ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第127話〝正義の牙〟

時は少し遡って――

 

 ――海軍Gー3基地にはある部屋が存在している。それは会議室である。

 そこで――人々が慌ただしく動き回っていた。

 

「被害の程は!?」

 

「敵をどれぐらい倒せた!?残りもどれぐらいだ!?」

 

 ――彼らは海軍Gー3支部上層部の海兵達だ。

 そんな者達は〝サンモン〟が陥ってしまった非常事態に対処する為に現場で活動かしる海兵達の統括を行っていたのだ。

 現場とは違う意味での戦場がそこには展開されていた。そして、統括に取り掛かっている海兵達の中心として指揮する海兵もいた。それが――

 

「――彼をそこに送ればいい」

 

「はっ!分かりました!――タクミ中将!!」

 

 逆光眼鏡と逆立てた黒髪と薄い顎ヒゲと加えタバコが特徴の中年男性――タクミ中将であった。

 〝サンモン〟のほとんどの状況、海兵達の居場所を把握している彼は各所にそれぞれ適任の海兵を派遣し、物事を効率よく運ぶように指示を下していた。

 ちなみに本来は基地長であるマサムネ中将が指揮する手配になっているが、肝心の彼は訳あって席を外している。故に次の地位に該当するタクミ中将が代理として指揮役を請け負っているのだ。

 とにかく、こういう危機的状況下で的確な指揮をしてくれている頼もしいタクミ中将だが――

 

「大変です!!タクミ中将!!」

 

「どうした!!」

 

 突如すごく焦燥している海兵から声を掛けられた彼がそのご用を聞くと――

 

「こ、ここに侵入者です!!」

 

「「「!!?」」」

 

 そのまさかの報告にタクミはもちろん、その部屋で動き回っている海兵達も固まった。だが、すぐ再起したタクミは状況を把握しようとする。

 

「今の状況は!?」

 

「まず門近くにいる者達が侵入者を止めようとしたんですが止められず、そのまま侵入を続行されています!!」

 

「!!――どの方向に進んでいるんだ!?」

 

「武器庫辺りです!!」

 

 報告を聞き続けたタクミはある確認をしてみる。

 

「そこには誰がいたか!?」

 

「――レイ中佐とアイ中佐がいます!!」

 

「!!……いや、その2人でも止められない可能性もなくはないな……なら、誰かを行かせるべきだな」

 

 その報告で彼女達の強さを知っているタクミは一瞬安堵感を覚えかけるが、すぐ悪い可能性をも着想してみる。それにつられて策を練ろうとする。

 そんな彼に声を掛けられる。

 

「タクミ中将!」

 

「!」

 

 その声に反応するタクミの前に――1人の海兵が立っていた。

 それは長身で整った顔立ちをしている中年男性――名はマサフミという。

 彼は海軍本部中将である。それも海軍Gー3支部ナンバー3にして最強の剣士とも称されている。

 それ程の者がタクミに向かって態勢を引き締め、口を開く。

 

「私が出ます!」

 

「!!……マサフミ中将」

 

 その表明を受けてタクミは彼の強さを知っている上に今の状況によって頷く。

 

「――よし!!行け!!」

 

「はっ!!」

 

 出陣の許可を得たマサフミは素早く出室していった――

 

        ●

 

 そうして――現場に駆け向かったマサフミは到着時にまさにレイとアイに襲いかかろうとしたエネドラを問答無用で吹っ飛ばした。

 そして倒れ伏せている2人を守るように立つマサフミ。

 

「ま、マサフミ中将……」

 

 辛うじて意識を落としていない2人が目を見開くのに気付いたマサフミが優しく微笑む。

 

「――ご苦労だった。あとは任せなさい」

 

「……はい、申し訳ありません」

 

「手間かけます……」

 

 そう口にする彼から感じられる善意にレイとアイは自身達の無力感に歯を食いしばりながらも――甘えざるを得なかった。

 そんな彼らに対してエネドラがバカ笑いする。

 

「ハハハ!!また新手か!?――いいぜ!!遊んでやるよ!!海軍の猿が!!」

 

「……その必要はない」

 

「……あ?」

 

 傲岸不遜にそう冷やかしてくる彼に対してマサフミは冷静にハッキリそう言い返した。その態度、そして言葉の内容にエネドラもイラつきながら――首を傾げる。

 それに構わずにマサフミは手に持つ愛刀を鞘から抜き――ビシッと向ける。

 

「貴様のような奴に付き合ってやる暇等、我々にはない。すぐ終わらせる」

 

「……あ゛ぁ゛?」

 

 その明確な宣言を受けてエネドラは額に青筋を激しく走らせ、目も激しく血走らせる。

 ――マサフミには〝サンモン〟が今も危機的状況に陥り続けているのに目前の取るに足らない者と少しも関わる義理がどこにもないと考えている。

 だが、そういう姿勢がエネドラにとってはあまりにも自身をナメていると見受けてもしょうがない為に腹わたが煮えくり返っているのだ。

 

「……〜〜ほざいたなぁ!!なら!!すぐテメェをぶち殺してやるよ!!!」

 

 そして意向返しとして偉そうに言い放ってきた目前の男をあっけなく無惨に殺すと決意したエネドラは今持てる力を惜しまずに全て出す事にもした。

 その殺意に従い、彼の身体から今までより――おそらく最大限であろうという程の膨大な泥が湧き出てきた。

 そんな姿を前にマサフミは――しかし平然としていて、そして刀を構えていた。

 

「〝剃〟」

 

 その瞬間、彼の姿が消えた。

 

「…!?」

 

 マサフミをすぐ叩き潰そうとしかけたエネドラが肝心の彼を見失い、動揺しているところに――まさにその目前に突如彼が姿を現してきた。

 

「!!?」

 

「はっ!!」

 

 それにエネドラが驚愕する間もなくマサフミが刀を素早く強烈な勢いで振り回した。

 突如の事で、しかも人が見れば一振りで複数の斬撃を放っているように見受けられる剣さばきを頭が追いつけないエネドラが手を打つ事さえできずに身に受け、勢いよく吹っ飛ばされた。

 その影響か、あれ程に凄まじく湧き出てきた膨大な泥が動かなくなり――崩されていった。

 

「チィィィィィ!!――だが!!効かねぇぞ!!」

 

 何とか起き上がったエネドラの身体には――傷を負わされていない代わりにその表面から泥が剥がされて落ちていった。

 ――〝ドロドロの実〟を食った訳ではない故に能力者ではないエネドラは「ボルボロス」の能力を手際良く発揮して、彼の身体を泥で覆わせた事でその防衛力を強化させていたのだ。

 それは如何なる攻撃でもそう簡単に落ちない筈だった――だが、マサフミの斬撃の強大な威力によりエネドラを覆っていた泥をほとんど剥がせていったのだ。

 その事実からマサフミの尋常ではない強さを身を持って思い知らされたエネドラはやはり全力を惜しまずに出し切ろうと改めて思いながら立てようとする――が

 

「……は?」

 

 その目前にはもう既にマサフミが身構えながら立っていた。

 

「悪いが〝サンモン〟そしてここまで攻めてきた襲撃者に配慮するつもりはない」

 

 冷たくそう宣したマサフミからの容赦ない剣さばきがエネドラを襲い掛かった。

 

「うぎゃあああああ!!?」

 

 さっきまで自身を守ってくれていた泥の鎧は今ほとんど剥がれた上に突如の事で即座に新たな泥を生み出そうとする等の思考さえもできないエネドラがその斬撃を身に受けるしかなかった――

 故にエネドラの身体に鋭い傷を多く負わされざるを得なかった。

 その威力により再び吹っ飛ばされ――床に叩き付けられた彼だったが、その意識は奪われず何とか保たれていた。

 

「ぐ、が…ざ、ざけんなぁ〜〜!!あの猿がぁ〜〜!!」

 

 といっても、もはや満身創痍になってしまったといえるエネドラは自身をそういう状態に追い込んだマサフミに対して癇癪を起こしていた――

 そして――左腕を空中に辛うじて掲げる……そこには人の前腕全体に巻き付けるタイプの腕輪を装着されていた。

 実はそれこそが――「ボルボロス」である。

 その「ボルボロス」を装着する事でそれに宿った能力を使用できるようになるが……ただし、その装着される腕を人の目に触れやすいままで行動すれば秘密を敵に露見されてしまう危険性がある。

 その事をさすがにエネドラも理解しており、だからこそ装着された腕を上手く隠しながら行動してきた。

 だが、今の彼は怒りの感情が頂点に達している上に自身をいいようにあしらったマサフミに対する恐怖の感情もまた湧き出ている。

 その2つの強き感情により少しは存在していた冷静さと思考力を失ったエネドラはうかつにも「ボルボロス」を人の目に出してしまった――

 もちろん、そのつけはすぐ払わされる事になる。

 

「〜〜「ボルボロスゥゥゥ」!!オレにさっさと力を――!?う、うぎゃあああああ!!?」

 

 「ボルボロス」から更なる力を強引にでも引き出そうとするエネドラ――が突如絶叫した。

 ――彼の左腕が両断されたのだ。「ボルボロス」を装着している左腕がその身から強引に引き離されていった。

 突如の事にエネドラも衝撃を受け、そして斬り捨てられた左腕部に走る激しき痛みに悶える。

 転げ回る彼を斬り捨てた張本人であるマサフミが冷たく見下ろしていた。そして少し遠くに離された「ボルボロス」を装着する左腕を凝視し、呟く。

 

「……やはり、それがお前の力の源か」

 

 ――そう、実はエネドラの力に関しての情報を受け取った彼は攻撃を仕掛けながら彼の様子から目をそらさずに注視していたのだ。

 そしてエネドラがその左腕を掲げた瞬間、それを目視したマサフミはその秘密をたやすく看破し――もうこれ以上の行動をさせないように彼の左腕を容赦なく両断した。

 ――〝サンモン〟を平和を破り、仲間と部下達を傷付けた不届き者だ。自身の信念に従って命を奪う事はなくても――容赦するつもりもまたないのだ。

 その堅い意志を持ち合わせている彼に見下されているエネドラは激しき痛み、そして凄まじい屈辱感にも悶え――

 

「〜〜こんの…猿共がぁぁぁぁぁ!!!」

 

 勢いよく起き上がった彼は素早くマサフミに飛びかかろうとする。

 顔に数々の青筋を走らせ目の白い部分を完全に赤くしているその様態はもはや彼が完全に正気を失ったように見受けられた。

 そんなエネドラが憎らしいマサフミにデタラメに食いかかろうとするが……

 

「フン!」

 

「がッ!?」

 

 無論余裕があるマサフミにあっけなく腹に拳を食らったエネドラは気絶し、垂れ下がる。

 そんな彼に対してマサフミは威厳を込めて言い張る。

 

「……貴様のような奴を倒す為に我々は牙を研いできた」

 

 

『海軍Gー3支部 マサフミ中将

  VS

 バシレウス エネドラ』

 

『海軍Gー3基地

「ある部屋の戦い」』

 

『勝者 マサフミ中将』

 

 

        ●

 

海軍Gー3基地内の会議室

 

「――マサフミ中将が侵入者を鎮圧しました!」

 

 その報告がその部屋中に響かれた途端に人々が歓声を上げた。

 ――当然だ。海軍基地内で侵入者が暴れ続けるという事態は実にあまりにも深刻だ。故にそれが見事に収束されたのには安堵感を覚えずにはいられないのだ。

 そして、それを成し遂げたマサフミ中将に対して海兵達は感謝、そして敬意を抱える。

 

「――はいはい!今はまだ非常事態の中だ!!集中だ!!集中!」

 

「「「!!――はい!!」」」

 

 そんな中でタクミがそう声を上げた――そうなのだ。海軍Gー3基地内の事態は収束されたが、〝サンモン〟を襲っている非常事態はまだ続いている。

 だからこそ、指揮者としてタクミは海兵達にその事をハッキリ自覚させる為に強く言い放った。現にその告げに海兵達もハッとし、すぐ気を引き締める。

 そして自身の任務に専念する彼らにタクミは頷き――それからマサフミに思いを馳せる。

 

「(よくやった……マサフミ!)」

 

 後輩の活躍にまるで親のように誇らしい気分になった彼は負けじと自身のやらなければならない事に専念する。

 そして――

 

「…!!」

 

 突如タクミの目が鋭くなった……

 

        ●

 

「……大丈夫かな?」

 

「……僕達がどれだけ心配してもしょうがないよ。今はここで大人しくするしかないよ」

 

 ――司令室として使用される広大な会議室だが……その隣には小さな部屋が設置されている。そして、そこには――子供達が静かに座っていた。

 彼らこそが……〝バシレウス〟からの亡命集団であった。

 

「……これ、私達のせいかな?」

 

「……ほとんどは違うだろう――まぁ、少しはあるかもな」

 

 突如1人の子供が暗い顔つきでそう言う。それに対して1人の子供がそう述べる。

 ――彼らの事情からマサムネ中将は襲撃者の目的が彼らであるという可能性を捨てきれず、故にその部屋で待機させるように手を打たざるを得なかった。

 その意図を理解できる子供達はその部屋でバタバタせずに大人しくする――が、やはり不安を抱えていた。しまいには自身達のせいで〝サンモン〟がこうなったのではと後ろ向きに考えてしまう子もいる始末だ。

 それ程に精一杯な彼らだが……

 

「――皆!暗く考えてもしょうがないよ!」

 

「気晴らしとして、そうだね……しりとりでもやる?」

 

 そんな中の1人の子供――赤毛の女の子が活発な笑みを浮かべながら言い張る……憂鬱な雰囲気でいる皆を明るくする為に……

 そんな彼女の姿勢に子供達もきょとんとし――そして吹き出す。

 

「――そうだね。今悩んでも仕方がない……やろうか」

 

「しりとりか……まぁいいか」

 

「「「やろうやろう!」」」

 

 彼女の姿勢からその提案に乗ろうとする子供達の雰囲気はさっきとは一変されて明るくなっていた。

 

 

 

 ――その時だった。

 

 彼らの近くの床に突如傷ができたのは。

 

「「「!!?」」」

 

 その事態に子供達が固まったのをよそにその傷が伸び――やがて円型と化した。

 そして、その円型の傷の範囲内の床が落とされた事で――そこには円型の穴が開けられていた。

 ……そして、そこから――

 

「「「―」」」

 

「「「…!!」」」

 

 何と、黒ずめの数人が姿を現してきたのだ。

 その怪しげな風貌の数人が現れてきたという不測の事態に子供達が動揺する一方で彼らはその姿を目視し、口を開く。

 

「……亡命者発見。これより捕獲します」

 

「「「!!」」」

 

 その内容に子供達は息を呑む――そう、彼らは〝バシレウス〟の兵士であった。そんな者達が自身達を追い掛けてここまで来たという事実に子供達は歯がゆくなった。

 

「〜〜クソ!!ここまで来たのか……!」

 

「そうだ。さぁ、大人しく戻ってもらおうか」

 

 今身を置かれている状況を無念に思う子供達に対して冷徹にもそう宣する兵士達が足を進める――

 

 

 

「それは却下だな」

 

 突如響かれたその声にその場にいる人々が視線を一気に向けると――扉内にタクミが立っていた。

 

「せっかくのお越しで悪いんだが――お引き取りを願えるか?」

 

 その彼は朗らかな笑みを浮かべていて、しかし鋭い目をしていた……

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