ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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☆おでん達との戦いに勝利したカイドウとスサノオはー


第13話〝光月おでん〟

3日後――

 

「よく来たなカイドウ!スサノオもヤマトも!お前達の席はここだ!」

 

「おう」

 

「ああ」

 

 オレ達が勝利を祝って盛り上がるうちに光月おでんが処刑される日がやってきた。

 オレ達はその処刑を見物するために「花の都」の処刑場、その席に座した。そこには人間10人が入れる程の巨大な大釜が置かれていて、その中に油を入れ煮てていた。

 その具合を眺めたオロチは厄介なおでんがもうすぐ壮絶な死を迎えるであろうという事から上機嫌だった。そのそばにいるせみ丸も同様だ――姿が見えないひぐらしもおそらくそうだろう。

 

「――これより光月おでん並びにその家臣十一名の〝公開処刑〟を執り行う!!!」

 

 しばらくするとおでん達がやってきた。それによって処刑が開始されようとした。

 囚われの身になっている彼らの姿を目にしたオレの頭にある疑問が浮かぶ。

 ……なぜ逃げねェんだ?親父の体に傷を負わせたおでんとその家臣なら鎖なんかを引きちぎってまで逃げる事ができるんだろうに……

 そう考えたオレが首を傾げる。とにかくおでんが大釜の前までに進めさせられるが、その時に彼は親父とオロチの方に顔を向けて――

 

「チャンスが欲しい!!オレは生きねばならない」

 

「!」

 

 おでんが言い出したその言葉にオレはつい親父に視線を移す。

 ああ言った今なら仲間として受け入れるチャンスなんじゃねェのか、親父の肉体に傷を負わせる程の強さを持つ侍なら親父だって歓迎の筈。

 オレはそう考えながら親父を見つめたが、彼は口を閉じるままだった。

 

「おいさっさと入れ!命乞いなんて笑わせんな!!――わああッ!!」

 

「え……」

 

「ブェヤアアォアア!!助けで助げ!!」

 

「……うわァ」

 

 そんな中でおでんを槍で小突いて嘲笑った役人がつい足を滑らせ、大釜の中に落ちてしまった。

 

「助げ――」

 

 なんとか役人が大釜から出られたが……その時はもう黒焦げになっていて、そして息絶えてしまった……

 

「うッ……」

 

「大丈夫か?やはり降りるか?」

 

 その残酷な光景を目にしてしまったヤマトの様子が少しおかしくなったのに気付いたオレは素早く妹の心身を案じた。

 このオレはとにかく、やはりヤマトにはまだ早いと思ったんだ。

 そう思っていたオレはヤマトをこの場から連れて離れようとも考えた。

 しかし――

 

「ううん、私はお父さんの体を傷付けられた最強の侍の最期を見届けたいんだ。だから……」

 

「そうか……無理だったらちゃんと言え。一緒に降りてやるからな」

 

「うん……」

 

 ヤマトはおでんの最期を見届けたい故にこのまま留まる意思を固めていた。そんな妹の意思をオレは尊重する事にしたと同時にそう念を押す。それにヤマトも頷く。

 そしておでんが続ける。

 

「……十一人全員で釜に入る。もしお前達が決めた時間を耐えきった者がいたら開放してくれ!!!」

 

「おでん様……⁉」

 

「耐える⁉」

 

「一瞬で死ぬ処刑だぞ!!ムッハッハッハ!!」

 

 おでんが提示するその条件に人々が驚愕する。もちろんオレもだが……

 そういえば、昔親父が油風呂に浸かっていたのを見かけてオレも入ってみようかと思ったら、止められたっけな。

 その事を思い出したオレが遠い目をするのをよそに親父が部下を呼びかける。

 

「時計を持ってこい!!」

 

「はっ」

 

「――1時間だ!!」

 

「!」

 

「ウォロロロロ!!耐えてみろ!!風呂でものぼせる時間だ!!」

 

 おでんの提案を受けて親父がそう言い放った。

 1時間か……あの時、親父もちょうどそのぐらい油風呂に浸かっていたよな……もちろん親父は平気だったが、おでんはどうだろうか?

 そう思案したオレはおでん達に視線を向ける。そこではおでんはその言葉に関しての確認をしていた。

 

「二言はないな?」

 

「もちろん!!」

 

 おでんからの問いかけに親父がごまかさずにはっきりとそう言い放った。

 その言葉の交わし合いが行われる一方で処刑を見るために集まった人々が声を上げる。

 

「往生際の悪い……!!」

 

「最期までみっともねェな……」

 

 そんな観衆のヤジにオレは一瞬顔をしかめるも、おでんに意識を向けるようにする。

 

 ――そして

 

 ついにおでんが大釜の中に入った。

 

「ウォアアア〜〜〜!!!」

 

 並ではない熱によりさすがに雄叫びを上げたおでんの姿に家臣達も続こうとする。

 

「主君を1人にするな!!」

 

「続くぞ!!」

 

「あの世で会おうぞお前達!!!」

 

「――そのまま橋板に乗ってろお前ら!!!」

 

「「「⁉」」」

 

 だが、なんとおでんが家臣達を橋板ごと持ち上げてみせた。

 

「何だありゃ⁉家臣どもが油に浸かってねェじゃねェか!!」

 

「ウォロロロロ!!確かに11人釜に入ってやがる!!くるしうねェぞ!!おでん!!」

 

 おでんが取った奇策に親父も大笑いする。オレもその奇抜さに感嘆せずにはいられなかった。

 確かにな。こういう感じなら別におでん自身の言葉を言い違えていねェし。

 

「おでん様!!我々を降ろしてください!!」

 

「ウォロロロ!!どうした、まだ一分も経ってねェぞ!!?」

 

「どうなってんだ、奴の皮膚は」

 

 煮立った油の凄まじき熱に耐えるおでんの姿に対して各人各様の声が上がる。

 皮膚の問題かどうかは怪しいけどな。しかし、鍛えたらそうにでもなれるのか?ならやはりもっと鍛えねば……!

 オレも熱に耐えてるおでんの姿を目にする事によりその考えを持つようになる。

 

「熱気だけで焼け死にそうでござる……!!」

 

「つまらん弱音吐きよったら張り回すぞ、雷ぞう!!乗せて貰うちゅうだけやろが!!」

 

「動くな、ネコ!!下に振動が行く!!」

 

 家臣達は彼らで主に負担をかけないようにしていた。その一方で観衆が好き勝手に言い出す。

 

「一瞬で終わるって聞いたのに意外とつまらねェ……」

 

「もっと悲鳴が上がったり派手に死ぬものかと思ってた」

 

「先急ぐんだよな――〝バカ殿〟にこれ以上付き合えねェな!飯でも食いに行くか!」

 

「……!」

 

 そしてとうとう、言いたい放題の観衆に家臣達の中にいる彼女が怒りを爆発させた。

 

「誰がバカ殿だ!!!もう一度言ったら殺してやる!!!」

 

「うおッ、何だあの女!!」

 

「くノ一⁉」

 

「おい!動くなよ!また下に振動が行く!!」

 

「フー…フー…」

 

 何だ?……もしや……

 突然様子が変わったくノ一の姿にオレが目を細めるのをよそに彼女が怒鳴り始める。

 

「――バカはお前達だ!!!」

 

「「「!!!?」」」

 

「隊長、しのぶです!」

 

「あいつめ……何を暴れてんだ……」

 

 くノ一――しのぶがおでんの事をバカにした観衆に声を荒げる。そんな彼女の姿勢に侍達、忍者達も気付く。

 

「誰のおかげであんた達が今平和に生きてられると思う!!?ここでおでん様を失ったらみんな思い知る事になる!!どれ程の不幸が食い止められていたか!!!」

 

 そうしてしのぶの語りが始まったのをオレは黙って見る。

 ――そして……同時に〝見聞色〟で()()()()()()()のをも感じ取った。

 

「オロチは「将軍」でも〝独裁者〟でもない!!オロチは人の上に立ちたいんじゃない!!」

 

 しのぶはあの日――おでんが城へ乗り込んだ時に起こった出来事を語る。

 まず、黒炭オロチが将軍の座に就いたのは――「ワノ国」を滅ぼすため、そしてこの国の人間に復讐するためであった。

 

『昔――オレの爺が罪を犯し、切腹させられた!!お家は転落!!そこまではいい!!』

 

『だが残された親族まで見ず知らずの〝正義の味方〟に追い回され!!殴られ、あるいは川へ投げ込まれ!!殺された!!オレはバカが怖くて眠れなかった!!!』

 

 黒炭家は過去に政争に負け、犯した罪で裁かれ没落してしまった。

 ただ当時の黒炭家の当主が処刑されたのはもちろんだが――親族は罰を受けながらも生き永らえた。

 ――そして……黒炭家の生き残りに対する「ワノ国」の扱いが全ての発端になった。

 

『罪を犯した張本人はとうに死んでんのによ!!「黒炭」の名がつけばガキでも罪人になるらしい!!』

 

『……!!』

 

『だから「ワノ国」の奴らは全員、復讐されて然るべきなんだ!!お前達の身から出たサビだ!!!』

 

 ――そうしのぶがオロチの動機と目的を暴露した。

 

「――そして奥の部屋から出したものはカイドウへの貢ぎ物!!大量の武器と誘拐された数百人もの人々!!引き渡されたら最後、およそ人間の生活は送れない。おでん様は怒った!!――でもそこでオロチからの提案が入った」

 

「敵は元よりこの国に興味のない〝復讐者〟。勝敗より大きなものを失うのは明らか」

 

 そうして語られるおでんが戦いを選ばなかった理由を改めて聞くオレは真顔になる。

 ……しかし、おでんが律儀に5年も待ったおかげで「百獣海賊団」の兵が増えちゃったし、結局戦う事になった。

 どうせ戦うならあの日戦いを選べば、もしかしたら希望があったかもしれねェ……オレはそう思うぜ。

 おでんの判断に対してオレが内心そう評価するのを知る由もないしのぶの語りが続く。

 

「――だからおでん様は提案をのんだ!!毎週定時刻に「黒炭家」への謝罪の〝裸踊り〟をすれば自分はあらゆるものを失えど、一回踊る度に100人の命を救えるから!!」

 

「造ってる船が完成したら……5年後にこの国を出航するという2人の約束を信じて!!」

 

 ……いや、どう考えても子供でもウソだと分かる約束を律儀に守るのはどうかだぞ……守るふりをしてまで何か手を打つべきなのに、何もしていねェのはな……

 その語りで明らかにされたおでんの判断に対してオレは内心そうツッコまずにはいられなかった。

 

「毎週、各郷を巡り変わりはないかと確認しながら……!!」

 

「おでん様はずっとこの国を守り続けてたんだ!!!誰がバカ殿だ!!?言ってみろ!!!」

 

「「「!!!」」」

 

 しのぶの語り――おでんの〝裸踊り〟の真相の暴露が終わった途端に観衆はざわめいた。

 突然知らされた思いがけない話に動揺する民衆だが、やがて信じるようになりその普及がおでん達への追い風に繋がっていくのだろう。

 

 

 

 

 

 ――だが、そうは問屋が卸さなかった。

 

「――守り続けてたんだァ!!?ウソつけェ!!その〝バカ殿〟は昔からずーっと……ずっとだ!!この国に迷惑をかけ続けてきたじゃねェか!!!」

 

「!!何だと!!?」

 

 観衆の中からある1人の男性が強引にかき上げ、声を荒げながらそう言い張った。

 彼を目にしたオレはその正体に勘付いた。

 あー…()()()か……姿が見えないなと思ったら、ここでか。本当によく狙っているな。親父とおでんの戦いの時といい……

 

「バカ殿は昔から好き勝手に暴れ回ってオレ達に迷惑をかけてきたよな!!」

 

「しかも!!海に出てはならぬという掟を破り、国を出て何年も国を空けたんじゃねェか!!だからすんなりとオロチが将軍の座に就いたじゃねェか!!」

 

「――そして何より……」

 

「バカ殿が一度この国に帰ってきた時にそいつは――この国を救おうと立ち上がるどころか――」

 

「冒険を続けたいからという理由でさっさとこの国をまた出やがったじゃねェか!!!」

 

「そんな様でこの国を守り続けたァ!!?――どこがだ!!!ぜんぜん守っていねェじゃねェか!!!」

 

「「「!!!」」」

 

「……そ、それは……!!」

 

 ババアが言い放ったその事にしのぶは言い返せず――口をつぐんでしまった。

 そんな姿勢を受けてババアはここぞとばかりに主張を続ける。

 

「だからこそ――お前の話をとてもじゃねェが――信じられねェ!!!」

 

「何だと!!?さすがにこれはウソじゃない!!」

 

「そうか!!?オレは見たから知ってんだぞ!!バカ殿は裸踊りの度に大金を貰ってたのをな!!」

 

「「「!!」」」

 

 ババアが言い張ったその事に観衆が衝撃を受ける。そしてささやかれ始める。

 

「確かに……オレも見たぞ。その場面を」

 

「ああ、そういや「九里」から来た人が言ってたぞ……バカ殿はあいつらから受け取った金で私腹を肥やしているって……」

 

「なッ……ふ、ふざけるな!!それこそウソじゃないか!!」

 

「まだあるぞ!!――おでんが乗った船の人間はカイドウの仲間だったんだというんじゃねェか!!!」

 

「……!!」

 

 観衆が上げた噂を否定しようとするしのぶだが、続いて言い放たれたその事にいよいよ何も言えなくなる。

 そしてしのぶの話とババアの話が観衆に広まり――中には内容を脚色されて、デマをもささやかれる始末だ。

 

「――しのぶ。民を混乱させるな」

 

「!福ロクジュ……!!」

 

 忍者集団「お庭番衆」の隊長である福ロクジュはかつて部下だったしのぶに向けてそう叱咤する。

 そんな彼にしのぶが顔を歪める。

 

「勝手な事をするな」

 

「ッ……わたすはもう!!彼らと生死を共にした!!おでん様の家臣だ!!お前には従わない!!彼らにもしものことがあれば「光月」と共に死ぬ覚悟!!」

 

「……いいえ!!次は全員生きて……次こそはあんた達を討つ!!」

 

「――夢だ」

 

「……!!」

 

 そう見得を切るしのぶを福ロクジュが嘲笑う。そして

 

「オ…オロチ将軍!!この処刑をどうか取りやめてください!!」

 

「そ、そうだ……もしかしたら本当かもしれねぇし……」

 

「何バカ言ってんだ!!バカ殿の暴れぶりを思い出せ!!そんなのウソに決まってんだろうが!!」

 

「そうだ!!バカ殿の勝手さにはもううんざりだ!!さっさとくたばれェ!!」

 

「お前達……!!!」

 

 しのぶの話を信じる人が現れる一方でババアの話を信じる人もまた現れてしまった。そうして観衆が二派に分かれ、そこから言い争いが起こりケンカにまで悪化してしまう。

  そのメチャクチャっぶりを目にするオロチはゴミクズどもとそう言い捨てる。オレもその様に顔をしかめる。

 ……メチャクチャだな、これではおでん達も報われねェな……

 「ワノ国」のために戦ったというのにこんな事になるおでん達にオレは同情の念を抱いた。

 それでも物事が進んでいく。

 

「……お前達……!!もしこの釜茹でをしのいだら、オレはこの国を〝開国〟したいんだ……!!」

 

「なぜ生きてる⁉?もっと温度を上げろ!!!」

 

 処刑完了まで――残り30分

 

 それでもおでんは死なない。その事を恐れ始めたオロチは大釜の温度を上げるように命じるが……

 

「……親父、本当はどうなんだ?」

 

「……ああ、奴の肉体は()()――」

 

 今のおでんの姿を目視してみる事である事を感じたオレは親父に確認してみると、彼も真剣な表情を浮かべながらそう口にした。

 やはりオレがおでんを見て感じた通り、その肉体はもう既に限界を超えていたんだ。それでも生きている。肉体が死せずとも生きているのだ。

 尋常でない事態を作り出したおでんに対して思う事があるオレは親父に声をかける。

 

「……親父、おでんに聞きたい事があるけど――いいか?」

 

「……ああ、行ってこい」

 

 おでんに聞きたい事ができたオレは彼に近づくのを認めてくれた途端に席を立ち上がり、おでんにできるだけ近づいていった。

 

「……?」

 

「何だ……?般若の面を被る少年……?」

 

 近づいてくるオレの姿におでん達が訝しげにする。

 オレはそんな彼らに対して般若の面を脱ぎ、堂々と名乗りを上げる。

 

「――オレはスサノオ……〝百獣のカイドウ〟の息子だ……!」

 

「「「!!?」」」

 

 明らかにするオレの素性におでん達は驚愕する。

 近づいてきた少年の正体はもちろんだが、宿敵カイドウに息子がいたという事実におでん達も衝撃を受けずにはいられなかったのだ。

 そんな彼らに構わずにオレが話し始める。

 

「光月おでん」

 

「!……」

 

 オレから呼びかけられたおでんは一瞬驚くもすぐ表情を引き締めて見つめる。そんな彼に向けてオレは重々しく言う。

 

「――あんたはなぜ「ワノ国」なんかのために戦う?」

 

「!!」

 

 オレの問いかけの内容が予想を超えた故におでんは目を大きく見開く。それに構わずオレは語り続ける。

 

「だってよ、ほら見てみろ……」

 

 オレは未だににおでん達を罵倒する観衆を指す。

 

「こいつらはあんた達が命を懸けて戦ったのに、しかも自分で何もしていねェのにこうやって罵倒している……」

 

「そもそも、黒炭オロチの過去は聞いたよな?」

 

 そこまで語るオレはそこで顔を激しくしかめ、思いを吐き出す。

 

「オレは心から「ワノ国」を醜く悍ましく思わずにはいられねェよ……!!」

 

「「「……」」」

 

 オレの「ワノ国」への軽蔑に家臣達も思うところがあるのか何も言い返せず俯く。そんな彼らに向けてオレはついに()()を口にする。

 

「オレにはあんた達がオロチと親父達に殺されるんじゃねェ……」

 

「――「()()()()()()()()()()()()んだと思うんだ……!!!」

 

「「「!!?」」」

 

 オレが言い放ったその言葉に顔を勢いよく上げる家臣達。その顔は青ざめていた。そんな様子にオレも眉をひそめる。

 

「オレはあんた達のような者達がこいつらなんかに殺されるのが耐えられねェんだ」

 

「だからこそあんた達に提案する」

 

「あんた達――「百獣海賊団」に入ってくれるか?」

 

「「「!!?」」」

 

 オレが行ったまさかの勧誘に家臣達も固まる。おでんは静かにオレを見つめる。それに構わずにオレは勧誘を続ける。

 

「入ってくれるならば、処刑が終わった後におでんを治療するつもりだ」

 

「そ、それは……」

 

「ぬゥ……」

 

 オレが提示した条件に家臣達も苦悩せざるを得なくなった。

 敵に屈したくない気持ちと主君であるおでんを救けるという言葉に縋りたい気持ちが混ざっているからだ。

 ――だが

 

「わりいが……断る」

 

「「「‼」」」

 

 他でもならぬおでん本人が勧誘を断った。その事に家臣達もオレも驚愕する。

 

「……なぜ?おでん?」

 

 素早くオレがそう問いかけるとおでんが苦笑を浮かべる。

 

「あ〜…こればかりはオレのつまらねェ意地の問題だ」

 

 そう茶化した彼はすぐ憂い顔をする。

 

「確かにこの国は問題がありすぎる……だが、それでもオレの故郷なんだ」

 

「嫌いになれねェんだ……」

 

「だからこそお前の親父に挑んだ……結果はこの通りだがな」

 

 おでんは勧誘を断る理由、そして「ワノ国」のために戦う理由をもオレに説明した。

 その内容を受けてオレも悟らざるを得なくなる。

 

「……その意志は固いなんだな……残念だ。あんたのような猛者がこんな形で消え去っていくのが……」

 

 そう、おでんの死を変えられぬと悟ってしまったオレはその事実を残念に思った。そんなオレに向けておでんは言う。

 

「いや、少なくともお前がオレ達の事を理解してくれている―…」

 

「それだけでも十分すぎる程だ」

 

「―…ありがとな!」

 

 ニッ!!

 

 おでんは敵の息子である筈のオレに向けて朗らかな笑みを向けて感謝を伝えた。

 おでんからの思わぬ感謝、そして笑顔を向けられたオレも動揺した。

 

「ッ……話はこれで終わりだ」

 

 それで素早く席に戻ろうとする。今のオレの表情をおでん達に見せられぬために……

 席に戻ったオレはそこで妹の異変に気付く。

 

「……ヤマト、泣いているのか」

 

 そう、ヤマトは顔をぐちゃぐちゃにして涙を流していた。

 それに驚くオレにヤマトが口を開く。

 

「う…うっ…うぅん!」

 

「だ、だぁってぇ、か、かっこよすぎるだもん……!!」

 

「こ、光月おでん、の生き様が……!!そ、そんなおでんにお、お父さんが勝ったと思うと……」

 

「す、すごく、すごくすごくすごくすごい!!!」

 

 ヤマトは光月おでんの生き様とそんな彼に父が勝ったという事実に感銘を受けて涙が止まらなくなったのだ。そんな妹にオレも優しく微笑む。

 

「……そうだな、おでんも親父も最高だ……」

 

 オレは涙を流し続ける妹の肩を抱き寄せて慰める。

 そんなオレ達にチラッと視線を向けた親父は真剣な表情を浮かべる。

 

「……オロチ、おでんが耐えきっても余計な事はすんなよ。約束だからな」

 

「な⁉カイドウ!それは……」

 

「分かったな?」

 

「――く…分かったよ」

 

 そして親父は約束を反故にしかねないオロチに念を入れる。オロチも親父からの圧により渋々承知せざるを得なくなる。

 

 ――そして、その時が迫ろうとする。

 

「後1分だ!!おでん様頑張れ!!」

 

「何を生きてんだ!!さっさとくたばれ!!」

 

「バカ殿!!」

 

「疫病神が!!」

 

 手のひらを返しておでんへの声援が僅かながらも存在する一方で悪化しておでんへの罵声が多く上がっていた。

 そんな中で時計の針が少しずつ……少しずつ……そしてついに約束の時間を指した。

 

「釜茹でに耐え抜いた〜〜〜〜!!?」

 

「なんて奴だ……!!」

 

「良かった……!!おでん様!!」

 

「ちっとも良くねェよ!!クソ!!」

 

 おでんが1時間の釜茹でを耐え抜いた事に観衆が沸いた――見解が二手にはっきり分かれているといえ。

 そして家臣達も喜んだ。

 

「何と言われようが耐えきった!!覚悟せェよカイドウ!!!」

 

「バカ!!煽るなネコ!!」

 

「何を!?勝ちは勝ちぜよ!!」

 

 ――そして、ネコマムシが興奮のあまりについ口走ってしまったその言葉をオロチが聞き逃さなかった。

 

「言ったな……猫ォ〜〜」

 

「「「!!」」」

 

 いやらしい笑みを浮かべたオロチが口を開く――

 

「よかろう……約束通りにお前達を解放してやろう……」

 

「ただし!猫の言葉により反省がみられぬ事が分かった以上!お前達をそのまま帰す訳にはいかない!」

 

「刑をもう一度受け直してもらう!!今度は〝銃殺の刑〟……さらに一家皆殺し!!」

 

「「「!!?」」」

 

「これなら問題はないよなァ!!カイドウ!!」

 

「……まァ、解放を約束したはしたが……それだけだ。その後は知らんからな……」

 

 その言葉をカイドウもさすがに否定はしなかった。

 

「ネコォォォォォオ!!!」

 

「ちが、こんなつもりでは……」

 

「頼んだぞ!!お前ら……!!「ワノ国」を開国せよ!!!」

 

 だが、おでんが橋板を思い切り遠くへ投げた事で家臣達9名とくノ一1名をうまく逃がせた。

 

「追いかけろ!!」

 

「「「はっ!!」」」

 

「全員撃ち殺せ!!」

 

「追え!!」

 

「「光月」の名を抹消しろ!!」

 

 家臣達が逃げ去り、オロチも部下に追わせる中で親父がおでんに銃を向けながら話しかける。

 

「ふん……上手くやったな――だがどの道、お前の体はもう死んでる筈。せめてもの〝情け〟だ。オレが撃ってやる……「光月」の時代はここで終わりだな!!全員死ぬ……」

 

「……確かにオレは負けた……だが、ウチの侍達をナメんじゃねェぞ!!!生き残り、逃げ延びても……いつか必ず、必ずだ……カイドウ……!!オレの侍達はいつか仲間を引き連れ、お前達に挑みに行くぞ……!!」

 

 おでんが不敵な笑みを浮かべ堂々とそう宣言する。

 その宣言に親父、そしてオレも表情を引き締める。

 

「……お前の事は覚えといてやる。このオレに傷をつけやがったお前のその強さは語り継がれるだろうな」

 

「忘れてくれて構わねェ……ハァ……オレの魂は生きていく……ハァ……」

 

「だが、負けるままでいるのは小癪だからな……地獄で鍛え直しながら待つぞ……次は勝ってみせる……ハァ……ハァ……」

 

 ――〝一献の酒のお伽になればよし〟

 

「くたばれ!!バカ殿!!」

 

「さっさと死ねよ!!バカ殿!!」

 

「バカ殿!!バカ殿!!」

 

 罵声に囲まれる中で光月おでんは最期の言葉を残していく――

 

「〝煮えてなんぼのぉ〜〜……〟」

 

 親父が銃の引き金を――

 

「――〝おでんに候ォ〟!!!」

 

 おでんがその言葉を発した途端に引いた。

 放たれた弾がおでんの額に風穴を開け――

 彼が大釜の中へ沈んでいく……

 

 

――こうして

 

――光月おでんは……死んだ。

 

 

 光月おでんの最期にオレは感銘を受けた――魂を響かれたように感じた。そして同じく感銘を受けて涙が止まらないヤマトの肩を擦りながら親父に視線を移してみる。

 親父は真顔でしばらく大釜を凝視していた。やがて銃を投げ捨てて

 

「――行くか」

 

「おでんの部下を追いに?」

 

「ああ、それに――おでんの息子とやらに興味がある」

 

「そっか」

 

 そう言った親父は「九里」へ向かっていった。

 

――そんなカイドウの胸中には光月おでんというワノ国最強の侍の死に対しての喪失感が存在していた……




☆ワノ国最強の豪快な侍散るー!!
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