ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第126話〝メチャクチャにされる正義の砦〟

時は遡って――

 

 海軍Gー3基地では〝サンモン〟に侵攻してきた〝バシレウス〟、それで発生した被害に対処しようと多くの海兵達が出勤していった。

 だが、全員が出勤した訳ではない。基地の警備、そして現場で活動する海兵達の統括の為にそれなりに数人の海兵達もその中に留まっていた。

 ――そして、そこにまでも騒動が及ぼんでいた。

 それを知らしめるかのように――大きな音が響かれた。

 

「「「!!?」」」

 

 その大音に基地内を動き回っていた海兵達がその源であろう方向に視線を一気に向けると――門が破られていた。それはまるで重い攻撃を受けたかのような様だった。そして――

 

「ハハハ!!テメェらぁ!!皆殺しだぁ!!」

 

 その張本人らしき男性が基地内に堂々と踏み入ってきた。

 その風貌により明らかに敵、それも非常事態の中で海軍基地に侵入してきたという事態に海兵達も激しく動揺せざるを得なかった。

 

「――敵だ!!!」

 

「冷静に事に当たれ!!!」

 

「コイツらをもうこれ以上好き勝手にさせるな!!!」

 

 だが、何とか冷静になった海兵達がその侵入者を包囲し身構えた。そんな彼らをその侵入者――エネドラは嘲笑する。

 

「ハハハハハ!!このエネドラを倒せると思ってんのか!?身の程を知れよ!!」

 

 その彼があまりにも自身達を軽んじる態度に海兵達は一気に怒りを露にする。

 

「――コイツにオレ達をナメたマネを後悔させてやれ!!!」

 

「「「おう!!」」」

 

 その口火を切られた途端に海兵達がエネドラに飛びかかった――

 

「……ハッ!」

 

        ●

 

「う…ぅ…」

 

「ぐ……」

 

 ――その場に死屍累々が広がっていた。その中心でただ1人だけ立っている男――エネドラがバカ笑いする。

 

「――ハッ!!やっぱ、ザコじゃねぇか!!」

 

 その彼が目下に倒れ伏せている男達をそう嘲笑する――そう、果敢に戦おうとした海兵達はエネドラによってあっけなく返り討ちにされたのだ。

 基地への侵入を許してしまった挙句、その張本人を排除できずに倒れ伏せられるという事態に無念の想いを抱えずにはいられない海兵達の姿にエネドラは加虐心をくすぐられる。

 元々残忍な彼は目下の海兵達をさらにいたぶりたいという暗い欲求が湧くが――

 

「……っと、今は仕事中だ。めんどクセぇが……あの根暗野郎にいわれるのももっとめんどクセぇからな」

 

 自身の上司、彼から任された仕事を思い出したエネドラは不快ながらも海兵達を放置して基地内でさらに暴れようと足を進める――

 

        ●

 

「ハハハ!!どうしたぁ!!その程度かぁ!?」

 

「「「うわぁぁぁ!!」」」

 

 あれから移動したエネドラはその先でも暴れ回ってきた。もちろんそこにいる海兵達もそれを止めようと戦ったが、さっきのと同じくあっけなく返り討ちにされてしまった。

 

「クソ!!このままではここをメチャクチャにされてしまう!!」

 

「あぁ!!だからこそ何としてでも止めねばならないのに!!」

 

 基地内を暴れ回るエネドラを止められない事態に海兵達は歯を食いしばる一方でエネドラはそんな彼らを嘲笑する。

 

「ハハハ!!ざまぁね――……!?」

 

 だが、突如そんな彼に向かって何かが強烈な勢いで放たれてきた。それを――さらに何かに防がれた。

 

「……あぁ?」

 

 といえ、水を差されたような気分になったエネドラがイラつきながら視線を向けると――そこに新たな海兵が2人も姿を現してきた。

 それは――まず1人は明るめの色で少しふわっとしたボブヘアのおしとやか系女性、もう1人は右に多めに流した前髪ときつめな顔つきと紫の目が特徴な女性であった。

 前者の名はレイで後者の名はアイという。

 その2人がエネドラの前に立ち塞がった。

 

「……酷い事するわね……」

 

「――よくもやってくれましたね!!侵入者!!」

 

 倒れ伏せている海兵達の姿、そしつて基地内での被害を目視したレイが不機嫌そうにそう呟き、アイも怒りを隠さずに怒鳴り付ける。

 

「……ハッ、新たなザコ共か。ムダだってのによぉ〜」

 

 だが、彼女達の怒りさえをもエネドラは気にせずに嘲笑する。そのあまりにも横柄な態度に2人は嫌そうな顔をする。

 

「……随分と横暴な男性ね……仲間からも遠慮されそうね。色々な意味で」

 

「そうですね。私もああいうタイプとは仕事以外では関わりたくないですね」

 

 2人がそれぞれ意見を述べるが、その同じ内容にエネドラは――ブチ切れた。

 

「……女ブタ共が……!!……メチャクチャにしてやるよ……!!」

 

 額に青筋を走らせ、目を血走らせる彼がそう宣し――攻撃を仕掛けようとする。

 

「来るわ!アイちゃん!」

 

「はい!レイさん!」

 

 その姿勢に2人もそれぞれ身構える。

 

「――オラァ!!」

 

 エネドラの身体から何かが湧き出て――2人に向かっていった。だが、それを2人共飛び跳ねた事であっけなく避けられた。

 そしてレイは二丁拳銃を手に取り、エネドラに照準を合わせた。

 

「―」

 

 レイが容赦なく撃った。その軌道は実に的確でエネドラの顔に当たる――寸前に彼の身体から湧き出た何かに防がれた。

 

「…っ」

 

「ハッ!!」

 

 それに険しい表情を浮かべたレイに対してドヤ顔をみせるエネドラ――の目下にアイが屈めながら刀を構えていた。

 

「(まだよ!)」

 

 彼が自身に気付いていないのを確認したアイは刀を勢いよく振り上げた――

 

「…!!」

 

「ハッ!!」

 

 だが、強烈な勢いで放たれた刀さえもエネドラからの何かに防がれた。

 目を見開いたアイにもイヤらしい笑みをみせたエネドラが彼女を容赦なく叩き潰そうとする――が、アイが素早く下がった。

 その彼女にレイが近付き、議論を開始する。

 

「……やっぱり〝悪魔の実〟ね。しかも厄介な能力」

 

「えぇ、さっき刀を防がれた時の手応え、あれは――」

 

 険しい表情を浮かべる2人はエネドラの身回りを不気味に蠢いている黒っぽい茶色い何かを睨み付ける。

 そんな2人にエネドラはバカ笑いする。

 

「ハハハハハ!!――オレの「ボルボロス」の力はテメェらに破られるものじゃねぇよ!!」

 

 

――「ボルボロス」

 

それは〝ドロドロの実〟を食った武器の事を指す。

その能力は泥を自在に操るというものである。

それによる泥がエネドラの身回りを覆う事で攻撃から守っているのだ。

 

 

 その「ボルボロス」の力を誇示するエネドラだが、そんな彼をよそにレイとアイは議論を続ける。

 

「――泥ですね」

 

「泥……その性質を考えると手間かかるわね」

 

 自身が感じた手応えからその正体を看破したアイの指摘を耳にしたレイはその情報を基にして、その撃破方法に関しての思案に耽る。

 そんな彼女にアイは自身の考えを述べる。

 

「……私が前に出ますので、レイさんはサポートをお願いします」

 

「えぇ、そうね――ただ、私も機があれば前に出るつもり」

 

「はい」

 

 そう議論する2人をエネドラは静観する――訳がなく、攻撃を仕掛けようとする。

 

「「!」」

 

「ハハハ!!テメェらが攻撃してくるのを待つ訳がねぇだろ!!」

 

 イヤらしい笑みを浮かべるエネドラが2人に駆け向かいながら泥で大きな塊を形作る。

 

「…!!」

 

 それを目視したアイはレイの前に素早く出ながら刀を構え、そして力を入れる。

 

「ハッ!!剣等ムダぁ!!」

 

 その姿勢をエネドラがバカにしながら泥の塊を当てようとするのに対してアイは――思案に耽っていた。

 

「(泥には粘性がある。そんなものを斬っても確実なダメージを与えられない上に刀を奪われるかもしれない……なら!)はぁぁ!!」

 

 そして考えをまとまったアイに容赦なく襲いかかる泥の塊――が突如斬り捨てられた。

 

「あぁ!?」

 

 その事態にエネドラも目を見開き、固まる。そんな彼にアイが素早く駆け向かった。

 

「(やっぱり、ある程度の速さで振れば何とかなれる!!)」

 

 その状況から自身の考えが妥当であると確認できた彼女はエネドラを斬り捨てようとする。

 

「チッ!」

 

 彼女が自身に向かって近付いてくるのにエネドラはイラつきながら防衛として泥の塊を作りながら、攻撃としても塊を作ろうとする。

 だが、その泥の塊が突如吹っ飛ばされた――レイが放った弾によって。

 

「あぁ!?」

 

「(感謝します!レイさん!)」

 

 ますますイラついてしまうエネドラをよそにアイはサポートをしてくれたレイに感謝を覚えた。その彼女にレイも微笑み頷く。

 

「――覚悟!!」

 

 そう宣したアイがエネドラに全身全霊を込める一撃を放とうとし――

 

「〜〜ざけんなぁぁぁ!!」

 

 だが、堪忍袋の緒が完全に切れたエネドラによって泥の塊がさらに素早く鋭く動かされ、刀ごとアイの両腕を絡ませられた。

 

「っ!!」

 

「くたばれ!!」

 

 精一杯の攻撃を防がれただけに留まらずに身動きを封じられてしまったアイが顔を青くするのに対してエネドラは形成した泥の鋭く尖った剣を容赦なく振ろうとし――

 

「っ!!」

 

 だが彼は何かに気付き、泥の剣を防衛として動かした。

 ――レイがアイを助ける為にエネドラに向かって撃ったのだ。

 自身が撃った弾を防いだ彼を目視したレイは――訝しげにしていた。

 

「…?」

 

 とにかくエネドラにどうであれ隙ができたのを良い事にアイは自身に絡ませられている泥から強引に引き剥がし、下がった。

 

「!〜〜チィィィ!!」

 

 さっきから思い通りにならない状況にエネドラもイラ立ちがさらに増していった。一方で下がったアイはレイに申し訳なさそうにする。

 

「すみません、確実なダメージを与えられなくて」

 

「平気よ。少なくともあなたの身が無事なら」

 

 彼女が詫びを入れるのを優しく受け入れるレイは続いてエネドラを鋭く凝視する。

 

「……それにあの能力についても少し分かってきたし」

 

「!」

 

「……あぁ!?」

 

 その言葉にアイが目を見開く一方でエネドラが顔をしかめ、しかし鼻を鳴らす。

 

「――ハッ!この「ボルボロス」の力が分かってきたぁ?下らねぇ事をほざくな!!」

 

「――でも、あなたの身体が泥そのものになっていないようけど?」

 

「…!!」

 

 そんな彼にレイはしかし冷静にそう指摘するとエネドラは目を見開き――歯を食いしばる。

 ――そうなのだ。エネドラが実を食った訳でもなく、能力を宿った武器を装備する形な故にどれだけ泥を自在に操作できても――身体を泥に変換させる事ができないのだ。

 その痛いところを突かれたエネドラだが

 

「〜〜だがぁ!!それが分かったところでテメェらがオレに適える訳がねぇんだ!!ただテメェらがくたばるだけだ!!」

 

 どうやら完全に頭に血が上がったらしいエネドラの身体から数々の泥の大きな塊がデタラメに湧き出てきた。

 

「――アイちゃん!」

 

「はい!」

 

 そんな姿勢に2人も素早く動き出す。

 

「―」

 

 襲い掛かってくる泥をアイは素早い剣さばきで斬り捨てる――が、さっきより多い泥の塊がデタラメに襲い掛かってきているんだ。

 さすがにアイも苦戦を強いられていた。

 

「く!」

 

「ハハハ――……!」

 

 そんなアイを嘲笑するエネドラに向かって数々の弾が強烈な勢いで放たれた――レイが弾を可能な限り撃ち続けているのだ。

 

「〜〜まずはテメェだ!!」

 

 その銃撃を泥の塊で防いだ事で事なきを得たエネドラだが、彼的にはうざったい姿勢に頭に血が上り、数々の泥の塊をレイにも襲い掛からせようとする――途端にその後ろにアイが刀を構えながら近付いてきた。

 

「覚悟!」

 

「あぁ!?」

 

 その襲撃にはギリギリで気付けたエネドラは何とか泥で斬撃を防ぐ――すると、今度はレイが銃を撃ってきた。

 ――片方からの攻撃をエネドラが防衛すれば、もう片方が攻撃してくる。その攻撃をも防衛したら今度は片方が再び攻撃してくる――エネドラに余裕を与えないその繰り返しの戦術をレイとアイが実践しているのだ。

 そうして自身をそのようなやり方で翻弄する2人にエネドラのもう既に高い沸点がさらに高まり――

 

「〜〜ア゛ァ゛!!テメェら!!いい加減にし――!!」

 

 胸内に溜まった怒りを全て解き放つかのように怒鳴り付ける……が、突如止まった。

 

「……!!」

 

 目を見開いたエネドラ。彼は気付いたのだ。

 ――彼の身回りには人の目には目視できない程の細長いワイヤーが多く設置されていた。それには鋭利性も機能されている故に彼がうかつに動けば、無惨に斬り刻まれるだろう。

 いつの間にそういう状況に陥ったのに驚愕するエネドラに対してアイは言い張る。

 

「あなた自身が能力者じゃないなら、こういうのは効果的な筈」

 

 ――彼女は剣と銃を取り扱えるが、それより得意としているのが――ワイヤーであった。それも海軍Gー3支部でも随一のワイヤーの使い手であると謳われる程だ。

 そんな彼女はエネドラの力に関してのレイの指摘を耳にした途端にその情報から彼が実体であると勘付き――そして自身の得意分野なら勝算を立てられるのにも気付けた。

 同じくその事を考えていたレイとの連携でアイはエネドラに気付かせないうちに数々のワイヤーをそれぞれ設置し――今の状況を作ったのだ。

 数々の鋭利なワイヤーに包囲されて身動きできないエネドラに対してアイは自身の手に巻き付いているワイヤーを容赦なく引っ張った。

 

「終わりよ!!」

 

 そう宣言した途端にエネドラを包囲している数々のワイヤーの範囲が強烈な勢いで絞り込まれた。

 そのまま数々の鋭利なワイヤーによって彼が無惨に斬り刻まれるのか――と思われた。

 

「〜〜ナメるなぁぁぁぁぁ!!!」

 

 そう激しく怒鳴り付けたエネドラの身体からさっきよりさらに凄まじく泥が湧き出てきた。その勢いの威力によりワイヤーの結界をも破壊していった。

 

「「!!?」」

 

 その思いがけない事態に動揺せざるを得なかったレイとアイを泥が容赦なく襲い掛かった。

 

「くたばれぇぇぇぇぇ!!!」

 

「「ギャアアア!!」」

 

 その凄まじい攻撃に2人共即座に反応できず、勢いよく吹っ飛ばされた。そのまま地に叩き付けられた2人にエネドラは息切れしながら

 

「はぁはぁ……調子に乗りやがって……少し遊びすぎたみてぇだな」

 

 自身がいいようにされたという事実に屈辱を覚える彼だが、もはや満身創痍になってしまったレイとアイの姿にイラつきがようやく晴れた。

 

「……クク、これで終わりじゃねぇぜ?」

 

 そしてイヤらしい笑みを浮かべた彼はその2人に近付く――自身を翻弄した2人をなぶる為に。

 

「大分調子に乗ったよな?罰は受けてもらわなくちゃなぁ!」

 

 そう宣したエネドラの泥が2人を容赦なく襲いかかる……

 

 

 

 ……が、突如細切れにされた。

 

「……あぁ!?」

 

 突如の事に目を見開いたエネドラも吹っ飛ばされた。

 何とか踏ん張った彼の視線先には――倒れ伏せているレイとアイを守るかのように堂々と立つ男性がいた。

 

「――もうお前には好き勝手にさせない!!」

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