ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第122話〝護身剣の如き〟

ケイ――

 

彼は海軍Gー3支部に所属する海兵達の中でも3番目に強いと謳われる実力者である。

その強さは確かで戦いでも驚異的な結果を残しているといわれる程だ。

……ただ、持てる才能と努力は全て戦闘に注がれている為か戦闘面以外では相当に抜けている残念な戦闘狂であるのがご愛嬌である。

 

 

タツヒト――

 

彼は海軍Gー3支部に所属する海兵達の中でも名を上げられる実力者である。

その強さはある意味随一の剣の使い手であると称される程だ。

……ただ、戦闘中で人前であれば――何かカッコつけてみせるという妙な癖があるのがご愛嬌である。

 

 

 そんな2人が揃ってその場に現れてきた。

 なぜやってきたかというと――さっきヴィザに倒された海兵達が辛うじて出した応援要請に応えたからであった。

 もちろん、ヴィザの強さもしっかり報告していた為に今の非常事態でも動けられる海兵達からケイとタツヒトが選ばれたのだ。

 

「ケイさん…タツヒトさんも……!」

 

「あの2人なら……きっと…あの化け物を倒してくれる……!」

 

 ケイとタツヒトの登場にその場に倒れ伏せている海兵達がそう希望を持つ。そんな彼らにケイはニカッと笑みをみせる。

 

「おう!!お疲れだったな!!お前ら!!このオレ達が着いたから――ここは任せろ!!」

 

「任せたって!!」

 

 ケイがそう労いの言葉、そして表明する。タツヒトも負けじとそう宣言しておく。そんな彼らにヴィザは微笑む。

 

「なるほど――ちゃんと報告したんですね……いい仕事です」

 

 倒されたものの、ちゃんと自身のできる事をしていた海兵達を彼は率直に称賛した。その内容にケイも嬉しそうにし

 

「お!――そうだろそうだろ!オレ達もやる時はやるもんだろ!!」

 

「ワイらをナメんといてや!」

 

 仲間への称賛をケイは自身の事であるかのように誇らしげにし、タツヒトもそれに続くようにそう言い張る。その姿勢にヴィザも笑みを深くし

 

「それはそうですね――ただし、君達の場合はどのような働きぶりになるのか……それはこれからだと思いますよ」

 

 そう囁くヴィザが再び抜剣する。その途端に場の空気が重くなったのを受けてケイとタツヒトも素早く身構えた。

 

「来るぞ!タツヒト!」

 

「おおきに!」

 

 二刀を構えるケイがそう促し、タツヒトもそれに応えながら刀を構える。その瞬間、2人の間には――ヴィザがもう既に来ていた。

 

「「(いつの間に!?)」」

 

「失礼」

 

 その事実に衝撃を受ける2人にヴィザは容赦なく剣を振った――

 

「オォ!!」

 

「!!」

 

 だが、それに対して2人も素早く剣で防いでみせた。

 

「ほぅ」

 

 その瞬時の反応に感心したヴィザは引き続き剣を素早く勢いよく振り回した。

 

「「オォォォォ!!」」

 

 それに対して2人も負けじと剣を勢いよく振り回し返した。

 そうして――その場で4本の剣がまさに嵐の如き激しく荒れ回された。

 

「――ハハハ!!すげぇな!!その剣――あんたのような剣士はマサフミさん以来だぜ!!」

 

「ほぅ!マサフミ……彼も腕の立つ剣士だと聞いています――そういえば、ここに配属されていましたね。できれば手合わせしたいものですな……!」

 

 多大な汗を流しながら、それでも笑みを浮かべるケイはヴィザの強さをそう評価する。対するヴィザは涼しい表情を浮かべながらケイが出したマサフミの名につい興味を惹かれ、その願望を口にした。

 そう談笑する2人だが、それには似合わない程に彼らは今剣で激しくぶつかり合っていた。ただ、ケイの方はヴィザによって劣勢に追い込まされていた。

 

 ――無理もないかもしれないだろう。ケイは確かに才能もあるのに加えて努力もしている為に実力者だ。

 だが、ヴィザは〝バシレウス〟でも五指に入る程の猛者だ。しかも、その強さは数えきれない多くの戦いに彼が身を寄せてきた事で構築されていったものだ。

 

 その厚みにケイでも適わず――やられているのだ。今ケイがヴィザにあっけなく撃破されずに戦えているのは――彼の剣の師匠である尋常ではない強さを持ち合わせているマサムミと戦った経験が彼を支えているからだ。

 あのマサフミを超えられるといっても過言ではないヴィザの強さにケイは汗を流しながら――つい笑みを浮かべずにはいられなかった。

 だがそんなケイ、そしてヴィザも笑みを浮かべている一方で――

 

「……いやいや、めっちゃ強いやんか」

 

 一応ヴィザに対応できているタツヒトはしかし笑っていなかった。否、笑えないのだ。

 ――ヴィザとの剣のぶつかり合いで何とか対応できているケイと違って彼はヴィザからの斬撃を半分ぐらいかわせられず、傷を負わされていた。

 そもそも、彼は実力者だといっても海軍Gー3支部でも中位辺りに当たる程だ。

 ヴィザと彼に食ってかかっているケイの強さと比べてタツヒトは自身を情けなく思わずにはいられなかった。

 

「(だから言うて、このまま終わる訳にはいかんやろ!)」

 

 だが、それでもタツヒトは挫けずに自身でできる事に関して考えを巡らせてみる。やがて考えをまとまった彼は――

 

「ごめん、抜けるわ!」

 

 そう声を上げたタツヒトは剣のぶつかり合いから身を引き――そして背を向け――何と、駆けていった。

 

「…………へっ!?え!?――えぇぇぇぇ!?た、タツヒトォォォ!!?」

 

「……はい?」

 

 タツヒトの逃避だというまさかの事態にケイも目を真ん丸にする程に驚愕し、ヴィザもさすがに呆気に取られざるを得なかった……それ故にあれ程に激しかった剣のぶつかり合いもいったん鎮まった。

 ――実はタツヒトがそれを狙っていたのだ。

 

「(今やで!)」

 

「ちょっと待てや!!タ「なんやねん!」ツヒト――!?」

 

 逃避するタツヒトを止めようとケイが慌てて声を上げる中で逃避している筈のタツヒトが突如止まり――そして身体の向きを変え――そのまま居合斬りの構えをとった……

 

「「!!」」

 

「〝旋空孤月〟!!!」

 

 突如のタツヒトの行動の変動にケイもそして、ヴィザも思わず身が固まった途端にタツヒトが鞘から刀を勢いよく振り上げた。

 そこからまるで――剣が伸びたように見粉われる斬撃が放たれていった。

 ――その斬撃は長らく伸ばせているという特性がある為に最長の間合いを誇るタツヒトの剣技である。

 その斬撃がヴィザに向かって走った。

 

「(決まってくれや!!)」

 

 自身が誇る剣技がヴィザに通じるのをタツヒトが祈るのをよそにヴィザがその斬撃を身に受ける――

 

「――フン!」

 

 かに見えて、ヴィザが素早く剣を勢いよく振り、その斬撃さえをも斬り捨てた。その事態にタツヒトも唖然とする。

 

「……マジか」

 

「!」

 

 その一方でヴィザの後ろには――ケイが二刀を掲げていた。そう、彼はヴィザの隙を見逃さなかった。

 

「(悪く思うよな!!ジイさん!!)」

 

 一応、内心で彼に詫びを入れておくケイは構わずに二刀を振り下ろす――が

 

「―」

 

 それより素早くヴィザがケイに体当たりをした。その威力にケイは動揺しながら勢いよく吹っ飛ばされた。そのまま地に叩き込まれたケイにヴィザは微笑む。

 

「あいにく、今のような状況は経験済みなんです……隙を突こうとするのは別におかしくはありませんからね」

 

 さすが長らく戦いに身を寄せてきたヴィザだ。こういう状況も経験済みだったようだ。そんな彼にケイは立ち上がりながら苦笑を浮かべる。

 

「随分と楽しそうな人生だこと」

 

「ケイさん!」

 

 そんな彼にタツヒトが近付き――きっちり頭を下げた。

 

「すんまへん!仕留められんくて!」

 

「あ〜いいよいいよ、こちらも仕留められなかったから互い様だ」

 

 互いに自身の失態を詫び合う2人。そしてコソコソと議論をする。

 

「――しかし、すごく強いな!あのジイさん」

 

「せやんな、こちらの手も通じなんだし」

 

「――だからよ、オレは――ってしようかなと思ってな」

 

「あ……それじゃワイはああしよか」

 

 そう議論をする2人にヴィザはしばらく静観するがー

 

「――そろそろ、もういいでしょう」

 

「!来るぞ!」

 

「はい!」

 

 素早く駆け向かってくるヴィザに対して議論を辛うじて終えたらしい2人も動き出す。

 

「――んじゃ!!オラァ!!」

 

 まず、ヴィザの前に出たケイが二刀を勢いよく振り回ってみせた。それを受けてヴィザ自身も剣を勢いよく振り回し返す。

 これで再び剣のぶつかり合いが展開された――が

 

「――あぁ、こちらですな」

 

「!?」

 

 どうやら、ケイの動作をある程度記憶できたらしいヴィザがケイの二刀を的確にそれぞれ跳ねのけ――彼を斬り捨てた。

 

「っ!!」

 

 鋭く斬り捨てられてしまったケイが後ろに倒れ――そして、その先にタツヒトが居合斬りの十分な構えをとっていた。

 

「!」

 

「〝旋空孤月〟!!!」

 

 ケイが完全に倒れたのを合図にしていたのか、タツヒトが勢いよく放った斬撃をヴィザは――背を反らした事でかわしてみせた。

 

「残念ですが――……!」

 

 ヴィザがそう言いかける途端に口を閉じた――タツヒトの攻撃がまだ終わっていないからだ。

 彼は自身が鞘から刀を抜いた勢いをそのまま途切れさせずに続けさせていた――そう、タツヒトが振った刀をそのまま自身の身体ごと後ろに向かって振り――そして、そこからさらに上方向に振り上げた。

 その際の態勢も変わった――そう、居合斬りの構えから真向斬りの構えに変更していた。

 

「!」

 

「〝続行〟!!!」

 

 その動きにさすがに目を剥いたヴィザに向かってタツヒトは刀を強烈な勢いで振り下ろした。そこから放たれた斬撃がヴィザに襲い掛かった。

 

「素晴らしい。だが」

 

 それにヴィザも心から称賛した。だが、すぐ剣を振り――その斬撃さえをも斬り捨てた。

 

「まだまだでしたね――!」

 

 だが、剣を振ったヴィザの横には倒れた筈のケイが二刀を構えていた。

 

「〝一連斬〟!!!」

 

 まず、ケイの右手が握る刀がヴィザに勢いよく振り下ろそうとし――だが、彼はもう既に振った剣をそのまま振り直した事でその刀を跳ねのけてみせた。

 それでもケイの左手が握る刀が引き続き振り下ろす――が、それに対してヴィザが今度は勢いよく蹴った事で跳ねのけた。

 ケイの全身全霊な攻撃もヴィザには通じない――かと思われた。

 

「!」

 

「ニッ……」

 

 だが、それでも笑みを浮かべたケイの足がヴィザに向かって強烈な勢いで蹴り上げた。しかも、ただの蹴りではない――

 実は彼は〝六式〟の〝嵐脚〟を放てるのだ。だが、抜け目がない彼はその事を密かに隠す事で敵に悟らせず――ここぞという時に放つようにしていたのだ。

 そして、今こそがその時であった。

 さすがに予想できない筈のその攻撃にヴィザは――

 

「フン!!」

 

 剣の柄をケイの膝に叩き込んだ。

 

「あぁ!?」

 

 そのまさかの迅速な反応、そして膝に走る痛みにたまらずに悲鳴を上げたケイをヴィザは蹴った。

 

「あぁぁ!!」

 

「ケイさん!!」

 

 吹っ飛ばされたケイの身をタツヒトが案じているのをよそでヴィザは気付く――彼に対して新たな攻撃を仕掛けられようとするのを……

 

 ……ハクジとヴァニカによって。

 

 倒れた筈の彼らがなぜヴィザに攻撃を仕掛けようとしているのは実は――まず、なかなかタフである彼らはしばらくしてから再起できた。

 そしてケイとタツヒトがヴィザと戦っているのに気付いた。ヴィザの強さを身を持って思い知らされていた2人は癪に障りながらもケイ達に意識を向けるヴィザの隙を突く事にしたのだ。

 そうして今のヴィザを2人は好機だと見なし、攻撃を仕掛けてみせたのだ。

 

「〝滅式〟!!!」

 

「〝二千五百枚瓦正拳〟!!!」

 

 その2人が全身全霊をかけて攻撃してきたのをヴィザはただ受けるのか――

 

「―」

 

 その瞬間、ハクジとヴァニカの身体が斬り刻まれながら吹っ飛ばされた。

 

「「!!」」

 

 目を見開く2人が地に叩き込まれた――が

 

「――まだだ!!」

 

「何のぉ!!」

 

 それでも立ち上がった。

 そんなハクジとヴァニカ、そして同じく起き上がったケイとタツヒトはそれに目を見開く。

 

「「「!!!」」」

 

 ――それはヴィザの周りには複数の円軌道を設定され、その上に数々のブレードを走らせるものだった。

 これこそが〝ザンザンの実〟の能力を宿った「オルガノン」の真髄であった。

 驚愕する4人に対してヴィザは微笑む。

 

「さて――やりますか?」

 

 そう底があまりにも見えにくい強さをみせるヴィザに劣勢に追い込まされる4人の姿は――もはやボロボロだった。そんな容態、そして目前の景色に挫折しかけるも――

 

「――やってやら!!」

 

「やるしかあらへんやないですか」

 

「アハハ!!やろうよ!!」

 

「やるしかあるまい」

 

 それでも戦意が消えていなかった。

 何としてでもあがいてみせようとする4人にヴィザは微笑む。

 

「――できたら、全力を惜しまずに出しましょうか」

 

「「「!!」」」

 

 そう宣言するヴィザの覇気が強まってきたのに4人も身構え直す――その時だった。

 

「もしもし――失礼してもよろしいでしょうか?」

 

 その場にその声が響かれた。

 

「「「!!」」」

 

 それに目を見開く者達の前にその者が姿を現してきた。

 

「――どなたかな?」

 

 その者にヴィザがその問いかけを投げてみる。一方でハクジとヴァニカは目を見開く。

 

「――あんた!?」

 

「…!!」

 

 2人を驚愕させる程の者。それは――

 

「この私は――小紫と申します」

 

 ――そう、小紫であった。

 彼女が笑みを浮かべながらヴィザに対して自己紹介した。

 

「それはそれはご丁寧に……それで」

 

「何の用でしょうか?」

 

 彼がその問いかけを投げ、それにつられてその場にいる者達が小紫をますます凝視する。

 その視線を浴びた彼女は――ニコリと微笑む。

 

「えぇ、用はただ1つだけです」

 

 小紫がヴィザを前にして堂々とそう言い張り――そして「天羽々斬」と「閻魔」を抜く。

 

「――あなたとお手合わせ願いしたいんです」

 

 

――その戦場は新たな参戦者によりいよいよ最高潮に達しようとする……

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