ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第135話〝宿命〟

「メーテール」――

 

それはある道具の事を指すが……ただのものではない。

それは古代に作られたものでその性能は――驚くべき事に自然現象と土地の形成を司ると謳われる。

その道具を扱う古代の人間達はその力により土地造成と豊作に大きく貢献してきたそうだ。

それ程の異質で強大な力だが……しまいには――擬似的だが、何とあの太陽までをも生み出せられるとか生み出せられないとかという……

 

そのようなものが実は――今まではある地で眠っていたのだ。

――だがそこに騒動が発生し、それを収束させようと海軍Gー3支部が出勤した事で運命が変わった。

その騒動によって偶然ながら数百年ぶりに出現した「メーテール」を海軍が発見し、そのまま海軍Gー3基地内に格納されていった。

 

それと同時に〝バシレウス〟からの亡命も発生した。

その亡命集団の逃走先を探ったハイレインはそれが判明されるのに伴い「メーテール」の件を知った事で運命がさらに変わっていった。

実は「メーテール」の事を知っている彼はそれが格納されている海軍Gー3基地に亡命集団が向かっているという事態を千載一遇の機会だと見捉え〝サンモン〟遠征を立案した。

「メーテール」を手にする、ついでに亡命集団を捕獲すれば――例え海軍との戦いでどれだけ痛手を負わされようが、釣りが出るどころか――一石二鳥だとハイレインは考えた……

 

 

「――それが奴らの動機だろう」

 

 海軍Gー3基地内の広間でマサムネ中将が自身の把握している情報から〝バシレウス〟の侵攻の目的・動機に関して考え得られる事を人々に説明していた。

 その内容――特に「メーテール」の事に人々も驚愕せざるを得なかった。

 

「何と……!そのような力を持つものがここに……!?」

 

「……ですが、確かにそういう話なら――リスクを覚悟してまでここを攻め込もうと考えるのも頷ける……!」

 

 「メーテール」の異質な力、それがここに存在しているという事実に人々が肝を抜かれる中で謎に包まれていた〝バシレウス〟の目的・動機に対しての納得の声も出てきた。

 確かにそれ程の力を秘める「メーテール」を手にできれば〝バシレウス〟議長の座に就くのも夢ではないかもしれない……

 その事に人々が納得している中でそのうちの1人がふと気付く。

 ――そういえば……

 

「……しかし、なぜ「メーテール」の事を知っているんですか?我々も知らなかったのに」

 

「「「!」」」

 

「!……それはそうですね」

 

 その者がマサムネに対して投げかけたその疑問に人々もハッとする。そして彼もその内容に頷き――

 

「うむ、その疑問ももっともだ……実は訳あって、その情報を偶然得てな……しかし、この私でも実物を目にした時はさすがに驚いたがな」

 

 マサムネは堂々とそう述べながら――少し思いを馳せていた……

 

「……まぁ、だからこそ奴らの狙いに気付けたがな」

 

 そう、〝バシレウス〟が〝サンモン〟を侵攻してきた時にその可能性を着想した彼は「メーテール」の安否を確信しに格納庫に向かったが……案の定だった。

 マサムネの尽力もあって「メーテール」を何とか奪われずに済められたが……

 

「「メーテール」を求めてわざわざここさえにも攻めてきた事態からここに置く訳にはいかなくなった」

 

 そう――「メーテール」を入手する為に海軍基地さえにも躊躇せずに攻めてきたのだ。その事実、そして〝サンモン〟が被った被害を重く見た彼がそう結論付けた。そして――

 

「では……」

 

「あぁ――「メーテール」を海軍本部に輸送する」

 

 その結論に対して人々は異議を唱えなかった。彼らも海軍支部では「メーテール」を管理するには手が余ってしまう。ならば――海軍本部にそれを一任する方が効率的だと考えているからだ。

 全員が同じ考えである故に難なくそう議決された途端に声を上げられる。

 

「――しかし!奴らが「メーテール」を手にしなくて良かったですな……!」

 

「……そういえば――暴獣海賊団とやらもそれが目当てなのか?」

 

 「メーテール」が〝バシレウス〟に奪われなかったという事実に人々が安堵感を覚えた。その一方でその可能性も上げられた。

 その可能性にマサムネは――目をつぶる。やがて目を見開いた彼が口を開く。

 

「……いや、暴獣海賊団が「メーテール」には興味がないかもしれん。なぜなら――」

 

 そう言い始めるマサムネの脳には格納庫に暴獣海賊団の影を感じられながら「メーテール」が無事に置かれているという事実が思い浮かんでいた……

 

        ●

 

「――いや、僕もそりゃ興味を惹かれたよ!でも、スサノオさんのご意見を伺うべきだと思ったから「メーテール」に手を出さなかったってば!」

 

 一方でカイリュー号――そこでオレ達は議論していたが、〝バシレウス〟の兵士から情報を手にしたハッテンもオレ達に対して「メーテール」の事を説明していた。

 その力に興味を惹かれずにはいられなかった皆は彼が「メーテール」に手を出さずに放置したという事に不服そうにしているところでハッテンが素早くその理由をも説明した。

 そう――「メーテール」の事を知った彼は最初こそ利益を得られるそれを回収すべきだと考えた――が、それに触りかける瞬間にオレの面倒事を増やしたくないという意思をも思い出した。

 その2つに板挟みになってしまったハッテンは「メーテール」を回収した場合のメリットとデメリットを冷静に比較し――最終的に敬愛するオレの意に沿ってそれから手を引く判断を下した。

 その理由を語られ終えた途端に皆がオレに視線を一気に向けた。彼らはハッテンの判断に対してこのオレがどんな判定を下すのか気になったからだ。

 そんな視線に一瞬押されたオレだが、すぐ笑みを浮かべる。

 

「リュドドド!!――オレはハッテンの判断は別に間違っていねぇと思うぞ!!」

 

「「「!」」」

 

 その表明に目を見開く皆にオレは考えを述べる。

 

「……そりゃ、このオレも「メーテール」には興味があるが……あの時はそんな場合じゃなかったしな!!」

 

 ――そう、「メーテール」なら確かに更なる利益を得られたかもしれねぇ……

 ――だが、オレ達と〝バシレウス〟と海軍が戦っているあの状況下でそんなマネをしたら……更なる混乱が広がったかもしれねぇ。さすがにオレでもそういうメンドくせぇ事は避けたいと考えている。

 

「だから――その判断は間違いねぇから安心しろ!!」

 

「!――そう言って頂けると……安心します」

 

 そういう訳からのオレの断言を受けてハッテンも微笑み頭を深く下げる。すると今度はフドウが声を上げる。

 

「……だが、これで海軍の奴らは「メーテール」を別のところ――それこそ海軍本部に輸送するかもしれんぞ」

 

「あぁ、むしろその可能性が高ぇ。それ目当ての〝バシレウス〟によって〝サンモン〟がこうなったんだ。海軍本部に置く方が話が早いだろうよ」

 

 その懸念に相槌を打ったオレにジャックが訝しげにする。

 

「……いいんですか?」

 

「おう!少し口惜しいが……今はそれより気になる事があるんだ」

 

 その意図を確認してみる彼にオレがそう言っておくと続いてペインに視線を向ける。

 

「お前はあの時――亡命者達の近くに寄ったんだな?」

 

「えぇ、そうですね」

 

 オレが口にしたその確認に彼が頷く――そう、海軍Gー3基地内に潜り込んだペインはその中を探っていくうちに――〝バシレウス〟からの亡命集団……子供達に対して追手が現れる場面に遭遇したのだ。

 その子供達の事情、立場……それを知った彼は自身と似たような彼らについ親近感を覚え――放置できずに援助しようと決意した。

 といえ、その時のペインは「暴獣海賊団のヤヒコ」として活動している。そのまま人前に出ても海軍に新たな侵入者だと見なされ、攻撃されるのがオチだろう。

 だから彼は近くの更衣室で一般海兵の軍服を拝借した事で海兵のフリをする事にしたのだ。

 そう――あの時子供達を助け、タクミ中将から疑問を持たれた謎の海兵こそが――ペインであったのだ。

 ……といえ、そんな彼でも突如発生された爆発で態勢を崩れざるを得なかった隙を突かれ2人の子供をまんまと連れ込まれてしまった。その失態にペインも悔しく思わずにはいられなかった。

 

 とにかく、その事を知ったオレは「CP9」であった彼に対してある事を聞いてみる。

 

「……海軍の奴らにさらわれた子供達を救出するつもりがあるのか?」

 

 真剣な表情を浮かべたオレがそう問いかけてみた――普通に考えれば、他でもならぬ「正義」を背負う海兵達が子供達を救出しようと動くのが道理だろう……

 だが、オレにはそうは思えなかった。何せ――

 そんなオレの意図を勘付いたペインもますます真剣な表情を浮かべ――口を開く。

 

「……そうですね…おそらく、それは――」

 

        ●

 

「――亡命者を対象とする救出活動は……行わない」

 

 一方の海軍Gー3基地の広間でマサムネが冷徹にそう宣言する。

 その内容に人々は苦悶の表情を浮かべざるを得なかった。

 

 ――それは分かっていたが、いざ堂々と宣言されると何ともいえない気分になってしまうな……

 

 人々がそう考えている中で1人の男が声を上げた――マサフミ中将だ。

 

「……マサムネ中将。それは本気で……?」

 

「あぁ」

 

 元々正義感が強い彼がその宣言に対してそう確認せずにはいられないのに対してマサムネが容赦なく言い放つ。その断言にマサフミはその理由を知っていても――やはり受け入れがたい。

 それで口を開こうとする彼をマサムネが鋭く凝視する事で止めらせる。マサフミの口が閉じられた途端に彼が口を開く。

 

「……我々は――「世界政府」直属の海上治安維持組織で、しかも支部だ」

 

「そんな立場の我々が――非加盟国の人間を助ける義理はない」

 

「!!……ですが」

 

 そう――「絶対的正義」を掲げる海軍でも所詮……一組織だ。それも「世界政府」直属の組織だ。そこに所属する者が非加盟国の人間を助ける等――その義理が一切ないのだ。

 その事実を冷徹に口にするマサムネに対してマサフミはそれでも何かを言おうとし――

 

「マサフミ中将」

 

 だが、それをマサムネがあまりに静かでしかし重い声でその名を呼ぶ事で遮る。口をつぐんだマサフミとその威厳さについ息を飲んでしまう人々を彼が見渡す。

 

「……この際だ。ハッキリ言おう」

 

「……我々は「絶対的正義」を掲げてこそいるが……正確には世界中の海の治安維持を行っているだけに過ぎん」

 

「「世界政府」に構成された秩序を維持し続ける――それこそがこの世界における「正義」だ」

 

 冷徹で威厳に演説するマサムネに人々も気を引き締める。

 

 ――例え納得しがたくても、受け入れがたくても……それこそがこの世界の「正義」なんだ。ならば――それに従うように努めるまでだ。

 

 そう考えざるを得ない彼らを凝視する彼はふと――呟く……

 

「……まぁ、随分と都合が良い「正義」だがな」

 

 その呟きが人々の耳に入らないうちにマサムネが言葉を続ける。

 

「「世界政府」に加盟しない国の人間である以上、如何なる者であろうが――我々が動く事はない」

 

「マサムネ中将……!」

 

 改めてのその宣言にマサフミが激しい苦悶の表情を浮かべてしまう。だが、それに構わずに彼は言葉を続ける。

 

「……それに〝サンモン〟は今復興の最中だ」

 

「――さらに、ここ海軍Gー3支部も基地がこうなっている上に戦力も十分に整えていない」

 

「それを完遂するには時間と人手を要している」

 

「故に――亡命者達を救出する余裕等、今の我々には存在していない」

 

「……分かったな?マサフミ中将」

 

 マサムネは今の海軍Gー3支部と〝サンモン〟の状況を明確に説明してやる事で余裕が一欠片さえも存在していないという事実をマサフミに認識させるようにする。

 まだ不服そうにしている彼もその事実には何も言い返せず――最終的に承知してしまう。

 

「……分かりました」

 

「よろしい」

 

 そう表明せざるを得なかったマサフミにマサムネは頷き――ふと、彼の手に視線を向ける。彼は――拳を強く握っていた……あまりの強さから血が微かに流れていた。

 それに対してマサムネは――

 

「…(まぁ、その悔しさは理解できるがな……)」

 

 そう彼は目をつぶる……

 

        ●

 

「――まぁ、それが「世界政府」に所属する者の宿命……だな」

 

「……そうか」

 

 一方のカイリュー号でペインも海軍が亡命者を救出するつもりがないだろうという可能性とその理由を説明していた。

 「世界政府」直属の「CP9」に所属してきた彼だからこそ――そうなるぐらいは想定できていた。故にか、かつての自身を自嘲するかのようにペインがそう言い張った。

 そんな彼に対してオレは真剣な表情を浮かべていた。

 ――海軍の結論とそれに至る経緯もそうだが、それより何なのが……

 

「つまり……子供達を見捨てる事になる訳か」

 

「……そうなるな」

 

 その結論に伴う事をオレが明確に口にするとペインも苦悶の表情を浮かべながら肯定する……

 しばらく黙ったオレにフドウが声を掛ける。

 

「……スサノオさん。まさか……」

 

「……だって――そうなんだろ?」

 

 今までのオレの様子からその意図を勘付いた彼が目を見開きながらそう言うとその言い草からフドウの意図をも勘付いたオレが口を開く。

 

「……話を聞いたんだが――奴らは子供なのに自由を求めて〝バシレウス〟からの危険な亡命を試みたんだぜ?」

 

「その度胸――称賛に値するぜ……!」

 

 〝バシレウス〟から亡命してきた子供達の行動、その度胸にオレも笑みを抑えられずにはいられなかった。だが、だからこそ――

 

「だからこそ!何とかしてぇ!!」

 

「……フッ、それはそうだな」

 

 心からそう言わずにはいられないオレの姿勢にフドウは苦笑しながらも異議を唱えなかった。実は彼もまた子供達に対して思うところがあるのだ。

 故に――フドウは暴獣海賊団の今後の方針を皆に知らしめる為にあえてオレに対して問いかける。

 

「――では」

 

「あぁ!」

 

 それに対してオレは皆を見渡しながら――笑みを浮かべる。

 

「――〝バシレウス〟に行くか!!」

 

 

――自由を求めて危険を冒した子供達の覚悟がこうして暴獣の心を動かしていた……

 

――暴獣がその覚悟に応えようとその地に向かおうとする……

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