向にちらりと目を向ける。そこには――

 

「「「…」」」

 

 海兵達がゼノンとランバネインに対して武器を構えていた。

 

「……ハハハ!!おっと、コイツらの事を忘れてた!!」

 

「…」

 

 それにランバネインも気付き、ストレートにその事を言い放った。ゼノンの方は動ぜずにただ凝視する……

 

「……悪ぃなぁ。美味しいところを持っていくような卑怯な真似をとってよぉ」

 

 激しき戦いを展開し、しまいには疲労している2人を制圧しようとする自身達にタクマは不服そうにしている一方でシュウジは毅然としていた。

 

「気にする事はありません、タクマさん。〝サンモン〟に襲撃をかける者なんかを平等に扱う必要はありません」

 

 タクマに諭すようにそう言い張るシュウジは朗らかに笑うランバネインを憎々しげに睨みつけ――そしてゼノンに対しては鋭い視線を向ける。

 

「ゼノンとかいう奴は確かにアイツを撃破してくれましたが、その動機はどうやら〝サンモン〟の為でもないようです……それに」

 

「……今も我々に向けているあの殺気――甘い顔をしてはいけません」

 

 冷や汗を流しながらそう主張するシュウジにタクマもさすがに異議を唱えられなかった。それもその筈。今彼らは殺気を向けられているのだから……ゼノンから。

 そもそも、彼には海兵達を味方だと見なしていない。故にランバネインを撃破した直後から海兵達に対しても注意を払うようにしていた。

 そんな彼の姿勢に海兵達も強硬な手段を取らざるを得なくなったと判断したのだ。

 

「……フン、ハイエナ共が……」

 

「ほざけ!!その殺気を放っておいて何を言う!!」

 

 海兵達の姿勢に応えて自身も態勢を整えようとするゼノンに対してシュウジがそう怒鳴りつけ、攻め入ろうとし――

 

「「「!!?」」」

 

 ――突如、その場に何かが降り立ってきた。その衝撃はすさまじく、海兵達も怯み足を止めざるを得なかった。やがて衝撃が収まった途端に海兵達がその何かに視線を一気に向けてみると――

 

「「「…!!?」」」

 

 驚愕する。それは――強面で筋骨隆々の大男だった。

 海兵達を戦慄させられる程に威圧的なその男にゼノンは冷静に声を掛ける。

 

「……最後まで姿を現してこないかと思ってたら――ここで登場か?」

 

「……フン、別にどうでもいいが……こういう事態は避けた方が良いと判断したまでだ」

 

 ゼノンが呆れたような口調で言ってくるのに対して男――ジャックはそう答える。

 ――実はゼノンのように暴獣海賊団に入ったといってもスサノオに対して忠誠心を抱いていない者達の事をジャック、そしてフドウ達は注意を払っていたのだ。

 そんな暴獣海賊団は非常事態に陥ってしまった〝サンモン〟に遭遇したのだ。

 

 スサノオの指示に従って暴獣海賊団が行動している中、ゼノンが突如離脱していったのだ。それに気付いたジャックもその後を追うと――ゼノンがランバネインと対峙するところに遭ったのだ。

 ゼノンの意向を把握する為にジャックはその事態に出ずに静観する事にしたが、そんな彼にゼノンは気付いていた。といえ、その意図を理解できる上に妨害してこないなら放置していたのだ。

 

 だが、ゼノンと海軍の一触即発な場にしばらく静観していたジャックが突如姿を現してきたのは――彼が敬愛しているスサノオからの指示「海軍と面倒事を起こすな」を実施する為である。

 

 その事情、そしてジャックの忠誠を理解しているゼノンだからこそ呆れるものの、沈黙を貫く事にした。

 そんなゼノンを横見したジャックは続いて海兵達に視線を向ける。

 

「……要求は1つだけだ」

 

 新たに現れた得体が知れない上に凄まじい威圧感を放ってくるジャックが突如要求を口にしたのに呆然としていた海兵達も我に返り――身構える。

 

「……何だぁ?」

 

 海兵達を代表してタクマはできるだけ閑やかに、しかし目前の男にナメられないようにそう重々しく口にする。それを何の感情をみせずに見下ろすジャックが言葉を続ける。

 

「――オレとコイツを黙って行かせる事だ」

 

「寝込んでいる野郎はくれてやる」

 

「「「!!」」」

 

 その要求に海兵達が唖然とし――真っ先にシュウジが声を上げる。

 

「ふざけるな!?そんなの認め「仮にお前らが立ち向かってくるのなら」る訳――!?」

 

「――叩き潰すのみだ……!!」

 

 だが、シュウジが怒鳴りつけてくるのを遮るジャックが目を血走らせながらそう凄みを利かせる。

 その宣言につられてさらに強まってきた威圧感に海兵達が息を呑み、シュウジも一瞬怯むもすぐ攻勢を取ろうとし――

 

「シュウジ!」

 

「!」

 

 だが、そんな彼をタクマが素早く制止した。突如の制止に異議の視線を向けるシュウジにタクマは目で念を押しておく。

 

「っ…」

 

 その念に従ってシュウジが不服ながらも大人しくするとそれを確認したタクマはすぐジャックに問いかけてみる。

 

「あんた――いや、あんた達もこの〝サンモン〟を手にかけるつもりなのか?」

 

 タクマは真剣な目でその問いかけを投げてみた――その答えの内容次第じゃ腹をくくる必要があるかもしれない。

 そう考えたタクマに対してジャックはつまらなさそうに答える。

 

「……オレはここがどうなろうが、別に知った事じゃねぇな」

 

「…」

 

「――だが、あの人がこの事態を収束させるのを望んでいるんだ。その意思に従うまでだ」

 

「…!!」

 

 そこまで粗雑に言っていたジャックが突如胸を張ってそう説明するのにタクマは目を見開く。

 彼には目前の人に従うようには見えない男がそんな態度をみせる程に敬愛する者が存在しているという事実に驚愕せずにはいられなかった。

 

「それで――どうする……!?」

 

「……あぁ、それは決まっている」

 

 だが、それに構わずにジャックが答えを聞いてみるとすぐ冷静になったタクマも決めた答えを口にする。

 

「……行っても構わねぇぞ。オレ達も忙しいからな」

 

「「「!!?」」」

 

「フン、聡明な判断だな」

 

 その答えに海兵達が驚愕する一方でジャックは鼻を鳴らし

 

「行くぞ」

 

「…」

 

 ジャックがそう言うと静観していたゼノンもそれに従い、2人共その場を離れていった。

 その姿がやがて見えにくくなった途端にシュウジが素早くタクマに迫った。

 

「どういうつもりで「シュウジぃ!」す――!?」

 

 だが、彼が文句を言うのをタクマが遮り、口を開く。

 

「今のオレ達の仕事は〝サンモン〟を守る事だよなぁ!?」

 

「…っ」

 

「……えぇ」

 

「まぁそうですね」

 

 タクマが言い張るその方針にシュウジ達も異議を唱えなかった事で言葉を続けられる。

 

「――ゼノンとかいう奴もそうだが……あの男はそれよりさらに強ぇぞ……!!」

 

「こんな時にああいうの相手は願い下げだ!!」

 

「幸いというか、奴らには〝サンモン〟に手を出すつもりがねぇらしい。なら食って掛かる必要はねぇ!!今のところは放置するぞ!分かったか!?」

 

「っ……はい」

 

 タクマが説明したジャック達に対しての不干渉を決めた理由にシュウジもようやく納得したらしく、歯を食いしばりながら――結局了解した。

 その反応に頷いたタクマはある方向をジロリと見る。

 

「……さぁて、色々説明してもらうぞ――襲撃者ぁ」

 

「…ハハ、参ったな」

 

 タクマが凄みを利かせてくるのを受けてランバネインは――苦笑していた。

 

        ●

 

「……オレをぞんざいに扱わないんだな」

 

 ジャックとゼノンが次の場に移動しようと駆けている中でゼノンがそう口にする。

 ――ジャックはスサノオに対して強き忠誠を誓っている、だからこそ忠誠を別に誓っていないゼノンの事を不快に思っている。

 ゼノンもその姿勢を理解できる。なのにさっきの状況、そして今までのジャックの振る舞いからどうにも彼がゼノンに対しての感傷は別にしても扱いは別に悪くはないのに気付いた。

 あのジャックが自身をぞんざいに扱わないという事にゼノンもさすがに疑問を抱かずにはいられなかった。そんなゼノンに対してジャックは――鼻を鳴らし

 

「……フン、別にお前を信用した訳じゃねぇ――ただ……」

 

「お前の強さは使える上に――」

 

「――お前は少なくともスサノオさんの指示に従おうとしていた」

 

「なら、今はこのぐらいでいい」

 

「……スサノオさんに少しでも手を掛ければ、その時は――一欠片さえも残さねぇがな……!」

 

 ジャックがその理由を口にした――そう、ゼノンは意外に真面目だったからかスサノオが出したその指示を遂行しようとしていたのだ。

 その姿勢にジャックはとりあえず認める事にしたのだ。もちろん、警告を口にするのも忘れずにだ。

 そんなジャックの意図にゼノンは目を見開き――

 

「……フン」

 

 ――微かに笑みを浮かべた……

 

        ●

 

 〝バシレウス〟艦隊の中のある船の船上でそれは激しき戦いが展開されていた。

 

「リュドドド!意外にあるじゃねぇか!!」

 

「フン!」

 

 ――オレとハイレインが戦っていた。

 オレが「神武」で打撃と斬撃を繰り返し出すのに対してハイレインはどうやら武術を身に付けているらしく、的を射た動きで対応してみせた。

 そんな姿勢にオレも喜ばしそうにする一方でハイレインは険しい表情を浮かべていて――思案に耽っていた。

 

「…(意外に強いな――ミラのサポートはもちろんだが……これは素早い撤退準備を要するかもしれんな)」

 

 オレの強さに最悪のパターンまでも考えずにはいられなかったハイレインだが、微かに笑みを浮かべる。

 

「(まぁ、オレ達に敗北はあり得ないがな――何せ)」

 

「(あのヴィザ翁もついてくれるんだから)」

 

        ●

 

 その戦場は――異様だった。

 そこには5人が留まっていた。

 

「……ハハハ……強いじゃん。ジイさん」

 

「……ほんまにどないしょうか」

 

「アハハ……これはまたイケそう……!」

 

「ぐ……」

 

 そのうちの4人は――深手だった。普通ならば倒れてもおかしくはない程の傷を負わされてなお、それでも戦意を失わなかった。

 ――そして、そんな4人と対峙しているのが

 

「ホッホッ……いい心意気ですな」

 

 穏やかな笑みを浮かべる老人――ヴィザだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。