〝バシレウス〟――
そこは4つの非加盟国から発足された連合である。
その力は強大で海賊等の蹂躙を跳ねのけ、平和を築いている。
4つの国は評議会メンバーがそれぞれ統治しているが、そのうちの1つ――ドッザが支配する国には……ある子供達がいた。
粗暴で卑劣なドッザが支配する地で生まれた彼らは兵士候補として育てられる事になっていた。そのままいけば――兵士として生きていくのだろう。
――だが、そのような生き方は彼らにとっては望みではなかった。血を流しながら戦うより――ただ、仲間と一緒に自由に生きたいのだ。
その生き方を心から求めている彼らはそれが叶えないその地から……脱走したのだ。
危険な脱走に成功できた彼らはおそらく大丈夫だろうと見込んだ海軍G-3支部が所在されている〝サンモン〟に亡命していった。
そこに無事に到着できた彼らはこれで自由になった……かと思われた。
だが、その亡命がきっかけになる〝サンモン〟に対する〝バシレウス〟――ハイレイン派の侵攻が発生してしまった。
その最中に彼らのうちから2人がさらわれてしまった。
〝バシレウス〟へ連れ戻されたであろう2人の身を案じ、助けたいと考えた彼らだが――その思いに海軍が応じる事は……なかった。
助力が期待できなくなってしまった上に彼らはまだ年若い子供である。鍛えられた故にある程度の能力を持っていても――仲間の救出には足りないだろう。
もはや〝八方塞がり〟――そういう状況に置かれてしまった彼らだが……希望が消えた訳ではなかった。
彼らに手を差し伸べたのは――何と、暴獣海賊団……海賊であった。
海賊である彼らだが――豪胆でもある。それ故か仲間との未来を求めて危険さえを冒してみせた子供達の度胸を気に入り、報いたいと考えたのだ。
――また、それだけに留まらなかった。何の因果なのか――たった1人の海兵も子供達を救出する為に暴獣海賊団に同行するという事態も発生したのだ。
何だかんだで奇妙な繋がりを持った暴獣海賊団は囚われた仲間を救いたいという子供達の意思に応えて〝バシレウス〟に向かっていった……
「……リュドドド」
オレ――スサノオはつい笑みを浮かべてしまった。
オレ達は今――〝バシレウス〟の城に押し込んだカイリュー号から降りていた。
なぜそういう状況になったのか――その背景を思い出していたオレはその滑稽さに笑みを浮かべていたのだ。
何せ――海賊がたった1人といえ海兵を加えながら子供の意思に応えて囚われた者達を救う為に行動しているのだから……それが実におかしくて笑いが湧き出ずにはいられなくても無理ではないだろう。
そんなオレ――に突如声を掛けられた。
「――スサノオさん!来ましたぜ!!」
「ん!」
そう知らせてくれた通り、オレ達の前に――兵士達が姿を現してきた。
彼らは殺気立ちながら武器を構えてきた――当然だろう。
突如襲撃してきた者はもちろんだが〝バシレウス〟の象徴である城に船を強引に押し込んだというあまりにも理解を超えた行為をしたオレ達に警戒しない方がどうかしてる。
「――暴獣海賊団だと!?海賊か!!」
「海賊ごときが何のつもりでこんな事をしやがったんだ!?」
「これは我々〝バシレウス〟への戦争宣言と見受けて良いんだな!?」
どうやら、さっきのオレの名乗りを耳にしたらしい兵士達がオレ達が作った事態に対して怒りを露わにしながらそう怒鳴り付けた。
その怒鳴りにオレ――否、オレ達は不敵な笑みを浮かべた。
「――リュドドド!!察せなかったのか!?オレ達はな――テメェらにケンカを売りに来たんだよ!!覚悟しやがれ!!」
「「「オォ〜〜ッ!!」」」
オレが堂々とそう宣すると皆も雄叫びを上げた。その姿勢を受けて兵士達も身構える。
「――貴様ら!!コイツらに情けは無用!!返り討ちにしてやれ!!」
「「「オォ!!」」」
兵士達の指揮官らしき者がそう声を上げると兵士達も雄叫びを上げ――オレ達に対して駆け向かった。
――こうして暴獣海賊団と〝バシレウス〟の戦争が勃発した……
●
「ヒャッハー!!戦いだぜぇ!!」
「オラァ!!暴獣海賊団の通りだぁ!!」
「チッ!野蛮な海賊共が……!!返り討ちにしてやる!!」
「あぁ!!我々〝バシレウス〟の力をみせてやる!!」
海賊達と兵士達が両方共に闘志を激しく燃やしながら駆け合い――激突した。
互いに敵とぶつかり合った彼らはそれでも怯まずに目前の相手を叩き潰そうとする――そうして戦いが展開されたが……その実情は少々訳があった。
まず、兵士達は敵を倒そうとするのはもちろんだが……一方で海賊側は戦闘以外に意図があった。
血の気が多くて戦闘狂である彼らの戦意、敵を倒すという意思に曇らせが一欠片もないのはもちろんだが……実は彼らはその場を引き受ける役割をも持っているのだ。
「――スサノオさん!!ここはオレ達が!!」
「そうそう!オレ達に任せて下さい〜!!」
その役割を果たそうと兵士達と戦っている海賊達の中からオレ達に対してそう言ってきた。その言葉を受け取ったオレも頷く。
「おう!!任せたぜ!!」
「「「オォ!!」」」
その言葉通りにその場は皆に任せてオレ達はさっさと移っていった――もちろんオレ達は敵陣の大将、すなわち〝バシレウス〟評議会のいる場へ向かうつもりだ。
――如何なる戦況もそうだが、敵陣の大将の首を取るのが最も早くて勝算がある道なのだから……それを実行に移すまでだ。
「!!させ――っ!!」
「おっと!スサノオさん達の邪魔はさせねぇぜ!!」
そんなオレ達に気付いた数人の兵士がすぐ追いかけようとするが、それを皆が阻止してくれた。これで少なくともその場から兵士達がオレ達を追いかけてくる事はないだろう。
「よし!!――お前ら!!いいな!?」
「――もちろん」
「当然だよ!」
「えぇ」
「当たり前です……!」
それを確認できたオレは続いて同行している者達にその問いかけを投げてみる。それに対して同行している者達――を代表して小紫とヤマトとフドウとジャックがそれぞれ答えてくれた。
そう、オレ達の目当てである〝バシレウス〟評議会はもちろんだが――その部下、腹心もまた存在している。その人数が少なくはないのもあって、その対策としてオレに小紫達も同行する事になったのだ。
――なお……
「……評議会とやらのメンバー共を排除するのはもちろんだが――」
オレ達が駆ける中で突如フドウが声を上げる。
「――ノーマンとチカの救出……そして」
「――〝説得〟が上手くいけば良いが」
オレ達が成し遂げようとする評議会撃破以外の作戦に関して彼はその懸念をみせる。
何せ――それを実行しているのが自身達、暴獣海賊団の者ではなく部外者なのだ。それ故にフドウも懸念を感じずにはいられないのだろう。
そんな彼に小紫が声を掛ける。
「ふふっ、無問題ですよ。彼らには私達の仲間がそれぞれついているのをあなたもご存じな筈」
「……まぁな」
彼女が言う通り、その作戦を実行している者達に暴獣海賊団の数人が同行しているのだ。その事実にフドウも頷く。
確かに同行している者達は信用できる。その者達なら、いざとなれば成し遂げてくれるだろう。
そう判断した彼は自身の役割に集中する事にした――その意図に勘付いたオレも笑みを浮かべる。
「リュドドド(その通りだぜ……それに子供達とオサムの奴も意外に骨があるしな……)」
オレはまんまと関わりを持つ事になってしまった者達の事を思い返した……大した事はないように見受けられた海兵の度胸、そして子供達の姿勢を思い浮かべたオレは笑みを深くする……
●
スサノオ達が駆ける廊下とは別の廊下――
そこにもある集団が駆けていた。それこそが――
「待ってて……ノーマン、チカ……!」
――エマとその仲間、そして彼女達に同行している数人であった。
彼女達はもちろん囚われた仲間――ノーマンとチカを救出する為に2人のいる場に駆け向かっているのだ。
「(必ず、必ず助けるから……!……そして、皆で生きよう……!)」
2人の身を案じるエマはそう決意を抱く――が、それは子供が抱くにはあまりにも並々ならぬ意思であった。
そう意気込んでみせる彼女だが――ふと自身達の周りを駆けている者達に意識を向ける。そして
「――皆さん!利益がないだろうに私達に手を貸して頂き……感謝します!!」
そう感謝を率直に伝えた。
――そう、エマ達だけで行動する訳でもないのだ。彼女達の援護として暴獣海賊団の海賊達が彼女達に同行しているのだ……利益がないどころか無関係であるにも関わらずにだ。
そんな者達に対してエマは感謝の念が湧き出ずにはいられないのだ。
そんな彼女達に対して同行している者達が答えようとする。
「君達が気にする事はないよ!!――むしろ、この僕自身が気にすべきなんだ……これって」
まず、その中で唯一の海兵――オサムがそう宥めた――が、すぐ不安になった。
……実は暴獣海賊団への同行を申し出た時の彼の姿勢は確かに立派だったが……後で冷静になって思案してみると自身の立場と状況を改めて認識した。
その途端にやはりまずいのではと考えるようになり、腰が引けてしまったのだ。
そうして今自身の行為に関して苦悶しているオサムをよそに今度は――
「そうそう〜だから君達は自分のやるべき事に集中しなよ〜それからオサム……今更だよ?」
ハッテンはオサムの言葉に相槌を打ち、そう忠告しておく。そして今頃不安を感じた彼の姿勢に呆れる様子をみせた。
すると――
「あぁ……オレ達は君達の素晴らしい勇気に感動しているからこそ手を貸したんだ」
――ハクジがエマ達に優しく微笑みながらそう伝えた。
元々彼は子供に対しては優しいが……大人顔負けの度胸をみせた彼女達に感動し、心から手を貸したくなったのだ。
そして――
「そうですね〜色々な子供を見てきましたが……君達の度胸は他に類を見ない程に中々でしたからねぇ……」
同じくエマ達の度胸を称賛するキサメが彼女達に笑みを浮かべる。
……彼は優しく微笑むつもりなんだが――その笑顔は実に凶悪で、それを向けられたエマ達はもちろんビビっていた……
それはともかく――
「ふふっ、いつまで気にするなんて……可愛いんだから♡」
エマ達の後ろを駆けるブラックマリアは自身達に対して負い目らしきものを抱えている彼女達の姿勢を可愛く感じているらしく妖しく微笑んだ。
――以上の5人がエマ達に同行していた……
●
エマ達が駆ける廊下とはまた別の廊下――
そこでも集団が駆けているが、そっちは――
「……今のところ無問題のようですね」
――レイとその仲間、そして彼らに同行している数人であった。
彼らはエマ達と分かれて行動しているのだ。
……なお、囚われた仲間を助けようとする彼女達となぜ分かれているのかというと……
「……オレ達のやろうとする事を考えるとこのままではいかねぇだろうけどな」
レイがそう呟いた通りに彼らには他にやる事があって、その為に行動しているのだ。
なお、自身がやろうとする事の深刻さから彼は身の危険を感じていた――そんな彼に声を掛けられる。
「――心配する事はない。なぜなら、君達の事は……このオレ達が守るからだ……!」
「だから君達はやるべき事に集中すればいい……!」
ペインが彼らにそう言い張って激励しようとする。そんな彼からの激励にレイも目を見開き――深く頷く。
「……あぁ!そうします」
自身の使命を自覚した彼は決意を固めてみせる。
それに続いて――
「ヤヒコの言う通りだよ!今の君達には我々がついているよ!!」
テゾーロもレイ達に対して優しく微笑みながら同じように激励を贈った。それに伴い――
「えぇ、そうなのよ!あなた達が知ってるけど、彼は強い上に最高のエンターテイナーなの!あなた達に悪い様にはしないわよ!」
「あい!」
ステラが心から信用を置く夫の事をレイ達に説明して、やがてそう宣した。そんな彼女が抱いているノヴァもそれに相槌を打つかのように元気に手を挙げた。
そんな妻子の強い推奨にテゾーロもつい真剣な表情を浮かべていた顔を綻ばずにはいられなかった。
「ハッハッハッ!!――そんなに褒めないで〜」
「あら!私達は事実を口にしただけよ!」
「あい!パパはすごい!」
「ハッハッハッ!!」
それは和やかな雰囲気が漂ってきたギルド一家にペインとレイ、人々も苦笑を浮かべざるを得なくなった。
「――すまんが!集中してくれ!」
といえ、今はそういう状況ではない。それ故にその雰囲気を切り替える為にペドロがあえてそう声を上げた。その大声、そして内容にギルド一家も我に返り、すぐ気を引き締めた。
「おっと!申し訳ない!!」
「ごめんなさいね!」
「ごめんなちゃい……」
――以上の6人がレイ達に同行していた……
――そして、その城内の各所でそれぞれ戦いが発生しようとしていた……