ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第142話〝完全なる終止符〟

――その部屋は評議会が〝バシレウス〟の指針を含む重要な話題による議論を行って決定を下す会議室である。

その不可欠な役割を持つだけはあって、その内装は実に壮麗であった。

そんな部屋は今――かき乱されていた……

 

――突如襲来してきた暴獣海賊団とそれを迎え撃とうとする評議会率いる軍団によって戦場と化されたのだ。

その戦いの余波は実に凄まじくて、その影響を直に受けた会議室のあれ程に壮麗であった内装も見るに耐えられなくなっていた。

……それでも戦いを続けられる――互いに敵を倒す為に……

 

――そして、そんな最中で新たな戦いが発生しようとする……

 

「リュドドド……こんな状況下でも余裕に笑っていたんだ――お前の強さは期待を裏切らねぇよな……!?」

 

 オレはある者を前に不敵な笑みを浮かべながら「神武」を構えた――目前の者が非常事態に身を置かれてなお、余裕のある程度を取っているという事実からその期待を抱きながら……

 そんなオレと向かい合っている者……レグラヴァリマは相変わらず不敵な笑みを浮かべていた。

 

「ふふ……妾を見くびるでない……!」

 

 妖しく微笑む彼女が両手を掲げてみせた。そこには――それぞれ籠手を装飾されていた。

 

「この妾こそが〝バシレウス〟最強であるんだからな……!」

 

 レグラヴァリマが堂々とそう宣した途端にその指先から爪が長く鋭く伸びてきた。

 

「!」

 

「ふふっ!」

 

 その光景につい眉を少し上げたオレに対して彼女は獰猛な笑みを浮かべ――素早く飛びかかってきた。

 

「――お前こそ妾の期待を裏切るでない!!」

 

「――リュドドド!!それは保証できるから安心しやがれ!!」

 

 籠手をそれぞれ装飾している両腕を大きく振り上げながらそう揶揄してきたレグラヴァリマにオレも獰猛な笑みを浮かべながら応えようとする。

 

 

――そうして〝暴獣のスサノオ〟とレグラヴァリマが激突した……

 

        ●

 

――その戦いが発生した一方で違う場所では……

 

「――んオラァ!!」

 

「チッ!!」

 

 ――ジャックとハイレインが戦っていた。

 ただ、その戦況は一方的だった。

 ――まず、ハイレインは「アレクトール」で鳥と魚、ハチとトカゲ等といった数々の生物を生み出して、それらをジャックに襲い掛からせた。

 だが……対するジャックはマンモスに変身し、襲い掛かってきた生物の群れを徹底的に蹴飛ばしてやった。

 その様はまさに――〝アリとゾウ〟であったといえよう……

 

「――テメェがどんな生物を生み出すだろうが……マンモスに敵わねぇ……!!」

 

「クッ!!」

 

 自身が変身したマンモスの力を誇示するかのようにそう言い張ったジャックにハイレインも不快な気分にされたものの、反論できなかった。

 確かにマンモスの半端ではない力には並の生物じゃ敵わないのだろうと考えざるを得なかった。

 そこでさらにもっと大きく強い生物を生み出せばいいだけなんだが……ただ、そうするには体力を大きく消耗する事になる。

 それ故にスサノオを倒さなければならない状況下でその手を取る訳にはいかないのだ。

 そう判断した彼は改めて自身の能力、所作の可能範囲を可能な限り冷静に見極めようとした。やがて――

 

「――やるしかないな……!」

 

 何やら決意を抱いたらしいハイレインは素早く――身構えた。その体勢は何かの武術の構えになっているようだ。

 

「テメェがやる事は何もねぇ!!なぜなら!!このオレに潰されるからだ!!」

 

 だが、そんな姿勢にさえジャックは構わずに駆け向かった――彼をさっさと木っ端微塵にする為に。

 

「!」

 

「オォォォォ!!」

 

 それはまた勢いが凄まじき疾走にハイレインも警戒を強め、それに伴い彼が取っている構えの鋭さも増されていった。

 だが、そのうちにそんな彼との距離を大分縮めたジャックはその途端に上半身を大きく振り上がらせた。

 

「〝天裁〟!!!」

 

 大きく振り上がらせた彼の上半身が強烈な勢いで振り下ろされ――ハイレインごと足元の床を強く叩き込んだ。

 その衝撃はあまりにも凄まじくて、その場を激しく揺れされた。

 ――これで彼は完膚なきまでに叩きのめされたかと思われた――が……

 

「!!」

 

 しばらく自身が粉砕した床を凝視したジャックが突如目を見開き――素早く上方を見上げた。そこには――何と、ハイレインが浮かんでいたのだ。

 その姿から倒せていなかったと顔をしかめたジャックに彼は冷や汗を流して――なお、それでも笑みを辛うじて浮かべていた。

 

「――マンモスの力は確かに半端ではないが……その動きは鈍くさい!!」

 

 ――そう、ジャックの〝天裁〟は確かに凄まじき破壊力を発揮できるが……ただし、上半身を振り上がらせてから振り下ろさせる必要がある。

 その所作には時間がかかっている――その隙をハイレインは見逃さずに突いたのだ。

 彼はジャックが上半身を振り上がらせてる最中で勢いよくジャンプして空中に浮かべた事で〝天裁〟の強大な衝撃波から逃れられたのだ。

 

「チッ!!」

 

 その事実から自身の技の欠点を突き当てられたジャックが苦々しそうに舌打ちするところにしばらく空中に浮かんでいたハイレインが落下するのに伴い、勢いよく飛びかかった。

 

「…!!」

 

「――オォ!!!」

 

 その姿勢に目を見開くジャックの頭部に対して彼の拳が強烈な勢いで放たれた。

 

 ……ハイレインは〝バシレウス〟評議会のメンバーである上に一国のリーダーでもある。

 その立場に就くだけはあって彼自身の強さも並ではない。その地に伝えられる独特の武術を身に付けているのもあって、ますます十分な実力を持っているだろう。

 そんな彼が強烈な勢いで放った拳を直に受けた者もたまらずに倒れていく事になろう……

 

 ――だが、ハイレインが相手しているのはジャック……暴獣海賊団が誇る屈強な海賊だ。

 それ程の男が拳を頭部に食らっても倒れる訳でもない――

 

 ――筈だったが……

 

「…!!?」

 

 頭部に突如走らされた激しき痛みに彼もつい白目を剥き――体勢も少し崩しかけた。

 屈強な自身でも効いたその確かな痛みに困惑せざるを得なかったジャックの姿勢を着地しながら目視したハイレインも笑みを浮かべた。

 

「ふっ……さすがのマンモスでも〝これ〟には効いたようだ」

 

 勝ち誇るかのようにそう囁いた彼の掲げた腕……否、身体には蛇が巻き付いていた。

 そう、その蛇もまた「アレクトール」で生み出された生物である。ただ、その蛇をハイレインは他に生み出した生物と同じように敵に対して襲い掛からせずに自身の身体に巻き付けさせている――鎧の如き……

 彼は蛇を自身の身体に巻き付けさせる事で防御力を上昇させたのはもちろんだが……一方で攻撃する際に蛇を強烈な勢いで発射するのだ。

 

 そのカラクリにより――ハイレインから拳を放たれたのと同時に蛇の体当たりを頭部に受けた事でさすがのジャックも体勢を崩せざるを得なくなったのだ。

 そういう姿勢では自在に動けにくくなるのだろう。

 現によろめいている彼の姿にハイレインも安堵感を覚えた。

 

「フッ……普通ならここでトドメを刺すところなんだが――」

 

 そう言い放つ彼だが、その視線は――スサノオに向けられていた。

 

「あいにく、今はスサノオをこの手で倒さなければならないんだ。お前如きに構ってやる暇はないんだ」

 

「!!」

 

 ……そう、ハイレインはそもそもその戦いに勝利するつもりは別にない。彼にとってはそれよりスサノオを自身の手で倒す方が最も重要だ。

 そういう背景な故に今のジャックの姿勢がまさに好機であるといえよう。

 ――だが、意識が少し遠のいていくジャックも朗らかに言い放たれたその言葉を耳にした途端にその目が鋭くなった。

 

「――!!?」

 

 その瞬間、その場に凄まじき覇気が放たれ広げられた。その凄まじさによってスサノオの元に向かおうとしたハイレインの足も止められざるを得なくなった。

 冷や汗をすごく流しながら身構えた彼の前には――マンモスの姿から元の姿に戻っていくジャックの姿があった。

 ……普通に考えれば、マンモスの並外れた力を使う事もなくなったので状況が好転したと考えるところだが……

 

「…(何だ!?この覇気は!?)」

 

 だが、その覇気を感じ取れたハイレインは話がそう簡単に進む訳がないと考えずにはいられなかった。

 そんな彼に対してジャックは口を開く――それはそれはすごく野太い声だった。

 

「……テメェ……このオレの前で……」

 

 そして、その声を出す彼の目は――すごく血走らされていた……

 

「……またスサノオさんを倒すとほざいたな?」

 

 そう、ハイレインがまたしてもその言葉を口にした事がジャックの逆鱗に完全に触れたようだ。

 彼に対して手加減するつもりが最初から存在しないジャックだが、もはや――グダグダする訳にはいかなくなった。

 

「……跡形もなく消してやる……!!」

 

 その決意をハッキリ口にした彼は右拳を構える。

 そのあまりにも強き意思につい慄いてしまったハイレインもすぐ気を引き締めらせる。

 

「(体力を消耗する事になるが……ここで完全に倒しておく方が良さそうだ……!)」

 

 ジャックから放たれてくるその凄まじき覇気もそうだが、スサノオへの強き忠誠心からここで完全に倒さないと後で厄介な事になると考えた彼は目前の男に集中する事にした。

 そのまま自身に力を入れてみせる――もちろん、その身体に蛇も補佐の為に巻き付いていく。

 その姿勢を目視したジャックは宣する。

 

「……テメェの拳も確かに中々だが――オレの拳には敵わねぇ……!!」

 

「――それは試みなければ分からない話だ!!」

 

 その言葉に対してハイレインはそう言い返しながら――勢いよく駆けた。

 

「ハァァァ!!」

 

 強烈な勢いで駆ける彼は右拳を構え、その右腕には蛇が強く巻いていた。対するジャックも――その姿勢を受けて、自身も右拳に力を込め始める。

 ――今こうして2人の男が互いに相手に拳を放とうとする……

 

「ハァァァァァ!!!」

 

「シャアアアアア!!!」

 

 まず、ジャックの前にまで駆けたハイレインの拳が強烈な勢いで放たれた。しかもそれだけではなく、その腕に巻き付けられている蛇も強烈な勢いで飛びかかった。

 ――彼が目前の男に集中するのを決意した今ではさっきより威力を秘めるであろう拳が襲いかかってきたのに対してジャックも――力を込め続けた拳を負けじと放ってみせた。

 

「〝三千五百枚瓦正拳〟!!!」

 

 ――その拳と蛇の襲撃を纏う拳が激突した……

 

 その激しき激突から衝撃が大きく広げられた――

 

「…!!」

 

「シャア!?」

 

 その激突を身近で目視できているハイレインは驚愕に目を見開く。またジャックの拳を粉砕しようと噛み込んだ筈の蛇も驚きの声を上げた。

 

「――ンオラァ!!」

 

 一方でジャックは自身の拳、身体に更なる力を入れる。

 それによって力をさらに増した〝三千五百枚瓦正拳〟が噛み込んできている蛇を木っ端微塵にし、ハイレインも放った拳を打ち砕かれその身体も勢いよく吹っ飛ばされた。

 

「あがぁ!?」

 

 ――そう、彼の拳がジャックの〝三千五百枚瓦正拳〟に敵わず粉砕されたのだ。

 ……だが、競り勝った筈の彼の表情は浮かなかった。

 

「――チッ!浅いか!」

 

 実はハイレインを吹っ飛ばした際の手応えから倒せきれていないと悟ったジャックは追い打ちをかける為にすぐ駆け向かった。

 吹っ飛ばされながらもその姿勢を目視したハイレインも何とか対応しようとする。

 

「クソッ!!――ハァァ!!!」

 

 そして彼は辛うじて「アレクトール」から更なる蛇、そしてサメを数々生み出し、迫ろうとするジャックに襲いかからせる。

 

「!」

 

 その攻撃からまだ余力があった事に眉を上げた彼を蛇とサメの群れが容赦なく襲いかかった。

 一見蛇とサメの群れにジャックがいいようにされているような光景にハイレインも思わず安堵しかける。

 

「(やったか!?)」

 

 だが、彼がそう思い浮かんだ途端に蛇とサメの群れが突如大きく吹っ飛ばされた。

 

「――オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛!!」

 

 ――その身体の各部が確かに赤く腫れているのが見受けられるものの、それは凄まじき勢いでジャックがハイレインの元へ向かってジャンプしてきたのだ。

 

「えぇぇぇぇ!!?」

 

 その姿勢に彼も動揺せざるを得なかった。

 

「な、何で!!?」

 

 そしてたまらずにそう声を上げずにはいられなかった――

 何せ、「アレクトール」で生み出された蛇とサメの群れに襲い掛かられたんだ。何とか吹っ飛ばしても激しき痛みを感じせざるを得ない筈だ。

 なのに、そういう様子さえをみせないジャックの勢いにハイレインも疑問を感じずにはいられないのだ。そんな彼に対して答えるかのようにジャックが堂々と言い放つ。

 

「根性だぁ!!!」

 

「えぇぇぇぇ!!?――そんなのありぃ!!?」

 

 その言葉にツッコまずにはいられないハイレインにジャックは容赦なく――さっきから力を込め続けた左拳を強烈な勢いで放った。

 

「〝三千五百枚瓦正拳〟!!!」

 

「!!」

 

 その放たれた〝三千五百枚瓦正拳〟を今度は直に受けてしまった彼はさらに凄まじき勢いで吹っ飛ばされていった。

 その威力は凄まじくて――壁を強引に抜けられてなお、そのまま外へ吹っ飛ばされていった……

 

「ガァアアアアア!!」

 

 悲鳴を上げながら消えていくハイレインの姿を見届けたジャックは呟く。

 

「……これで身の程を思い知ったか」

 

 

『暴獣海賊団 ジャック

  VS

 バシレウス ハイレイン』

 

『バシレウス

「会議室の戦い」』

 

『勝者 ジャック』

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