ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第158話〝掌握への工程〟

「それはお前こそが上層部の中で最も――オレ達の下で〝バシレウス〟を上手く統治できると考えたからだ」

 

「…!!」

 

 フドウがハッキリとそう言い放った。その答えにギーランは目を大きく見開いた。

 その反応にフドウは構わずにその答えに至る理由を説明し始める。

 

「お前の事は耳にしている」

 

 そう言う彼の頭に〝バシレウス〟からの逃走集団であるエマ達から話を聞いた時が思い浮かぶ。

 ――〝バシレウス〟とは4つの国で構成されている連合である。

 そんな実情である故、その連合の上層部は4勢力に分かれている。そして同心協力ではないといえる。それをまとめる筈の議長が倒れている今ではかえってだ。

 如何なる思惑が潜んでいる上層部――の中でも民の事を親見に考える人間がいる。それがギーランである。

 彼は民の為に統治を行い、行動してきた。だからこそ、そんな彼の事を統治地の人間が慕っている。

 その評判は〝バシレウス〟全域に知れ渡っていて、それ故か自由を求めてその地から逃走してみせたエマ達も信じてもいいかもと思わせられる事もあった。

 

『任せるなら……〝ギーラン〟という人が一番かもしれません』

 

 そういう背景もあって統治を誰かに任せるのかという話になった際でエマ達がそう断言した。

 彼女達がそこまで言うのだ。ならば、〝バシレウス〟の民も彼の言葉には耳を傾げるだろう。

 そう考えたスサノオ達がギーランに任せてみようと話をほとんどまとめていった。そんな中である問題が浮かんだ。

 それは――本当にギーランに任せるべきなのか、それを確かめる為に誰かが彼と戦う事でその適性を把握するという事であった。

 その事に別に異議はない。ただ、その役目を誰がやるのか……

 そんな問題に対してスサノオはある判断を下した。

 まず、彼的にはその役目を果たすのには余計な先入観を持たずに見極める必要があると考えた。

 そして、そんな事ができる者といえば「暴獣海賊団」では数人存在している。その中からスサノオは選んだある男――フドウに任せる事にした。

 合理的思考できる彼ならば、良い判断を下すだろうという信頼があったからだ。

 自身が慕っているスサノオからのそれ程の信頼、その役目の重さを理解したフドウは実際にギーランと戦い、その素質を冷静に見極めていた。

 

 

 

 ――そして……結論付けた。

 

「聡明さ、判断力、何より覚悟……全てに問題はないとオレは判断した」

 

「お前なら、ナワバリになった〝バシレウス〟を上手く統治できるだろう」

 

「…!!」

 

 フドウの自身に対しての評価にギーランも狼狽せざるを得なかった。

 ……無理もないかもしれない。〝バシレウス〟の未来を決めるであろう会議の最中に突如襲来を受け、その張本人と戦ったら、その敵が想定以上にヤバイのが分かって――もうダメかと思ったら……他でもならぬその敵から統治を求められるというまさかの事態だ。

 本当にわずかの間であったにも関わらずにあまりにも激変され続けた状況に彼も頭が真っ白にならずにはいられないのだろう。

 フドウもそれを理解しているからこそ、未だに混乱するギーランを冷静に待ち続ける。

 しばらくそれが続くが―もう

 

「……〜〜!!だ、だが!!ここを海賊のナワバリなんかにする等――!!」

 

 ようやく正気を取り戻したギーランは辛うじて残された気力を全て使い切ってまでその提案に対しての拒絶の言葉を口にしようとするが……

 

「だが、そうしないとここが荒地になるぞ?それは民の為にならないんじゃないのか?」

 

「!!そ、それは……」

 

 それに対してフドウがキッパリと言い返したその言葉に彼も何も言えず、口をつぐんだ。そんな彼にフドウは容赦なく続ける。

 

「さっきも言ったが、オレ達は「四皇」〝百獣のカイドウ〟の傘下だ」

 

「そして、〝百獣のカイドウ〟の力をお前が知らない訳ではないだろう。さっきの反応からみて」

 

「…」

 

 彼が言い放ったその言葉にもギーランは何も言えず、ますます険しい表情を浮かべる。

 そう、彼は「四皇」の猛威を知っている。それに伴ってその中でも武闘派として知らされる〝百獣のカイドウ〟の恐ろしさをもまた知っている。

 それを考えれば、その提案を黙って受け入れるべきなのは分かるが……

 

「……っ!!(だが、あの「百獣海賊団」の支配下に置かれると――民は……皆は……!)」

 

 あの恐るべきカイドウが率いる「百獣海賊団」の支配下で生きる事になるであろう民の未来を何よりも案じる彼はなかなか言葉を出せずにいた。

 そんな胸内を察したのか俯くギーランに対してフドウは冷静で、しかしどこか柔らかさが微かに込められてるような響きでそれを口にする。

 

「さっきも言ったが……ここの民を粗末に扱おうとは思わん」

 

「むしろ……こちらの意向に沿って統治してくれるのならば、そちらの在り方に可能な限りで口を出さないようにしよう」

 

「…!!?」

 

 ハッキリと宣されたその内容にギーランも大きく目を見開いた。が、すぐ目を鋭くする。

 

「……どういうつもりだ!?こちらにも利があるようにすると言うとは……一体何を企んでいる!?」

 

 彼は警戒をさらに強めながら、抱いたその疑問をフドウに率直に投げかける。

 それもその筈。相手は荒くれ――海賊だ。それも「四皇」の中でも武闘派だと知らされる〝百獣のカイドウ〟配下の者だ。

 そんな奴がわざわざこちら側にも利がある提案をしてくる訳がない。

 だからこそ、逆にそう言い放ってきた目前の海賊が何を企んでいるのか……と疑わずにはいられなかった。

 そんなギーランの姿勢にフドウも反感を覚えず、むしろ理解できていた。

 

「…(まぁな……カイドウさんはとにかく、スサノオさんの考え方――思考は風変わりだからな……)」

 

 彼自身も慕ってる男の思考、その感覚にはさすがに苦笑を浮かべざるを得なかった。だが

 

「(……だが、その考えは理解できるがな……現に今も上手くやれている)」

 

 その内容が実に筋が通っている事とその考え方に従ってのやり方で物事を上手く維持できている事をも理解している彼は揺るがさずに口を開く。

 

「別に何も……ただ、その方がこのオレ達にも大きな利益を得られるからだ」

 

「それ故に――余計な真似をするつもりも全くねぇ……その事を理解してもらおうか」

 

「…!?」

 

 続いて言い放たれたその内容にギーランも呆然とするものの、すぐフドウに食いかかった。

 

「何だ!?それは!?」

 

 その意図を理解できず、それ故に疑問を解消できなかった彼が声を上げてくるのにフドウはしかし容赦なく言葉を続ける。

 

「……事前説明はここまでだ。これから本番を始めるぞ」

 

「!!」

 

 突如重くて冷徹になった彼の雰囲気にギーランが息を呑むところで彼はキッパリと言い放つ。

 

「お前に与えられる選択肢は2つだけだ」

 

「――オレ達の提案に乗るか」

 

「乗らないか――二者択一だ……!」

 

「それ以外の答えはいらん。尺稼ぎはせずにハッキリ答えてもらうぞ……!」

 

「5秒ぐらいはやる――考えるんだな……!」

 

「…!!」

 

 改めて出されたその宣言にギーランも少々狼狽せずにはいられなかった。

 その内容もそうだが……さっきより凄まじくなったその威圧感からさっきまでは手加減されたのではと思わざるを得なかった。

 それ故に自身の決断に全てがかかっているのを理解してしまったギーランはその途端に緊張感に襲われた。

 

「〜〜!!(今まで決断を迫られる事がない訳でもないが……今程――恐ろしい時はなかった!!)」

 

「…(所詮海賊は海賊だ……ここを海賊なんかのナワバリにする等……!)」

 

「(だ、だが……ここをもうこれ以上危険にさらす訳には……!)」

 

「(く……!こ、これはキツい……!)」

 

 〝バシレウス〟の今後を決するといっても過言ではない選択肢を迫られてしまったギーランも悩んだ。それはそりゃすごく。

 ……だが

 

「(……ただ、少なくとも――こいつは海賊にしては……真っ当のように感じられる)」

 

 ふとフドウと直接戦った時を思い出した彼はその姿勢に真っ当さを感じられたのも思い返した。

 

「(そのような奴が言った事だ。もしかしたら、少しだけだが――信じてもいいかもしれん……)」

 

 その姿勢からギーランはその可能性を考えるようになっていった……そして

 

「(それに結局ダメだったとしても……今ここが荒地になるのを避けられる上に時間を稼げる筈だ)」

 

 万が一の時を考えてみた。それ故に――

 

「(……なら、私が出すべき答えは――)」

 

「5秒過ぎたぞ。答えは出たか?」

 

 思案に耽る彼にフドウは容赦なく答えを求める。それに対してギーランはその答えを口にする。

 

「――その提案に乗ろう……!」

 

 あれ程に悩んでいたのがウソだったかのように威厳を持って彼がそう答えた姿にフドウも目を細める。

 

「……二言はないな?」

 

「あぁ」

 

「……なら、話は決まったな……!」

 

 一応の確認にもギーランがキッパリと答えた事でフドウも深く頷く……

 

 

――そうして〝バシレウス〟評議会メンバーのギーランは暴獣海賊団の軍門に下った……

 

        ●

 

様々なところで戦いが行われてる中でのあるところでは――

 

「〝焔霊〟!!!」

 

「〝獅子の爪〟!!!」

 

「「「うわぁぁぁぁぁ!!」」」

 

「むっ!」

 

 ――明日郎とシシリアンがそれぞれ炎と「エレクトロ」を纏う剣での大技をバイヨン率いるギーラン派に放っていた。

 それによって多くの兵士達が吹っ飛ばされ、バイヨンはその攻撃を辛うじて避けたものの少し傷を負わされた。

 その傷に顔をしかめた彼は倒れた兵士達の姿を横目に眺める。

 その人数の多さ、そして生き残った兵士達の人数の少なさにバイヨンが険しくて、しかし不敵な笑みを浮かべる。

 

「……海賊にしてはなかなかやるではないか」

 

「……はん!少しは思い知ったか?このオレをナメた事をよぉ――この猫はとにかく!!」

 

「……ふん!このバカはとにかく、このオレを見くびるでない!!」

 

「「……あ゛ぁ゛!?」」

 

 予想を超えた海賊の強さをギーランが率直に称賛すると明日郎とシシリアンはドヤ顔をみせながらそれぞれ言い放った――が、その内容にある聞き捨てならない部分により互いに相手に食いかかった。

 さっきから変わらないその姿勢にギーランも呆れをみせる。

 

「……だが、そろそろ終わらせなければならんな。ギーラン様の事もある」

 

 が、それも一瞬。その事情もあって彼はすぐ気持ちを新たにし、今行われてる戦闘を終わらせようとする。

 それにより威圧感を放ちながら身構えるバイヨンの姿にケンカしていた明日郎もシシリアンも素早く真剣な姿勢を取る。

 

「!……やるのか」

 

「うぬ……この覇気……そろそろ次で決まるんだな」

 

 彼の意図を察した2人も腹をくくり、態勢を整え直す。

 ――そうして、その3人の間に緊張感が走った……

 おそらく、その戦いもついに決着を迎えようとするのだ……

 

「「「――行くぞ!!」」」

 

 

 

 ……かと思われた。

 

「待て!!」

 

「「「!?」」」

 

 互いに技を放とうとする3人の間に突如炎が舞い降りた。

 突如の事に固まった3人にその者達が近付いてくる。それはもちろん……

 

「!?ギーラン様!?」

 

「あぁ!?フドウ!?」

 

「何のつもりだぁ!!貴様はぁ!!」

 

 そう、フドウとギーランである。彼らの登場に3人共驚愕し声を上げた。

 

「やかましいぞ、お前ら……仕事は済んだ。もうこれ以上続ける必要はない」

 

「!……そうか、それなら仕方があるまい」

 

「あぁ!?……あ、あ〜……そういえば、そうだったっけ」

 

 明日郎とシシリアンからの文句に対してフドウが冷静にそう言い放つ。その内容に頭に血が上った2人もその事を思い出し、納得した故に冷静になっていった。

 

「つまり――問題なく決まったという訳か?」

 

 そして付近でバイヨンと議論しているギーランの姿を横目に見るシシリアンはその事を察し、その確認の為に問いかけてみる。それにフドウも頷く。

 

「あぁ、だからお前らは他をあたれ」

 

「……チッ、せっかく盛り上がってきたってのによぉ」

 

 続いてその指示を出された事でギーランとの戦いがなくなったのを察した明日郎はその不満を口にする。

 そんな彼にフドウは声を掛ける。

 

「……奴とは後でいつでもやれるんだろう。だから今は仕事に専念しろ」

 

「……そうかもな」

 

 そう言われた明日郎はその事に一応納得するところでシシリアンが突如駆けた。

 

「では、オレは他で暴れている奴らを叩き潰してくれよう!!」

 

「あ!待てゴラァ!先駆けすんなぁ!!」

 

 そう宣しながら駆けていく彼を明日郎も負けじと追っていった。その姿にフドウもため息をする。

 

「ふ〜……血の気が高ぇ野郎共だ……そちらは――」

 

 そしてギーランの元に視線を向けてみる。そこでは――

 

「――真によろしいんでしょうか!?奴らは……」

 

「お前達の言いたい事は分かってる。だが、もうこれ以上の混乱を避ける為にここは矛を収めてくれ……分かってくれるか?」

 

「「「っ……はい」」」

 

 当然というか、「暴獣海賊団」の提案に乗った事に拒絶的なバイヨン達だが、そんな彼らもギーランの説得により不服ながらも納得しようと努めるところであった。

 その事態にフドウも物事が少し進行したのを確信した。

 

「これで――〝バシレウス〟掌握への第一歩だな」

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