ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第128話〝マサムネ中将〟

――その子供達はただ……友達と家族達と共に穏やかに暮らせば――それだけで良かった……

 

――だが、それはあそこ……〝バシレウス〟では適わないだろう……

 

――だからこそ、逃げてみせた……

 

 そんな心づもりで〝バシレウス〟から亡命した子供達は必死の思いで実行した甲斐があって、何とか――海軍Gー3支部に保護してもらえた。

 ――だが、その子供達を〝バシレウス〟が見逃す訳でもなかった。それを証明するかのように彼らを狙って追手がその前に姿を現してきたのだ。

 ある事情もあって自身達を追いかける余裕がないかと思われてた〝バシレウス〟から追手を出してきたという事態に動揺せざるを得なかった子供達を追手が冷徹に自身が請け負った任務を遂行する為に捕獲しようとする――

 それはまさに絶望的だといえる状況だった……だが、そこに――海軍Gー3支部の将校タクミ中将が姿を現した。

 その登場により事態が一変されようとする……

 

「た、タクミさん……!」

 

「タクミ中将……!」

 

 自身達が危機的状況に陥ろうとしているところにタクミが姿を現してくれた事で怯えて諦念していた子供達も大きく安堵感を覚えずにはいられなかった。

 そんな彼らをさらに安心させる為かタクミが穏やかで活発な笑みをみせてやる。

 

「よっ!――不安にさせたか?」

 

 続いてそう声を掛けてもらった事でますます安堵感が増した子供達だが、すぐ気を引き締める。

 

「――すみません!こんな事になって……!」

 

「まさか、ここまで追手が来るとは……何とか言うべきか……」

 

 顔をしかめる子供達がタクミに対して頭を深く下げる。

 ……海軍Gー3支部――否、〝サンモン〟が今陥った状況をみれば、そうなってしまった原因が他でもなく自身達にあるかもしれないと考えずにはいられず、故に罪悪感を抱えてしまう。

 だが、そんな子供達にタクミは笑みを消さず、しかし真剣な顔と化する。

 

「……はっはっは!――ガキ共が何を言ってんだ!お前らが気にする事ねぇよ!」

 

「「「!」」」

 

「――でも……!」

 

 その言い草に目を見開く子供達。その中の1人がたまらずに声を上げかけるのをタクミが遮り

 

「……ガキ共は深く考えずに――遊ぶのが仕事だぜ?ここは大人の領域だ」

 

 子供達に対してそう言い張るタクミが手をぶらぶらと振りながら――子供達の前……そう、追手の前に立った。

 子供達を守るようなその姿勢に追手――〝バシレウス〟兵士達は顔をしかめる。

 

「……我々の目的はソイツらだけだ。つまり妙な事をせずにただ渡せば、我々もこれ以上何もせずに――ここを出よう」

 

「……はっ、断りだな」

 

 自身達が請け負った任務を遂行する為に物事を何としてでも進めようと考える兵士達の中の1人がそう要求するが、タクミが受け入れずに拒否する。

 そのあまりにも堂々な姿勢に兵士達もイラつき始める。

 

「……本気か?いくら子供たろうが――今この島がこうなった他でもならぬ原因だろう?なぜ、そこまでする?」

 

「「「…っ」」」

 

 そして、兵士達がわざとらしくそう言い張る。その内容に子供達も言い返せずに俯くが――

 

「……そういう言い方はやめてもらおうか――別にガキ共のせいじゃねぇよ」

 

 タクミが厳しい表情を浮かべながらキッパリとそう言い張る。

 

「……そうか?そ「いくらお前らが何を言おうともが――結局はお前らのせいだからな?」――っ!!」

 

 そんな彼に兵士達もそれでもしつこく何かを言おうとするが、それより素早くタクミがそう言い張った。

 頑固にも思えるその意思に舌打ちしたい気分になってしまう兵士達に対してタクミは不敵な笑みを浮かべながら――鋭い目で凝視する。

 

「……っていうか、そもそも――本当にガキ共が目的なのか?」

 

「「「っ!!」」」

 

 あえて疑問を投げかけるように言うが、その内容に兵士達も動揺する。

 

 ――〝サンモン〟に遠征を決行する目的が露見された

 

 そう思った彼らだが、すぐまだバレていない可能性もなくはないとも考えた故に可能な限りそうらしい態度をみせないように振る舞ってみせる。そして

 

「……このままじゃ、埒が明かない。ならば――強行手段に出るまでだ」

 

「そりゃ、そう来るよな」

 

 今における状況からそう判断せざるを得なくなった兵士達がそれぞれ武器を構えてきたのに対してタクミもそれが分かっていたかのように平然と身構える。

 

「――逃げろ!ガキ共!」

 

 そして、そんな彼が後ろの子供達にそう忠告した途端に兵士達が飛びかかってきた――

 

 

――そうして、不測の事態が収束されたと思われてた海軍Gー3基地内で新たな戦いが発生した……

 

 

 

「(……ヒュースさん……!頼みます!)」

 

        ●

 

 その戦いが発生した一方で海軍Gー3基地内でのある部屋の扉前に1人の男が立ち留まっていた――

 

「……情報によれば――ここに〝アレ〟が……」

 

 その扉を注視する男性――ヒュースがそう呟いた。

 ……どうやら、その扉の先には――〝バシレウス〟が目当てにしているものが置かれてあるらしい。そして、それを入手しようとヒュースが派遣されたのだ。

 なお、一応その扉前には警備員が配置されていた……それもエネドラが基地内を暴れ回ったまではだが。その影響を受けて警備員がついその場を離れてしまったのだ。

 故に――ヒュースを妨げるもの等はもはや、その扉しか存在しない。

 ――そして、その扉もヒュースによって破られそうとしていた……

 

「……まぁ、入れば分かる事だ」

 

 扉を凝視するヒュースがそう呟きながら左腕を掲げる。その腕には――ガントレットを装着されていた。

 ――そう〝悪魔の実〟を最適な武器に食べさせる〝バシレウス〟に所属するだけはあって、そのガントレットもまた能力を宿っているのだ。その能力とは――

 

「……「ランビリス」」

 

 彼がそう呟いた途端にガントレット――「ランビリス」がその意思に従い、能力を発動させる。そこから――黒い何かが湧き出て蠢く。それこそが――

 

 ――砂鉄である。

 そうなのだ。「ランビリス」に食べさせた実とは――〝スナスナの実 モデル砂鉄〟である。

 その能力は砂鉄を自在に操るというものである。

 その能力を宿った「ランビリス」を装着したヒュースは砂鉄を操り――目前の扉を破ろうとする。

 

「さて、いくか――……!?」

 

 準備を整えた彼はさっさと扉に砂鉄をぶつけようとする――その瞬間に何かに気付く。

 その途端にヒュースが素早く飛び跳ねる。するとその場に何かが放たれ――衝撃を走らせられた。

 

「!!……何者だ?」

 

 その事態に目を見開いたヒュースだが、すぐ気を引き締め――そして自身に向かって攻撃を仕掛けてきた者の正体を把握しようとする。

 滞りなく到着した彼の姿を鋭く凝視する男が姿を現す。彼こそが――

 

「……感知力はそれなりにあるようだな」

 

 凄まじい威厳を感じられる海兵……マサムネ中将がヒュースの所作に関してそう評した。

 ――実はさっき〝バシレウス〟からの亡命集団と会話した彼は今における〝バシレウス〟の事情を知り得た。

 さらに基地長として海軍Gー3支部の詳細、海兵達の任務内容とその結果をも把握しているのも重ねて〝サンモン〟を攻めてきた〝バシレウス〟――正確にはハイレイン派の目的にある可能性を見出したマサムネはすぐその適否を確認しようとその部屋に向かっていた。

 ――そして、その部屋の扉前にヒュースが立っているという状況に遭遇した彼はその可能性が的中したのを悟る。

 

「やはり――貴様らの目的はその扉の先にあるものか……!」

 

 その確信を得たマサムネがそう口にするのに対してヒュースは何も言わずに黙る――が、その顔に一筋の汗が流れる。

 ――それもその筈。暴れ回るエネドラを陽動にしてまで隠していた自身達の目的を見通されてしまったのだから……しかも目前の男が海兵であるのは間違いないが、その威厳さから就いている地位はおそらく高いだろう。それに適する者といえば――

 

「……海軍Gー3基地長――マサムネ中将か?」

 

 試みにそう言ってみるヒュースにマサムネは眉を上げる。

 

「……知っているようだな、なら話は早い」

 

「……今の状況、そして身の程は理解している筈だ。大人しく投降すれば――ぞんざいに扱わない約束はしよう」

 

 すぐ冷徹に覇気を放つ彼からの警告にヒュースも歯を食いしばる。

 

「…(さすがは警戒が必要な海兵の1人だ。できれば逃走したいが……)」

 

 目前の男の覇気、そして身を置かれている状況からついそう考えずにはいられないヒュースだが

 

「(だが、このオレにも任務がある。それも〝バシレウス〟の行く先に影響をもたらす程の……なら、オレがやらなければならない事は――)」

 

 一方で自身が請け負った任務の重さ、そして使命を思い浮かべたヒュースは――腹をくくった。

 

「……あいにく、我々にも任務がある。それがある以上、兵士として退く訳にはいかない」

 

 そう宣したヒュースが身構える。その姿勢、そしてその目から感じ取れる覚悟にマサムネも微かに感嘆する。

 

「……兵士としての在り方を考えれば――実に見上げた覚悟だ」

 

 同じ兵士としてある意味理解できる彼はだからこそ、敬意を払い――力を惜しまない事にする。

 

「この私も海軍Gー3基地長だ。〝サンモン〟を任された者としてこのまま――貴様らを逃す訳にはいかない」

 

 そう威厳に宣言するマサムネは手に持つ愛刀を構える。

 

 

――そうして、おそらく〝サンモン〟に発生した騒動の中で最も重要であろう戦いが今ここに成立した……

 

 

「――覚悟!!」

 

 突如そう宣したヒュースが掲げた「ランビリス」から多大な砂鉄が湧き出て、マサムネに容赦なく襲い掛かる。

 

「…(無型な砂鉄で攻めているんだ。どのような攻撃を繰り出そうが――確実に打ち破れまい!!)」

 

 基地長に就く程の強さを持つであろうマサムネに対しての警戒を捨てないものの、「ランビリス」による能力の性質を知っているからそう考えているヒュース。

 一方で襲い掛かってくる砂鉄の煩わしいように見受けられる攻撃に対してマサムネは――

 

「……フン」

 

 冷静に手を打とうとする。

 そんな彼はまず居合い斬りの構えを取る。そして――

 

「―」

 

 自身の身体を回転させる。しかも、その勢いが激しくなる中で刀を勢いよく振った。

 その所作、凄まじい勢いにより竜巻状の斬撃が発生した。その烈しき斬撃が砂鉄をたやすく吹き飛ばした。

 

「!!」

 

 自負していた砂鉄の攻撃をマサムネが難なく打ち破れたという事態にヒュースが動揺のあまりについ固まらざるを得なかった。

 そんな彼――の目前に突如マサムネが姿を現した。

 そう、固まったヒュースの姿を目視した彼はその隙を見逃さず〝剃〟で素早く移動したのだ。そしてもう既に刀を構えている彼の姿にヒュースもハッとし、焦りまくる。

 

「―」

 

「オォォォォォ!!」

 

 マサムネが容赦なく刀を勢いよく振り上げたのと同時にヒュースも負けじと素早く新たな砂鉄を生み出す。

 

 その場に渋い音が響かれた。

 

 ――砂鉄を生み出し防衛しようとしたものの、マサムネの烈しい剣に弾けられたヒュースの身体が深い傷を負わされながら勢いよく吹っ飛ばされた。

 それでも踏ん張り何とか態勢を立て直した彼だが、その旗色は悪かった。

 

「くっ……!――やはり手強い……!!」

 

 マサムネ中将の強さを前もって知っているヒュースだが、今実物を目視した事で改めて厄介だと思わずにはいられなくなり、冷や汗を流してしまう。

 そんな彼に対してマサムネは冷静に口を開く。

 

「……あのやんちゃ小僧にまんまと追いつかれてしまったが――基地長としてこれ以上はそう負ける訳にはいかないんでね」

 

 彼は一瞬顔をしかめるものの、威厳にそう言い張る――そう、実は実力ならば海軍Gー3支部の海兵達で最強なのはマサフミ中将である。

 ――だが、マサムネ中将も基地長の座を任されるだけはあってその強さもなかなか尋常ではない。ましてや〝サンモン〟に襲撃を仕掛けてきた不届き者等に負けるものではない。

 今の自身の地位、その使命に責任をもって負ける訳にはいかないと激しき覇気を放つマサムネにヒュースも息を呑み、汗を流す。だが、負ける訳にはいかないのはこっちも同じだ。

 

「……お前が強いのは理解した。ならば!!」

 

 身を持って思い知らされた目前の男の強さと今身を置かれている状況、そして自身が請け負った任務の重要性を思い浮かべたヒュースは考えを巡らせる。

 やがて考えをまとまった彼が突如雄叫びを上げる。

 

「――ウオォォォォォ!!!」

 

 そんな彼から更なる多大の砂鉄が湧き出る。しかも、それぞれ凝集し――形作っていく。

 そうして形作られたのが――

 

 ――剣、剣、大剣、ウォーハンマー、メイス……

 

 砂鉄で構成された数々の武器が今そこ――ヒュースの周囲に浮かんでいた。

 ……質ならば、悔しいが目前の男の方が確実に上だ。ならば、数で勝負だと判断した彼は可能な限り砂鉄で多くの武器を構成してみせたのだ。

 その光景にマサムネは――微かに感嘆していた。

 

「ほぅ……〝悪魔の実〟の能力をそこまで扱えるとはな」

 

 そう、あれ程の量の砂鉄を数々の、それも綿密に工夫されているように見受けられる武器に構成するという難技を成し遂げてみせたヒュースの熟練さに彼も思わず感心を覚えざるを得なかった。

 それにヒュースもつい笑みを微かに浮かべ――

 

「……感心しているところ申し訳ないが――まだこんなものではない!!」

 

 彼がそう言い放った途端に数々の武器がすぐマサムネに対して強烈な勢いで襲い掛かった。

 その怒涛の攻撃に対してマサムネも身構えるが――

 

「…!!」

 

 何かに気付いたのか、突如目を見開く。

 ――その数々の武器の規則性、速度はメチャクチャにみえて、実は少し洗練されているのに彼は気付いた。

 

「(ヴィザ翁の「オルガノン」を参考にして頂いたからな!!)」

 

 そう、実はヒュースは心から尊敬して師事していたヴィザの「オルガノン」での戦闘を参考にして規則性と速度に手を加えたのだ。

 その隙を見つけるのが難しいであろう攻撃をマサムネがただ受けようとする……

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