ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第124話〝限界を超えて荒ぶれ〟

「…!!」

 

 〝バシレウス〟のある船の船上で戦っているオレだが、突如何かを感じ取れた。

 それは――「見聞色」……でもない、何かというと――〝虫の知らせ〟というような……?

 ――そして、オレが感じたのは……

 

「小紫?」

 

 オレにとって大切な存在に何かが起ころうとしている事だった。

 それを認識した途端に狼狽した。

 

「一体何かが……!!」

 

 小紫の身を案じずにはいられなかったオレ――の顔に足を強く叩き込まれた。

 ――ハイレインと戦っている最中だったが、突如固まったオレの隙を見逃さない彼が攻撃を仕掛けてきたのだ。

 その攻撃も通じないオレだが、突如の事で微かに下がった。その様子を劣勢だと見なしたハイレインはその機会を逃さずに追い詰め――更なる攻撃を加えようとする。

 

 その場に音が響かれる。

 

「!!」

 

「…」

 

 ……ハイレインの蹴りはオレが「神武」を構える事で防いでいた。そして「神武」を強引に振る事で彼を跳ねのけてやった。

 いったん戦況に余裕ができたオレはすぐ「見聞色」を発動して小紫の状況を把握しようとする。そして――

 

「…」

 

 オレは真剣な表情を浮かべる。

 

「随分と焦っているようだな?――何か気になる事があるのか?」

 

 そんな態度にハイレインは駆けながら挑発めいた言葉を口にする。

 その姿勢、何より小紫の状況を把握したオレは思案に耽っていた。

 

「(……いや!!信じろ!!このオレの隣で生きる決意をしてくれた女を!!)」

 

「(その想いに応えてやがれぇ!!オレぇ!!)」

 

「(今は――できる事をやるだけだ!!)」

 

 熟考し、やがて自身に言い聞かせるようにそう決断したオレはハイレインに対してとりあえず注力する事にした――

 

        ●

 

「ぎぃい!!?」

 

 小紫――私は胸を深く斬られた。

 

 ――私はスサノオさんの隣に立ちたい。それには「世界一の剣士」にならなければならないと考えていた。

 そんなところに――ヴィザと遭遇した。

 腕の立つ剣士と見込められる彼との手合わせに挑んだが……予想を超えるその強さに私はいいようにやられていた。

 そして――今、胸を斬られた。

 

「「「小紫様!!?」」」

 

「…!!」

 

「マジ?」

 

「び、美女が〜〜!!」

 

「ケイさん!?」

 

 その事態に静観していた河松達が悲鳴を上げ、ハクジも険しい表情を浮かべ、ヴァニカも顔を引きつらせた。

 ……なお、何かズレた悲鳴をどこから上げられそれに対してのツッコミも上げられているが、それは別にいいだろう。

 

「……おや?」

 

 一方で私を斬った張本人であるヴィザは純粋に疑問を抱いていた。それは――

 

「(浅い……?)」

 

 「オルガノン」の〝剣〟が私の胸を深く斬ったが、その程度がヴィザには薄手だと見受けられたようだ。

 その直感が的中するかのように

 

「――オォ!!」

 

 後ろに吹っ飛ばされかけていた私はそれでも何とか踏ん張ってみせ――態勢を立て直した。

 

「はぁ…はぁ……危なかった……」

 

 堂々と立つ私の姿にその場にいる者達が仰天する。

 

「ほぅ……!」

 

「「「小紫様!!」」」

 

「…!」

 

「あ……だよね〜♪」

 

「――でも!美女のおっ…胸がぁ!!ひでぇよ!!」

 

「いや!ほんで!ケイさぁん!!」

 

 ヴィザが感嘆の声を上げ、河松達も安堵の声を上げた。

 ……なお、やっぱりズレた悲鳴をどこから上げられそれに対してのツッコミもまた上げられた。

 とにかく「オルガノン」の〝剣〟を身に受けた私がそれでも立ってみせたという事態にヴィザも興味をそそられて口を開く。

 

「……さっきの攻撃――本来なら今のよりもっと深く斬れた筈なんてすが……そうすれば、あなたを確実に戦闘不能にできたので」

 

 自身がそのつもりで「オルガノン」の〝剣〟を私に当てていたのだ。だが、私が〝剣〟を身に受けた時にヴィザはその手応えに違和感を感じられたのだ。

 まぁ、それでも決して軽くはない傷を負わされた私がそれでも立ったという事実はさすがだというしかなかったが……

 その言葉に私は――苦悶して笑っていた。

 

「(……危なかった。さっきの一撃――まともに受けていれば、確実にやられてた)」

 

「(……偶然足を滑らせなければ、そうなっていた)」

 

 さっきの状況、そしてある物事に関してそう思案した私はちらりと足下を見た。そこには――血があった。一見ただの血だが――実はそれこそがヴァニカの能力による血であった。

 その血で足を滑らせた私の態勢が少し崩された事で――〝剣〟を受けた際の傷の深さを少し浅くする事ができた。

 まさに幸運であった――まぁ、それでも結局深い傷を負わされたが……それでも立ち上がれたのも私の精神力が尋常ではないからのもあるが……

 

「――この幸運をものにしなければな……!!」

 

 身に舞い降りた幸運を噛み締めた私は改めて決意を固くする――

 その姿勢にヴィザは眉を上げる。

 

「おや……やるんですか?」

 

「……えぇ、あなたとの勝負から逃げる等……私にはできませんよ」

 

 何を思ったのか彼からそう確認してくるのに対して私はそう即答した。するとヴィザが困り顔をみせた。

 

「……本当によろしいですか?その傷の深さと出血量じゃ戦えるどころか――死ぬ可能性が高いでしょう」

 

「……あなたの事情は知りませんが、そう死に急ごうとは思えません」

 

「……目標があるのでしたら、生きていれば機会を手にする事ができると想いますが?」

 

 そしてヴィザが私を諭すかのようにそう言い張ってきた――豊富な経験を積んできた彼にはまるで死に急いでいるように見受けられる私の姿勢に思うところがあるようだ。

 ……まぁ、確かに私もそれを考えない事はない。

 負わされた傷の深ささえを気にせずに勝利にこだわりすぎると――いずれ果てるだろう。

 そうなると――目標……黒炭オロチへの復讐、ワノ国の大改革、そして――スサノオさんの隣で生きるという目標を果たせなくなってしまう。

 そもそも、「世界一の剣士」を目指す理由も――スサノオさんの隣に立つのにふさわしい強さを身に付ける為だった。

 なのに、あまりにこだわりすぎるせいで死ぬと――本末転倒になってしまう。全くもって笑えない話だ。

 

 ――せっかくスサノオさんが私の事を想ってくれているのに、そうなると――あの人に申し訳ない。

 

 ――……でも

 

「でも、今の私が心からそうしたいと思っているんだ」

 

「それに背を向けると――生き永らえる事ができても……それは生きる屍にしかならない」

 

「そうなるぐらいなら――最悪の事態も覚悟してでもやってみせる!!!」

 

 覚悟を決めた私がそう口にするのにつられて「覇王色」を放った。

 その激しき覇気、何より――表明した覚悟にヴィザも真剣な表情を浮かべ

 

「……それは失礼しました。そこまで覚悟している以上――手心を加える訳にはいきませんな――戦士よ」

 

「心遣い感謝する」

 

 そう宣言し、剣を構えるヴィザに対して私は獰猛な笑みを浮かべ、二刀を構える。

 その瞬間から時は止められた――私達は微かさえも身動きせずに静まった。

 私達は理解しているのだ――微かでも下手な動きをすれば、それが勝敗を決する元にもなり得るという事を……

 故に私達はどう動くべきか熟考していた。

 

「…(ヴィザは強い上に経験も豊富だ。考えられる限りのやり方さえにも対処できるだろう)」

 

「(というか、この私にできる事も限られるだろう)」

 

 ヴィザの強さ、そして今の自身の状態に関してもそう認識する私は戦略に悩まされざるを得なかった。ふと、私は「オルガノン」が展開する星間図じみる空間を横見する。

 

「(これの性能が高いのもそうだが、その強みを上手く活かしている。故に隙が微かさえも見つけられない……そんなものの攻略法等、なかなか思い付かんな……!)」

 

 ヴィザが上手く全発揮できている「オルガノン」の能力に私は苦悶せざるを得なかった。それでも考え考えてみる。そして――

 

「(……この性能の型を考えれば〝あの技〟なら――!)」

 

 そう着想した私はさらに考えを巡らせ――やがて結論に至った。

 

「〝乾坤一擲〟――でいこうか」

 

 覚悟を決めた私は獰猛な笑みを浮かべ――そして両手がそれぞれ握る二刀をちらりと見る。

 

「「天羽々斬」――」

 

「「閻魔」――」

 

「――解放」

 

 私がそう宣した途端にその二刀から激しき覇気が湧き出た――私の覇気を強引に引き出し、吸い取っているのだ。

 

「むっ!?」

 

 その激しくて異様な覇気にヴィザも表情を引き締め、そして理解する。

 次にこの私が全てを賭けるという決意を……

 その覚悟に応えてヴィザ自身も全身全霊をかけて――待ち構える事にした。それにつられて私も前のめりになる。

 

「――いざ!勝負!」

 

 そして私がそう宣言した途端に地を強く跳ね――勢いよく駆け出した。

 

「―」

 

 そんな私に対してヴィザは「オルガノン」の〝剣〟を全て走らせた。その動作力、速度もさっきよりさらに上昇している〝剣〟が迫ってくるのに私は――

 

「―」

 

 素早く――激しく――動いてみせた。

 

「!!」

 

「―」

 

 その動きは規則性が不安定的に見受けられる程に猛烈で瞬発力だった。

 そういう動きをする事で私は〝剣〟の猛攻を避ける、二刀で防ぐ等でかわしてみせた。そして、そのままヴィザに近付いていく――が

 

「…!!」

 

 やはりヴィザが操作しているだけはあって〝剣〟の動作はあまりにも素早い上に的確であった。故に私の動きにさえも追い付けていた。

 それに伴い私の身体も少しずつ傷を負わされていった……が

 

「(目をそらすな!!よく見ろ!!記憶しろ!!予測しろ!!)」

 

 そんな窮地に立たされているにも関わらずに私は怯まずに激しく襲いかかっている〝剣〟の動作を――限界の限り凝視する――〝学習する〟。

 ――私が「オルガノン」の最大威力から目をそらさずに凝視する事でその仔細を微かさえも零さずに頭に留めておき――その情報から次に来るであろう動作を予測し、前もって行動する。

 ――だが、それだけではまだ足りない。だからこそ、今のところみせていないであろう動作さえをも限界を超えてでも予測してみせ――それに伴い自身がとるべき的確な動きを導き出し、実行する。

 

「――何と」

 

 〝剣〟をかわしている私の動きから彼女が何をやったのかを勘付いたヴィザも驚愕せずにはいられなかった。

 

「〝剣〟の動作を精察し、そこから予測し――さらに的確な動きを導き出すとは……!!」

 

「もはや――ただの「見聞色」ではない……そう――〝未来視〟の域に辿り着けているかもしれませんな……!!」

 

「……しかも、それだけではないな?」

 

 そう見当を付いたヴィザはさらに要素が他にも存在しているのにも気付いた。だが、それが何なのか分からない彼は私の動きを注視してみる。そして

 

「……!あの動き――」

 

 気付く。

 

「まるで小紫本人の動きじゃないような……?」

 

「――もしや?他者の動きを模倣しているのか……!?」

 

 私の動きをヴィザはそう認識し、その事からそう見当を付く。

 ――その見当通り、今の私の動きは――今まで見てきた猛者の動きを参考にしているのだ。

 ただ、猛者の動きを模倣する以上、かつてとは成長した私の身体でもまだついていけない――筈だったが

 

「(今こそ全てを出し切れ!!私の身体!!)」

 

 私の身体能力を限界以上に引き出していたのだ。そして――

 

「(私が見てきた猛者――スサノオさん!!カイドウさん!!皆!!そして――ヴィザ!!)」

 

 私が見てきた猛者達の動きを全て網羅した動きを私が実行してみせた。

 

「……!!?――天女?」

 

 そんな私の動きを目視したヴィザが呆然とそう呟いた……

 

 

――そう、それはまるで天女の如き神々しくも美しく踊っているようだった……

 

 

 その動きにヴィザだけではなく、その場にいる者達を魅せられていた。

 ――そして

 

「(!!今ならば――〝あの技〟をやれる!!)」

 

 今の自身の身体能力が上昇していると気付いた私はそう判断した。

 ――まず身体を激しく回転し、自身の周囲に二刀を球形に超高速で動かした。

 

 

――それはまるで荒々しく獰猛な魂のようだった……

 

「〝天魔王流〟」

 

「〝天魔王荒御魂〟!!!」

 

 その技を披露する私を数々の〝剣〟が容赦なく襲いかかる――

 

 その場に大きな音が立て続けに響かれる。

 

 ――数々の〝剣〟が〝天魔王荒御魂〟の威力に適わず、次々に破壊されていった。

 

「!!」

 

 その事態に目を見開かずにはいられないヴィザに私は〝天魔王荒御魂〟を続けながら――突進した。

 

「!!――フッ!!」

 

 それにすぐ冷静さを取り戻したヴィザはまだ無事な〝剣〟を全て自身の前に重ねる事で盾として形成する。

 

「オォォォォ!!」

 

 たが、その盾等〝天魔王荒御魂〟の敵ではなかった。

 しっかり重ねられている数々の〝剣〟を次々に破壊しながら突進してくる私にヴィザは――待ち構えていた。

 やがて私とヴィザの間が確実になくなり、もはや〝天魔王荒御魂〟がヴィザを斬り刻むだけ――かと思われた。

 

「――!!そこ!!」

 

 だが、突如目を光らせたヴィザは「オルガノン」を〝天魔王荒御魂〟に突いた!

 その途端に突進していた〝天魔王荒御魂〟が……ヴィザの目前で停止された。そして――凄まじき回転が少しずつ弱まり――やがて私の姿が露わになった。

 それは――右肩辺りを「オルガノン」で貫かれていた。

 さすがは歴然な戦士であるヴィザだ。彼は初めて披露された〝天魔王荒御魂〟さえもその空所を見つけ、そこを突いた事で突破したのだ。

 

――小紫の全身全霊をかけた攻撃はまたしてもヴィザに通じなかった……

 

 

 

 

 

……かと思われた。

 

「!?(浅い……!?)」

 

 だが「オルガノン」が私の右肩辺りを貫いた手応えにヴィザは違和感を感じた。

 その瞬間、私の左手が握る刀がヴィザの「オルガノン」を握る方の腕を貫いた!

 

「!?」

 

 その事態に驚愕する彼の目前で私は――右手が握る刀を左側腹部辺りに構えていた――居合斬りの構え擬きをとっていたのだ。

 

「!?(しまった――)」

 

 今の状況からその意図を悟ったヴィザに私は笑みを浮かべていた。

 

「(これさえも罠だったのか――!!)」

 

「(信じましたよ――あなたなら、この技さえをも突破する筈だと!!)」

 

 そう――実はヴィザなら〝天魔王荒御魂〟さえをも突破できるだろうと推定した私はそれを前提として前もって次の準備に取り掛かるようにしていたのだ。

 だから〝天魔王荒御魂〟を破られた私は動揺せずに素早く態勢を整えられた。

 

「〝天魔王流〟」

 

「〝天地決別〟!!!」

 

 そう見当を付いたヴィザに対して私は強烈な勢いで刀を抜いた。

 それから発する斬撃をヴィザが今度は――確実に受けた。

 

「「「!!!」」」

 

 その光景にその場にいる者達が目を見開いた。その際に抱える感情は立場が違っても全く同じだった。

 そして、ヴィザは――

 

「ごぼ……」

 

 身体を深く斬られ、そこから血が激しく湧き出た。その傷の深さ、出血量からもはやこれまでだと見受けられた彼は――しかし、笑みを浮かべていた。

 それも負の感情が感じられず、様々な喜びを込められていた。

 

「これは……一本取られましたねぇ」

 

 そう面白可笑しそうにする彼は私を凝視し――口を開く。

 

「――見事」

 

「…!」

 

 心を込める賛辞を贈った。

 目を見開く私に微笑んだヴィザの身体が――倒れようとする。その時、彼の脳内に走馬灯がよぎった……

 

「…(〝バシレウス〟で生まれてから兵士として戦いに身を長らく寄せてきた)」

 

「(その中で様々な戦士と出会い、戦った)」

 

「(戦いで如何なるものが起こった)」

 

「(だから戦いはやめられなかった)」

 

「(最後に――この方と戦い、そしてこのような最期を迎える……あぁ、なんて……)」

 

「(実に――充実した人生だった……)」

 

 最後に心からそう思ったヴィザは地に倒れ――そして息絶えた……

 そんな彼に対して私は――頭を深く下げた。

 

「……ありがとうございました」

 

 

――手合わせの申し込みに応え、新たな強さの糧になってくれた剣豪に小紫は万謝した……

 

 

『暴獣海賊団 小紫

  VS

 バシレウス ヴィザ』

 

『サンモン

「ある地の戦い」』

 

『勝者 小紫』

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