海軍支部の基地にある軍艦が辿り着いた。
それは――……
見るも耐えない程にボロボロな軍艦だった。
その船のボロボロさにざわついた多くの海兵達が港に集結した。
そして……多くの海兵達の目がボロボロな軍艦に向けているのをいい事に基地の中に侵入した影が3つ――
「海兵共の目を盗んで基地の中に入れたまではいいが……」
「ここにもまだ人がたくさんいるね……」
カタクリとヤマト、そしてオレが基地に侵入していた。〝ブリュレ〟というカタクリの妹を救助する為に――
といえ基地の中にまだ海兵達が残ってて、彼女の元に静かに行き着くのは難しいそうだ。
「……派手に暴れるわけにはいかねぇし……何とか隙を作れば……」
これからの動きに悩むカタクリを見つめるオレは言葉を発した。
「よーし、ならよ……オレが暴れてやるぜ!」
オレのその提案にカタクリとヤマトは目を見開く。
「はぁ!?おい!騒ぎを起こすわけにはいかねぇって言った先から!」
「お兄さん⁉」
「オレが囮になる!そんでお前は妹を助けに行って来い!ヤマトはカタクリについて行け!なぁに、オレは大丈夫だ!」
「お兄さん……」
「……!お前……」
驚愕したカタクリにオレはニッとする。
「同じ兄としてお前達の事をほっとけられないんだ……力になるぜ」
「……くたばるなよ……!すぐに戻る」
カタクリの言葉にオレは笑みを深くする。
「ハハッ!オレをあんまりナメんなよ!!」
オレは多くの海兵達の目が自身に向けてくるように姿を現した。
「ん?……子供⁉」
「オラァ!」
オレはすぐ近くの海兵をパンチで吹っ飛ばした。
その事態に固まった海兵達もすぐオレを取り押さえようとするが――
オレは近くの海兵の腕を掴み、振り回す。
その振り回しに数人の海兵達が吹っ飛ばされて、海兵達も距離を置いた。
「アハハハ!オレを捕まえてみろ!」
「く!なんてガキだ!」
「応援を呼べ!」
オレは海兵での振り回しの勢いをさらに強くし、海兵達を吹っ飛ばそうとして走り回る。
海兵達は焦ってオレから逃げ惑ってしまう。
「ほぅ……なかなかやるじゃねぇか」
「えへん!お兄さんは強いでしょ!」
オレの奮闘を陰から目にしたカタクリはつい感心して、ヤマトも自慢気にしていた。
「とにかく――行くぞ」
●
「オオオオ!!」
あれからオレは海兵達を次々と殴っていった。
「ンオラァァァ!!」
オレは戦闘でできた瓦礫を掴んで、それを海兵達に投げ込んでいった。
「オレこそが〝百獣のカイドウ〟の息子スサノオだぁぁぁ!!!」
オレがそう雄叫びを上げた途端――訳分からない事が起きた。
「……へ?」
オレを囲んだ海兵達が突然倒れ込んだ。何故か周りの海兵達が全員意識を失ったのだ。
「……何で急に気を失ったんだ……?……!」
奇妙な状況に首を傾げるオレだが、遠くからする多くの足音に気付く。
「まぁいいか!とりあえず――やるか!」
●
「ブリュレ!」
カタクリは牢エリアに辿り着くと収監されている妹のブリュレを見つけ出せた。
「え?カタクリお兄ちゃん……!」
「あぁ、そうだ!今開けるぞ」
ブリュレも兄の来訪に目を見開き、カタクリも妹の一応無事な姿に安堵し、鍵を開ける。
「お兄ちゃん……来てくれたんだ……!」
「あぁ、そうだ……ここをさっさと出るぞ!」
感激の涙を流すブリュレに頷くカタクリは彼女を背負い牢エリアを出る。
「あとはスサノオと合流するぞ!」
「うん!そうだね!」
カタクリとその言葉に頷くヤマトはスサノオを探し出そうとしばらく廊下を走る。
「(アイツは大丈夫か……?)!こっちか!」
スサノオの安否を気にしていたカタクリは彼の声がする方角に向かっていった。すると、そこには――
「ウオオオオ!!」
スサノオがやはり1人の海兵を振り回して多くの海兵達に叩きつけていた。
「何だ……無事か……」
「んな⁉か、カタクリお兄ちゃん!あれ何!?」
「あはははは!!やっぱり、お兄さんは最強だ!!」
「⁉「最強」……?この子の兄が「最強」?」
暴れ回っているスサノオの姿にカタクリは安堵し、ブリュレはドン引いてしまう。
その一方でヤマトは兄の勇姿に興奮していた。そして興奮しているヤマトの言葉に何か引っかかったブリュレが何やら呟いている。
妹の様子に気付いていないカタクリはスサノオに声掛けるが、ハイになっているように見えるスサノオがそれに反応しなかった。
「ハハハハハ!!」
「オイオイ……気付いてねぇな、こりゃ……ん?」
興奮しているスサノオに呆れたカタクリはふと上方に視線を向けると――
「嘘だろ……何故⁉」
「んな〜〜⁉な、何で……」
それを目にしたカタクリ、そしてブリュレは驚愕してしまう。何せ――
「何でカイドウがここに⁉」
龍に変身したカイドウが海軍支部の上空に君臨していたからだ。
大物の登場に肝を潰された2人に続いてヤマトも驚いた。最もこっちは軽い驚き方だが。
「あ、お父さんだ」
「え?あ、あぁ……あんたのお父さんだったんだ……ならあんた達を迎えに来ただけか……お父さん……お父さん!!?」
ヤマトの言葉にブリュレは目を真ん丸にして驚愕した。カタクリももちろん驚愕した。
●
「バズーカを構えぇ!!」
「ハハッ!来い!」
バズーカを構えている海兵達を前にオレも構えた。すると――
突然空から何かが落ちてきた。
「⁉ウオッ⁉」
何かが落ちた衝撃波により海兵達が吹っ飛ばされて、オレも吹っ飛ばされかけるところを気合で踏ん張った。
「な、何だぁ――え?」
落ちてきた何かにオレは目を向けると驚いた。何せ――
「スサノオ!探したぞ!」
カイドウ――親父だった。
オレを見つけた事で安堵した表情を浮かべる親父が呆然としたオレの元へ近付いてきた。オレの周りを見ながら。
「ウォロロロ……当然だが、やはりお前の強さにかなう海兵などいねぇ!!」
機嫌が良い親父にオレはハッとして先程の奇妙な状況について報告した。
「でも親父!オレが何もやっていないのに海兵の奴らが勝手に気絶しやがった事があるんだ!」
「!」
オレからの報告に親父は目を大きく開く。
やがて口を閉じた親父にオレは首を傾げる。
「……スサノオ」
「?何だ?」
「その時、お前は何してた?」
「え?……あー……確か……「オレこそが〝百獣のカイドウ〟の息子スサノオだ」と叫んだな」
オレの答えに親父は獰猛な笑みを浮かべる。
「……ウォロロロロ!!間違いねぇ!!「覇王色」だ!!」
「?「覇王色」……?……何だそりゃ?」
「ウォロロロ!それは後で教えてやる!しかし……有望だな!ウォロロロロ!!」
「?……よく分からんねぇが……親父が喜ぶからいいか!アハハハハ!」
機嫌良さげに高笑いした親父につれてオレも笑う。
突然鋭い表情に切り替えた親父がある方角を向いた。
「!?どうした?親父……」
「……スサノオ、オレのそばに寄れ」
親父が鋭い声でそう言ってきた。
親父のそんな様子を初めて見たオレはその言葉に素直に従った。そして問いかける。
「ど、どうしたの?」
「……この気配は……」
親父のその呟きを拾ったオレはたった今、近付いてくる強い気配を感じた。
そして……親父が警戒している、そしてオレが感じ取った気配の主がついに姿を現す――
「――ハ〜ハハハマママママ……まさかお前も来てたとはねぇ……久しぶりだねぇカイドウ……?」
「チッ……オレにケンカを売りにでも来たのか!!――リンリン!!」
ビッグ・マム海賊団船長
〝ビッグ・マム〟
シャーロット・リンリン
何故か雲に乗れている親父を越える巨体の老婆と親父が睨み合う。
オレはビッグマムを見上げて息を飲む。
これが……親父と肩を並べる大海賊の1人――〝ビッグ・マム〟シャーロット・リンリン……!!
こいつは菓子だけの為に〝国〟さえ攻め落とすイカれた怪物……!!
またカタクリ達数十人の子供達を産み落としちゃったとんでもない女……!!
ビッグマムの危険性を聞かれていたオレは油断できずに警戒しながらビッグマムを見つめる。
「ハ〜ハハママママ……それもいいが……おれは我が子達を迎えに来ただけさ……!」
「!……お前もか……」
「そうさ!それはそうといて……お前は一体何の目的でここに……ん?〝も〟?」
ビッグマムの来訪目的に親父は片目を開く一方でビッグマムは親父に来訪目的を問い返そうとし――呆然とした。
親父の言葉のある部分に反応してだ。
親父とビッグマムの間に何とも言えない空気が漂っていた。そこに何かそぐわない声が響き渡っていた。
「「「!!」」」
オレも親父も、そしてビッグマムも一層に視線を向けると――ブリュレを背負ったカタクリとヤマトが現れてきた。
そして何故かヤマトとブリュレが言い争っていた……
「お兄さんはね!赤ん坊の時に海兵達を吹っ飛ばして暴れ回った最強の男だよ!!」
「む〜何の!カタクリお兄ちゃんはね!生まれてこの方一度も地に背をつけた事がない〝超人〟なのよ!!」
「そんなの嘘だ!!生まれてから地に背をつけた事がないなんて!!」
「そっちこそ!!赤ん坊が海兵達を吹っ飛ばす⁉もっとマシな嘘を言うんだね!!」
「「ムムッ……!!」」
……一体何を言い争っているんだ……?
一触即発の事態にヤマト達が場違いな内容を言い合っているのにオレは首を傾げてしまう。
そしてヤマトがオレの事を自慢してくれるのに羞恥を感じだ。おそらく同じように感じているであろうカタクリが喋る。
「よせ、ブリュレ……ママ、見ての通り無事助け出した」
「そうみたいだねぇ」
「ママ!ごめんよ……うっかり拐われて……」
「ハ〜ハハママママ……全くだねぇ、ドジっ娘め!」
カタクリとブリュレとビッグマムが話し合う中、ヤマトがオレ達の元へ駆けてきた。
「お兄さん!お父さん!」
「おぉ!無事だったな!ヤマト!」
「ヤマト!無事で良かった」
「うん!」
オレとヤマトと親父が和気藹々と話し合った。
そんな中、オレを見つめているカタクリの視線にオレは気付く。
「ん?カタクリ……?」
「……スサノオ、お前はカイドウの息子だったんだな」
「……そうだ、驚いたか?」
「あぁ、驚いたぜ……全く」
ため息をつくカタクリをよそにビッグマムがオレに近付く。ビッグマムの目がオレとヤマトをじっくりと見る。
「……お前達がカイドウの子供達かい?」
「……そうだ!オレはスサノオ!〝百獣のカイドウ〟の息子だ!!」
「……わ、私はヤマト!〝百獣のカイドウ〟の娘!」
ビッグマムが威圧を出しながらの問いかけにオレは一瞬も怯むが――自ら名乗る。ヤマトも怯えながらも名乗った。
オレ達の名乗りについ呆気に取られたビッグマムも笑う。
「……ハ〜ハハハマママママ!カイドウ!本当にお前が子持ちになるとはねぇ!」
「うるせぇ!!」
ビッグマムの面白がる態度に親父はこめかみに青筋を走らせた。
「……お前と一戦交えても、お前の子達と話してみてもいいが……海軍に邪魔されるのもうっとうしいし、ここからさっさと去るよ」
「……フン」
ビッグマムがそう言うとカタクリとブリュレを従えて去っていこうとする。
その中、カタクリがオレに声掛けてくる。
「……お前には借りができたな……ありがとな」
「……こっちこそありがとな」
「……フン!何度も言うがカタクリお兄ちゃんは最高なのよ!!」
「……お兄さんの方が最高だよ!あっかんべ~!!」
ヤマトとブリュレがまたしても言い争いを再開してしまった。しまいにはヤマトがあっかんべーしてしまった。
少ししたいがみ合いをよそにオレ達もカタクリ達も船に乗り、海軍支部を無事去った――
「……カタクリ」
「!」
「お前の目から見てカイドウの子供達はどうだ?」
ビッグマムの問いかけにカタクリは目を瞑る――
やがて目を開けるカタクリは静かに言う。
「……ヤマトの方はまだ分からないが……スサノオの方は強くなる……それもバカにできない程に……とオレはそう見てる……!」
「!カタクリお兄ちゃん……⁉」
カタクリの導き出した結論にブリュレは目を見開くが……ビッグマムは獰猛な笑みを浮かべる。
「ハママ……!おれも同感だ……!……全く面白い子達が現れたものだ……!」
高笑いするビッグマムに頷くカタクリはスサノオに対しての戦意を静かに燃やす――
「(スサノオ……負けねぇからな……!)」
●
海軍本部――
そこは世界の均衡を守る〝三大勢力〟の一角にして〝正義〟を守る組織。
その中の一室に数人の海兵が座していて、深刻な空気が漂っていた。
「――まだ少年の身ながらも多くの海兵達を叩きのめした事、そして〝百獣のカイドウ〟の息子である事実から1億ベリーの懸賞金をこの少年に掛ける事を決定しました」
「初頭の手配から1億ベリーは世界的にも異例の破格ですが決して高くはないと判断しています」
「こういう悪の芽は早めにつかんでゆくゆくの拡大を防がねば!!!」
司会進行を務めている海兵の宣言に海兵達が顔を引き締まり、手配書を見つめる――
『スサノオ
懸賞金1億ベリー』
☆ついにスサノオの首に金を懸けられるー!!