ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第147話〝突如の横槍〟

「「「ノーマン!!!チカ!!!」」」

 

 心の奥底からそう叫んだエマ達がノーマンとチカが幽閉されている牢獄の間に踏み込んできた。

 ただそれだけの話であるが……様々な事から来るのが困難だと思われた場所にまでも仲間が来てくれたという事態にチカが驚愕する一方でノーマンはつい笑みをこぼした。

 

「えぇ!?み、皆!?」

 

「ははは……やっぱ、予想を超える事態を引き起こしてくれたよね――エマ、皆」

 

「ノーマン!!チカ!!――あぁ!!無事だったんだね!!」

 

「ノーマン……!良かった……!」

 

「チカ……!」

 

 2人の一応無事な姿にエマ達が胸をなで下ろした――が、すぐ顔をしかめる事になった。

 

「……チカ……その姿……」

 

 まずユーマはチカの無事であるが、ただし衰弱している姿がその目に映された途端に能面の如き無表情――すなわち人が見れば恐ろしく感じさせてしまう程の殺気立った顔つきを浮かべた。

 そんな彼に続いて他の子供達も怒りをみせていた。

 

「――アイツら、ノーマンとチカになんて酷い事を……!」

 

 エマもノーマンの衰弱している姿を目視した事で怒りを露わにしていた。

 その姿勢に彼もチカも感謝を覚えた。

 

「み、皆……!お、怒ってくれてありがとうね……!でも、落ち着いてね……!」

 

「うん――来てくれてありがとう。僕達の為に怒ってくれるのもね――でも、今はまずは僕達をここから出してくれるのかな」

 

 2人からの宥め、特にノーマンの言葉にエマ達はハッとする。

 

「そ、そうだね!今から出してあげるね!」

 

 そしてそれを早速実行しようと慌てて動く――その最中で

 

「――皆!ここは僕がやるよ!」

 

 オサムが先立ってその檻の格子戸に立ち、そこで銃を構えた。

 そこから放たれた弾がその格子戸を固定している鍵穴を見事粉砕した。

 

「――OK!大丈夫だ!」

 

 彼がそう言った途端にエマとユーマが素早く先立ってその格子戸を開け、そのまま2人の元に駆け寄っていった。

 

「ノーマン!!――歩ける?」

 

「あぁ、そこまで弱っていないよ」

 

「チカ、大人しくして」

 

「ゆ、ユーマ君――ぎゃあ!」

 

 まずエマがノーマンに肩を貸す事で何とか立って歩こうとしてみせる。続いてチカはユーマが優しく抱き抱える――お姫様抱っこされた。

 そうして――ノーマンとチカは〝バシレウス〟での幽閉から解放されて仲間と合流できた。

 

「ノーマン!大変だったな……!」

 

「チカ!――遅くなってごめん!」

 

「「ノーマン!!チカ!!」」

 

 ――突如過酷な状況に身を置かれる事になってしまってもほとんど狼狽せずに毅然とした態度をみせていたノーマンとチカだが……

 来るのが困難だと思われた仲間が今まさに来てくれて自身達の無事と再会を喜んでくれているという事態によりつい抑えてきたものが――溢れ出た。

 

「ふ、ふぇぇぇ〜〜〜ん!!」

 

「は、ははは……!随分手間かけたね……!皆……!」

 

 緊張の糸が切れたチカが号泣し、ノーマンも一見平然と振る舞うように努めるもののその目元から涙が流れていた。その様子にエマ達も目を見開き――そして微笑んだ。

 

「――当然だよ!だって私達――仲間だもん!」

 

「そうそう〜だから何かが起こるだろうが――必ず助けてやるんだぜ」

 

「……良かった……!」

 

 

――それは再会を喜ぶ子供達による穏やかな雰囲気がそこにあった……

 

 

 

「――それで……」

 

 しばらくしてから事態が一旦落ち着くようになった中でノーマンが声を上げる。

 

「その方々は一体……?君達に協力してくれたのは分かるけど?」

 

 自身にとって初めて見る者達に彼は疑問の眼指しを向ける。

 そのもっともな疑問に応えてその者達――オサムと海賊達はその身元を明らかにした。

 

「――この僕はオサム。海兵だよ」

 

「――オレ達は暴獣海賊団の海賊だ」

 

「「か、海賊!!?」」

 

 まずオサムが身を引き締めて凛々しく自己紹介した――が、続いて行われた海賊の紹介がノーマンとチカを激しく動揺させた。

 ――海兵が支援してくれたのは別に驚く事でもない。想定できる事柄なのだから……だが、海賊が支援してくれたのはさすがに驚愕せざるを得ない。

 何せ、自身の欲望を優先して暴れ回るのが海賊だ。そんな者達がたかが子供達の救出に手を貸す等――考え得ないからだ。

 それ故に動揺し、つい身構えた2人にエマがすぐ説明しようとする。

 

「あ!この人達は大丈夫だよ!――あのね……」

 

 ――そして2人は知る事になった。

 エマ達の仲間に対しての強き想いと覚悟が暴獣海賊団の海賊達の心を動かし手を貸してくれる流れを作れたという事を……

 なお、海兵である筈のオサムがなぜか海賊達と行動を共にしているという奇妙な事態が発生した訳も……

 

「……ははは、やっぱり予想を超えてくれるね……!君は……!」

 

「す、すごい……!」

 

 その説明を受けた2人は呆気に取られ――そして感嘆の反応をみせた。

 ――仲間が何としてでも助けようとしてくれるのはそりな想定できるが……まさか海賊の手を借りるとは――あまりにも予想以上だ。

 そしておそらく利益が見込められにくいであろう物事に気前良く手を貸してくれる暴獣海賊団の器の大きさに2人も言葉を失った。

 そんな2人に海賊――ハクジとマリアが声を掛ける。

 

「――そう、君達の仲間の意志が実に素晴らしくてな……オレ達の心も動かされたんだ――良い仲間を持った事を誇るといい」

 

「ふふっ――そりゃ私達は海賊なんだけど……そういうのは好きでねぇ……つい手助けしたくなるのよね……!」

 

 その2人――否、暴獣海賊団の海賊達が仲間の事を称賛してくれるのを受けてノーマンとチカもつい笑みを浮かべた。

 

「――仲間があなた方に認めてもらえるとは……光栄……ですかね?」

 

「――はい!大好きな皆です!」

 

 2人が胸を張って堂々とそう言い放ったのを受けてその場にいる人々が漏れなく笑みを浮かべられた――その場には和気藹々とする雰囲気が広げられた……

 

 

 

「――さて!ノーマンとチカを救出できたし、あとは――ここから出よう!」

 

「えぇ――ここへ新手が来る可能性ですが……違う場所で暴れてくれているスサノオさん達に専念せざるを得なくなるだろうのでかなり低くなると思いますが……急ぐ方が良いですね」

 

 その雰囲気と人々の意識を切り替える為にハッテンとキサメが真剣な姿勢でそう言い張る。

 その言葉により人々もすぐ気を引き締めた。

 

「――コイツらの言う通りだ。ここをさっさと出るぞ」

 

「「「はい!」」」

 

 一応まとめ役をやっているハクジがそう言い放ち、エマ達もそれにそう応えた――

 

 

 

 ――その途端だった。

 その場に大きな音と衝撃が響かれたのは。

 

「「「!!?」」」

 

 突如でしかもそのあまりな大きさに人々も驚愕し、その源らしき場に視線を素早く向けた。するとそこには――

 ――天井には大きな穴を開けられていて、そしてその直下の床にはそこから散らばされたであろう数々の欠片があって――その中心には……1人の大男が倒れていた。

 ……その事からどうやら、その大男は上階から牢獄の間までにも強烈な勢いで叩き込まれてきただろう。

 それなら衝撃が大きいのも頷ける話だが……問題はなぜそうなったのかだ。

 

 その疑問を思い浮かぶ人々をよそに肝心の男は呻きながら――何とか立ち上がろうとする。それに対して人々は――警戒に身構えていた。

 当然だ。今時点ではまだ味方か敵かどうか分からないからだ。

 やがて衝撃で発生された煙が晴れたのに伴い立ち上った男の外見が明らかになる。

 それを目視した人々――というか、エマ達は驚愕した。彼女達にとっては見知った顔だったからだ。

 それ故にエマ達はその男に対して驚愕――そして嫌悪感を込められる表情を浮かべた。

 

「「「――ドッザ!!?」」」

 

「――あ゛ぁ゛?」

 

 ――そう、声を上げた彼女達に対して訝しげに粗野な顔つきをみせるその大男こそが――〝バシレウス〟評議会メンバーの1人……ドッザであった。

 

        ●

 

時は遡って――

 

場面は会議室。そこでは数々の戦闘がもちろん展開されているが、その中には――

 

「――ギャハハハハハ!!」

 

「…」

 

 ――ドッザとヤマトの対決も含まれていた。

 その実に下品な高笑いを上げる彼が大斧を勢いよく振り回すのに対して彼女は――冷ややかな表情を浮かべながら金棒で攻撃を受け止めていた。

 それは一見一方的な戦況だが、それ故かドッザがいやらしく笑みを浮かべる。

 

「――おいおい!さっきからテメェは防御しかしねぇのか!?さっきの攻撃は意外に良かったと思っていたのによぉ!クク!」

 

「…」

 

 目前の者が防御しか持っていない様を嘲笑い、からかう彼の態度にヤマトはそれでも冷ややかな表情を浮かべる……

 

「…(コイツ、やっぱり――全然強くないな……)」

 

 ――そして、その胸中ではそう考えていた。

 ……確かにドッザは〝バシレウス〟評議会メンバーにして一国のリーダーを務めるだけはあってそれなりの実力を有している。

 また粗暴であると知られている彼だが、実は鍛錬を怠らない努力家でもある。その事実もあって実力があるのに拍車がかかっている。

 その事を証明するかのようにドッザがヤマトと戦闘を始めた際にそれはそりゃ並ではない戦いぶりをみせたのだ。それを直で目視し、また受け止めた彼女も戦意を燃やすようになった程だ。

 

 ――だが、〝それだけ〟だ。

 

 確かにドッザは弱くはないが……同時にどうにも強くもないようだ。現に――彼と直接戦っているヤマトもそう感ぜざるを得なかった。

 

「…(つまらないなぁ……)」

 

 まだあるかもしれない可能性に賭けてしばらく戦いを続けてみた彼女だが、その期待に反してドッザの戦いぶりに別に変化はなかった。

 可能性が一欠片さえも感じられない事から燃やせられた戦意もすっかり冷めてしまった――

 もはやゴミを見るかのような表情を浮かべるようになったヤマトに彼は――気付かずにつけ上がっていった。

 

「ギャハハハハハ!!――ここまでにも侵入してきたんだから、期待したのによぉ……ガッカリだぜ!!」

 

「(それはこっちのセリフだ!!)」

 

 そのあまりにも思い上がった、そして的外れな姿勢に彼女もさすがにイラつきを覚えた。

 仮にも評議会メンバーの1人だから期待してやったのに――悪い意味で予想を超えたカスだった事、そんな者に時間を無駄に割いてしまったという事実をヤマトが悔やまずにはいられなかった。

 

「(――もう過ぎてしまった事を悔やんでもしょうがない!!これ以上時間を無駄にしない為にこのカスをさっさと潰さなきゃ!!)」

 

 そういう背景からその判断に達した彼女が攻撃する為に金棒を構え直した。その姿勢を目視したドッザはしかしその意図に気付いていない故にますますつけ上がった。

 

「ギャハハハハハ!!今さら攻撃かぁ!?――無駄だと思うがなぁ!!」

 

「ほざけ!!」

 

 そして侮ってくる彼に対してヤマトは今まで溜まってきたストレスを全て――手に持つ金棒に込めてみせた。

 

「ギャハハハハハ!!」

 

「〝雷鳴――!!」

 

 今身置かれている状況を本当の意味で認識していないドッザが大斧を勢いよく振り回しながら駆けてくるのに対して彼女は金棒を強烈な勢いで放とうとし――

 

 ――その瞬間

 

 そんな2人のすぐ横の壁が突如粉砕された。

 

「「!?」」

 

 突如の事に2人共固まり、素早く視線を向けた。

 すると壁に開けられた大きな穴からどうやら壁を粉砕した張本人らしき者が姿を現してきた。

 

「――えぇ〜〜〜っ!!?」

 

 その姿を目視したヤマトが目を真ん丸にして口を大きく開けた。何せ――

 

「――どこじゃ!!あの汚らわしい男は!!?」

 

「――ハンコックゥゥゥ!!?」

 

 ――怒りを露わにしながらも非常に艶のある美しい黒髪の絶世の美女……〝海賊女帝〟ボア・ハンコックの姿がそこにあったのだから……

 

 

――暴獣海賊団と〝バシレウス〟の戦争も「七武海」の参戦によりさらに混迷を極めようとする……

 

        ●

 

「――いや、どうしてここに!?」

 

 そのまさかの登場に衝撃が収めていないヤマトがたまらずに声を上げたのにハンコックが反応し、視線を向けた。

 

「――おぉ!!ヤマト!!そなたがなぜここに――!?」

 

 そして彼女もヤマトの存在に驚愕した。

 

「!!と、という事は……!?」

 

 その途端にハンコックは彼女がいるという事実からある可能性に気付き、素早くその場を見渡してみた。すると――

 

「――いたぁ!!わらわの愛しき人ぉ!!」

 

 〝愛しき人〟――戦っているスサノオの姿を目視できた彼女はあまりの歓喜に顔をほころばせ、素早く彼の元に駆け向かおうとする――が

 

「「ちょっと待てぇ!!」」

 

 そんなハンコックをヤマト、そしてドッザが制止した。2人共彼女がなぜここに来たのかを含めて状況が分からないのにそのまま行かせる訳にはいかなかったからだ。

 といえ、ついさっきまで戦っていた敵が自身と同じ行動を取ったのについ動揺して顔を向け合った2人に対して突如制止されたハンコックが機嫌を激しく悪くし、それでも視線を向けた。

 

「――おぉ、そうじゃったな。そなたの事をつい忘れておったわ」

 

 ――そして獰猛な笑みを浮かべた。

 

「わらわの邪魔をしてくれたそなたを追ってここまでやってきたのじゃ」

 

 淡々とそう言う彼女はその者に向かって毅然とした態度で立ち――まるで突き刺すかのようにその者を鋭く指差した。

 

「――覚悟するが良い……汚らわしき男――ドッザ……!」

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