ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第143話〝様々な戦況〟

 ――〝バシレウス〟の中枢として建てられた城。

 中枢の象徴だけはあってその外観は実に風格があるが……そのうちのある壁が突如破られた。

 するとそこから――1人の男が外へ向かって強烈な勢いで飛ばされた。

 

「ガァアアアアア!!」

 

 ――それこそがハイレインである。

 実は彼は侵入者達の中のある男をまず倒そうとしたが……力及ばずに返り討ちにされてこうなったのだ。

 なお、彼が吹っ飛ばされた際の勢いもまた半端ではない故に彼は激しき苦悶の悲鳴を上げながら空をしばらく飛ばされ続けていた。

 だが、やがてその勢いも少しずつ弱まるようになる。もちろんそれに伴い、飛ばされている彼の身体も落ちようとする――地へ……

 

 ハイレインを吹っ飛ばした張本人であるジャックはその様を見届けた。

 

「……フン、まずは1人か」

 

 自身の行動によってもたらされた結末から今の状況をそう認識した彼は他の状況を確認する為に視線を移す事にした。

 そして、ジャックが視線を向けてみたある場所では――

 

「ハァァァァァ!!」

 

 ――ミラが自身が相手する者に対して鬼気迫る表情で全力を出していた。

 彼女は「スピラスキア」で生成した数々の長くて鋭い針を強烈な勢いで放つ。

 

「アッハ♪」

 

 だが、その攻撃を受けようとする者――ヴァニカは実に楽しそうな表情を浮かべていて、そして自身の身体を血に変化させる。

 そんな身体を針が――刺せずに通り抜けていった……

 

「っ!!」

 

「アハハ♪――私達……相性が悪いみたいだね!」

 

 自身の攻撃が通じない事態に苦悶の表情を浮かべるミラにヴァニカは意地悪な笑みを浮かべる。

 さっきから悪い事態が本当に一向に改善していない事実と目前の敵が浮かべた笑みを受けて彼女も怒りを爆発せざるを得なかった。

 

「この――!!クソガキ共がぁ!!」

 

「ん〜飽きたしぃ……もういっか♪」

 

 だが、その激昂をヴァニカは気にせずに――気楽にそう呟いた。そして……その手は血に変化させながら――蠢いた。

 

「!!この……!!」

 

 その光景から彼女が何かをしようとするのを勘付いたミラは更なる針を多く生成してみせ――そして回転させる。

 彼女的には数々の針を回転翼の如き激しく回転させる事でヴァニカが出してくるであろう攻撃を防御する心積もりだ。

 そんなミラに対してヴァニカはそれでも笑みを浮かべ続け――腕の血をさらに激しく蠢かせる。

 

 ――そして

 

「〝紅い激流〟!!!」

 

 彼女がさっきから激しく蠢かせ続けた血を強烈な勢いで放出した。

 

「ハァァァ!!」

 

 その〝紅い激流〟を激しく回転させる針で受け止めようとしてみせるミラだが――

 

「!!」

 

 その勢いは彼女の予想を越える程に凄まじかったらしく、数々の針を粉砕していった。

 

「く、クソォォォォォ!!」

 

 そのまま目前に多大な血が襲いかかろうとしてくる事態にミラも絶叫せずにはいられなかった。だが、そんな彼女を〝紅い激流〟が非情に覆った。

 

「〜〜っ!!」

 

 その〝紅い激流〟の激しく荒れ回る中に覆われたミラの身体がその勢いにかき乱されてしまう。それによる激しき痛みに彼女も悶え苦しまざるを得なかった。

 だが、それでも〝紅い激流〟がミラをかき乱し――そのまま壁に叩き付けられた。

 

「が、は……」

 

 激流の中でかき乱されるだけに留まらずに壁に激しく叩き付けられた彼女はそのダメージにより気を失わざるを得なかった。

 力なく倒れていったミラの姿を目視したヴァニカはニッコリと無邪気な笑みを浮かべる。

 

「――よぉし♪リベンジ達成♪」

 

 そして上機嫌でそう宣言する――

 

 

『暴獣海賊団 ヴァニカ

  VS

 バシレウス ミラ』

 

『バシレウス

「会議室の戦い」』

 

『勝者 ヴァニカ』

 

 

 ――実は〝サンモン〟の戦いでヴィザによって敗北を喫してしまったのが彼女にはすごく悔しく感じていたらしく、だからこそリベンジを誓ったのだ。

 ……といえ、肝心のヴィザは小紫に討ち取られててもういない。

 もちろん不完全燃焼なヴァニカは彼が所属していたハイレイン派に狙いを付ける事にしたのだ。

 その中で最も強いのはリーダーのハイレインであるが……その者はジャックに盗られてしまった。それで次に強いらしいミラを相手する事になったが……

 

「……ん〜やっぱ、実感湧かないね」

 

 自身とミラの能力の相性の問題から戦いが一方的であったという事実に彼女もモヤモヤするが――

 

「……まっ、いっか!少なくともスッキリできたし!」

 

 さすがは気分屋なヴァニカだ。一応ハイレイン派の者を倒せた事からリベンジを達成できたと見なし、満足したようだ。

 

「さてさ〜て、他は〜?」

 

 そして、新たな戦いを求める彼女が舌なめずりしながら周りを見回してみると――

 

「……終わったか」

 

 その付近に立っているゼノンはヴァニカのところで区切りが付けられたのを認識した。

 そういう彼――の背中から伸びている数々の骨が人々を刺し浮かばせていて、そしてその周りは死屍累々だった。

 もはやその地獄絵図にヴァニカはしかし可愛らしい笑みを浮かべる。

 

「あっは♪――ゼノンもやるじゃん♪」

 

「……兵士如き、オレの敵じゃないからな」

 

 ハイレイン派の兵士達を何の事はなく粛清したゼノンの強さを率直にそう賞賛する彼女に彼も堂々とそう言い張る。

 

 

『暴獣海賊団 ゼノン

  VS

 バシレウス ハイレイン派』

 

『バシレウス

「会議室の戦い」』

 

『勝者 ゼノン』

 

 

 そして――

 

「――ちゃんと働いているようだな。お前達」

 

 雑談を始めたヴァニカとゼノンにジャックが近寄った。

 その姿に彼女は笑みを浮かべ、彼は片眉を少し上げる。

 

「お♪――ジャックもハイレインって奴をもう叩き潰したんだ?」

 

「あぁ――アイツは大した奴じゃなかった」

 

「……言う割には――少し手間かかったのか?」

 

「ほざけ――別に問題はねぇ。現に木っ端微塵にしてやったからな」

 

 2人からそれぞれ声を掛けられるのに対してジャックも答えてやる。その内容は乱暴だが、その雰囲気が賑やかだった――3人揃って請け負った役割を果たした事で余裕ができたからだろう。

 ――といえ、今はまだ戦闘中です。

 

「――終わった事はもういい!他はどうなんだ?」

 

「あ〜それもそっか」

 

「…」

 

 少し気が抜けかけてた自身をすぐ引き締めらせたジャックが鋭くそう言い放つと2人も気を少し引き締めらせ、そして他での戦況を注視してみる。

 するとそこは――

 

        ●

 

「〜〜!おのれぇ!邪魔をしやがって!!」

 

 ある場所でも戦闘が発生しているが、それを実行している者達のうちの1人――バイヨンはその怒りを口にする。

 そもそも、彼には目前の敵より自身の主の身の方が重要だ。だからこそ今危機的状況に身を置かれている主を素早く救出しなければならないのに――

 それを目前の獣人と野蛮人が邪魔をしてくるからその2人と戦わざるを得なくなってしまったのだ。

 さっさとその2人を倒してから行けばいいだけの話だが、その2人は意外に弱くはない故に中々ケリを付けにくくなっているから頭に来る。

 ……だが、それより腹立たしいのが――

 

「〜〜邪魔だぁ!!コラァ!!」

 

「それは貴様の方だろうがぁ!!」

 

 自身を煩わせる2人――明日郎とシシリアンはバイヨンと戦いながら、何と互いに競い合っていた。

 どうやら、2人共バイヨンを1人で倒したい心積もりのようだ。それ故に互いに隣の者が自身より先に倒すのを好ましくなく感じているのだ。

 一緒に戦うという手もあるが、2人共頑固のもあって意地を張って戦っている。

 普通なら、連携を取れていない2人の隙を突いて倒すところだが――一見犬猿の仲な筈の2人の動きが互いの動きを殺すどころか、なぜか連携的になっていた。

 そんな2人の動きがバイヨン達を煙に巻いているから、もう訳が分からない。

 そういう訳でしばらく明日郎とシシリアンのあまりにも変則的なコンビネーション攻撃に翻弄されざるを得なかったバイヨン率いるギーラン派だが――

 

「〜〜ええい!!ややこしいのはもうたくさんだ!!そろそろくたばれぇ!!」

 

 大分溜まってきたイラつきがつい爆発してしまったバイヨンは今身を置かれてるその状況を打破する為に新たな動きを試みようとする。

 

「――オォォ!!」

 

 そう決意した彼はまず――シシリアンを撃退しようと槍を手にしながら勢いよく駆け向かった。

 

「っ!!」

 

 バイヨンの姿勢、そして迫ろうとしてくる槍に対して彼も剣で受け止めようとする。

 ――だが、その身動きは機敏で鋭かった。それは強烈な勢いで放たれた槍は剣と激しく激突したものの――シシリアンの右側腹部をギリギリながらも貫けられた。

 

「!!――この!!」

 

「ムッ!」

 

 それにより顔をしかめがるを得なかった彼がそのままにさせない為に何かをしようとする。だが、それに勘付いたバイヨンは槍を抜きながら素早く後ろに下がった。

 その瞬間、シシリアンの身体から「エレクトロ」が激しく流されてきた。本来ならバイヨンを焼き尽くすつもりだったんだが、空振りに終わってしまった……

 

「―」

 

 その攻撃からまんまと逃げ遂げてみせた彼だが、その後ろには――いつの間にか回り込んでいた明日郎が刀を構えていた。

 

「!!」

 

「〝焔霊〟!!!」

 

 その事に目を見開くバイヨンに彼が火の剣を強烈な勢いで振り下ろす。その攻撃を彼も今度は直に受けた――

 

「!」

 

 ――が、その途中ながらも素早く動かされる。

 明日郎の剣が完全に振り下ろし終える前にバイヨンが辛うじて後ろに下がってみせた。そして……

 

「…!!」

 

 回避された事で彼にダメージを十分に与えられなかった明日郎も突如顔をしかめ、そして自身の身体を凝視してみる。するとそこには――

 ――左側腹部に傷ができていた。

 ――そう、実はバイヨンが回避する際に槍を彼にも刺していたのだ。もっとも、その時は逃避にほとんど集中していた為に力を十分に込められた訳でもない。

 それ故に明日郎も致命的な傷を負わずに済んだのだ……といえ、さすがに少々の痛みはあるらしく顔をしかめる彼は堂々と立つバイヨンの姿を凝視する。

 

「――どうやら、してやられたようだな……!」

 

 そんな明日郎にシシリアンが近寄りながらそう声を掛ける。そういう彼もまたその姿を注視していた。

 その姿勢を感じ取れたのか、明日郎も目をそらさずに頷く。

 

「あぁ……オレ達はどうやら――アイツの事をナメていたらしい……!」

 

「…」

 

 その言葉にシシリアンはしかし否定しない。

 ――バイヨン。彼は一国のリーダーの側近に就くだけはあって腕は確かだ。彼の事を軽視していた2人もその事実を受けて認識を改める事にした。

 一方でその2人に対して同じ様に感じていたバイヨンもさっきの戦闘から認識を改めようとしていた。

 

「……なるほど、ただ者ではないようだ」

 

 そして

 

「――だからこそ、手加減はしない」

 

「「!」」

 

 ハッキリとそう宣された時、2人は周囲をもう既に兵士達に包囲されているのに気付く。

 バイヨンと共に2人と戦ったがその実力差から相手になれなかった兵士達だが、その彼らに包囲されている上に目前にバイヨンがいる。

 戦況が少々厄介になったかもしれないと思案する2人に対してバイヨンは槍を掲げながら――口を開く。

 

「――これから全力を出す。覚悟はいいか?」

 

 彼は堂々とそう宣しながら――その槍が持つ〝悪魔の実〟の能力を発動しようとする。

 その姿勢に明日郎とシシリアンは――獰猛な笑みを浮かべる。

 

「――上っ等た……!!」

 

「――貴様こそ覚悟を決めるといい!!」

 

 逆に宣し返してやった2人はそれぞれ火の剣と「エレクトロ」を纏う剣を手にしながらバイヨンが率いるギーラン派に立ち向かっていこうとする……

 

        ●

 

その本格的な戦いが始まろうとする一方でその付近では――

 

「ハァァァ!!」

 

「…」

 

 ――フドウとギーランが互いに剣を大きく振り回し合って激突していた。その剣戟は実に激しかった。

 ――だが

 

「グゥゥゥ!!」

 

「……フン」

 

 実はその剣戟は一方的であるらしい。

 一見互角のようだが、2人の顔色は正反対だった。

 フドウの方は冷静で少ない身動きで効率的な剣さばきをみせているのに対してギーランは必死の形相を浮かべながら全力で剣を振り回していた。

 どうやら実力ではフドウの方が勝っているらしい。だが、ギーランはそれでも目前の男に有効なダメージを何としてでも与えようと剣を振り続けるが……

 

「――フン!」

 

「…!!」

 

 突如フドウが炎を纏う鋭い斬撃を放ってきた。その斬撃を辛うじて剣で受け止めたギーランだが、それでも火傷を負わされながら後ろに吹っ飛ばされた。

 

「――オォ!!」

 

 だが体勢を何とか立て直してみせた彼が着地できたところでフドウが言い放つ。

 

「……その程度か?〝バシレウス〟評議会メンバー、ギーラン」

 

 その挑発めいた発言に少々疲弊しているギーランも気を張り直す。

 

「――何の!まだまだこれからだ!!」

 

 そう言い張った彼は素早くフドウの元へ駆け向かう――

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