ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第156話〝高まる熱〟

「〝モチ突〟!!!」

 

 カタクリが放ったドリルの如き高速回転を伴う強烈な槍の突きが〝流れモチ〟で絡め捕られたオレとレグラヴァリマを容赦なく襲い掛かった。

 

 ――その場に大きな音が響かれた。

 

「ギャアアアアアアアアア!!?」

 

 ――その突きを身に受けたレグラヴァリマはその命中箇所を抉り取られている故によるあまりの苦悶に大きく悲鳴を上げながら勢いよく吹っ飛ばされた。

 〝モチ突〟の威力が並外れてる為にその姿があっという間に見えなくなっていった……

 

「…」

 

 その様を見届けたカタクリは続いてもう1人に視線を向ける。そこには――

 

「……この突きにも耐えきるとはな」

 

 彼がそう感嘆の声を上げた通りに〝モチ突〟に耐えてみせたオレの姿があった。

 ……もっとも、それを受け止めたらしき右腕には少々捻り取られたような跡があって、そこから煙が上がっていた。

 そこにさすがに痛みを感じたのか少し顔をしかめたオレはしかしすぐニャリとした。

 

「リュドドド!!――とんでもねぇ!!めっちゃ痛ぇよ!!」

 

 その事を率直に口にしたオレは自身に痛手を負わせられた程の技を放ったカタクリの実力に笑みを浮かべずにはいられなかった。

 そんな姿勢にカタクリも再び呆れた。

 

「……本当にお前は猛獣だな――〝暴獣〟の名に違わねぇな……!」

 

 そう皮肉を言った彼だが、その口は微かに――歪められていた……

 ――そして

 

「……あの女はしばらく戦闘不能だろうし――あとはお前だ」

 

 今身を置かれる状況に関してそう認識したカタクリは改めて手に持った三叉槍――「土竜」をこのオレに向けた。

 手掛けるべき敵が1人だけになった事でさらに本腰を入れる事にした彼の姿勢に対してオレは……

 

「……フン!!」

 

 まず、自身を縛っているものを勢いよく弾かしてやった。

 ものが弾かれて自由になったオレは口を開く。

 

「――リュドドド……そうなるようだ」

 

 その認識に相槌を打ったオレも「神武」を構え――獣の如き獰猛な笑みを浮かべる。

 

「だが、それはつまり――ここからもっと激しくなるんだろ!?」

 

「……それはどうだろうな」

 

 オレが言い放った事に対してカタクリはそう口にするが、一方で抜かりなく「土竜」を構えていた。

 

 

――これにて三つ巴の戦いは〝暴獣のスサノオ〟と〝盤石カタクリ〟の一騎打ちに変わる事になる……

 

        ●

 

三つ巴の戦いが激しくなった一方であるところでは……

 

「〝芳香脚〟!!!」

 

「〝熱風拳〟!!!」

 

 ――ハンコックの強靭な蹴りとオーブンの熱を込められた拳が激突していた。

 それで発生された大きな衝撃波によって2人は互いに後ろに下がった。

 

「――ハッハッハ!!やるじゃねぇか!!」

 

 両拳を油断なく構えながらもその強さを率直に称賛するオーブンに対してハンコックは尊大な態度をしながら凛々しく言い放つ。

 

「――当然じゃろう!!この妾は〝海賊女帝〟――「九蛇」の皇帝ぞ!!そなたごときにやられる訳がなかろう!!」

 

 彼をビシッと指差した彼女はそのまま首を後ろに引く――〝見下しすぎのポーズ〟を取った。

 

「!?見下しすぎて逆に見上げやがる!!?」

 

 そのポーズにはオーブンもさすがにツッコまざるを得なかった。

 だが、それを気にしないハンコックは突如空中に飛び跳ねながら体勢を整える。

 

「!!」

 

 その姿勢を目視したオーブンがすぐ態勢を立て直すのに対して彼女は空中から――勢いづけられた蹴りを放とうとする。

 

「――さっさとくたばるがいい!!〝芳――……!!」

 

 その蹴りとオーブンが負けじと放った更なる熱を込めた拳が激突しようとする――その瞬間に突如何かが2人の元に向かって猛烈な勢いで飛んできた。

 

「「!!」」

 

 それに気付いた2人はその勢いが並ではない故に攻撃を止め、すぐ下がった。そんな2人の間を何かが通り抜き――壁に激しく叩き付けられた。

 それに2人が油断を捨てずに注視すると――

 

「……!!こ奴は――」

 

 気付いたハンコックが目を見開く。何せ、それは――

 

「――スサノオ…とカタクリと戦っていた女、レグラヴァリマ……!!」

 

 その言葉通り、壁にもたれているのは――レグラヴァリマであった。

 彼女はカタクリの〝モチ突〟によってハンコックとオーブンが戦っているところまで勢いよく吹っ飛ばされていたのだ。

 その事を察したハンコック、そしてオーブンは揃ってスサノオとカタクリのいる方向に素早く視線を向けて状況を確認してみると――肝心の2人は別に異変がなかった。

 それどころか――平然と戦いを続けていた。その姿に2人共つい口を歪ませた。

 

「――ハッハッハ!随分と暴れているな!カタクリも!」

 

「…(スサノオさん……!猛々しく戦う姿もすてきじゃ……!)」

 

 それぞれ生き生きとしている姿にそう笑みを浮かべたものの――

 

「「…!!」」

 

 気付く――後ろから響かれる唸り声に。

 素早く振り返ると――なんと再起不能になったと思われたレグラヴァリマがふらつきながらも起き上がっていたのだ。

 ――彼女は〝動物系〟の能力者でしかも覚醒している。

 〝動物系〟の〝覚醒〟の段階に達する事で得られる異常なタフさと回復力によって凄まじき威力を持つ〝モチ突〟を受けても完全に撃破されず、復活できたのだろう。

 ただ、やはりダメージが大きかったらしくよろめいていた――にも関わらずにおぞましき殺気を放っているレグラヴァリマは目を血走らせ、遠くを睨み付けた。

 

「〜〜!!よくも――よくもこの妾を地に伏せらせたな!!この屈辱はお前をズタズタにする事で晴らしてくれるわ!!――カタクリィィィ!!」

 

「――お前もだ!!スサノオォォォ!!」

 

 歯を剥き出しにする程の怒りのままにそう宣した彼女はその2人の元に掛け向かおうとし――

 

「――そうはいくか!!」

 

「――この妾を無視するでない!!」

 

 ――そこをオーブンとハンコックに立ち塞がれた。

 その宣いを耳にした2人がその女の事を許せず、排除すると決意した。

 

「!!」

 

「〝熱風拳〟!!!」

 

「〝芳香脚〟!!!」

 

 思わぬ邪魔につい固まったレグラヴァリマを2人が容赦なく攻撃するが……

 

「――オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛!!」

 

 それでも執念を燃やした彼女が機敏に〝管〟を猛烈な勢いで振り回し、〝口〟も全て強く吸息と吐息をさせた。

 それによって発生されたメチャクチャで強烈な風の渦に2人の攻撃が弾かれた。

 

「「!」」

 

 その勢いを受けて2人が後ろに飛び下がらざるを得なかった。

 その一方でレグラヴァリマは……

 

「…!!ぐ……!」

 

 少々よろめいていた。

 覚醒した〝動物系〟の能力者である彼女でもさっきの戦いで、何よりカタクリの〝モチ突〟によるダメージが重く効いているのだ。

 その姿を目視したオーブンはニャリとする。

 

「――ハッハッハ!!そりゃそうだろ!!あのカタクリと戦って、無事でいる訳がねぇよな!!」

 

「…(なんじゃと!?それはスサノオさんのおかげじゃろうが!!)」

 

 彼が誇らしげに言った事に対してハンコックは心の中でそう反論した――が、それを知る由もないオーブンが言葉を続ける。

 

「しかし、すごく辛そうだな……降参しても構わねぇぞ?面倒な手間はできるだけ避けたいからな」

 

 物事を上手く進めたいと考えている彼がそう進言するが――

 

「……ほぅ?」

 

 返ってきたのは凄まじき殺気だった。

 

「「!」」

 

 その濃さはオーブン、そしてハンコックも素早く身構えた程だった。そんな2人に対してレグラヴァリマは口を開く……その声には凄みがあった。

 

「……クックック――確かに今の妾は随分と深手を負わされてしまった……もはや、狙いやすい標的に成り下がったんだろう」

 

 今の自身の状態を彼女がそう自嘲するが……

 

「――だがぁ!!そのような最期も!!降参も!!つまらねマネをするつもりはこのレグラヴァリマにはなぁぁぁい!!!」

 

 仮にも〝バシレウス〟最強だと知られる彼女にはそういう選択肢は存在しなかった。

 何だかんだで誇りを持っているレグラヴァリマが覇気を放ちながらそう宣言した――その瞬間にその姿が煙のように消えた。

 

「「!?」」

 

 その姿勢につい気圧されたオーブンとハンコックもその事に驚愕した途端にその身体が突如吹っ飛ばされた。

 

「おわぁ!?」

 

「くっ!?」

 

 突如の事に驚愕する2人がそれからも見えない攻撃を受けているかのように空中を飛び跳ね続けた。

 その状況に2人共悶える――が

 

「!!――〝熱燐寸男〟!!!」

 

 いいようにされてるオーブンは負けじと全身を高熱で包みこんでみせた。

 

「!!――〝連芳香脚〟!!!」

 

 一方のハンコックも負けじと全方向に向けて足を猛烈な勢いで振り回し、蹴りつけてみせた。

 そうしてさっきのとは一変されて、身を置かれる状況に2人は何とか対応した。そして……

 

「「そこ!!」」

 

 ハンコックとオーブンが揃って何かを見捉えたらしく、その方向に向けてそれぞれ強大な攻撃を放った。

 

「――お゛ぉ゛!!」

 

 その途端に悲鳴を上げられた。すると2人を襲いかかっていた攻撃が止んだ。

 それで自由になった2人は床に足を付けられた。そんな2人の目前に――身体の一部を抑えるレグラヴァリマが現れた。

 ――そう、ついさっきまでは彼女が能力によるスピードを限界を超えてまで加速しながら2人を攻撃し続けていたのだ。

 スサノオとカタクリと戦った時よりさらに勢いづいてて実に猛々しかったが……それも彼女が深手を負わされてもう後がなくなった故だろう――まさに〝手負いの獣〟である。

 その事に違いないかのように猛獣の如き振る舞いをするようになった彼女の姿はその能力で変身したのもあって、もはや完全に〝鬼〟そのものと化していた。

 そんな姿を目にするハンコックもオーブンも真剣な表情を浮かべる。

 

「……なるほど、これは本気であたるべきじゃな……!」

 

「……はん、ここにカタクリが気に掛けるスサノオとかいう奴以外にもこういう奴がいるとはなぁ……」

 

 その姿勢はもちろん、さっき自身が受けた攻撃からただのケガ人……否、だからこそ警戒すべきだと2人共認識をそう改めた。

 そして2人共身構え、覇気を放つ。その濃さにレグラヴァリマもますます〝鬼〟の如く獰猛になった笑みを浮かべた……

 しばらく――3人の間の空気が張り詰めた……

 

「――オォ!!」

 

 始めに動いたのは――オーブンであった。

 彼は全身を高熱したまま――レグラヴァリマの元に駆け向かった。

 

「〝熱山羊〟!!!」

 

「なんの!!」

 

 その突撃をレグラヴァリマが素早く避けた。

 

「速いが……分かりやすいその技を食らう筋がどこにもないわ!!」

 

「それはそうじゃな!!」

 

 スピードはあるが、直線的に進む故に分かりやすいその技を嘲笑う彼女だが、それに対しての共感の声が響かれた。

 

「!」

 

 それに素早くレグラヴァリマが顔を向くと――ハンコックが態勢を整えていた。

 

「だが、こういうのはどうじゃ!――〝連芳香脚〟!!!」

 

 彼女が強靭な連続蹴りを容赦なく放った。

 

「!!――オォォ!!」

 

 その連続蹴りをレグラヴァリマが少し受けてしまったが、辛うじて避けてさらに両腕と〝管〟で防御してみせた。

 

「ほぅ……!」

 

「これ如きにやられる妾ではないわ!!」

 

 その防御につい感心を覚えたハンコックに対して彼女はそう言ってやる――が、そこに

 

「――随分頑張っているな!!感心だぜ!!」

 

 オーブンが現れた――全身を高熱化したまま右拳を構えながら……

 

「「!!」」

 

「〝赤熱風拳〟!!!」

 

 その姿勢に目を見開く2人に彼が容赦なく拳を放った。

 ――その拳による衝撃波はもちろんだが、それに込められた熱も勢いよく放たれた。

 

「お、ォ!!」

 

「くっ!!」

 

 その攻撃をレグラヴァリマは辛うじて避けたものの、その熱につい声を上げずにはいられなかった。一方のハンコックは十分に避けられず、受けざるを得なかった。

 

「ぐ…!おのれ!!」

 

「ハッハッハ!!――オレ達は別に味方でもねぇからな!!」

 

 自身にも攻撃したオーブンに怒りを覚えたハンコックに対して彼はそう指摘した。

 ……確かにそもそも2人は最初から仲間ではない。故に彼の姿勢に間違いはない。だが、だからこそ――

 

「――その通りじゃな!!」

 

「!!」

 

 その指摘を率直に肯定した彼女は崩された態勢を機敏に整え直しながら――オーブンの元に駆け向かう。その素早い切り替えに驚愕した彼がすぐ身構えたのに対してハンコックはその蹴りを放った。

 

「〝大芳香脚〟!!!」

 

 ――それは〝芳香脚〟よりさらに強大な威力を秘める蹴りである。

 その威力を勘付いたオーブンは自身の熱をさらに高らかに上昇させながら受け止めようとするが……

 

「――!!お、オォォォォ!!」

 

 予想よりあまりにも強大だったその威力に耐えきれず、吹っ飛ばされた。

 

「――はぁぁ!!」

 

 その様をハンコックはしかし見届けず、自身をさらに回転させながら動き――

 

「…!!」

 

 ――今度はレグラヴァリマの元に向かった。自身をも倒そうとするその姿勢に彼女も機敏に〝管〟と〝口〟を漏れなく発揮して強烈な風の渦を作るが……

 

「〝大芳香脚〟!!!」

 

 それさえもハンコックが放ったその蹴りには敵わない。その強大な蹴りが風の渦を呆気なく粉砕し――そのままレグラヴァリマを叩き付けた。

 

「オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛!!!」

 

 その重き一撃により彼女も勢いよく吹っ飛ばされた。

 その様を見届けたハンコックは堂々と立ち――雄々しく宣する。

 

「……この妾を見くびた罰じゃ!」

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