――思った以上に込み入っている巡り合わせによりさらに混迷を極めてしまった〝バシレウス〟を舞台とする戦争。
その中で最も緊迫感を漂わせる戦いがあった。それこそが――
「リュドドド……!」
「フン……」
「フフフ……!」
――スサノオ、カタクリ、レグラヴァリマといった全体として最強といえる3人が対峙するところであった。
まだ戦いを始めていないのにも関わらず――3人共覇気を放ちながら睨みつけ合っている故にもう既に重苦しい雰囲気に満ちていた。
そこまでする程の覇気の濃さに高揚したオレはそのまま口を開いた。
「――さっさと始めようぜ!!戦いをよぉ!!」
「ふっふ!――そうだよな!もはや待ちきれんぞ!」
しびれを切らしたオレとレグラヴァリマはさっさと戦いを始めようとノリノリな姿勢であるが……
「――あぁ、さっさとお前らを潰し、〝ネロコルヴィーノ〟を回収しなきゃな……」
だが、カタクリは乗り気ではなく、それどころか冷静に自身の仕事を果たすべく冷徹にそう言い放った。
それは2人の事を軽んじるような言い草にあれだけノリノリだったオレ達もふっと笑みを消す。
――そして
「――リュドドドドド!!寂しい事を言うなよ!!せっかくの戦いを楽しもうぜ!!」
「――フハハハハハ!!いい威勢だな!!――そう思い通りになると良いなぁ!!」
さっきよりさらに獰猛で、しかもイラ立ちがあるように感じられる笑みを浮かべたオレとレグラヴァリマがその男に対して勢いよく飛びかかった。
その姿勢、しかも凄まじき気迫にカタクリはしかし怯まず――冷静に立ち向かおうとする……
「フン」
――そうして戦いが開始された……
――だが、そこに介入しようとする者がいた。
「――むっ!まずはあ奴を倒すつもりじゃな!」
――「七武海」〝海賊女帝〟ハンコックであった。
彼女は自身にとっての愛しき人――スサノオに愚かにも手を出そうとする不届き者達、すなわちカタクリとレグラヴァリマを排除しようと動いているのだ。
そんな最中でスサノオとレグラヴァリマがカタクリに対して攻撃を加えようとするのを目視したのだ。
その事態にハンコックは――
「妾も続こうぞ!」
自身もその攻撃に加えようとする。
その途端に彼女の疾走がさらに強まり――そして
「〝芳香脚〟!!!」
その勢いから鋭く放たれた蹴りがカタクリの元へ向けられた――
「…!!」
――だが、その蹴りが彼に届く事はなかった。
――突如横から割り込んできた男に防がれたからだ。
しかも、自身が蹴ったその男が防御に構えた両腕から熱を感じたハンコックは顔を少ししかめ、後ろに飛び下がった。
それで攻撃を邪魔した者を目にしてみると――
左右に穴の開いたおにぎりもしくはスペードマークのような髪型とギザギザのあごひげ、太眉といった精悍な顔立ちをしていて、上半身裸で上からマントを羽織った大男が立っていた。
彼もビッグ・マム海賊団の海賊である。その名は――
「そなた――確か……オーブン……じゃったな……!」
どうやら彼の事を知っているらしいハンコックが苦々しくもその名を呼んだ。
――シャーロット・オーブン
彼はシャーロット家の4男で、もちろんビッグ・マム海賊団の幹部でもある。
「スイート四将星」ではないが、それでも実力者として名を挙げられる程の大海賊だ。
そんな彼がハンコックに対して獰猛で、しかし朗らかな笑みを浮かべる。
「――ハッハッハ!!あの〝海賊女帝〟にこのオレの事を知ってもらえているとは……光栄だ!」
ビッグ・マム海賊団
〝赤熱のオーブン〟
彼は彼女が自身の事を知っていたという事にすごく――歓喜した。
――無理もないかもしれない。絶世の美女に名を知ってもらったんだ。その事実に対する喜びの感情が遥かに大きいのも当然だろう。
そんなオーブンの態度にハンコックの方は険しい表情を浮かべる。
「――フン!汚らわしき男が調子に乗るでない!!」
不機嫌ながらそう言い放った彼女は両手をハート形に合わせる。
突如のその姿勢にオーブンが険しい表情を浮かべたのに構わずにハンコックは容赦なくそれを発動する。
「〝メロメロ甘風〟!!!」
その両手からハート形の波動が放出された。それがオーブンに向かう――が
「――フン!!」
彼が機敏に動いた事でかわされた。
「!」
その事態に目を見開くハンコックの元にオーブンが勢いよく駆け向かい、そして赤く光る――おそらく熱を込められたであろう拳を放とうとする。
「〝熱風拳〟!!!」
「!!――〝芳香脚〟!!!」
だが、迫ってくるその拳にハンコックもすぐ仕切り直し、機敏に動いてからの鋭い蹴りを放つ事で辛うじて対応した。
――〝芳香脚〟と〝熱風拳〟が激突した。
「ぬっ!――フン!」
「オォォ!?」
その激突から発生された衝撃波によりハンコックもオーブンも後ろに下がった。が、すぐ怠りなく身構えた。
「……生意気な……!この妾の美貌に魅入られないとは……!」
「――いやいや!!そんな事はねぇ!!あんたの美貌は実に――最高だ!!」
自身の美貌にたやすく引っかからない目前の男が気に食わないハンコックにオーブンは慌てて、その美貌に対する心からの称賛を口にする――が、苦笑する。
「――ただ、さすがに石像にされるのは勘弁だからな!」
「…」
彼がそう言い放ったその言葉にハンコックは目を細める。
――彼女の〝メロメロ甘風〟はその波動を浴びると一瞬のうちに石化する技だ。
それも彼女に魅了される――少なからず邪心を抱く必要がある……すなわち、見惚れたら終わりの一撃必殺技といえよう。
それに加えてハンコックの美貌ならばすぐ魅力されるのも間違いない。それ故に向かう所敵なしともいえる筈だった。
――だが、情報力に長けるビッグ・マム海賊団の海賊であるオーブンはもちろんその情報を得ていた。それ故に警戒できていたのだ。
……ちなみに最初から気を付けていた彼もさすがにハンコックの美貌にギリギリ骨を抜かれかけたのもご愛嬌の話である。
とにかく、改めて――獰猛な笑みを浮かべながら熱を込められる両拳を構えるオーブンの姿にハンコックも――真剣な姿勢を取る。彼女もさっきの〝熱風拳〟の威力から気を引き締める事にしたのだ。
「…(妾とした事が――つい我を忘れてしまったとは……悪い癖じゃな)」
中々の実力者であるオーブンと少々ながらも手合わせした事で逆に頭を冷やす事ができたハンコックは自身の悪い癖を改めて自覚した。
「(だからこそ、治そうと努力したんじゃが……中々難しいじゃな)」
そして、中々改善されにくい事にも頭を抱えた。
……といえ、今は戦闘中だ。それは後にして今は目前の敵を倒すのに専念すべきだ。
そう考えた彼女は目前に立つオーブンに対して改めて……尊大に構える。
「……よかろう――そなたには思い知らせてやろうぞ……この妾の邪魔をした愚かしさをな……!」
堂々とそう宣言したハンコックから覇気が猛烈な勢いで放たれた。その濃さにオーブンもつい眉を上げた。
「……ふ、フフ……!それはそれは……こえぇな……!」
だが、それでも怯まずに不敵な笑みを浮かべて構え返す。
そうして――新たな激突がその場で起ころうとした……
●
「!姉様……!」
「!あの男、姉様に手を出すつもりなのね……!」
その激突を姉を追ったサンダーソニアとマリーゴールドが目視した。
その事態に2人共――目を鋭くした。
「――そうはいかないわよ……!」
「えぇ……!……姉様に手を出すつもりならば――まず、この私達を通してもらわなきゃね……!」
九蛇海賊団のNo.2としてハンコックに仕える自負がある2人は戦意を激しく燃やし、そのままその戦いに割り込もうとする……が
「「…!?」」
そんな彼女達の前に突如――〝チェス戎兵〟が立ち塞がった。驚愕する2人に対して得物をビッシリと向ける。
――それらもまた自身達の主を補佐する為に戦おうとしていた。
「――あの方々の邪魔はさせるな!」
「「「オォ〜ッ!!」」」
その筆頭に立つ上位らしき個体がその檄を飛ばし、それに盛り上がる〝チェス戎兵〟の姿勢に2人も険しい表情を浮かべた。
「この……ガラクタが!!」
「――邪魔するな!!」
――その場でも激突が起ころうとする。
●
あちこちで戦いが起ころうとする中でのある場では……
「ウィッウィッウィッ!!」
その不気味な笑い声を出した青紫色の髪毛に長い鼻が特徴の魔女のような顔つきをした長身の女性がいた。
……そして、その近くには大きな鏡が設置されている。しかも――そこから何と、多くの〝チェス戎兵〟が姿を次々に現してきた。
その事態はその女性が持つ〝悪魔の実〟の能力によって引き起こされているのだ。
それ程の力を持つ彼女とは――
「ウィッウィッ!!――このアタシの能力にかかれば、行く手を阻む障害等――無意味だよ!!」
その女性はそう得意気に言い放った――彼女もまたビッグ・マム海賊団の海賊である。
――そして、シャーロット家の8女にあたる女性でもある。
ビッグ・マム海賊団
シャーロット・ブリュレ
そんな彼女は自ら手をかけてる大きな鏡から〝チェス戎兵〟が出続けてくる景色にニンマリする。
「ウィッウィッ!――どんな敵だろうが、どのように来ようが――私達、ビッグ・マム海賊団の勝利が揺るがらないよ!!」
今の状況から自身達の勝利を確認するブリュレは笑みを深くする――が、すぐ険しい表情になる。
「――でも、まさかあの暴獣海賊団もここに来ていたとはねぇ……!」
自身にとって因縁のある海賊団もここ〝バシレウス〟に来てたという事実に彼女も軽くながらも驚いた――が、同時にチャンスだとも考えた。
「――暴獣海賊団……というより、あの小娘にアタシ達の恐ろしさを思い知らせてやるチャンス!!」
暴獣海賊団に所属するある女の事を思い浮かべたブリュレは獰猛な笑みを浮かべた。
――愚かにもこのアタシの前で自身の兄こそが最高だと主張しやがった小娘。
それに対してアタシがカタクリお兄ちゃんこそが最高だと反論しても受け入れられず、そこからケンカになったものだ。
その事を思い出した彼女はその際の女子が浮かべた生意気な顔をも思い出し――それに腹が立つようになっていった。
あの憎たらしい顔を歪ませられるとどれだけスッキリできる事か……!
長らくそう考えてきたブリュレはその機会が突如転んできたという事実につい笑うのを抑えられなかった。
胸内にその企みを抱えている彼女は真剣な目つきで周囲を見渡してみる。
「――スサノオという小僧は……お兄ちゃんが間違いなく潰すとして……」
「――必ずいる筈のあの憎たらしい小娘をこの手で潰してやるわ……!!」
「そんで……」
思う事を率直に口にするブリュレはそこでニンマリと笑みを浮かべる。
「――小僧の敗北に泣き喚くアイツを笑ってやるわ!!ウィッウィッウィッ!!」
その景色を妄想する彼女は心躍りながらも周囲を抜かりなく見渡す。すると……
「!」
――ある方向には白い点が見受けられた。しかも、それはまっすぐブリュレの元に猛烈な勢いで向かってきている。
そんな事態だが、その正体に見当は付いている彼女はニィとする。
「――ウィッウィッ!やはり来たわね!――ヤマトォォォ!!」
ブリュレがその名を口にするのに対して猛烈な勢いでやってくる白い点――ヤマトが駆けながら金棒を構えていて、そして――獰猛な笑みを浮かべていた。
「――うんっ!!やってきたぞぉ!!ブリュレェェェ!!」
ブリュレに対して率直にそう宣してやった彼女が容赦なく金棒を勢いよく振った――
「〝雷鳴八卦〟!!!」
その打撃をいつの間にブリュレの手元にあった鏡が受け止めた。その瞬間
「〝反射〟!!!」
「うお!?」
突如、ヤマトの方が衝撃波を受けた。その勢いで後ろに下がった。
突如の事で混乱する彼女に対してブリュレがからかうかのように口を開く。
「ウィッウィッ!――久しぶりだねぇ〜ヤマトォ〜……あの時から時が経ったんだけど――随分美しくなっていて何よりだよ……!」
海軍基地での騒ぎ以来久しく目にしたヤマトの美しく成長した姿にブリュレも抱えているある衝動に駆られずにはいられなかった。
そんな彼女にヤマトもすぐ獰猛な笑みを浮かべ返す。
「――あぁ!本当に久しぶりだよ!これでやりたいと思っていた事をやれるよ!!」
「!?――やりたい事?」
言い放たれたその言葉に首を傾げたブリュレに対してヤマトはニンマリとし――そして目をカッと見開く。
「――お前を倒して、この僕こそが最強の妹なんだと証明してやる!!」
そう言い放った彼女は得意気な顔をみせてやった。その姿勢にブリュレは呆気に取られ――すぐ怒りをみせた。
「……〜〜ッ!!さ、最強の妹!?こ、このアタシの前でそれを言うなんて――いい度胸だよ!!泣かせてやる!!」
「ハハッ!!――上等だぁ!!」
――その2人は互いに譲れないものの為に挑み合う……