ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第123話〝剣士の宿命〟

 ヤマトと明日郎と共に〝サンモン〟で発生している大火の消火を請け負った小紫――私は各所で上がっている火を斬り回ってきた。

 そうし続けた事で〝サンモン〟での大火を収束させる事ができた私だが――そんな時にその戦いに気付き、向かってみた。

 そうして――その戦場に私が遭遇した。

 突如の事だが、私はすぐ腕が立つと見込められる剣豪――ヴィザに手合わせの申し込みをした。それに対してヴィザは微笑む。

 

「ホッホッ、新しい手合わせの願いでしたか――いやはや、老体ながらもモテモテですな」

 

「えぇ、無理もありません――強者は常に狙われやすいものですよ」

 

 彼が茶目っ気にジョークを口にすると私もそう述べ返した。その内容にヴィザも頷く。

 

「うむ、一理ありますね」

 

「……それでいかがですか?」

 

 願いに対しての答えを求めてみると彼も笑みを浮かべる。

 

「いいでしょう。女性の誘いを断る訳にはいきませんからね」

 

「それは良かった」

 

 そう話が付いた私達が微笑み合った途端に空気が重くなった。

 

「……ん〜まっいっか。小紫なら何とかなりそうしぃ」

 

「……人手が増えるのは好ましいだろうな」

 

「うひょ〜!あの美女と共に戦うの!?」

 

「け、ケイさん!?それを言う場合やろか!?」

 

 私の参戦を受けてヴァニカとハクジは戦況を変える見込みが立ったと判断した。

 一方で端麗な容姿をしている私と共闘するだろうという状況に場をわきまえず、鼻の下を伸ばしていたケイにタツヒトがツッコんだ。

 とにかく、これで私を含む5人とヴィザが対戦する事になった――かと思われた。

 

「いえ?あなた達は下がって頂けますか?」

 

「「「!!?」」」

 

 だが、私が堂々とそう要求した。それに4人共目を見開く。

 

「――ちょっと待ってよ!?小紫!せっかく血が滾ってきたのにそりゃないよ!!」

 

「……小紫、いくらお前が強くても――あの翁が相手では厳しいだぞ?」

 

 ヴァニカが素早く文句を言い付け、ハクジも冷静ながら――硬い声で諫めてきた。

 

「……それはどういう意味かな?美女さん?」

 

「…」

 

 さすが〝サンモン〟を守る海兵だけはあって、鼻の下を伸ばしていたケイもすぐ気を引き締め、そう言ったか。タツヒトも何も言わず、しかし睨みつけてきた。

 そんな不満に対して私は冷静に指摘する。

 

「でも、今のあなた達は重傷じゃない。ハッキリいって邪魔です」

 

「「「っ!!!」」」

 

 その指摘に4人共顔をしかめる。そして、自身の身体を見てみる――確かにボロボロだ。これではもはや満足に戦えるだろうか?

 その事実を重く受け止めるハクジとタツヒトが何も言えなくなった――一方でヴァニカとケイがそれでもしつこく食いかかってきた。

 

「でもでも!これ程に血が滾ってきた戦いだよ!止める訳がないもん!!」

 

「そうそう!こんな美味しいものを逃しちゃ、たまらねぇよ!!」

 

「「ね〜!」」

 

「いや、いつ仲良くなりました?あなた達」

 

 それぞれ文句を言い付け、しまいには共感し合う戦闘狂な2人組に私もつい呆れてしまった。

 といえ、その闘争心は理解できる。現にこの私であって――

 

「(スサノオさんの隣で生きる決心をした時にできた私の野望――)」

 

「(それは……「世界一の剣士」になるという事だ!!!)」

 

「(剣士としての頂を極めるには……世界中に存在している剣士達と戦い、勝利しなければならない!!)」

 

「(だからこそ、目前の剣士を前にして機会を逃す訳にはいかない……!!)」

 

「(故に――コイツらが邪魔だ)」

 

 そう目論んでいる私はだからこそ決闘の邪魔しかならない者達を強引にでも取り除く事にした。

 

「……分かりました。いいですよ」

 

「「マジ!?や「ただし」ったぁ――へ?」」

 

 そして着想した私は微笑み――そう言う。その内容に2人が歓喜しかけるところに素早く言葉を続ける。

 

「私の剣がついうっかり――あなた達を斬ってしまっても……知りませんがね?」

 

 その事をハッキリ言い放ち、ニッコリと笑った私――から覇王色が放たれた。

 その脅迫めいた言葉と覇気、何より――全く笑っていない目に2人、そして残りの者達も息を呑まずにはいられなかった。

 

「……む〜!!覚えろよ!!」

 

「……ハハ……邪魔虫は消えま〜す」

 

 私からの脅しに結局屈したのか、頬を膨らませたヴァニカと顔を青くしたケイがジタバタせずに撤退していった――ちなみにハクジとタツヒトはもう既に撤退していた。

 

「……さて」

 

 それを見届けた私はヴィザに視線を向け――

 

「これで戦えますね」

 

        ●

 

「もう!!小紫の奴〜〜!!」

 

「…」

 

 戦いから撤退せざるを得なかったヴァニカはイラ立ちを抑えられず地団駄を踏んでいた。一方のハクジは落ち着いているようにみえて――しかし、硬い顔をしていた。

 そんな彼らに声を掛けられた。

 

「――大丈夫か?ハクジ、ヴァニカ」

 

「!!河松か」

 

「わっ!!犬ちゃんも猫ちゃんも!!

 

 ――そう、河松とイヌアラシとネコマムシであった。

 私に仕えている3人は如何なる時でも私から可能な限り離れずに同伴しているのだ。そう〝サンモン〟での消火活動時でも。

 そんな中でその戦いに彼らも遭遇した。

 最初こそ3人が私を下がらせて前に出ようとしたが「世界一の剣士」になる為に剣豪との戦いを欲する私の命によって待機させられた。

 なお、彼らは今重傷を負わされているハクジとヴァニカに対しての応急処置をしていた。

 

「……小紫は確かに強いが――」

 

「でも!!あのジイさんは強いよ!!小紫1人でも勝てるかなぁ!?」

 

「「「っ…」」」

 

 応急処置を大人しく受けているハクジとヴァニカはヴィザの尋常ではない強さを知っているからこそ、その懸念を感じずにはいられなかった。

 その懸念に3人も異議を唱えられず顔をしかめた。

 

「……それは小紫様も承知している……」

 

「あぁ、さっきの海軍との戦いを見てきたからな」

 

「それじゃち戦いを挑んだがや……」

 

 だが、その事をも告げた――そう、私達がヴィザとケイ、タツヒトの戦いを観戦していた。その際にヴィザの異様な強さを私も知った。

 それでも私は厳しい戦いになるのを覚悟してなお、彼に挑んだのだ。

 その事情、覚悟にハクジとヴァニカが眉をひそめるのをよそに河松はヴィザと対峙する私に視線を向ける。

 

「小紫様……ご武運を」

 

 そして――そう祈念した……

 

        ●

 

「お待たせてして申し訳ありません」

 

「いえいえ、別に大丈夫ですよ――しかし「覇王色の覇気」の持ち主でしたとは――少し楽しみになりましたね」

 

 邪魔者を撤退させるのに手間かかった私がそう詫びを入れるとヴィザも微笑み――そして、少し熱意を込めて言い放った。

 いくら彼でもこういう状況下で「覇王色の覇気」の持ち主と対峙したという事実にたまげずにはいられなかった。故にすごく心躍らずにはいられなくなった。

 そんな彼に私も微笑む。

 

「あなたの眼鏡にかかって何よりです」

 

「えぇ」

 

 そう談笑した私だが――突如その雰囲気が厳粛になった。そして私が駆けていった。

 

「〝天魔王流〟」

 

 私はまず左腕を右方向に掲げる――それに対してヴィザも剣を構える。

 

「―」

 

 私が左腕を勢いよく振ろうとするのに対してヴィザも剣を振ろうとするその瞬間

 

「〝火之巻〟」

 

「〝炎炎〟!!!」

 

 私の振る刀が突如燃え上がった。

 その事態にヴィザもつい固まらざるを得なかった。その隙を見逃さない私はその火の剣で彼が振りかける剣を跳ねのけながら、その身体を焼こうとする。

 さらに――片方の刀をも燃え上がらせながら振った。

 そうして――今まで傷を負わずにきたヴィザが焼かれながら斬られた!

 

「まだぁ――……!!」

 

 それに私は攻撃を止めずに続けようとするその瞬間、ヴィザの雰囲気が鋭くなったのを感じた――どうやら、思いがけない出来事に固まってしまった身体に傷を負わされた事で彼は我に返り――気合いを強く入れ直したようだ。

 そんな彼に対して私は次の行動を変える事にした。

 

「はぁ!!」

 

「―」

 

 私は振った二刀をそのままヴィザに向かって振り下ろす瞬間、彼が素早く剣を振った。その剣さばきにより二刀を跳ねのけられた上に――私に傷を負わされた。

 

「うん?」

 

「〝天魔王流〟」

 

 だが、こういう状況を想定した事で前もって態勢を整えておいた私はすぐ後ろに下がり――素早く二刀を地に突き刺し、そこから振り上げた。

 その途端にその地から激しき炎が湧き出てきた。

 

「〝火之巻〟」

 

「〝噴炎〟!!!」

 

 〝噴炎〟がヴィザに襲い掛かった。

 

「何と――だが」

 

 その技に驚いたヴィザがすぐ剣を素早く勢いよく振り回す。そこから発生する激しき斬撃が〝噴炎〟を吹き飛ばす――が、彼の後ろには私が回っていた。

 

「―」

 

 〝噴炎〟を吹き飛ばすのに意識を向けているであろうヴィザの後ろに私は二刀を振ろうとした。

 

「……それは見通しですよ」

 

 だが、その動きはヴィザには見通しだったらしく、彼が態勢を変えないまま後ろに向かって剣を振ってきた。

 

「そりゃそうでしょう!」

 

「!」

 

 だが、それさえも想定内であった私は二刀を振りながら素早く不規則的な動きを披露した。

 

「〝天魔王流〟」

 

「〝風之巻〟」

 

「〝千変万化〟!!!」

 

 〝千変万化〟でヴィザを見惑わせた事で彼の剣をかわしながら彼を斬った。

 

「!(浅い……!)」

 

 だが、彼に痛手を与えられなかったようだ。それに口惜しがる私に対してヴィザが素早く反撃に出る。

 

「フン!」

 

 身体を回転させて態勢を整えたヴィザがまだ〝千変万化〟を続けている私の二刀をそれぞ的確に跳ねのけた。

 

「!!」

 

「―」

 

 〝千変万化〟を突破された私をヴィザが容赦なく斬り捨てようとする。

 

「くっ!!」

 

 焦った私はたまらずに彼を蹴ろうとするが、それさえをもかわされながら斬り捨てられた。

 

「おぉ!!」

 

 斬り捨てられた私がたまらず、後ろに下がり――

 

「――何のぉ!!」

 

 だが、後ろに回転した私は火の剣を勢いよく振った事で私達の間に炎の壁を張る。そして、その炎の壁に向かって雷を纏う剣での鋭い突きを連続的に超高速で放ち続ける。

 

「〝天魔王流〟」

 

「〝猛炎雷雨〟!!!」

 

 目をくらましている炎の壁から数々の雷を纏う突きがヴィザを襲いかかってきた。しかも炎の壁を突く際に刀が炎をも纏った事で威力がさらに強化されていた。

 そんな攻撃にヴィザは――

 

「フン!」

 

 実に熟練している剣さばきを披露してみせた。〝猛炎雷雨〟にさえも的確な剣さばきで対応した。

 

「!!――オォ!!」

 

 それに気付いた私は片方の刀も突き、さらに二刀から出す炎と雷の勢いを強引にでも強まらせた。

 

「むっ!?」

 

 ゴリ押しの攻撃にヴィザも少し押し込まれ――

 

「……やりますか」

 

 その瞬間、炎の壁が突如細切れにされ――私も吹っ飛ばされた。

 

「!!」

 

 それでも踏ん張ってみせた。そして私の前にヴィザが堂々と姿をみせる。身構える私にヴィザは微笑む。

 

「いやはや、まさか――〝悪魔の実〟の能力によるものでもない火と雷を出す剣とは……世界は真に広いですな」

 

 〝バシレウス〟に所属するだけはあってヴィザは私が出した火と雷の剣が〝悪魔の実〟の能力によるものではないと容易く看破した。

 それはそうとして私の剣に関しても彼はたまげていた。色々な意味で卓越している彼を驚愕させられたという事実に私もクスッとした。

 

「驚きましたか?えぇ、これこそが私の剣ですよ――この剣であなたを倒しましょう……!」

 

「それはそれは……」

 

 私が改めてそう宣言するとヴィザも眉を上げた。そして

 

「でしたら――これはいかがかな?」

 

 そう囁いたヴィザは剣を下方向に掲げた。その瞬間――

 

「!!」

 

 それに勘付いた私は素早く後ろに下がった。

 

「おや、避けられましたか」

 

 そう言うヴィザの周囲には彼を中心として同心円状に複数の円を広げ、その円周上を数々の〝剣〟を滑走させていた。

 さっき見ていたからこそ、知っているあまりにも強大な威力を秘めているその星間図にも見紛える光景に私は冷や汗を流しながら――笑みを浮かべた。

 

「出ましたね……!」

 

「うむ――この力を知ってなお、それでも挫けずに立ち向かおうとするのか……」

 

 「オルガノン」の力を前にする私の姿勢にヴィザも感嘆する。

 

「……えぇ、私は「世界一の剣士」になるんです」

 

「――あの人の隣に立つ為に……!」

 

「だからこそ、こういうのは歓迎ですよ」

 

「ここを突破すれば――さらに強くなるんですから!!」

 

 そう笑みを浮かべた私の野心にヴィザはますます感嘆する。

 

「なるほど――それは大きい野望ですな」

 

「――ですが、果たして私を倒せるかな?」

 

「倒す」

 

 そして試みにそう囁いてみるヴィザに対して私は即座にそう言い放った。その途端に私が駆けていった。

 

「……気合だけでは足りませんぞ」

 

 そんな私にヴィザが宥めるかのようにそう言い――周囲の〝剣〟を私に向かって容赦なく襲いかからせた。

 その怒涛の攻撃に対して私は――

 

「〝天魔王流〟」

 

「〝風之巻〟」

 

「〝千変万化〟!!!」

 

 〝千変万化〟で対応した。

 全方向からそれぞれ素早く、鋭く――しかも攻撃の規則性と速度をそれぞれ少しズレさせるという老獪ならではの仕組みも込められる攻撃を私は――素早く避ける、二刀で防ぐ等でかわした。

 

「ほぅ……!」

 

 その身ぶりにヴィザもやはり感嘆した――それもその筈。その威力により逃れられた、突破できた者がほとんどいない程に猛烈な「オルガノン」の攻撃を私が対応できているのだから……

 なお、なぜ対応できているかというと――

 

「(この私1人で100人と戦うという試みを経験してみて正解だったわ!!)」

 

 そう、実は私は〝多勢に無勢〟を経験する為に100人の猛者達との戦いを試みる事があったのだ。

 全方向から休む間さえをも与えられない攻撃を受けてきた経験があったからこそ、今の「オルガノン」の猛烈な攻撃にも対応できていたのだ。

 

「オォォォォ!!!」

 

 数々の〝剣〟に対応しながらもヴィザに近付こうとする私の姿にヴィザは――

 

「ですが、まだまだですな」

 

 そう囁いた途端に「オルガノン」の〝剣〟の速度が突如さらに上昇された。

 

「!!」

 

 それに私は足を止め、防衛に専念せざるを得なくなった。

 

「オォォォォ!!!」

 

 速度を上昇された影響でさらに鋭くなったその怒涛の攻撃を私は何とか防いでいて――しかし、完全にではない故に少しずつ傷を負わされていった。

 

「ほら」

 

 そんな私を数本の〝剣〟を重ねたものが襲いかかった。それに私は素早く二刀で防ぐ――が、その勢いを打ち消せず――勢いよく吹っ飛ばされた。

 

「ぐ!」

 

 地に叩き付けられた私はそれでもすぐ起き上がる――が、痛みと疲労感により身体から少し力がつい抜けてしまった。

 そんな私に一本の〝剣〟が――

 

「!!!」

 

 

――その〝剣〟が……

 

――私の胸を斬った……

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