ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第145話〝一念発起〟

 ――〝バシレウス〟の中枢の城の中の会議室で暴獣海賊団と〝バシレウス〟が互いに敵陣を壊滅させる為にその部屋のあちこちでそれぞれ戦いが展開されていた。

 ――たが、その中に最も激しき戦いがあった。

 

「リュドドド!!」

 

「フハハハ!!」

 

 ――オレとレグラヴァリマの一騎打ちであった。

 

「――オラァ!!」

 

 まずオレが「神武」で斬ろう、叩こうと振るう。

 

「――ハッ!!」

 

 その一方で彼女は籠手から伸びる爪で刻もうとしていて――そして激突が発生した。

 それぞれの戦いも激しいが、その戦いは両陣でも最も強い者同士が対峙するだけはあってその戦況は凄まじかった。それこそ大きな余波も出る程だ。

 

「――期待を裏切らない強さで何よりだぁ!!〝バシレウス〟最強の戦士ぃ!!」

 

 そんな戦いを実行しているオレは目前のレグラヴァリマにそう称賛した。そう、前もって耳にしてきた〝バシレウス〟最強であるという評判に違わない程の実力にオレもつい口を歪ませた。

 そんなオレに彼女は――上品な振る舞いにはそぐわない獰猛な笑みを浮かべた。

 

「――そちらも中々やるではないか!!今まで相手してきた海賊共とは全然違うな!!――久しぶりに血が滾ってきたわ!!」

 

 レグラヴァリマもまたオレの実力が自身の予想を遥かに超えているという事実に胸内に狂喜が湧き出ていた。

 

「これなら――我々に戦いを挑むのも頷けるな!!――面白くなってきたな!!」

 

「リュドドド!!――お前の気に召されられて何よりだぁ!!――だがなぁ!!最後に勝つのはオレ達だぁ!!」

 

 そしてオレ達が自身達に対して戦いを挑む姿勢を理解できた彼女はそれでも余裕のある様子をみせる。

 彼女達にはあまりな危機的状況であるのにも関わらずにそういう態度を取っているのは――それでも最終的に自身達が勝利するのだと考えたからだろう。

 その意図を勘付いたオレはだからこそ高らかにそう宣言してやった。それを受けてなおレグラヴァリマは姿勢を変えない。

 

「面白い!!――やってみるといい!!」

 

「おう!!」

 

 やはり獰猛な笑みを浮かべながら堂々と言い返し、攻撃を加えようとする彼女にオレも「神武」を振って対応しようとする――

 

 

――そうして暴獣海賊団と〝バシレウス〟の戦争が激化していった……

 

――だが

 

 

「(……あっちはどうなったんだ?)」

 

        ●

 

〝バシレウス〟の中枢の城の中――

 

 戦いが展開されている会議室から少々遠い距離にあたるある廊下では――

 

「な、何だ!?お前らは――うわぁぁぁぁぁ!!」

 

「と、止めろ!!貴様ら――ぐわぁぁぁぁぁ!!」

 

 人々が勢いよく吹っ飛ばされていった――実はどうやらそこに留まっていたらしい兵士達が突如その場に現れたある集団によって蹴飛ばされたのだ。

 その集団とは――

 

「――ありがとうございます!ハクジさん!」

 

「気にするな!――君達の護衛がオレ達の仕事だからな!」

 

「……だが、これを見ると――こっちで間違いないようだ」

 

 ――そう、さらわれたノーマンとチカを救出する為にやってきたエマ達であった。

 彼女達は仲間がいるだろうと推測した針路を進んでみたが、そこには兵士達がいたので彼女達の護衛を請け負っていたハクジが真っ先に向かって撃退したのだ。

 なお、倒れた兵士達の存在からエマ達は自身の推測に間違いはなかったと確信する。

 

「――まぁ、ハッテンさんが確認してくれたから間違いないのはそうだけど」

 

「ふふっ、確かにこの僕がちゃんと確認しておいたから大丈夫だよ――まぁ、場所を変えさせられる可能性もあるが……この様ならそれはないだろうし」

 

 もっとも、ハッテンが先立って行った情報収集から把握したさらわれた仲間達の居場所へ繋がる廊下を駆けているから当然だが……

 なお彼自身からの指摘もあるが、今時点ではノーマンとチカが今の場所から移されていないようだ。

 とにかく、確信を深められた事でエマ達は駆ける足をさらに速めていく。そんな彼女達だが、その行き先に突如――多くの兵士達が姿を現してきた。

 

「「「…!!」」」

 

「……!!〜〜っ!!突然襲撃を受けて、しかも被害の程もあまりにも大きかったからな!!それで念には念をと思ってここに来てみたら――案の定だ!!」

 

「貴様らぁ〜ここから行かせんぞ!!――っていうか!!ここで倒してやる!!」

 

 その登場、そしてその人数が多いという事につい怯んだエマ達に指揮官らしき数人がそう言い放った。

 ――どうやら暴獣海賊団の襲撃による被害の程からその可能性を発想して、その場に来たようだ。

 闘志を激しく燃やして得物を手にして――駆け向かってくる兵士達にハクジが再び先陣を切ろうとする。

 

「……しつこいな。また叩き――「オォォォォォ!!」――!?」

 

 面倒そうながら身構える彼――の隣を突如駆ける者がいた。

 

 ――オサムであった。

 

 彼は冷や汗を流しながらもキリッとする表情を浮かべ、銃を手にしながら兵士達に駆け向かっていた。

 

「お前!?」

 

「――いつまで海賊に任せ続ける訳にはいかない!!」

 

 その事にハクジを含める驚愕する人々に答えるかのように彼が語気を強めてそう言い張った。

 

 ――そう、彼は確かに海兵としての正義に従ってさらわれた子供達を救う為にカイリュー号に乗った。

 そこで暴獣海賊団の素性を知ってしまった時も子供達の身を案じて、その船から降りずに同行するのを決意したまではいい。

 

 ――たが、それだけだ。

 

 彼をそのように動かした程の中々の正義感も〝暴獣のスサノオ〟率いる暴獣海賊団の圧倒的存在感と猛威に圧倒され、すっかりめげらされてしまった。

 そこからさっさと離れなかった理由の一つである子供達も海賊である筈の彼らに心から頼るようになってしまった――しかも、ただ頼るだけではなく自身のできる事を考えて行動しようとする姿勢も見受けられた。

 対する自身は存分に動けず――ただ留まるだけだった……

 

 そのあまりにも不甲斐ない事実をオサムはそのままにする――

 

 

 

 ――事ができなかった。

 

「(――いや!!この僕は海兵だぞ!!正義の兵士だぞ!!)」

 

「(――なのに、今はどうだ!?ただボーっとしているんじゃないか!!)」

 

「(対して――子供達を助けているのが他でもならない海賊だ!!)」

 

「(海兵が動かず、海賊が子供達を助けている……これ程におかしい話はあるのだろうか!?――いや!!ない筈だ!!)」

 

 今まで子供達の為に未だに何かをしていない自身の事を情けなく思った彼だが――その状態が続けられるのについに辛抱ならず――覚悟を決めたのだ。

 

「(――今なんだ!!今こそ動くんだ!!――さもなければ、僕は海兵どころか人以下だ!!)」

 

 オサムがそう決意した事で踏み進んでいったのだ。

 

「何だアイツは……?1人で向かってくるぞ?」

 

「何だか知らんが……まずはアイツを潰せ!!」

 

 そんな彼に兵士達は容赦なく排除しようとそれぞれ得物を向けながら駆け向かった――

 それは〝多勢に無勢〟。それ故にあまりにも無茶な姿勢だと思われるが――

 

「オォォォォォ!!」

 

 だが、オサムはそれに怯まずに――まず目前の数人からの攻撃をそれぞれかわしてみせる。そして1人に銃を撃ち、次の者を構え直した銃の床尾で叩き、その次の者には勢いよく蹴ってやった。

 ――その動きは地味な外見と態度から考えられない程に機敏だった。

 

「「「!!?」」」

 

 その動き、それによって兵士が数人も無難に撃退されたという事実にその場にいる人々が驚愕する。

 

「……!!……フッ、中々やるじゃないか……!」

 

「オサムさん……!」

 

 特にハクジとエマ達はすごく驚愕したが、すぐ感嘆する。

 彼らからも大したものじゃないと見受けられたオサムが実は熱い意思を持っている上に見事な働きをみせてきたのだから、そのギャップに肝を抜かれるのも無理もないだろう。

 その一方で兵士達はたかが1人によっていいようにされているという事態に動揺していた。

 

「く……!お前達!!全員でかかれぇ!!」

 

「そうだ!たかが1人だ!それに別に容赦してやる筋合いはない!!」

 

 それを解消するかのように指揮官達がそう言い張るのに従ってさらに多くの兵士がオサムに漏れなく襲いかかるのを試みようとする。

 

「っ……!これはまずい……!」

 

 その姿勢に彼も顔をしかめる。あれだけ機敏な動きをみせたオサムもさすがに多くの者を相手していれば、しばきれずにやられるのがオチだろう。

 それ故に焦ってしまう彼に対して武器を容赦なく向けようとする兵士達――の目前に突如何者かが上方から勢いよく降りてきた。

 

「「「!?」」」

 

 ――それは赤目に白髪の外見とかなり小柄な体格が特徴な少年――ユーマが驚愕する兵士達に向かって悪戯っ子のようでしかし猛獣染みる笑みを浮かべる。

 

「――だよな〜やっぱ、ここはオレ達がやらなきゃな!」

 

 そう言い張った彼は両手がそれぞれナイフを握りながら、そのまま兵士達に駆け向かった。

 

「!!――止まるな!そのガキも潰せ!!」

 

「!!危ない!逃げ――……!?」

 

 そんなユーマを兵士達が容赦なく襲いかかろうとし、その事態にオサムも慌ててその身を案じるが――その目が大きく見開かれる事になる。

 何せ――ユーマを潰そうとする筈の兵士達が彼によって逆にいいようにされていたからだ。

 ――ユーマはオサムよりさらに素早くて、しかも軽快な動きで攻撃をかわしながら兵士達を錯乱していった。そして、ここぞというところで鋭い攻撃を放った事で兵士達を次々に撃退していった。

 まだ年若い少年に兵士達が太刀打ちできずに撃退されているという事態にオサムはもちろんまだ残っている兵士達も動揺する。

 

「な、何だ!?あのガキは!?」

 

「つ、強い!!」

 

 ユーマの強さに兵士達が畏怖の声を上げた――そんな中である1人が突如ハッとする。

 

「……!!白い髪と赤い目……まさか!?――〝白い怪獣〟なのか!?」

 

「「「!!」」」

 

 どうやらユーマの事に関して心当たりがあるらしいその者が上げたその言葉に兵士達も息を呑む――

 

 

ユーマ――

 

〝バシレウス〟で、それもドッザが支配する地で生まれた彼もまた少年兵候補として育てられたが……やがて大人でも敵わない程にずば抜けた戦闘能力を持つまでに成長するようになった。

そのあまりにも高い実力はもちろんだが……戦闘を実行する際の彼の姿勢があまりにも感情を感じられない程に冷めているという事、そして彼の通った跡には必ず死屍累々が展開されるという事から人々が彼の事を〝白い怪獣〟と呼んで恐れていたのだ。

 

その〝白い怪獣〟が〝バシレウス〟からの逃走を実行したのを知った人々はあれ程の実力者が逃げるなんてと憤慨したが、その胸内には微かだが――安堵感が存在していた。

それ程に〝白い怪獣〟の力は恐ろしいといえよう。

 

 

 

 ――その彼が今、兵士達に牙を剥こうとする。

 

 その事実に彼らも焦燥感に駆られざるを得なかった。

 

「〜〜!!何で〝白い怪獣〟がここに……!?」

 

「――それはお前らがオレ達から仲間を奪ったからだろ?」

 

 たまらずに上げられたその声にユーマも一瞬で能面の如き無表情になり、そして静かでしかし重い声でそう言い張る。

 ――彼は憤慨していた。それはすごく――何せ、戦いしか知らなかった自身に居場所を与えてくれた仲間達のうちの数人をさらわれたんだ。

 ユーマも全身全霊を漏れなく注ぐつもりであった。そんな彼を兵士達はヤケクソになって詰め寄ろうとするが、その中の1人が突如吹っ飛ばされた。

 

「「「!?」」」

 

 その者がユーマからの攻撃を受けていないのにも関わらずに吹っ飛ばされた事態に驚愕を隠せないその場にその声が響かれる。

 

「――確かにそれもそうッスね!!」

 

 そう言い放ったのは明るい色で前髪が一房跳ねている短髪の猫目少女――イズホが兵士達に対して銃を向けていた。

 ――そう、彼女が兵士達の中の1人を的確に撃ったのだ。

 

「――チカを助けるのに人任せするにはいかないッスね!!」

 

 そう宣するイズホの目には強い意志があった――

 彼女とチカは親友である。だからこそ他の者ではなく自身の手で助けたいと考えていたイズホがオサムとユーマの姿勢に触発された事で腹をくくって銃を手にしたのだ。

 ――そして、それだけに留まらなかった。

 

「――ふふっ、確かにジッとするのも割に合わないよね♪」

 

 それはニット帽と衣服に多くのワッペンを着けている大きな目が魅力の明るく可愛らしい少女――ジリアンが不敵な笑みを浮かべながら、銃を手にする。

 

「そ、そうね!わ、私もやらなきゃ!」

 

 続いて特徴的な大きな丸い眼鏡をかける少女――ギルダもあたふたながら銃を手にする。そんな2人、そして先立った者達の姿勢を目視したエマは――

 

「――そうだね……!やろう!!」

 

 ――自らから戦うのを決断した。さらわれた仲間を助ける為に……

 

 

――こうして子供達は立ち塞がる試練に挑もうとする……

 

 

 

「――うむ!そうでなくちゃ!ではおれも……」

 

「わ、わたしもやらなくちゃ!」

 

 ヘルメットをかける少年――ヨウと金髪碧眼の愛らしい女の子――コニーもエマ達に続こうとするが……

 

「「「あなたたは待機!!!」」」

 

「「えぇ!?」」

 

 周囲から強い語気でそう言われてしまった――まぁ、2人がまだ幼いので当然の話である。

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