ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第130話〝途切れぬ根気〟

 その集団――部隊は〝バシレウス〟に所属する数人の兵士で構成されている。

 その役割は戦闘ではなく諜報になっている。その領域は情報収集、裏工作……しまいには暗殺までをも任務として遂行している。

 そのような部隊が――〝バシレウス〟が〝サンモン〟に対して遠征を決行している最中で大胆にも海軍Gー3基地に侵入を試みていた……まぁ、エネドラの暴走によってもたらされた混乱に乗じる形になっているが。

 

 とにかく、彼らがなぜ海軍基地への侵入という非常に無茶な事を決行しているのかというと……そこには〝バシレウス〟からの亡命集団がいるからだ。

 例え、どのような者だろうが――〝バシレウス〟からの亡命者を決して許しはせぬのもそうだが……ただ、その集団に関しては〝バシレウス〟の兵士候補として素質があまり備わっているのもある。

 それを諦め捨てるにはあまりにも惜しすぎると考えされるぐらいだ。故に――彼らを捕獲しようとわざわざ海軍基地にまでも侵入を試みたのだ。 

 ……まぁ、海軍基地への侵入の目的はそれだけではないが……それは別の話だろう。

 

 いずれにせよ、基地内にまんまと侵入できた兵士達は続いて――亡命集団を難なく発見できた。

 その順調さから任務を上手く完遂できる――かと思われた。

 だが、そこに――海軍Gー3支部の指揮役を請け負っているタクミ中将の登場により風向きが怪しくなった。

 その彼は一見指揮役を任される程の海軍将校だが……〝バシレウス〟には警戒が必要だとは見なされない者だ。それに加えて兵士達は〝バシレウス〟の兵士の中でもそれなりの実力を有している。

 そういう事情から無問題だろうと判断した兵士達は容赦なくタクミを排除して亡命集団を捕獲しようと行動に移す――が

 

「ぐ、ぐぅ……!」

 

「お、お…おのれ〜」

 

 その見込みを裏切られて兵士達は倒れ伏せられていた――彼らが見くびっていた他でもならぬタクミの手によって。

 

「な、何なんだ。貴様は……」

 

「……いや、それさっき言ったよな……?……まぁいいか、このオレは海軍Gー3支部ナンバー2タクミ中将だぜ!」

 

 その中の1人がたまらずに投げかけずにはいられなかったその問いかけに対してタクミはもう既に紹介した為につい呆れたが、気を取り直して改めてもう一度紹介した。

 改めてのその紹介、そしてその際の威厳にその説得力が増したのに兵士達は自身達の見込みの甘さを悔やむ。

 

「ぐ……何だかんだで海軍将校だったか……!」

 

「クソッ!……見込みが甘かった……!」

 

 上司に警戒されていないといえ、仮にも海軍将校である者を見くびってしまった自身達の不手際を悔やまずにはいられない兵士達。そんな彼らに対してタクミは表情を引き締める。

 

「――さて、ここで大人しくしてもらうか」

 

 威厳にそう告げる彼の姿は実に貫禄があった。その姿と言葉、何より今身を置かれている状況に兵士達は悔しくとも――ある程度の諦観を抱いてしまう。

 タクミはそんな彼らから視線をそらさないまま、後ろに留まらせている亡命集団――子供達に声を掛ける。

 

「……あ〜、君達。悪いけど誰かを呼んでくれるか?君達の保護はもちろん、コイツらを拘束したいから」

 

 そう頼んでいた――なお、それは子供達ではなくタクミがやるべきかもしれないが……あいにく、彼は兵士達の監視をしなければならないからその場をそうそう離れられない。故に子供達に頼まざるを得なかった。

 その頼みに子供達は目を見開き――そして、嫌がらずに素直に受け入れた。

 彼らにとっては〝バシレウス〟の追っ手から自身達を守ってくれた他でもならぬタクミ中将の頼みだ。それを叶えたいと考えている。

 それに保護してもらった身だ。少なくても働きぐらいはすべきだろうとも考えた子供達はその頼みを率直に承知した。

 そんな中で1人の男子――銀髪細身の少年が手を上げる。

 

「僕が行きます!」

 

「頼んだ」

 

 その表明にタクミは背を向けたまま頷く。

 ――だが

 

「……〜〜このまま終わる訳にはいかなぁぁぁい!!」

 

 そんな状況の中で突如そう怒鳴り付けた1人の兵士がダメージにより動けにくい身体に力を入れて何とか起き上がった。そして誰かを呼ぼうとする少年の元に飛びかかった。

 

「っ!?」

 

「お前は捕獲されてろ!!」

 

 タクミにより撃破されてもう動けなくなったかと思われてた追手がネジが外れたような様子で自身に飛びかかってきたという事態に固まった少年に対して少年は目を血走らせながら――そう怒鳴り付けた。

 だが、その途端に彼の前にタクミが姿を現した。

 

「いや、それはお前らの方だからな?」

 

 兵士の言い草に彼は呆れ、しかし冷徹にそう言い――足を強烈な勢いで振り上げた。

 

「がっ!!」

 

 そのキックを頭に受けた兵士の身体が空中を勢いよく転ばれ――再び倒れ伏せられた。

 

「フー……!」

 

 その様に一旦息を吐くタクミだが、すぐ気付く。

 ――また1人の兵士が起き上がり、少年に飛びかかろうとしているのを……

 

「ウオォォォォォ!!」

 

「〜〜随分大した熱意だな!!おい!!」

 

 何としてでも請け負った任務を遂行しようとする兵士達の執念にタクミもつい微かの感嘆を覚えながら呆れ、彼をも撃破しようと動きかける――

 

「…!」

 

 だが、そんな彼の目が突如目を見開く。その途端に飛びかかっている兵士が突如吹っ飛ばされた。

 彼も倒れ伏せられたのを目視したタクミは続いて兵士を吹っ飛ばした張本人に視線を向けると――それはただ1人の年若い海兵だった。

 背中に「正義」の文字を刻んだコートを着用していないその姿から少なくとも准尉以下の地位であろうツンツンの黒髪に碧眼が特徴な男が少年を守るかのように立っていた。

 

「……大丈夫?少年」

 

「え、は、はい!大丈夫です!」

 

 今も倒れ伏せている兵士達から目をそらさずに警戒している海兵からそう声を掛けられた少年は呆気に取られたところから我に返り、そう答える。

 その内容に海兵も微笑む。

 

「それは良かった」

 

「……よくやった。君」

 

 そんな彼にタクミがその労をねぎらいながら近付く。そして、その隣に立ちながら少年に声を掛ける。

 

「――急いで!このままだとコイツらがまた何かをやろうとするのか分からないからな!!」

 

「!――そうですね!」

 

 その催促に少年も気を立て直し、今度こそ誰かを呼びかける為に部屋を出ていった。

 その動きを背で感知したタクミは続いて隣の海兵にも声を掛ける。

 

「……改めて、本当によくやってくれた」

 

「はっ!光栄でございます!」

 

 タクミからの改めてのねぎらいに海兵もそう返した。その姿勢に彼も朗らかな笑みを浮かべ頷き

 

「うん、元気な返事でよろしい……それで――」

 

「――君は誰だったか?」

 

「…」

 

 純粋に首を傾げた。その疑問に海兵も黙った。

 

「あ、いや、悪いな……オレは海軍Gー3支部ナンバー2としてここの海兵達の身元を覚えなければならないだろうが……」

 

「……人数があまりにも多いからな。全て覚えきれないんだ。だから君の身元は分からないんだ……悪いな」

 

「……いえ、仕方がありませんよ」

 

 その海兵にタクミはすぐ申し訳なさそうに理由を説明する。

 そうなのだ、海軍基地に所属する海兵の人数は少なくとも約1000人超えは確かだ。そんな人数の身元を全て覚えきるのはハッキリ言って――不可能だ。

 実力を有する事で名を知られるのなら話は別だが……その海兵はどうやらそうでもないようだ。

 故にその身元を知らないという事を申し訳なく思っているタクミがその名を言う為にそれを知ろうとする。そんな彼に対してさっきから何か沈黙を守っている海兵の口が開かれようとする。

 

「……私は「お待たせました!」――!」

 

 彼が何かを言おうとする瞬間にその声が響かれた。その源には――

 

「連れてきました!」

 

「無事ですか!タクミ中将!君達!」

 

「――抵抗をやめろ!!貴様ら!!」

 

 そう声を上げた男子と数人の海兵がその部屋に姿を現した。

 そう、少年はタクミからの頼みを遂行できたのだ。そして彼からの呼びかけに数人の海兵が応えた。

 その登場によりタクミは笑みを浮かべ、兵士達は顔をしかめ、そして子供達も安堵感を覚えた。

 これでとりあえず、この騒ぎが収束される――誰もがそう思った……

 

 

 

 ……だが

 

「……さて、拘束するが抵抗するなよ?」

 

「するなら、容赦しない」

 

「「「…」」」

 

 まず、兵士達は拘束され――

 

「……怖かったかい?君達?」

 

「大丈夫だよ。見ての通り、捕まえたからね」

 

「「「はい!」」」

 

 続いて子供達はその身を改めて保護され――

 

「……よし――しばらく席を外して悪かったな。お前ら」

 

「いえ、侵入者が現れたんじゃ、そりゃ仕方がありませんよ」

 

「そうですね……ただ、この役はむしろ我々がやるべきだったのでは?」

 

「はっはっは、いや悪い!急いでんだ……それで状況は?」

 

 そして、タクミ中将は元々請け負った指揮役に戻ろうとする。

 様々な事がその部屋で展開された――その時だった。

 

 大きな音と衝撃を響かれた。

 

「「「!!?」」」

 

 突如場が大きく揺れられた事で人々も態勢を崩られざるを得なかった。

 近くの台に手を置く事でこれ以上崩されるのを防ごうとするタクミがその状況の原因にある見当を付いた。

 

「ば、爆発か!?どこでだ!?」

 

「わ、分かりません!!」

 

 その見当を口にした彼が続いてその疑問を口にするが、海兵達もそれが分かる訳ではないのでそう答えるしかなかった。

 とにかく、彼らがその事態を受けて混乱している一方でその者は行動を起こそうとしていた。

 

「!!(何が起こったのか分からないが――これはチャンスだ!!)」

 

 それはまだ拘束されていない1人の兵士が今の状況をチャンスだと見なし、すぐ行動に移した――そう、今も請け負った任務を何としてでも遂行するつもりだ。そして――

 

「!?うわぁ!?」

 

「ぎゃあ!?」

 

 あの銀髪細身の少年、そして小柄な体格で黒髪にアホ毛が立っているのが特徴な女子の2人を捕獲してみせた。

 何とか抵抗する2人をそれぞれ両肩の上に抱いた兵士は素早く部屋の床に開けられている穴に潜り込んだ。

 

「「「ノーマン!?チカ!?」」」

 

「な!?しまった!!」

 

 突如仲間を2人もさらわれたというまさかの事態に子供達が悲鳴を上げ、タクミが率いる海兵達も自身達の失態を悔やみ、すぐ追いかけるが――

 

「……!?これは……」

 

 そけに再び場を大きく揺れられて人々も態勢を崩れされざるを得なくなった。

 ――おそらく、さっきの爆発で海軍Gー3基地のどこかがすごく損害され、その影響により基地に二次被害をもたらしているのだろう。

 それで足止めを少し食ってしまったタクミ達だが、それでもさらわれたノーマンとチカを救出しようと駆け向かう。

 

「――お前達!行ってくれ!!オレはここの指揮をしなければならないからな!!」

 

「「「はっ!!」」」

 

「――それとな!!コイツらを早く拘束しろ!!もうこれ以上は許さん!!」

 

「「「はっ!!」」」

 

 といえ、今の状況の深刻さからただ救出に動くだけじゃダメだと考えたタクミは指揮役として指示を下し続ける。その指示に海兵達も従い、すぐノーマンとチカの救出、兵士達の拘束に動いた。

 その姿勢を見届けたタクミは続いて視線を向ける。そこには――

 

「――落ち着いて!君達!」

 

「――離せ!!ノーマンとチカを助けるんだ!!」

 

「ノーマン!ノーマン!」

 

「チカ……!」

 

 暴れているのを海兵達に抑えられている子供達がいた。

 彼らはもちろん、さらわれた仲間を助けようと自身達も穴の中に向かおうとするが、それをこれ以上の面倒事は避けたいと考えている海兵達によって止められている。

 自身達を行かせてもらえない彼らにイラつきを覚え始める子供達に対してタクミは素早く声を掛ける。

 

「――落ち着くんだ。君達」

 

「!タクミ中将……!」

 

「タクミさん!」

 

「――行かせてください!!オレ達は……!!」

 

 タクミから声を掛けられた子供達は彼に対して自身達を行かせてもらうように必死に頼もうとするが、その意図を理解しているタクミはだが、だからこそハッキリ宣する。

 

「君達はここで落ち着きなさい――もしも君達が行っても……逆に捕らえられるかもしれないからだよ」

 

「「「!!」」」

 

「そ、それは……!」

 

 その諌めに頭に血が上がっていた子供達もハッとする。そんな彼らにタクミは真剣な表情を浮かべる。

 

「分かったようだね……ここは任せてほしい。だからここで待ってくれ」

 

「「「っ…」」」

 

 その言葉、そして彼の真摯な態度に子供達も大人しくなる。

 仮に自身達が動く場合のリスクとそれでも仲間を助けたいという気持ちの間に板挟みにならざるを得なくなった子供達だが――

 

「……分かりました」

 

 子供達は最終的にタクミの言葉に従い、大人しくする事にした。

 

「……必ず助けてくれ!!」

 

「お願いします!!」

 

「もちろん」

 

 それで出さずにはいられないその声にタクミも真剣に聞き入れる。そして指揮役に戻る――

 

 

 

 

 

「……〝バシレウス〟……気に入らんな……」

 

――そして、海兵……のフリをしたその者がそう呟く……

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