ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第144話〝裁火に焼かれようとする清廉な意思〟

ギーラン――

 

彼は〝バシレウス〟評議会メンバーの1人である。

……ただ、暗い野心を腹に抱える一癖も二癖もある他メンバーと比べれば彼は民の事を想える清廉な穏健派である。

その人格な故に彼は最初こそ議長の座に興味はなかったのだ。ただ〝バシレウス〟が今後も平和でそして民達が平穏に過ごせられば、それだけでも良いと考えていた。

 

――だが、今まで〝バシレウス〟を統治してきた議長が倒れた事により事態が急変される事になってしまった。

ギーランが信頼を置けられる程の穏健派である彼がもはや統治できない状態になった以上、早急に新たな議長を求められる事になった。

――そして、ギーランにはその座を他メンバーに任せるにはあまりにも危険だと考えずにはいられなかった。

元々彼らが一癖ありすぎて十分な統治を行ってくれるとは思えないからだ。

 

そういう背景もあって彼は議長の座を目指す決意したのだ――〝バシレウス〟の平和の為に……

そんな彼は今……

 

 

「ぬぅぅぅ!!」

 

「…」

 

 ――黒尽くめの大男と戦っていた。

 

 突如〝バシレウス〟に暴獣海賊団が侵略してきたという事態が発生したが、それに対してギーランは怯まずに対応しようとする。

 ただ、聡明な彼はその侵入者達の実力の程を勘付けていた。それ故に彼らと戦闘する場合では甚大な被害が出る事になってしまうのだろうと考えざるを得なかった。

 仮にこちら側が勝利できても甚大な被害を被る事になるのならば、戦いを可能な限り回避したいと考えたギーランは無茶を承知の上で彼らとの交渉を試みようとしたのだ。

 

 ――だが、いざ始めようとしてたら突如フドウが彼に襲いかかった事で交渉が完全に決裂せざるを得なくなってしまった。

 その事実と暴獣海賊団の狂暴性に腹が立たずにはいられなかったギーランはそれならば被害の程をできるだけ抑えながら彼らを追い出そうと考え直してみせた。

 そこからまず目前の男を撃退しようと勇敢に剣を振ろうとするギーランだが……

 

「ぐ……!(こ奴――強い!!)」

 

 たかが海賊である筈のフドウの実力が予想以上に高いという事実に彼も動揺せざるを得なかった。

 〝バシレウス〟でも通じる程である自身の剣と互角以上の腕もそうだが、その黒尽くめな上に背中には烏のような黒く巨大な翼が生えていて背面から火が噴出しているという異常な容姿から今時点では使用してこないが〝悪魔の実〟の能力であると予測できる。

 それも加えて目前の大男を倒すのが難しくなったなと考えざるを得なくなったギーランだが……

 

「――考える暇さえ与えんぞ?」

 

 ――その冷たい声が響かれると同時に激しき炎を纏う剣が彼に容赦なく襲いかかってきた。

 

「!!」

 

 今までフドウの剣さばきに辛うじて対応してみせたギーランだが、その最中で密かに思案に耽けていた隙を突かれたのだ。

 強烈な勢いで放たれてきたその攻撃を彼もすぐ回避できず――受けざるを得なかった。

 

「オォォォォ!!」

 

 その斬撃による衝撃はもちろん、その激しき炎を直に受けたギーランはすごく苦悶しながら勢いよく吹っ飛ばされていった――

 

「〜!!」

 

 ――だが、さすがは評議会メンバーだというのか彼はそれでも踏ん張り体勢を立て直してみせた。

 その意地に掛けて息も少し絶え絶えながら、それでもすっくと立つギーランの姿にフドウも率直に感嘆した。

 

「……さすがは〝バシレウス〟評議会メンバー……というべきか?」

 

 確かな意思を持って直立するその姿に冷淡な彼もさすがに何かを感じていた。それこそ――

 

「……これなら――〝ここ〟は何とかなりそうだな」

 

 フドウがそれは確かに小さな声でそれを口にしていた。

 だが、含みのあるその呟きを聞き取れなかったギーランは険しい表情を浮かべながら今身を置かれる状況に関して改めて思案に耽る。

 そして――

 

「…(やはり、あ奴をただの海賊だとみるには危険だ……!)」

 

 目前の海賊に関してそう認識できた彼は続いて次の手を打つ事にした。それこそが――

 

「――この剣の力を使うしかあるまいな……!」

 

 ギーランは手に持つ剣に視線を向けながらそう呟く。

 

 

彼が手にしているその剣――「ハマイレオン」ももちろん〝悪魔の実〟の能力を宿らせている。その実とは――〝コピコピの実〟である。

その能力は他人の姿と戦闘能力をきおくし、その者に変身できるというものである。その性能は変身した者が〝悪魔の実〟の能力者だった場合はその能力を使用できる程だ。

なお、記憶できる者の人数は無制限だという卓越するものだ。

……くしゃみをすると変身が解除されてしまうという弱点が存在しているが――

とにかく、その事実を加えても釣りが出る程の凄まじき能力だが――ただし、それは人が〝コピコピの実〟を食った場合の成り行きである。

 

だが、その実を人ではなく無機物――剣に食わせされていた。

それによって他人の戦闘能力を記憶する能力を確かに得られたが、その一方で他人の姿に変身する能力を得られないという事態が発生した。

つまり、〝コピコピの実〟のせっかくの利点の一つを潰してしまった形になったといえる。

……まぁ、他人の戦闘能力を無制限に記憶できる利点が生きている上に剣――というか、無機物がくしゃみをする訳がないという道理から弱点がもはや存在しないという事実から別に困る事はないかもしれないが……

 

 

 とにかく、それ程の力を有する「ハマイレオン」をギーランはフドウに対して使用する決意を固めた。それに伴い雰囲気が変わったのを勘付いたフドウも気を引き締めておく。

 だが、その時はもう既にギーランが剣を大きく振り下ろそうとしていた。

 

「――ハァァァァァ!!」

 

「!!」

 

 勢いよく振り下ろされたその「ハマイレオン」から大きな炎が勢いのままに放出してきたのにフドウもさすがに目を見開いた。

 それに構わずに炎が彼を容赦なく焼き尽くそうと寄りかかるが……

 

「……効かん」

 

 元々ルナーリア族であるフドウの肉体を炎が焼き尽くす事はなかった。それ故に彼は涼しい顔で炎が自身に寄りかかっているのを眺めるが……

 

「……!!(この炎――このオレの……!!?)」

 

 その炎そのものの性質に関してフドウはそう勘付き――驚愕する。

 ――そのお察しの通り、その炎こそが彼が生み出すそのものである。

 実はフドウとギーランが戦闘している最中で彼の戦闘能力を「ハマイレオン」が記憶していたのだ。無論、発火能力をも隅々まで記憶している。

 それでギーランは早速記憶したフドウの炎を本人に対して放出したのだ――まぁ、そうまでして出してみせた炎が本来の主である彼には効く事はなかったが……

 ただ、その能力の詳細を知らないフドウはニセ物ではない自身の炎を放たれてきたという事態にさすがに困惑を隠せなかった。

 それ故に固まってしまった彼――にギーランが機敏に近寄っていった。

 

「!」

 

「――ハァ!」

 

 それに遅くながらも反応をみせるフドウに彼が素早く剣を振り回そうとする。

 その時ギーランが放とうとする剣さばきもまた記憶したフドウの仕草を使用したものである。彼は自身のより威力が凄まじい剣さばきに自身なりの手を加え、そのままフドウに容赦なく放った。

 

「(これならば、妙に硬いこ奴にも通じる筈だ!)」

 

 その剣さばきの威力を把握するギーランはそう考えた。

 ――彼には癪に障るが、フドウが振るう剣の威力は自身のより確実に上だ。だが、だからこそ自身の剣が斬り通れない程に異常に硬い彼の肉体にさえも通じる筈だ。

 ある意味フドウの実力を率直に認めたギーランはそう方針を立てて、「ハマイレオン」が記憶した彼の戦闘能力を逆に使用してやったのだ。

 そこまでして放ってみせた攻撃をフドウが直に受けたが――

 

「――これも効かん」

 

「!!」

 

 燃え盛っている炎から彼が何の事はないように姿を現してきた。

 普通に姿を現すのもそうだが、その姿が全く無事である事にギーランも激しく動揺せざるを得なかった。

 

「っ!!?(これでも効かないのか!!?――何なんだ!!?貴様は!!?)」

 

「(「武装色の覇気」にしては異常な硬さになるんだぞ!!その肉体は!!)」

 

 自身が確信を持っていた攻撃さえも効かない、おそらく「武装色の覇気」とは違うであろうフドウの異常に硬い肉体の正体を掴み取れない彼は困惑し、恐怖さえをも感じていた。

 そんなギーランにフドウは間さえを空けずに容赦なく攻撃を加えようと駆け向かっていた。

 

「これで攻撃は終わりか?――なら、今度はこっちの番だ」

 

 そう宣した彼はもう既に燃える剣を上方に掲げていた。

 

「!!」

 

「――フン!」

 

 その炎の剣につい視線を向けたギーランにフドウはそれを強烈な勢いで振り下ろした。

 

 ――その場に激しき火柱が上がった……

 

「…!」

 

 だが、その柱を凝視した彼は何かに気付く。

 その途端に――フドウの近くにはギーランが身体を少々焼かれていながら姿を現してきた。

 

「ほぅ……!……ギリギリながら、よく避けたな」

 

「あぁ!――私をナメるなよ!!」

 

 さっき放った攻撃はその規模から回避が困難になる筈だと考えていたからこそフドウは少なくはないであろうダメージを負われてなお、それでも回避できた彼につい感心を覚えた。

 それに対してギーランは苦悶の表情を浮かべながら踏ん張り、そう言い放った。

 ――実は「ハマイレオン」は彼自身が今まで戦ってきた数々の猛者の戦闘能力を記憶しているのだ。その力によって数々の仕草を模様できたギーランがその攻撃から辛うじて回避できたのだ。

 ――といえ、状況はまだ好転していない。それでも彼は負けじと力の限りを尽くそうとする。その姿勢にフドウは――ニャリとした……

 

「フン……だが、どうするんだ?貴様の攻撃は効かんぞ?」

 

「そうらしいな!」

 

 そして挑発めいた指摘を受けたギーランはそれでも苦悶の表情を浮かべず、更なる手を打とうとする。

 

「――ハッ!」

 

「!」

 

 突如彼がフドウに剣を振った――が、剣がその身体に当てられても……通じない。最初から目に見えている事態だが――そのまま終わらなかった。

 

「…!!」

 

 彼の身体に当てた「ハマイレオン」から鎖が湧き出た。そのまま――その身体をきつく縛っていった。

 

「これは……!」

 

 その事態に目を見開くフドウに対して今度は――巨大な岩石が上方から強烈な勢いで落下してきた。

 

 ――その場が激しく揺らされた。

 

 ――そして、彼がいたところには岩石が積まれていた。おそらくその岩石がフドウを潰せたのだろう。

 ……実はギーランが戦っていた猛者達の中には〝悪魔の実〟の能力者も存在しているが、その能力をも「ハマイレオン」がもちろん記憶していたのだ。

 それでそのうちの2つのある能力を試みたが……さすがは〝悪魔の実〟の能力だけはあって、今までより効果があるように見受けられた。

 普通ならこれで撃退できたと考えられるところだが……

 

「……今度はやったか?」

 

 目前の光景にギーランはしかし警戒を捨てずに注視していた。

 ……何せ、相手は彼が放ってきた如何なる攻撃でも効かない異常な肉体を持つ男だ。あり得ない事が起こってしまってもおかしくはない――ギーランがそう考えたのだ。

 

 ……そして、その懸念は正しかった。

 

 威圧がありげに積まれた巨大な岩石が突如粉砕され――そこから激しき大火が湧き出た。

 

「!!」

 

 その事態に顔を激しくしかめたギーランの前に――やはりというか、フドウが全く無事な姿を現してきた。

 

「――その剣、面白い力を持っているな?――だが、それでもオレには効かん」

 

 十分な余裕がある彼は今までの状況から何となく勘付いた「ハマイレオン」の力に関してそう言い付け――そして激しく燃え盛る大火を後ろに立ち、翼を大きく広げながら威厳をもってそう宣した。

 その姿は実に圧倒的だった――現に目視したギーランも顔を青くせざるを得なかった。

 

 もはや万策尽きた――

 

 それはもうごまかせない危機的状況に身を置かれてしまった事で心が折られようとする彼だが……

 

「…!!」

 

 ――それでも苦悶の表情を浮かべてなお、フドウに対して剣を構える。

 まだ戦意を完全に失っていないかのような姿に彼も目を細める。

 

「……ほぅ?まだ手向かう気か?」

 

「……当然だ」

 

 感心の様子をみせるフドウにギーランは苦しげながら辛うじて口を開く。

 

「――この私は……〝バシレウス〟評議会の1人だ!!」

 

「だからこそ――〝バシレウス〟を守る為ならば……どんな敵だろうか――戦ってみせようぞ!!」

 

 異常な強さを有するフドウを前にする彼は苦悶ながらそれでも気張って宣してみせた。

 それはあまりにも無茶であるが……強い意思、覚悟も確かに感じられていた。それ程の姿勢を受けて彼は――ニャリとしていた。

 

「フッ……悪くはない」

 

 フドウは何やら満足気に頷き――そしてギーランに対して声を掛ける。

 

「ギーラン、お前には提案がある」

 

「…!!?」

 

 

――暴獣海賊団と〝バシレウス〟の戦争だが、そこに何か異変が起ころうとする……

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