ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第132話〝生命がもたらす痛み〟

 突如始まった〝バシレウス〟の〝サンモン〟遠征。

 それが様々な事をもたらし続けてしまったが……その遠征もそろそろ大詰めを迎えようとしていた。その証なのがその戦い……〝暴獣のスサノオ〟と〝バシレウス〟評議会のハイレインの一戦であった。

 そもそも――〝バシレウス〟議長の座に就く為にそれに値する手柄を手にしようと〝サンモン〟遠征を決行したハイレインなのだが……

 

 そこに本来は無関係だが、自身達の息抜きの邪魔をした〝バシレウス〟に対してその憂さを晴らそうと突如やってきたオレと戦う羽目になっていた。

 しかも――自身と対峙するオレの強さが予想を超えているのもあるが……何より作戦成功に繋がる数々の任務を遂行する筈だった部下達のまさかの敗北により自身の命運を賭けてきた作戦が失敗してしまったのを悟ったハイレインはついに腹をくくり、持てる限りの力を惜しまずに出し切ろうとするが……

 

「リュドドド……それは〝悪魔の実〟か?にしては面白そうだな」

 

「フン……」

 

 そんな彼――の周囲には数々の鳥が飛び回っているという光景にオレも興味を惹かれざるを得なかった。何せ、ついさっきまではそれこそ1羽の鳥の姿さえも完全になかったのに突如約20羽の鳥が姿を現したのだから……

 その異様な状況にそう見当を付いたオレに対してハイレインは鼻を鳴らすものの何も言わない。彼には敵に情報を、それも自身の力関連のを与えるのは愚であると考え、それを犯すつもりも全くないのだ。

 そんな意図に勘付いているか、いないかオレはその光景を凝視しながら思案に耽る。

 

「…(あの能力……親父から聞いた〝ビッグ・マム〟の〝ソルソルの実〟の能力とどこか近しい気がするな)」

 

 そう、耳にした親父と同じ「四皇」〝ビッグ・マム〟の能力を思い出していた。もっとも、その能力は無機物と動植物を擬人化させるというものである故に正確に違うかもしれないが……

 その能力の性質、そして目前に展開された状況からオレはハイレインの能力が――「命を創造する」系統であると疑わずにはいられなかった。

 

「(まぁ、やってみれば分かる事だ――……!!)」

 

 といえ、今はまだ情報が少ない。だから全貌を知るにはまずその鳥とやらに少なくとも近付いてみようと考えるオレ――に対して数々の鳥が強烈な勢いで飛翔してきた。

 

「考え事か?だが、あいにくオレには余裕がないんだ。貴様にはその時間さえを与えない!!」

 

 鳥の群れをオレに襲い掛からせているハイレインがそう言い張った。その言葉通り彼には余裕がないのもあるかもしれないが、それだけではない。

 一応兵士でもある彼は思案に耽るオレの隙を逃さずに攻撃を仕掛けたのだ。その姿勢にオレも気を引き締める。

 

「おっと、今は戦いの途中だったな!」

 

 ついそう苦笑したオレは鋭い嘴を向けてくる鳥の群れに対して「神武」を勢いよく振り回す事で逆に粉々にしてやった。

 

「…ん!?」

 

 その瞬間、オレはその手応えに違和感を覚えた。だが、それに構わず――粉々にされた数々の鳥の欠片が全てオレの首、腕、胸……身体の各部位に付着した。

 一欠片さえも残らずに全て付着するという事からそれは不自然だった。それに対しても違和感を覚えたオレだが、その各部位に付着している欠片が突如発光し――痛みが走られた。

 

「!?」

 

 その軽くはない痛みにオレも驚愕せざるを得なかった。

 それもその筈。このオレの身体は鋼鉄の如き肉体だ。如何なる攻撃を受けても傷を負わされる事はなかった。痛みを感じる事はなくはないが……だが、ハッキリ傷を負わされていない上にたかが欠片によって痛みが走っているという事態にオレもさすがに動揺する。

 そんなオレの姿にハイレインはニャリとする。

 

「フッ!さすがの貴様でも効くようだな……それは安心したよ。これでこの攻撃を続けられる!!」

 

 その事態からその攻撃の効果を認知できた彼は更なる手を打とうとする。その周囲に新たなものが姿を現した。それは――数がさっきの倍になっている鳥の群れ、そして――

 

「!魚!?」

 

 そう、数々の魚も飛び浮かんでいた。

 本来なら海中を泳ぐ筈の魚が空中を泳ぎ浮かんでいるという常識外れの光景についたまげたオレの反応に構わずにハイレインはその鳥と魚の群れも攻撃に向かわせる。

 今度はただ一直線に攻撃する訳でもない。さっきと同じく一直線に進む個体もいれば、蛇行して進む個体もまたいた。それぞれの進み方で向かう群れがオレの周囲を飛び回り――

 

「ぜいぜい、痛んでくれ!!」

 

 このオレに対して不愉快な気分を抱えていたハイレインはその憂さを晴らせるのだとつい少し嬉々としてそう宣する事で鳥と魚の群れが容赦なく襲い掛かった――

 

「〝軍荼利泌弘万〟!!!」

 

 だが、その攻撃をオレは「神武」を強烈な勢いで振り回して連続的打撃と斬撃を繰り出し返してやった。その勢いは実に凄まじく、群れを粉々にしただけに留まらずに数々の欠片さえをも吹き飛ばした。

 

「何ぃ?」

 

 その事態にハイレインも顔をしかめてしまう。一方で群れが完全に消滅した事で「神武」を振り回すのを止めたオレが言い張る。

 

「お前の能力の正体が分からねぇ以上、もう食らう訳にはいかねぇんでな!」

 

 そう彼の能力、少なくともその攻撃の詳細が今のオレには見当が付かない。だが、だからこそ――率直に受けるのを避ける判断をした。

 そんなオレの姿勢にハイレインが不快そうに口を食いしばるが、それにオレは構わずに――駆け向かった。

 

「!!」

 

「リュドドド!!」

 

 突如の事に目を見開く彼に対してオレは攻撃を仕掛けようとする。

 

「〝雷電――!?」

 

 だが、その途端にハイレインの周囲には――今度は数々のクラゲが浮かんでいた。

 

「ふっ……!」

 

 彼は冷や汗を流してなお、笑みを少し浮かべる。クラゲの群れで構成される防衛は堅固だろうと思っているからだ。

 その数が多いのはもちろんだが、何よりなのが毒を有するクラゲだからである。それに加えてこのオレでも痛いと感じさせられる何かもある。故にオレがうかつに動けない筈だと――

 

「〝雷電八卦〟!!!」

 

 だが、対するオレは「神武」の大剣と金棒の両方を発揮しクラゲの壁を叩き通し――その強烈な攻撃がハイレインにまでも届かせてみた。

 

「!?――オォォォォ!!」

 

 そんなオレの姿勢に驚愕せざるを得なかった彼が重い打撃と鋭い斬撃の両方を受けた事であまりにも強烈な勢いで吹っ飛ばされていった。

 その様を見届けたオレに対してさっき粉々にしたクラゲの群れの欠片と残りの数個体も襲い掛かる。

 

「〝軍荼利泌弘万〟!!!」

 

 もっとも、さっきと同じくその技でその群れを分け隔てなく吹き飛ばした。

 一欠片さえをも残さなかったのを確認できたオレに対して四つん這いしてなお意識を辛うじて落としていなかったハイレインが苦悶、そして苦々しい表情を浮かべる。

 

「……何なんだ!!貴様は!!……デタラメじゃないか!!」

 

「オォ!!オレの攻撃を食らってなお、まだ気を失っていねぇとはな……精度が甘かったか?それとも――お前がタフなのか?」

 

「……フン!これでもオレはリーダーをやっているんでね……そう簡単に倒れる訳にはいかないからこそ、しっかり鍛えてきたわ!!」

 

 オレという理不尽さに胸中に溜まったイラつきを全て吐き捨てるかのように怒鳴り付けたハイレインに対してオレはその文句を無視してそのタフさに感嘆した。

 それに対して彼はそう言い張った――実は彼はクラゲの群れでの防衛の鉄壁に自信を持っている一方でオレの強さを理解しているからこそ、前もって態勢を整えてあったのだ。

 そして、攻撃を受けた際に身体を後ろに下がらせる、「神武」を辛うじて蹴る等でその威力を可能な限り弱めてみせたのだ。

 ……まぁ、その立場な故に特別鍛えてきたという事情もあるが……

 とにかく、どうであれ意識を失っていないのが確かであるハイレインに対してオレは口を開く。

 

「リュドドド……お前の能力は――」

 

「――〝命〟に関係するもんなのか?」

 

「…」

 

 その可能性をハッキリさせる為にオレが投げかけたその指摘に対してハイレインは何を言わず――しかし、マントの中に密かに隠しているものに気を向けていた。

 そう、〝バシレウス〟に所属する彼もまた〝悪魔の実〟を食わせた武器を所有している。ハイレインが所有する武器、それは――白い卵の形状をしている発光体であった。

 その名は「アレクトール」である。

 

 

「アレクトール」――

 

それに食わせた実とは――〝ラフラフの実〟である。

その能力は生命を生み出す、すなわち生物を作るというものだ。

それによって鳥と魚、クラゲ等の生物を生み出してきた、まさに反則的な能力といえるだろう。

……ただ、そのような能力でも制限、限界が存在している。その1つなのが――生命といっても所詮本物ではないという事である。

その身体能力、素質は生み出せる張本人以下になっている上にその寿命もせいぜい――約数分程度だ。そのあたりは張本人の能力が上昇すれば、それにつられて上昇される事もあるが、基本には刹那的だろう。

 

だがハイレインはその能力で戦闘だけでなく、諜報と裏工作等の様々な分野に特化する生物を生み出して活用してきた事で確かな成果を上げてきた。

しかも、それだけに留まらず――更なる可能性を求めて洗練していった結果、その能力の「命を創造する」特性をさらに進化させて――命に影響を与える攻撃、すなわち如何なる者でも痛みを感じられる攻撃を編み出した。

そういう攻撃だからこそ、身に受けたオレも痛みを感じたのだ。

 

 

 ……だが、今ハイレインは四つん這いしている。

 そんな様ではもはや戦闘続行が困難だろう。そして、そんな彼に対してオレは――「神武」を構えていた。

 

「……お前には聞きてぇ事があるから、殺さないが――痛手を受けてもらうぜ」

 

「っ…」

 

 その言葉に苦々しい表情を浮かべるハイレインに対してオレは「神武」を容赦なく振り下ろそうとし――

 

「!」

 

 そして気付く。オレの足元には――数々のハチとトカゲが付着しているのを……

 

「――食らうがいい!!」

 

 そんな中でハイレインがそう宣した途端に数々のハチとトカゲが発光し――

 

「…!!」

 

 両足に軽くはない痛みを感じさせられた。それにオレが顔をしかめるのに彼は笑みを浮かべるが……

 

「……リュドドド!!痛ぇな!!」

 

「!!」

 

 その激しき痛みを感じられたという事を受けてオレも嬉しくてつい笑っていた。しかも、それでもしっかり立っている。

 その事態にハイレインは冷や汗を流す。

 

「ば、化け物め……!!」

 

「おう!!褒め言葉をありどな!!」

 

 そして彼が呻きながらそう言いつけるが、それに対してオレはそう返した。その反応にハイレインは口をあんぐり開け、目を白くした。

 ……「アレクトール」での攻撃が通じない上に悪口に対してそう返すとは…もはや無敵では?そう考えずにはいられなくなった彼に対してオレは改めて「神武」を構える。

 

「痛みと褒め言葉をくれた礼として――お前を叩き込む!!」

 

 それはそりゃ気持ちいい笑みを浮かべたオレが顔を引きつらせたハイレインに「神武」を振り下ろそうとし――

 

「!」

 

 その瞬間にまたしても両足に違和感を覚えた。視線を向けてみると――足に数々の針を刺されていた……否、ちゃんと刺されていなかったらしくあっけなく落としていった。

 

「…!!」

 

 だが、その途端にオレの態勢がガクンと崩され、膝を曲げかけた。その事に目を見開くオレをよそにその声が響かれる。

 

「……針も貫けないなんて――あなたの肉体どうなってるの……?」

 

 そう呆れた声を出しながら顔を引きつらせた女性――ミラがそこに立っていた。このオレの肉体の硬さに畏怖を感じざるを得なかった彼女だが、すぐ微笑む。

 

「……でも、さすがにツボの効果はあるようね」

 

 態勢を崩しかけたオレの姿にその効果を認知できたミラは安堵感を覚えた――そう、今の事態は彼女の仕業である。

 ミラもまた〝悪魔の実〟を食わせた武器を所有している。それこそが彼女の手に持つ黒い球体である。

 その名は「スピラスキア」である。

 

 

「スピラスキア」――

 

それに食わせた実とは――〝チクチクの実〟である。

その能力は針を生み出す、自在に操るというものだ。

それによって針を生成できるのはもちろんだが、その能力をミラが洗練させていった結果として長くて鋭い針までも生成するようになった。

さらに多種多様な針を生成し、操った事で敵と邪魔者を無慈悲に刺し貫いてきた。

 

だが、針の可能性はまだそれだけではない筈だと考えたミラはそれを探り続けるうちに針関連の技術――〝鍼灸施術〟の存在を知った。

それは人間の身体に点在するツボに細い針を刺入し、自然治癒力を高めて痛みと不調を改善する技術だが――そのツボのツボには身体能力をさらに上昇させられるものも存在している。

 

 

 その技術を会得し、さらに鍛錬してきたミラによって両足のツボを何とか突かせられたオレはその足から力が抜けていくのを感じた。それにつられてオレの態勢がさらに崩され、倒れようとする様を目視するミラが微笑む。

 

「……化け物だろうが如何なる者だろうが――ツボさえをも突かされば、誰でも無力化するのよ……!」

 

 ハイレインが苦戦せざるを得なくなる程の猛者さえをもこうさせる程の〝鍼灸施術〟の性能を改めて認識したミラが勝ち誇る。それに対してオレはただ倒れる――

 

 その場に音が響かれる。

 

 

 

 ――倒れると思われたオレは片足を床に強く踏み付けた事でそれを避けられた。

 

「「!!?」」

 

 オレが倒れず、それどころか足を強く踏み付けたという事態にミラとハイレインが驚愕するのに対してオレは――笑っていた。

 

「――リュドドド!!息抜きを邪魔された時はイラついたが……もう面白ぇ!!こういう戦い方があるとはなぁ!!」

 

 初めて見る戦い方に対してオレの胸が躍らずにはいられなかった……

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