暴獣海賊団VS〝バシレウス〟VSビッグ・マム海賊団――
それは誰にも思いもよらない形で勃発してしまった三つ巴による戦争。その全てを握るといっても過言ではないかもしれないその戦いもまた激しくなろうとしていた……
「オォ!!」
「フハハ!!」
――オレとレグラヴァリマが揃ってカタクリに対して攻撃を繰り出そうとしていた。
2人共自身に対して攻撃してくる事態に彼はしかし狼狽えず――平然と身構えて、受け立とうとする。
「……フン」
「ッ!!」
その冷静さが癪に障ったオレはそれを粉砕してみせようと「神武」の金棒を猛烈な勢いで振ってやった。
「〝雷鳴八卦〟!!!」
その決して軽くはない威力を込められた打撃をカタクリは――機敏に足を掲げる事で受け止めた。
しかも、その足は〝武装色〟を纏っているのはもちろんだが……少し膨らんでいた。それ故に〝雷鳴八卦〟をしのげただろう。
「…!」
その事に微かに眉をひそめたオレに対してカタクリは眉を少し上げた。
だが、そこに今度はレグラヴァリマが「ダイモーン」の鋭く伸ばした爪でカタクリに襲いかかろうとする。
「フハハ!!(「ダイモーン」発動!!!)」
その彼女は装飾する「ダイモーン」の能力を発動した事による驚異的なスピードで攻撃を加える。
その攻撃をカタクリはさすがに避けられず――呆気なく切り刻まれた……ようにみられた。
「…!!?」
「…」
――だが、その切り刻まれた筈の身体はドロドロと化していて――やがて何の事はなかったかのように再構成されていった。
……カタクリは〝モチモチの実〟の能力者である。その能力により身体を餅そのものに変える事ができる故に自然のように原形を留めない性質を有しているともいえる。
――ただ、そういう背景にレグラヴァリマはしかし納得できなかった。
「――どういう事じゃ!?妾は確かに〝武装色〟を纏って、それで攻撃した筈なんだぞ!?」
そう考えた理由を彼女は口にした――確かに〝武装色〟は自然系の能力者の実体をとらえる事ができる特徴を持っている。その〝武装色〟をレグラヴァリマが攻撃する際にちゃんと纏っていたのだ。
にも関わらずにその効果がないように見受けられる事態に彼女も混乱せざるを得なかった。
「――チッ!!なら!!」
だが、すぐ仕切り直してその謎を解明する為にレグラヴァリマはカタクリへの攻撃を再び試みようとする――が
「リュドドド!!」
「「!」」
そんな彼女に対してこのオレが迫ろうとしていた。
「これが三つ巴であるのを忘れんなよ!!」
そうニャリとしたオレは「神武」を勢いよく振り回した。
「!――チィィ!!」
不測の事態につい固まったものの、自身に迫ってくる「神武」の大剣をレグラヴァリマが素早く動いた事で辛うじて避けた――が
「〝雷電八卦〟!!!」
「!!」
大剣を振った勢いによる金棒での打撃を彼女に叩き付けた。
「ガァァァ!?」
「――オォォ!!」
「―!」
その打撃を直で受けたレグラヴァリマが床に叩き付けられたのをよそにオレは金棒で彼女を叩いた反動をそのまま利用し――金棒を続いてカタクリに対しても振ってやった。
「!?」
あまりにも虚を突きすぎるその攻撃にさすがの彼でも即座に反応できず――直で受けた。
「ウッ!!」
今度はどうやら効果があったらしく、金棒で叩き付けられた頭部から血を流しながら後ろに下がらざるを得ない彼をオレはここぞとばかりに追撃しようとする。
「リュドドド!!――〝降三世阿法狩伏〟!!!」
オレは「神武」を猛烈な勢いで振り回し――そこから勢い付けられた金棒と大剣両方の攻撃をカタクリにくらわそうとする。
「――そうはいくか!!」
だが、このまま下がる彼ではなかった。後ろに下がりながらも、その勢いでいつの間に大きく膨らませた足をオレの方に勢いよく蹴り上げた。
「むっ!」
その強大なキックをオレは「神武」で振り払った――が
「はっ!!」
それさえを予測したカタクリが前もって機敏に動き――もう既に膨らませておいた片足をも猛烈な勢いで振った。それに気付いたオレはまだ勢いを失っていない「神武」で対応しようとするが
「ぐぉ!!」
――その直前にそのキックをまんまと受けてしまったオレが勢いよく吹っ飛ばされた。
「チィッ!――……!」
吹っ飛ばされながらも辛うじてカタクリを睨みつけるオレだが、そこにレグラヴァリマが迫ろうとした。
「!!」
「ア〜ハッハッハッハ!!――三つ巴であるのを忘れるなよぉ!?」
その事に目を見開くオレに対してさっき言われた事をそのまま仕返しに言ってやった彼女はしてやったりの笑みを浮かべながらその身体にジグソーパズルのような繋ぎ目を迅速に刻んでいった。
「――ホワァ!」
「ウォォ!?」
そうしてその繋ぎ目を刻まれたオレの身体にレグラヴァリマが「ダイモーン」を装飾する両手を突き刺した。
その衝撃により繋ぎ目から血が湧き出たオレがたまらず声を上げながら床に激しく叩き付けられた。
「オォ……!」
「ア〜ハッハ!!」
重ねる衝撃に身動きを取れず呻くオレにレグラヴァリマが追い討ちをかけようとする――が、そこにカタクリがやってきた。
「――そういうお前こそ忘れやすいようだな……!」
自身の存在を忘れた事をからかうように彼女に対してそう言い放った彼は膨らませた足を蹴り付けた。
「!?――ガァァァ!?」
その重き攻撃を受けたレグラヴァリマが呆気なく吹っ飛ばされたのをよそにカタクリは続いて床に倒れ伏せているオレに対して今度は膨らませた拳を容赦なく放った。
――その場に大きな音が響かれる。
「!」
……カタクリが放った拳はオレが素早く「神武」を構えた事で受け止められていた。
「――リュドドド!!」
その事に目を細める彼をよそにオレは突如笑い声を上げながら――筋肉が青筋を立て脈動させる。
「!」
「――んオラァ!!」
目を微かに見開くカタクリに対してオレは「神武」を力いっぱい振る事で彼を吹っ飛ばそうとする――が
「…!」
――気付く。彼が「神武」を振るわれる前に素早く後ろに下がったという事に……
そして、後ろに下がった勢いのままにオレに向かって蹴ろうとする――その足は無数に増やされていた……
「〝柳モチ〟!!!」
まるで柳の枝の如き多数の足で連続的に蹴り上げてきたのに対してオレは――
「〝軍荼利泌弘万〟!!!」
床に倒れたままで「神武」を勢いよく振り回してみせた。
――その場に大きな音が立て続けに響かれる。
――カタクリからの多数の蹴りとオレが放った連続的打撃と斬撃が次々に激突し続けた。
……といえ、オレが床に倒れたまま技を放った為にその威力は本来より低下している。それ故に〝軍荼利泌弘万〟が〝柳モチ〟に力負けし、その衝撃でオレの身体が吹っ飛ばされてしまった。
「……ほぅ」
ただ、オレが吹っ飛ばされた様を目視したカタクリがなぜか驚いた。
――それもその筈。吹っ飛ばされた筈のオレは体勢を何とか整え、立ち直してみせたからだ。
実はオレは〝軍荼利泌弘万〟と〝柳モチ〟の激突により発生するであろう衝撃を利用して体勢を整え直すつもりであったのだ。だからこそ威力が低下するのを承知の上で技を放ったのだ。
その意図を勘付いたカタクリはその判断力と戦いのセンスについ感心を覚えずにはいられなかった。
その事を知ってか知らずかオレは改めて身構えながら――ニャリとする。
「――リュドドド!!このオレをいつまでもあの時のままだと考えてるのならば……痛ぇ目に遭うぜ!?」
そう威勢を張るオレの姿にカタクリはしかし不快に感じず――頷く。
「……フン、確かにな――あの時は強くなるなと思っていたが……少し予想以上に成長したじゃねぇか……!!」
かつての海軍基地での騒ぎでオレの素質に関して将来性を感じていた彼も今のオレの実力とそこに至った成長の程にはさすがに驚愕せざるを得なかった。
――が、それも一瞬だ。
……カタクリは「四皇」〝ビッグ・マム〟の懐刀として呼び名が高い程の大海賊だ。対するのはたとえ素質を感じられても、そしてその〝血筋〟があっても一応――ルーキーだ。
そんな奴にいつまでも腰が引ける訳にはいかない。
そう考えたカタクリは気を引き締め、そしてオレに対して〝覇王色〟の覇気を放つ。
「!!」
「――だが、だからといって――このオレに敵えると思わない事だ……!」
その凄まじさ、そして言い放たれたその言葉の重さにオレも汗を一筋流した――
――が、同時に笑みを浮かべた。
「……リュドドド!!確かにな!お前を倒す事が難しいのが改めて分かったしな!!」
そういうオレも目前に堂々と立つカタクリの実力を痛感した――
……海賊として様々な敵と長らく戦ってきたであろう彼の熟練された戦いのセンスにオレも舌を巻かずにはいられなかった。
それに加えて、その〝見聞色〟の覇気も中々厄介だった。何せ鍛えすぎるあまり、未来予知の領域に達してしまった程なのだから……
その予知によりカタクリと戦う際に微妙なところで機敏に動かされた事もあった。
……ちなみにレグラヴァリマが疑問に思っていたカタクリに〝武装色〟を纏う攻撃が効かないという謎もそれに関係している。
それは彼女の攻撃を予知した彼が前もって攻撃を受ける部分だけを最小限に変形させ、穴を開けた――ただそれだけの話である。
つまり、それ程に洗練されていてもはや隙が見当たらないカタクリを前にするオレは畏怖を感じた――が、それに伴い戦意が激しく燃え盛った。
「リュドドド!!だからこそ、戦わずにはいられねぇよなぁ!!」
そう声を張り上げたオレは猛獣の如き笑みを浮かべ、そして〝覇王色〟の覇気を放った――
――そうして2人の〝覇王色〟が激突下……
その凄まじき激突にカタクリも――ついうずいたのか、首に巻き付けられるファーで隠されてる口も歪んでいた。
「……フン!ぜいぜい――呆気なくやられんじゃねぇぞ……!?〝暴獣のスサノオ〟……!!」
「――ハッ!そういうお前だって!!〝盤石のカタクリ〟!!」
互いに獰猛ながらも笑い合ったオレ達。そのまま戦いを再開しようとするが――
「…!!……どうやら、やられた訳ではなかったようだ……!」
「!?」
何かに気付いたカタクリが突如そう言い張る。その言葉の意味が分からず、オレが首を傾げる途端だった。
「――ア〜ハッハッハッハ!!!」
「!!」
「…」
――その場にその笑い声が大きく響かれた。
その声に目を見開いたオレと把握している故に冷静なカタクリが揃ってその源に視線を向ける。
するとそこには――撃破されたと思われたレグラヴァリマがまるで何の事はないかのように立っていた。しかも……
「!!お前――動物系の能力者だったのか!!しかも、その姿……」
その姿を目視したオレが驚きながらそう言い放った通りに彼女は動物系の〝悪魔の実〟の能力によって変身していたのだ。
その事実に驚愕するオレだが――その理由はそれだけじゃない。
――まず、レグラヴァリマの顔が禍々しく恐ろしい形相と化した上にこめかみ辺りからそれぞれ頑丈な角が生えていて、その身体の大半が大量の口がついた血のように赤黒いものに覆われた異形の姿になっていた。
その姿――にはすごく既視感があるオレはそれを口にする。
「――あの腑抜けの能力か!!」
――そう、オレ達……暴獣海賊団が最初に戦った敵――ムザン海賊団船長ムザンのものだった〝ヒトヒトの実〟モデル〝鬼〟の能力をレグラヴァリマが得ていたのだ。
――しかも……
「……ほぅ、覚醒しているとはな――お前もまた並ではなかったようだ」
その姿を目視したカタクリがそう感嘆した。
そう、〝鬼〟への変貌を遂げた彼女だが、その身体には――黒く禍々しいオーラをさながら羽衣のように纏っていた。
――〝悪魔の実〟には心身共にその能力を極限まで鍛え上げた実力と熟練している者だけがその能力を飛躍させられるという領域が存在する。それこそが――「覚醒」である。
そして、動物系の能力者が覚醒した証として羽衣のようなオーラを纏うといわれる。
その事実からレグラヴァリマは〝鬼〟の能力を覚醒できたと見受けられるのも間違いはないだろう……
その事に驚愕するオレ達の反応に彼女は満足気に尖った歯を剥き出しにする程の獰猛な笑みを浮かべた。
「――ア〜ハッハッハッハ!!そう!!これこそが妾の真の力……」
〝ヒトヒトの実〟
モデル〝鬼〟
覚醒フォルム
自身の力を誇らしげにするレグラヴァリマの姿にオレも目を細める。
「……「覚醒」――親父も達した〝悪魔の実〟の更なるステージ……かぁ……!!」
まさか彼女が能力者で、しかも覚醒しているという事実にオレも――笑みを抑えられずにはいられなかった。
「――リュドドドドド!!面白くなってきたなぁ!!」
「……フッ、本当にお前は――」
戦意をさらに激しく燃やしていくオレとその姿勢に笑みを浮かべるカタクリに対してレグラヴァリマも笑みを浮かべた。
「ア〜ハッハッハッハ!!――ここから本番だぁ!!」
――三つ巴による戦いはさらに激しくなっていく……